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この作品は執筆を終了しています。

【僕とハンジと、時々、巨人】~怒涛の日帰り温泉編~

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  1. 1 : : 2014/03/29(土) 16:39:17
    こんにちは。
    執筆を始めさせていただきます。
    最初にお詫びを…
    今回の話…
    長いです。
    毎回私は、大学ノートに下書きしてから、投稿しているのですが、
    前回の~モブリットの目標編~が全9ページだったのに対し、
    今回は…
    21ページにも膨れあがってしまいました。
    なるべく読みやすいように清書していきますが、
    分かりにくい所がありましたら、コメントにてお寄せください。
    よろしくお願いします。

    まず今回はエルヴィンの視点から物語は始まります。
    では…
  2. 2 : : 2014/03/29(土) 17:03:39
    俺(エルヴィン)は、毎朝の日課である郵便受けの中身のチェックをした。

    調査兵団に届く手紙類は、まず係りの兵士が郵便局員から手紙を受けとり、宛名ごとに振り分け、それぞれの部屋に投函していく。

    しかしながら、間違って投函されることもしばしばだ。

    だが、責めるわけにもいかない。人員不足の多忙な中、こなしてくれているのだから。

    …その人員を減らしている要因は、俺自身が立てた作戦にあるのだから。

    「」

    俺は、1通の手紙に目をうばわれる。

    何度も見返してみるが、間違いない。

    懐かしい名が、そこにあった。

    しかし、その宛先は俺ではなく、リヴァイだった。

    俺はその手紙をリヴァイに届けようと周りを見回すと、ちょうど彼が通りすがった。

    「…おい、リヴァイ。お前宛だ。」

    うんざりした顔を見せるリヴァイ。

    「…どうせ俺宛といえば、人類最強のくせにまだ巨人共を駆逐できねぇのか、といった具合の、クレームの手紙だろう。…読む気にもならねぇ。そっちで処分しておいてもらおうか。」

    その言葉に、俺はどうやら真剣な顔つきになったらしい。

    「…俺の個人的な頼みでもあるんだが、ぜひ読んでみてくれないか。」

    そんな俺の様子に、リヴァイの顔つきも変わり、俺から手紙を受け取った。

    「…知らねぇ名だな。ここで読むぞ。」

    リヴァイの問いに答えるように、俺は目を伏せた。

    カサ…

    封を開ける音が、妙に大きく響く。

    カサ…

    俺は目を伏せたまま、耳だけを傾けていた。

    カサ…

    「ふぅ…」

    リヴァイの息をつく声に、読み終わったのだと思い、顔を上げる。

    リヴァイがこっちを見ている。

    「…エルヴィン。」

    「…どうした。」

    「外出許可をもらうぞ。今すぐに、だ。」

    彼の申し出が、今さっき読んだ手紙と関係していることなど、疑う余地もなかった。

    「いいだろう…すまないな。」

    俺の言葉に、リヴァイはあきれた顔をして、

    「お前が謝る理由は、どこにもねぇよ。」

    「ああ…そうだな。」

    リヴァイは身支度をするために自室へと戻った。

    俺は…なぜか外の空気を吸いたくなった。

    そうだな。捕獲した巨人の様子を見に行ってみるか。

    どんな状況になっているか、気になるしな。

    …もとい、巨人を相手にしているハンジの様子が…。

    そう考えた後、なぜか笑みがこぼれた。

    なんだか今日の俺は、様子がおかしいのかもしれない。

    あいつが見たら…なんと言うだろうな…。
  3. 3 : : 2014/03/29(土) 17:14:49
    どうも!!

    こんにちは、こんばんは、おはようございます!!

    モブリット.バーナーですっ!!

    すみません、序盤からバタバタしてしまって…

    でも、慌てずには、いられないんです!!

    誰か分隊長を…ハンジ.ゾエを止めてください!!

