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#6 ねがう 【セレナ続き5】

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  1. 1 : : 2014/02/16(日) 13:46:39
    #6 ねがう の執筆を始めさせていただきます。
    ここからの物語は、アニメ派の皆さんはネタバレ注意です。ご了承ください。
    合わせて、第51話の内容も含まれてきますが、オリキャラも交えているため、私自身のオリジナルの展開となっています。
    よろしくお願いいたします。
  2. 3 : : 2014/02/16(日) 13:53:01
    850年、第57回壁外遠征において、リヴァイ班は女型巨人を前に、リヴァイ1人を残し、命を落とす。
    同年、女型巨人ことアニ.レオンハートは巨人化したエレンと戦い、ウォール.シーナ ストヘス区に甚大な被害をもたらす。
    エレンの王都召還は免れたものの、調査兵団は大きな課題をのこす結果となった…。
  3. 4 : : 2014/02/16(日) 14:15:06
    「…エレン…」

    ミカサは、眠りについたままのエレンに、呼びかけてみた。
    額にそっと手をやる…ぬくもりが伝わってくる。今回の作戦も、エレンの巨人化無くしては、被害はもっと拡大していただろう。

    (エレン…私はあなたのそばにいる…それだけでいい…。そのために私は

    、何ができるのだろう…家族であるあなたに、何が…)

    「ん…」

    エレンが声を発した。ミカサは、弾かれたように身を乗り出す。
    エレンが、ゆっくりと目を開く…。

    「ミ…カサ…」

    「エレン!!体はどう、何ともない?」

    ミカサの問いに、エレンは辛そうに顔を歪め、

    「まだ…思うように体が動かねぇ…クソ…」

    エレンは、なんとか体を起こそうと、もがく。

    「無理をしてはだめ…」

    ミカサの言葉に、仕方なくエレンは力を抜いた。
    ドアをノックする音がする。

    「…どうぞ。」 ミカサが応じる。入ってきたのは、セレナだった。

    「…全て、報告は聞いたわ。お陰さまで体調が戻った。」

    淡々とエレンの脈拍、血圧を測る。

    「…血圧がかなり低下してるわね。何か、食べれそう?」

    「あ…のどが少し…渇いて…」

    エレンの言葉に、セレナはそばにあった水差しのコップに水を汲み、エレンに渡す。

    「ありがとうございます…」

    エレンは水を一気に飲み干すと、目を閉じ…驚いた様子で目を開いた。

    「なんか…さっきよりだいぶ調子が良くなったような…」

    セレナは微笑し

    「よかった。お水一杯でも飲んでみるものね。」

    エレンは、笑顔になって

    「なんか、体が動くようになった…」

    と、手足を動かし始める。

    「エレン、良いことだけど、まだ、本調子じゃないから…」

    ミカサはエレンをなだめる。セレナはそんなミカサの表情を見、次にエレンを見てから、

    「…それじゃ、私はこれで…あとはお2人でどうぞ。」

    「…は?」

    エレンはキョトンとし、ミカサは赤面した…。
    その後、ウォール.ローゼ内地に巨人が出現したとの一報がエルヴィンらに届く。


  4. 5 : : 2014/02/16(日) 14:19:55
    応援ありがとうございます。続けますね。
  5. 6 : : 2014/02/16(日) 14:29:52
    部屋を出ると、セレナはハンジと鉢合わせた。隣に背の高い男が立っている。

