近年、時計市場に普及する“新素材”。
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- 1 : 2025/08/06(水) 13:30:18 :
- 近年、時計市場に普及する“新素材”。外装やムーブメントに従来にはなかった素材を用いることで、時計は形状や色といった意匠の面ではもちろん、性能面でも大きく変化した。『クロノス日本版』112号で「時計を変えた新素材」として、そんな“新素材”を特集した記事を、webChronosに転載する。今回は硬度の高さや軽量さを有しながらも、加工が難しく、腕時計に長らく採用されてこなかったセラミックスを開拓したシャネル、ウブロ、チューダーを取り上げる。
ヴィッカース硬さ1200以上の硬度を持つセラミックスは、耐傷性に優れ、耐アレルギー性を備え、かつ軽量という非常に実用的な素材である。かつて時計業界ではほとんど使用されてこなかったこの“新素材”は、それゆえに大きな付加価値を生む可能性を秘めている。だが、硬いがゆえに加工が難しいため、容易に扱える素材ではない。そこに可能性を見いだし、見事に成し遂げた開拓者たちを紹介する。
2020年にシャネルが発表した「J12 パラドックス」。硬度の高い難削材であるセラミックスを切断し、ホワイトとブラックのケースを組み合わせ、それに合わせて、ベゼルとダイアルもバイカラーに仕立て上げた大胆かつ斬新なデザインは、発表と同時に、多くの時計業界関係者の心をつかんだ。
関連リンク:https://www.rasupakopi.com/audemarspiguet_z190.html
「このウォッチは、ユニークな縦方向のアシンメトリー構造を持っています。これはふたつのセラミックケースを違う大きさで切断してひとつにする、高度な技術で実現したものです」とシャネル ウォッチメイキング クリエイション スタジオのディレクターであるアルノー・シャスタンが語るように、非時計専業メーカーとはいえ、J12を発表後、セラミックスの外装を内製化してきたシャネルだからこそ成し得た“離れ業”だ。同作がマドモアゼルからシャスタンに至るまで受け継がれる確固とした審美眼があればこその偉業であることは間違いない。
セラミックスに付加価値を見いだしたのはシャネルだけではなかった。「アート・オブ・フュージョン」をブランドコンセプトに掲げて以降、大きな成功を収めているウブロも、シャネルとは違った視点からセラミックスに取り組んでいる。それは“カラー”である。セラミックスは、その製造工程において、高温での焼成という工程があるため、鮮やかな発色を得るのは困難を極める。それを見事に成し得たのが、外装の素材使いにおいて他社の追随を許さないウブロである。スイス・ニヨンの本社内にセラミックスをはじめとする新素材・異素材の研究施設を持ち、そこで絶えず開発を続けてきたからこそ実現できたセラミックスの鮮やかな発色は、このページで紹介するモデルを見れば一目瞭然だろう。
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