    「分隊長、無茶です、やめてください!」

    「だ~いじょぶだって。さ、ソニー、ビーン、行こう!!」

    「無理ですって!!」

    前回の、~モブリットの目標編~を読んでいただいた方はご存知かとは思いますが、

    僕と分隊長は、温泉デートの約束をしたんです。

    2人っきりで。

    少なくとも僕は、そう思ってました。

    ところがどっこい、分隊長はいきなり

    「どうせなら、ソニーとビーンも誘おうよ!」

    とか言いだしたんですよ。

    …こんな時に限ってリヴァイ兵士長も姿を見せないし、

    周りにいる駐屯兵団の面々も、どん引きして近づいてすら来ない。

    …はぁ…どうしよう…泣きたい…
  4. 5 : : 2014/03/29(土) 20:41:10
    「なんの騒ぎだ。」

    はっ…天の助け!!

    「エルヴィン団長!助けてください!」

    僕は、身の振り構わず叫んだ。

    「ハンジ…一体、何をする気なんだ!?」

    若干語気を強めたものの、冷静に問いかける団長。

    「エルヴィン!止めないでくれ!!私はどうしてもソニーとビーンを連れて行きたいんだ!」

    「…どこへ連れて行くというんだ?」

    「温泉!!」

    「」

    …さすがの団長も言葉を失ったようだ。

    万事休すか…!?

    そう諦めかけた僕を尻目に、団長は静かに

    「…ハンジ、ソニーは4m、ビーンは7m級だったな。」

    「うん、そうだけど。」

    「人間の大きさに換算すると、大体ソニーは3人分、ビーンは6人分といったところか…」

    「」

    分隊長が黙った。

    「合わせて9人分の入浴代を、誰が払うんだ。」

    「え…」

    「さらに、巨人をそのまま野放しの状態で温泉に向かわせることは不可能だ。運搬をする兵士が必要になってくる。馬車もな。その経費は誰が出すんだ。」

    「う…それは…」

    段々と勢いを無くす分隊長。

    「…エルヴィンが…」

    「俺は出さん。」

    「僕も払いません!!」

    しおしおと巨人から離れる分隊長。

    決着はついたようだ。

    「しょうがない…モブリット、2人で温泉に行こうか。」

    しょうがないって何ですか…

    「何だお前ら、2人で温泉か…」

    「あ…」

    まずい。団長の目の前でデートに向かうなんて。

    ただでさえ、上官と副官の恋愛を、快く思ってるわけじゃないのに…ストップをかけられるだろう。

    僕は覚悟を決めた。

    すると団長は、急に辛そうに顔を歪め、僕と分隊長に背を向けた。

    「はぁ…どうも最近疲れがたまってな…目の前の光景が見えづらくなってな…俺は今、何も見えん。…そういえば、ついさっき何か聞いたような気がしたが…それも思い出せん…ふむ…」

    …あ…団長…

    僕は察した。

    僕は、ポカンとしている分隊長の手を引き、温泉へと向かった。

    …後には、あっけにとられている駐屯兵団の面々もいたけれど、

    そんなの気にしてたら、ハンジ.ゾエの恋人はつとまりません!