    「あ、セレナ。エレンの調子はどう?」

    ハンジが尋ねる。

    「だいぶ良くなったようですが、まだ本調子ではありません。」

    「そっか…あ、この人はウォール教のニック司祭。」

    ハンジに紹介され、ニックは戸惑った表情をみせる。セレナはニックに軽く頭を下げた。

    「…っとそんなことより…セレナ、落ち着いて聞いてくれ。ウォール.ロー

    ゼ内に巨人が出現した。私たちはこれからウォール.シーナ エルミハ区へ

    向かう。…一緒に来てくれるね?」

    セレナは、堅い表情のまま、

    「はい…もちろんです。」

    と、答えた。



  6. 7 : : 2014/02/16(日) 14:42:22
    セレナはエレンらを乗せた荷馬車の護衛班として、馬を走らせていた。

    「…エレン、もう体の調子はいいの?」

    荷馬車に揺られながら、ハンジが尋ねる。

    「はい。だいぶ良くなりました。」

    殊勝に答えるエレンだが、ミカサがすかさず、

    「…でも、目が覚めた時は、体を起こすこともできませんでした…けど…

    」 ミカサは言葉を切った。

    「…けど?」

    ハンジが促す。

    「…セレナさんが来て…エレンに水を飲ませたら…急に元気になって…」

    「水を?…何か薬と一緒に飲んだんじゃなくて、水だけを、かい?」

    ハンジの問いに、エレンが答える。

    「はい。部屋にあった水差しの水です。オレがのどが渇いたって言ったら

    、セレナさんが注いで、手渡してくれたんです。」

    「水…か…」

    ハンジは目を伏せ、

    「調べてみる価値は、ありそうだね…」

    そうつぶやき、手中にある石の破片を握りしめる。
    アルミンが口を開く。

    「…一体…どうすれば…いきなりローゼが突破されるなんて…」











  7. 8 : : 2014/02/16(日) 15:00:23
    その後、エルミハ区に到着したものの、ニック司祭の口からクリスタ.レンズの存在を知ったエレンらは、ウトガルド城を目指した…。
    一方、ウトガルド城では、無数の巨人たちに占拠されるなか、ユミルが巨人化し、クリスタたちを守るため、果敢に戦いを挑むが、苦戦してしまう。
    クリスタに、巨人の手が忍び寄る…

    「ミカサ!?」

    「クリスタ…皆も下がって…後は私達に任せて」

    エレンら調査兵団中核部隊の活躍により、難を逃れたが、巨人化を解いた後のユミルの状態は芳しくなく、ハンジは焦る。

    「セレナ!」

    すぐさま、セレナはユミルへ駆け寄る。

    「…ひどいわね…」

    セレナも顔をしかめる。

    「ユミル…お願い…死なないで…」

    ユミルの体にすがり、クリスタは涙を浮かべる。セレナはその肩にそっと手をやり、

    「…心配しないで。きっと助ける…あなたは?」

    クリスタは、セレナの目を見、

    「私は…ヒストリア.レイスといいます。」

    「そう。私はセレナ.ラングレー。さ、ヒストリア、ユミルを壁まで運ぶわ

    よ。担架を持ってきて。」

    「はい!」

    ヒストリアはその場を離れる。セレナは再びユミルを見ると、ユミルの心臓にそっと手をやり、

    「正直今は…何もできないけど…生きてね。…生きるんだよ…」

    願わくば、もう誰も傷ついてほしくはない。しかし、これは到底叶えられる願いではなかった。





  8. 9 : : 2014/02/16(日) 15:03:57
    その後、壁に到着したものの、ライナー、ベルトルトが巨人化し、エレンを奪い、逃走。その際、ハンジを含む多数の兵士が負傷し、セレナは負傷者をトロスト区まで運び、懸命に看護にあたることになる…。
  9. 10 : : 2014/02/16(日) 15:13:20
    ーウォール.ローゼ トロスト区
    多数並ぶベットの1つに、ハンジ.ゾエ分隊長は横たわっている。相当な重傷を負っているにも係わらず、鎧の巨人の進路を団員たちに伝え、力尽きた。意識はまだ戻らない…。
    セレナは、そっと息をついた。自分自身、負傷はしていた。前回での壁外調査のケガを引きずっての今回の負傷はさすがに厳しい。
    …でも…

    「…セレナ!」

    エレンが連れ去られてから5時間後、憲兵団を率いて、エルヴィン団長が到着した。

    「はい。」

    エルヴィンに呼ばれ、セレナは素早く返答する。

    「我々はエレン奪還に向かう。負傷兵は任せた。」

    「はい…必ず助けます。」

    たとえ…自分の命に代えたとしても。



  10. 11 : : 2014/02/16(日) 15:32:11
    「は…はは…は…」

    声がする…ハンジだ。笑っている…。

    「ハンジ分隊長!」

    セレナは呼び掛けるが、ハンジは目は開いているものの、焦点は合っておらず、意識が戻ったとは言いきれない。

    「…つ…ついに…わたし…は…」

    ハンジが話始める。

    「え…何ですか?」

    セレナはハンジに顔を近づける。ハンジはセレナの方に顔を向け、

    「わたしは…ついに…巨人…と…チカチローニとも…アルベルトとも…

    ソニーやビーンともなし得なかったことが…」

    「ぶ…ん…隊長…?」

    ハンジの声を聞き、隣で寝ていたモブリットも目覚める。

    「やっと…できた…私の呼び掛けに…エレン…巨人が…うなずいた…うう

    う…」

    ハンジの顔が、みるみる紅潮してくる。

    「あははっ…あはははっ…ははは…」

    笑い続けるハンジ。彼女のあまりの巨人への執着に、セレナは恐怖すら覚えた…。
  11. 12 : : 2014/02/16(日) 15:47:39
    壁外では、エレン奪還のため、凄まじい進撃が繰り広げられる。
    その際、エルヴィンは右腕を巨人に喰われてしまう。