    ですよね、皆さん。
  5. 6 : : 2014/03/29(土) 20:49:38
    僕たちは、馬車に乗った。

    分隊長はしばらくブツブツ文句を言っていたけれど、

    ほどなくして機嫌を直し、にこにこと笑って僕に話しかけてくる。

    「早く温泉入りたいね、モブリット。」

    「そうですね、ハンジ…さん。」

    「やっぱ露天風呂だよね。今日は天気もいいし、きっと最高だよね、モブリット。」

    「だといいですね、ハンジ…さん。」

    「…あのさぁ」

    「…はい…」

    「怒ってるの?」

    「えっ…何をです?」

    「私が…ソニーとビーンを誘ったこと。」

    「」

    「ごめん。ほんとはモブリットが1番いいの。彼らのことももちろん気になるし、一緒に楽しめたらいいなって思うけど、私が大好きなのは、モブリットだけだよ。」

    「///」

    え…ハンジさん…そんな…

    「あ…でも…」

    うん、うん。

    「ソニーとビーンのことも…やっぱ好き!!」

    分かってますよ、ハンジさん。

    …大好きですよ。
  6. 7 : : 2014/03/29(土) 21:20:31
    温泉に到着です。

    「さぁモブリット!突撃だ~っ!!」

    そのノリで言われると、僕もつい

    「はいっ!」

    と答えてしまう。突撃先は、もちろん露天風呂だ。

    もちろん、服は脱ぐ。

    「…ふぇ~っ…いい湯だね…」

    「…そう…ですね…」

    気がついた時には、ハンジさんと2人で、混浴の露天風呂に浸かっていた。

    湯船にタオルを入れてはいけないので、2人共全裸だ。

    …下半身が…ここが白濁湯で良かった…。

    「…2人っきりだね…」

    「…そう…ですね…ハンジ…さん。」

    「何なのさっきから。」

    「はは…」

    僕の目標。ハンジさんをハンジと呼んでみること。

    僕は、大きく息をついた。

    「モブリット…楽しくないの?」

    「そんなことないです!とっても楽しいです!」

    「ならいいけど。」

    僕は、チラリとハンジさんを見た。

    いつもと違って、髪を上にまとめ、メガネを外したハンジさん。

    …いい。…すごくいい。

    触れたい。

    いや、触れて良いのだ。僕らは恋人同士じゃないか。

    触れてOK。

    よしっ…。

    ところが、お湯の中で、ハンジさんが僕の手を握ってきた。

    「…あのさ」

    「は…はい…」

    「本当に私でいいの?」

    「…え…」

    「私、あなたよりずっと年上だし、美人でもなければ、胸だってそんなにないし…」

    恨めし気に自分の胸を見下ろすハンジさん。

    何なんだこの超絶的ないじらしさは…

    ハンジさん…もう手を離してください。僕はもう、色々な所が限界です…///

    「モブリット、聞いてるの?」

    「はっ…はいっ!聞いてます!!」

    「もしかして興味本位とか?奇行種って呼ばれてるのは、どんな女かっていう…」

    「そんなこと…絶対にありません!」

    僕はハンジさんの両手を握り、向き合った。

    「僕は真剣です!あ、あと、ハンジさんは普通にしてれば美人だと思います。」

    「普通にしてりゃって、どういう意味!?」

    「あ…違います!巨人と戯れるハンジさんも素敵です!」

    「私は巨人といるときだって普通にしてるじゃん!」

    「自覚ないんですか、あなた!」

    「モブリットの意地悪!」

    「意地悪じゃないですっ!」

    僕は思わず、身を乗りだし…ハンジさんが後ろに倒れはじめる。

    いけない…こんな所で頭をぶつけたら…

    僕はハンジさんの後頭部を守ろうとし…結果、2人で温泉にダイブした。

    …もし、地上だったら、僕はハンジさんを押し倒してる様に見えただろう。

    けど、水中だったので、2人でもがき、あわてて温泉から顔を出す。

    ずぶ濡れになって顔を見合わせ、僕たちは笑った。

    ああ、楽しいな…ありがとう、ハンジ…さん。
  7. 8 : : 2014/03/29(土) 21:30:06
    温泉を出たあと、僕たちは温泉宿の周りにある商店街をぶらついた。

    色々な店が並び、ハンジさんは楽しそうだ。

    それをすぐ後ろから見守る僕…うん、いい感じ。

    「ねぇねぇ、モブリット。これかわいいよ。」

    ハンジさんの視線の先には、ショーウインドウに飾られた、ネックレスがあった。

    銀色の鎖の中央に、輝かしいダイヤがついている。

    僕は、改めて思った。

    ハンジさんって…女なんだな…。

    「…モブリット…」

    「…はい…」

    「…行こうか。」

    「え…?」

    流れ的には、僕はあのネックレスをおねだりされる立場にあるんじゃないのか…。

    「待ってください、ハンジさん。」

    「…ん、どうかした?」

    僕はショーウインドウのネックレスの値段を確認する。

    「」

    …無理。

    「早く行こ。」

    さりげなく、ハンジさんが僕の手を引く。

    「…はい…行きましょう。」

    泣きたいと思ったのは、これで2回目、か…。
  8. 10 : : 2014/03/29(土) 21:40:24
    「あっ…」

    ふと、ハンジさんが足を止める。

    「どうしました?」

    僕の問いかけにも応じず、ハンジさんはとある方向に釘付けになる。

    ぼくも、ハンジさんの視線を追う。

    「…あ…」

    リヴァイ兵士長だ。

    なぜ、こんな所に…という疑問もあるけど、それよりも気になるのは、

    隣で楽しそうに並んで歩く金髪の女性。

    まあ、言うまでもないけど、美人だ。

    リヴァイ兵士長は、あいかわらず眉間にシワを寄せたまま、まっすぐに前を向き歩いている。

    でも、たまに女性の話に相づちを打っているようだ。時折、口が動いているのが分かる。

    リヴァイ兵士長と連れの女性は、そのまま僕たちに気づくことなく、人混みの中へと消えていく…。

    「…モブリット…」

    「…はい…」

    「追っかけよう!」

    え~っ!?

    デート中に元彼(あ、元セフレ?)の後を追っかけるのって、間違ってませんか!?

    皆さんだってそんなことされたら、嫌ですよね?

    しかし、そんな僕の気持ちとは裏腹に、ハンジさんはどんどん走っていってしまう。

    …追いかけるしかない…か。

    待ってくださいよ、ハンジ…さん!



  9. 12 : : 2014/03/29(土) 21:48:11
    リヴァイ兵士長と連れの女性は、なんと僕たちがさっきまでいた温泉宿に入っていく。

    「ちょっと…手ぇ早いな、リヴァイの奴…」

    「…ですね…」

    「…よし、私たちも入ろう。」

    「まだ追うんですか、もうやめましょうよ。」

    「やだ!」

    「でも、これ以上他人のプライバシーに首を突っ込むのは、まずいですよ。」

    僕は、他人の、に語気を強め、言い放つ。

    「まずくない!」

    あ~、はいはい。

    「行きましょうか。」

    「うん!」

    僕たちは、温泉宿の中へ入っていった。
  10. 13 : : 2014/03/29(土) 22:08:46
    リヴァイ兵士長たちは、入ってすぐの、ラウンジのソファーに腰を下ろした。

    僕たちは、リヴァイ兵士長の視界に入らない位置に座り、様子をうかがう。

    相変わらず、連れの女性は楽しそうだ。

    「相手の女性…すごく楽しそうですね…」

    「うん。」

    「リヴァイ兵士長の…恋人ですかね…」

    「うん。」

    「けっこうな美人ですね…」

    「うん。」

    「ちょっとハンジさん、僕の話、聞いてます?」

    「…うん…」

    あ…ダメだ。完全にリヴァイ兵士長に意識を集中させてる…。

    「ハンジさん!?」

    僕は、ハンジさんの頭をつかみ、無理矢理僕の方へ向かせる。

    「ったいな!何すんの!?」

    「ハンジさん、僕らは今、何をしてるんですか!?」

    「リヴァイの尾行。」

    「ちがうでしょ、僕らは今、デート中でしょう!?」

    「あ、そっか…」

    「そっか、じゃありません、少しは僕の気持ちも考えてください!」

    「…おい」

    「モブリットの気持ちは、いつも私考えてるよ!モブリットだってリヴァイがどんな女とデートしてるのか、気になるでしょ!?」

    「…お前ら…」

    「気に…なるけど、今僕は、ハンジさんと温泉デートを…」

    「…おい…クソメガネ…」

    僕とハンジさんは、その聞き覚えのある声に、ビクリとして振り向いた…

    「お前ら…何してやがる。」

    リヴァイ兵士長が、すごく不機嫌そうな顔でこっちを見下ろしている。

    本日3回目の…泣きたい…

    「あ…はは…やっほ~、リヴァイ…」

    「はぁ…残念だな。」

    「な…にが…ですか?」

    問うてみる。怖いけど。

    「せっかく成立したカップルを…こんな風光明媚な場所で葬り去ることになるとは…」

    ひぃぃぃっ…!!