    「エレンはすぐそこだ!!進め!!」

    多くの犠牲者を出しながらも、エレン奪還に成功する。
    その後、壁の中に戻ったものの、エルヴィンは意識を失い、昏睡状態が続いた…。

    エルヴィンは、目を覚ました…。

    「おお、気がついたか…」

    ピクシス司令だった。

    「戻って…きたのか…」

    「ああ。ここはトロスト区だ。」

    エルヴィンは布団の中で体を動かそうとし…いつもと違う感覚に気づく。右の袖口を、左手でつまみ上げる。

    「ああ…やっぱり…ないか…」

    「まぁ、生きて帰れただけでもよかったと思わないとな、エルヴィン。お

    主を失って悲しむ者もいるだろうに。」

    ピクシスの言葉に、エルヴィンは目を伏せた。
    その後、リヴァイ、ハンジ、さらにはコニーも訪問し、巨人の正体が人間である、と推論づけた。



  12. 13 : : 2014/02/16(日) 16:09:48
    ドアがノックされる。入ってきたのは、セレナだった。手には盆を持ち、カミソリと、髭剃り用のクリームがのっている。

    「…失礼いたします…」

    セレナはピクシス司令の姿を見るなり、棚の上に盆を置き、敬礼した。

    「ピクシス司令、お初にお目にかかります。第100期生、セレナ.ラングレ

    ーです。」

    「ふむ…確か、看護兵じゃったのぅ…」

    「はい。」

    ピクシスは、エルヴィンの方を向き、

    「エルヴィン…主もいい身分よのう…こんな美女に世話してもらえるなん

    て。わしも、あやかりたいもんじゃの…」

    と言って笑う。他に笑う者はいない。場の空気を変えようと、ハンジが声を上げる。

    「さ、さあ…これからのことを、もっと掘り下げて話し合いましょうよ。

    ねっ、ね…」

    さりげなく、皆に退室を促す。
    病室には、セレナとエルヴィンの2人きりになった。




  13. 14 : : 2014/02/16(日) 16:16:43
    …病室を出たハンジは、ため息をついた。

    「…お前なりに気を利かせたつもりか。」

    リヴァイがハンジに言う。

    「まぁね。本当に大変だったよ。エルヴィンが担ぎ込まれたとき、セレナ

    すごく取り乱して…初めて見たなぁ、あんなセレナは。」

    リヴァイはため息をつき、

    「まったく…あんな薄気味悪い野郎のどこがいいんだか…」

    ハンジは笑って

    「さぁね…」

    と、答えた。



  14. 15 : : 2014/02/16(日) 16:24:27
    「…お髭をきれいにしますね。」

    セレナは準備を始める。

    「ああ…頼む。」

    セレナは、エルヴィンの顔にクリームを塗り、カミソリをあてる。
    当然、危ないので、エルヴィンは口を開かない。しばらく無言の状態が続く。
    セレナは、思い出していた。遠い日のことである…。
  15. 16 : : 2014/02/16(日) 16:50:22
    『セレナってさ…』

    唐突に、ペトラがきりだす。休みの日、久しぶりに2人で街に出た時のことだった。

    『ん?何、ペトラ…』

    ペトラは、セレナの顔をのぞきこみ、

    『エルヴィン団長のこと…好きなの?』

    動揺するセレナ。

    『なっ…何よ、いきなり!?』

    ペトラは思案顔のまま、

    『ずっと気になっててさ…。はっきり言って、セレナのファンの人って多

    いけど、セレナは誰にも目もくれない。いつもいつも、エルヴィン団長の

    ためって言って必死になってる…』

    ペトラはそこで立ち止まり、セレナの顔を見て、

    『それって…恋してるってことじゃないの…かな。』

    『団長のために必死になるのは…みんな同じなんじゃないの?』

    『う…ん…。みんながどうかわかんないけど、団長のためじゃなくて、全

    人類のために、心臓を捧げてるんだから…私もそうだけど。』

    『私が…間違ってるってこと?』

    ペトラは慌てて、

    『そんなことないよ。セレナはがんばってるもの…私なんかより、ずっ

    と。』

    『そんなこと…』

    セレナは下を向いた。2人は再び歩き始める。

    『…で、どうなの?』

    セレナは考え込んだ。あの日、名前をもらった日から、約束を果たすために必死に生き延びてきた。
    調査兵団に入ったばかりのころは、エルヴィン団長の顔を見るたび、心が安らいだ。正直、顔も知らない父の姿と重ねたこともあった。
    団長のために尽くしたい。だからこそ、安楽死とはいえ、殺人にまで手を染めた。
    団長に名前を呼ばれ、認められることが、最大の喜びだった…。