    「…あら、お友達?」

    戦慄した空気を和ませたのは、リヴァイ兵士長といたあの金髪女性だった。

    にこにこと、おだやかな表情で僕たちを見ている。

    「チッ…ダチじゃねぇ…俺の部下だ。」

    僕とハンジさんは、ひきつった笑みを女性に向ける。

    「まあ、じゃあ、あなたたちも兵士なのね。まあ、素敵。ぜひ一緒にお話しましょうよ。」

    …という訳で、僕たちはリヴァイ兵士長と、金髪女性と同じ席につくことになった。

    まぁとりあえず、命が助かっただけでも、ありがたいと思わないと。

    でも僕はこのあと、さらに心臓に悪いショックな事実を知ることになる。
  11. 14 : : 2014/03/29(土) 22:15:12
    「まずは自己紹介からしなくちゃね…私、マリー.ドークよ。あなたは?」

    マリーさんに問われ、僕は

    「はい…モブリット.バーナーといいます。」

    と答える。それに倣い、ハンジさんが

    「私はハンジ.ゾエ。…あの、失礼ですが、憲兵団の、ナイル師団長の…」

    マリーさんはにっこりと笑い

    「ええ。私はナイル.ドークの妻よ。」

    はいぃ!?

    あ、皆さん、心臓の方は大丈夫でしょうか。

    僕は…ちょっとヤバイです…うう…。
  12. 17 : : 2014/03/29(土) 22:25:52
    「ちょっとちょっとリヴァイ、いくら何でもまずいって。人妻の…しかも別の兵団の師団長の妻に手を出すのは…ちょっと…」

    ハンジさんの言葉に、リヴァイ兵士長は心底うんざりした顔をして

    「…おい、お前から説明してやれ。」

    リヴァイ兵士長から説明を求められたマリーさんは、可笑しそうに手を叩いて身を乗り出した。

    「まさか本当に来てもらえるなんて、思わなかったのよ、本当に…」

    「…順番に説明しろ。」

    リヴァイ兵士長に言われ、マリーさんは、こほんと咳払いし、説明しはじめる。
  13. 18 : : 2014/03/29(土) 22:39:34
    ※ここからの説明は、マリーの視点で語られます

    …さっき説明があった通り、私、マリー.ドークの夫、ナイル.ドークは、憲兵団の師団長をしているの。

    月々のお給料はまあまあだけど、なんせ1日中家にいたためしが無くて、帰ってきたはいいものの、すぐに食事とお風呂だけ済ませて飛

    び出して行っちゃうのよ。ほんと、信じられる?

    子供と家のことを、ほとんど私に押し付けて、自分は仕事が忙しいの1点張り。

    だから私、仕返ししてやろうと思って。

    …え、どんな仕返しかって?

    これは娘からの提案だったんだけど、かの有名なリヴァイ兵士長を、デートに誘ってみたらって。

    そうしたらお父さん、他の男の人にお母さんを取られると思って、家に帰って来るよって言うの。

    …えっ、なぜリヴァイを選んだかって?

    実は私と娘たち(娘が2人いるのよ)、リヴァイ兵士長の大ファンなの。

    この前の凱旋の時なんか、私、年甲斐もなく手振っちゃったわ。

    今日改めて間近で見て…やっぱりいい男ね!ちょっと小柄だけど。

    それで調査兵団宛に、ダメもとで手紙を出したの。

    まさか本当に来てもらえるなんて、思ってもみなかったわ。

    本当にごめんなさいね。でも、楽しかったわ。帰ったら娘たちに自慢しなくっちゃ。
  14. 19 : : 2014/03/29(土) 23:03:04
    ※ここからまた、モブリットの視点に戻ります

    一通りマリーさんの説明が終わると、リヴァイ兵士長が静かに一言。

    「俺は手を出しちゃいねぇからな。」

    「じゃなきゃ困るって!」

    「そうですよ、リヴァイ兵士長!だいたい、お2人でこんなところを出歩いてること自体、疑われるんじゃないですか?」

    「お2人じゃないわよ。」

    マリーさんが微笑みながら自分のお腹に手を当てる。

    「…ここにもう1人。」

    「…3人目、ですか…」

    正直、僕はナイル師団長とは会話すらしたことがなかった。

    唯一印象に残っていることといえば、兵法会議の際、エレンを英霊にしようとした、冷酷な一面だけだった。

    まさかこんな美人で楽しい奥さんがいて、子供もいるお父さんだなんて、想像すらしてなかったな…。

    ここでマリーさんは、ふと目を伏せた。

    「…あの…エルヴィンは…元気かしら…」

    「団長ですか?」

    「夫のナイルと、エルヴィンは同期なの。もうずいぶん昔の話だけど、私の働いていた酒場に、よく2人で来てくれていたの。」

    マリーさん、酒場で働いていたのか。

    きっと僕も通いつめただろうな…。

    「それで、私とナイルが結婚することになって、結婚式にエルヴィンも招待したんだけど、壁外調査と重なってしまって、出席出来なくて。それ以来…10年位かな。会ってないの、エルヴィンとは。」

    「エルヴィンは元気だ。…俺にお前の手紙を読め、と頼み込むくらいな。」

    リヴァイ兵士長の言葉に、マリーさんは驚き目を見開いた。

    「…エルヴィンが…じゃあまさか、あなたが今日ここに来たのは…」

    「今日、お前に会ったのは、俺の判断だ。だが、そのきっかけを作ったのはエルヴィンだ。」

    「…そう…」

    「ねぇ、今から会いに行かない?」

    ハンジさんがきりだす。…ああ、そうか。

    「そうですよ、マリーさん。今から団長に会いに行きましょう。」

    僕の言葉に、マリーさんは複雑そうな顔をして

    「そんな…いきなりじゃ悪いわ。」

    「人類最強の男をいきなりデートに誘っておいて、それはないでしょう。大丈夫です。団長もきっと喜びますよ。」

    僕が力強くうなずいてみせると、マリーさんは笑顔をみせ、

    「そう…じゃあ、お願いしようかしら。」

    「よしっ、善は急げだ!」

    ハンジさんのかけ声を合図に、僕らは調査兵団本部へと戻ることにした。
  15. 20 : : 2014/03/29(土) 23:37:44
    ※ここからはエルヴィンの視点になります