    『ごめんね、変なこと聞いて…。気にしないでね。』

    ペトラが笑う。

    『あ、うん…ペトラこそ、リヴァ…』『あっこの店だ!行こ、セレナ!』

    ペトラがセレナの手を引き、セレナは引きずられるようにして走りだした。
    自分が言い出せなかった問いに、もう答えが返ってくることはない。
















  16. 17 : : 2014/02/16(日) 17:19:07
    「…セレナ。」

    突然エルヴィンの口が動き、セレナはビクリとカミソリを持つ手を止めた。

    「…はい…」

    「いい機会だから、話しておきたいことがある。」

    エルヴィンの言葉に、セレナは息をついて

    「まず、お髭を剃ってしまいましょう。もう少しですから。」

    髭剃りが終わり、おしぼりで顔をふくと、セレナは備え付けのイスに座り、2人は向き合った。

    「それで、お話とは…」

    エルヴィンは、静かに話始める。

    「セレナ…君は、あの日の約束を、忠実に守ってくれた。まずは、そのこ

    とに対して、感謝する。ありがとう。」

    セレナは、胸がいっぱいになり、思わず涙ぐんでしまうところを、なんとかこらえる。エルヴィンは続ける。

    「私は…見ての通り右腕を失った。この状態で壁外に出ることは、即ち死

    を意味するだろう。私はもう、壁から出ることはできない…」

    セレナは、辛そうに顔を歪め、うつむいた。

    「しかし、調査兵団が壁外に出ないのでは話にならない。おそらく私は

    近い内に、調査兵団団長を退くことになるだろう…」

    「…そんな…」

    セレナはエルヴィンを見た…まっすぐに自分を見ている。エルヴィンの言う推論に、セレナも納得せざるを得ない。
    片腕で巨人と戦うなど、自分が死ぬか、無駄に兵を死なせるだけだ…。

    「セレナ…」

    「…はい。」

    「君は、このまま調査兵団の兵士として、自由に向かって進み続けるんだ

    。新しい団長が誰になるかは分からないが…自由を勝ち取るんだ…いいね

    ?」

    セレナはうつむいた。エルヴィンは黙ったままセレナの返事を待っている。しばらくの間、沈黙が続いた。
















  17. 18 : : 2014/02/16(日) 17:34:22
    「…す…」

    セレナが口を開く。

    「いやです!」

    セレナは夢中でエルヴィンにすがりつく。

    「自由が…何だっていうんですか…私は…たとえ人類が勝利したとしても

    …あなたのそばにいなければ…意味がないのです…そばに…いたい…です

    …そばに…」

    セレナは涙し、訴え願った。
    目の前で死んでゆく者たちを見ても、人殺しに手を染めてしまっても、かけがえのない友達を失っても、耐えてこられたのは…あなたが…いてくれたから…。
    セレナはエルヴィンの胸でしばらく泣いた。エルヴィンは静かに前を向いたままだ。
    そして左手でセレナの肩を押し戻す。

    「…君は…理解していると思ったが…」

    エルヴィンは続ける。

    「新兵勧誘式の日、私は君を含む第100期生にも訴えたはずだ。…人類の

    ために心臓を捧げることができるのか、自分に聞いてみてくれ、と。君が

    心臓を捧げたのは他のためだというのなら、今すぐに出ていってくれ。そ

    んな人間は兵団に必要ない。」










  18. 20 : : 2014/02/16(日) 17:47:39
    セレナは涙を浮かべたまま、顔を上げることができなかった。
    セレナの中で、何かが音を立てて砕け散っていった…。
    セレナは袖で涙をぬぐい、立ち上がった。

    「…失礼します…」

    やっとの思いで部屋を出ると、別室に入り、泣いた…。ようやく思い切り泣くことができたのに、セレナは辛くて辛くて…初めてエルヴィンと出会ったあの日に戻ってほしいとさえ、願ってしまうのだった。
  19. 21 : : 2014/02/16(日) 17:52:41
    以上で#6 ねがう を終了させていただきます。
    ここから先の展開については、まだ未定です。ただ、キャラクター1人1人の思いを大切に引き継いで物語を進めます。
    読んでいただき、ありがとうございました。

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kaku

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