    <調査兵団本部にて>

    俺(エルヴィン)は、提出された書類に目を通し、目の前にいる兵士に告げた。

    「…セレナ、この書類は不備だらけだな。すぐに書き直せ。」

    「はい…申し訳ありません。」

    「先日新しく配属した看護兵の指導の方は、どうなっている。」

    「はい、こちらも早く壁外での実践に対応出来るよう、指導を進めています。」

    「次の壁外調査まで、もう日にちがない。分かっているな?」

    「…はい。」

    俺はなるべく淡々と話を進める。

    彼女に、感情のこもった言葉など、かけるべきではない。

    …かけては、いけない。

    ドアがノックされる。

    「…誰だ。」

    「…俺だ。」

    リヴァイの声だ。

    「…入れ。」

    扉が開くと、リヴァイが入って来て、その後ろには…

    「…久しぶりね、エルヴィン。」

    「…マリー…」

    「俺は外に出ている…おい、看護兵、お前も外に出ろ。」

    「…はい。」

    リヴァイに言われ、セレナは俺とマリーに一礼すると、リヴァイと共に外へ出ていった。

    部屋には、俺とマリーの2人だけが残った。

    マリーが歩み寄って来る。

    俺は、なぜか目をそらした。

    「…さっきの子、看護兵なの?可愛らしい子ね。あなたのお気に入り?」

    「…マリー、なぜ君がここにいる。」

    そう問い返す俺に、マリーは微笑む。

    「相変わらずね、あなたは。」

    その表情に、その声に、俺はあの頃を思い出す。

    2度と戻らない日々。

    あれから俺は団長になり、何人の兵を巨人に喰わせたのだろう。

    「元気そうで良かったわ。10年振りかしら。お互い、年をとったわね。」

    「マリー、俺の質問に答えてくれ。なぜ君がここへ来るんだ。」

    「あら、いけなかった?」

    「だめだ。一般市民が気軽に赴いて良い場所ではない。」

    「リヴァイさんに頼んだのよ。あと、モブリットさんとハンジさんにも協力してもらったのよ。あなたの顔を見に、ね。」

    そうか…そういうことか。俺は何となくだが察しがついた。

    「じゃあエルヴィン、私の質問にも答えてもらうわよ。」

    マリーがいたずらっぽく笑う。

    まったく昔と変わらんな、こいつは。

    「さっきの看護兵の子、あなたどう思ってるの?」

    「…質問の意味が分からんが。」

    俺の言葉に、マリーは目を細めて

    「私の勘をなめるんじゃないわよ。あの子に気があるんでしょ、あなた。…けっこう若くて可愛い子じゃない。でもなんか大人びてるし、あなたとは、案外お似合い…」

    ドンッ…!

    マリーの言葉は、俺が机に拳を叩きつける音で遮られた。

    だめだ…マリーに怒ってどうする…。

    「…ごめんなさい…私…」

    「…俺の方こそ…すまない。マリーの方こそ、元気で何よりだ。今度、3人目が生まれるそうだな。体を大切にな。」

    俺は、どうにかこしらえた笑顔を、マリーに向けた。

    「ええ…この子が生まれたら、また手紙を出すわね。」

    「ああ。楽しみに待っている。」

    その後、マリーは外で待機していたリヴァイに連れられ、帰っていった。

    1人になった俺は、数枚の書類が残る机の上に手をつき、うなだれた。

    俺はもう…マリーを愛していた頃の俺とは違う。

    あの時の自分にはもう戻れない。

    もう…他人を愛することなんて…。

    後で机の上の書類を見返したら、所々水で濡れていた。

    水なんか飲んでいなかったのに…どこで濡らしてしまったんだろうな…。
  16. 21 : : 2014/03/30(日) 00:26:30
    ※ここからは、ナイルの視点になります

    <その夜のナイル家>

    俺(ナイル)は、何日ぶりかの家路についていた。

    子供たちの起きている時間帯に帰宅出来るのは、何日…いや、何週間ぶりだろう。

    「ただいま。」

    玄関のドアをくぐると、さっそく子供たちが出迎えてくれる。

    「お父さん!」

    「お父さん、お帰りなさい!」

    「うむ。ただいま。」

    10歳と8歳の娘2人が、無邪気に俺にまとわりついてくる。

    仕事の疲れを忘れさせてくれる、幸せな瞬間だ。

    「お父さん、大変だよ!」

    「事件だよ、事件!」

    娘の言葉に、俺は子供の戯れ言と思い、付き合ってやる。

    「ほぅ…何が起こったんだ?父さんは師団長だからな。すぐに犯人を捕まえてやるぞ。」

    俺の言葉に、娘たちは顔を見合わせ、笑い合う。

    「お母さんがね…」

    「母さんが、どうかしたのか?」

    「デートに行って来たんだよ!」

    「あの、リヴァイ兵士長と!」

    俺は血相を変えてマリーのもとへ向かう。

    「おいっ…おい、マリー!」

    「帰って早々、何ですか騒々しい。」

    「今…聞いたぞ!お前、リヴァイと何をしたんだ!?」

    慌てる俺の背後で、娘たちが楽しそうに

    「デートだよ。」

    「デートしたんだよ。」

    「お前たちは、黙ってなさい!」

    おいおい、冗談じゃないぞ…

    「マリー、どうなんだ!?まさかお前、あいつと…」

    「だったら、どうだと言うんですか。」

    「あいつ…ぶっ殺してやる!」

    「お父さん、こわい…」

    娘が涙ぐんでいる。俺は少し声を鎮めて

    「マリー、正直に答えてくれ。子供たちの前で話せないようなことなら、場所を変えて話をしよう。」

    「別にここだって話せますよ。私はただ、少しお話をしただけです。何もやましいことはしていません。」

    「…しかし、何でリヴァイと話なんか…」

    俺の問いに答えたのは、娘たちだった。

    「作戦だよ。」

    「そう、作戦、作戦。」

    「作戦…だと?」

    長女が続けて答えた。

    「お父さん、最近全然家に居てくれないでしょ。私たち、すごく寂しいんだよ。で、私考えたんだけど、お母さんが別の男の人とデートに行っちゃえば、お父さんもお母さんを取られちゃうって思って、慌てて家に帰って来るって思ったの。」

    「作戦、作戦!」

    次女も喜んで跳び跳ねる。

    「別の男って…それがなぜリヴァイなんだ?」

    「それは…」

    娘たちは声をそろえて

    「「かっこいいから!」」

    俺はため息をついて、子供たちと視線を合わせた。

    「…いいか、お父さんはな、お前たち…ひいてはこのウォール.シーナに住む人たちのために、頑張って働いてるんだ。

    俺だってお前たちと一緒にいたい。だが、お父さんがいなければ困る人たちが、このウォール.シーナには、たくさんいるんだよ。」

    「でも…お父さん、私たちは、お父さんが私たちのお父さんだって分かるけど、今お腹にいる赤ちゃんは、きっとまだ分からないよ。

    全然お父さんの声を聞いてないんだもん。

    生まれてきてからも、お父さんはどこって、迷っちゃうかもしれないよ。」

    つたない言葉で、必死に訴える次女。

    その横で長女も、涙で潤ませた瞳で、まっすぐに俺を見ている。

    「…そうだな。すまなかった。本当に…このとおりだ。」

    俺は、娘2人に、深々と頭を下げる。

    長女が口を開く。

    「私たちはお姉さんだから、許してあげる。だけど、お腹の赤ちゃんは、まだ分からないから、ちゃんと謝ってね。」

    俺はお腹の中の子に…もとい、マリーと向き合った。

    おずおずと、マリーのお腹に向かって頭を下げる。

    「すまなかっ…」

    「待って!!」

    慌てた様子で長女が止める。

    「待って。私が台本を書いたげるから。」

    台本だと…?俺は思わずマリーの顔を見る。

    マリーが微笑みかけてくる。

    少し待つと、長女から1枚の紙を渡される。

    「はい、これを読んでね。」

    「…わたしが…あなたのお父さん…だよ…」

    「もっと心を込めて!!」

    娘2人の指導のもと、やっと台本を読み終えた俺は、夕食を済ませ、娘たちと風呂に入り、そのまま寝かしつけた後、マリーに酌をしてもらい、酒を飲んだ。

    「すまなかったな、お前たちに寂しい思いをさせて。」

    「いえ…私の方こそ、大人げないことをして…すみませんでした。」

    「いや。リヴァイとは、どんな話をしたんだ?」

    「何って…他愛のない世間話ですよ。」

    「世間話ね…」

    俺はそれ以上追及しなかった。

    マリーのことだ。きっと大丈夫だろう。

  17. 22 : : 2014/03/30(日) 00:33:01
    「そうそう。ねぇ、あなた…」

    「ん、どうした?」

    「今日、懐かしい人に会ったのよ。誰だと思う?」

    「さぁ…誰に会ったんだ?」

    俺は、マリーの口からその名を聞くと、思わず目を伏せた。

    その様子に、マリーもただ、元気そうで良かった、と言ったきり、口をつぐんだ。

    グラスの中の氷が、寂しげにカラン、と音をたてた。
  18. 23 : : 2014/03/30(日) 00:37:14
    以上で終了とさせていただきます。
    長い物語を、最後まで読んでいただき、
    本当に感謝いたします。
    リヴァイ兵士長に、かわいいファンができましたね。
    この子たちには、また別の物語でも、活躍してもらおうと考えています。
    次回の内容については、まだ未定ですが、
    きっと必ず書くに決まってます。
    楽しいですから、ね。
    では、失礼いたします。

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kaku

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