ssnote

x

新規登録する

作品にスターを付けるにはユーザー登録が必要です! 今ならすぐに登録可能!

この作品は執筆を終了しています。

苗木「九尾蔓村?」

    • Good
    • 9

loupe をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。

▼一番下へ

表示を元に戻す

  1. 1 : : 2015/08/10(月) 00:00:11
    夏のコトダ祭りです。目標は完結です

    詳しくはDeさんのスレで!

    テーマ『家族』

    ジャンル『ホラー』

    主要キャラ『苗木誠、霧切響子、江ノ島盾子』


    生温かい目で見守ってください
  2. 2 : : 2015/08/10(月) 00:09:16










    「嗚呼、何故彼は居なくなってしまったのだろう…」

















    ーーーーーーーーーー



    【校長室】
    8月9日AM10:06:49‥


    霧切「神隠し?」

    学園長「そうだ。最近うちの生徒数人が謎の失踪を繰り返してるのは知っているか?」スッ

    霧切「クラスメイトが行方不明だもの‥で、これは?」

    差し出された資料を一瞥しながら霧切は問う

    学園長「行方不明者のリストと各自の調査書だよ。後で目を通しなさい」

    霧切「これが行方不明になった人達なのね。それで、具体的に何をすれば良いのかしら」

    学園長「これ以上生徒が行方不明になることの阻止。そして出来ることなら行方不明者の発見と原因解明だ」

    霧切「分かったわ」

    学園長「こちらも見廻りや警備員の数を増やし助力する」

    霧切「そう。じゃあ学園長、私は行くわね」

    学園長「ああ。くれぐれも気を付けてくれよ‥‥‥響子」

    霧切「名前で呼ばないで。不快よ」

    冷ややかな視線を一瞬だけ向け、霧切は部屋を去る

    学園長「‥‥すまない。霧切さん」


    扉<バタンっ


    返事は返ってこず。ただ無機質な音だけが部屋に響いた



    学園長「…はぁ。我ながら、全く駄目な父親だな‥」
  3. 3 : : 2015/08/10(月) 14:26:19

    ーーーーーーーーーー


    【苗木家】

    8月10日 PM02:05:44




    こまる「お兄ちゃん。元気出して!」

    苗木「‥‥‥‥」

    こまる「きっと、クラスの友達だって直ぐ見つかるよ!」

    苗木「‥‥‥‥」

    こまる「家が静かだから気分が暗くなるだよ!ほらテレビでも見よ」ピッ

    CM『「私様が表紙の8月号、絶賛販売中♡」』

    こまる「あっ‥」ピッ

    苗木「‥‥‥‥‥」

    こまる「そうだ!今日のオヤツはお兄ちゃんの大好きなシュークリームだよ」

    苗木「‥食べる気になれないから食べて良いよ」

    こまる「えっ!?良いの?」もぐもぐ

    苗木「咀嚼しながら確認するなよ‥」

  4. 4 : : 2015/08/10(月) 15:18:11




    こまる「‥それにしても何でこんな非常時に普段通りにCMがあってるんだろう‥」

    既に(ボクの)シュークリームを食べ終えたこまるが

    首を傾げながらそう呟いた

    苗木「メディア規制ってやつなのかな?行方不明者の件が放送されずにCMだけ放映されるって何だか不思議だよね」

    苗木「希望ヶ峰学園っていうブランドに傷が入るのを防ぐ為らしいけど」

    苗木「放送すれば目撃情報が増えるかもしれないのに‥」


    これらのことは舞園さんに教えてもらった。

    彼女らみたいに社会に影響力のある生徒には一定の規約があるらしい


    こまる「大丈夫だよ!江ノ島さんきっと見つかるって!」

    ボクを鼓舞するように力強い口調でこまるは言う

    こまる「それに、そんな風にウジウジしてるのはお兄ちゃんらしくないよ!」

    苗木「‥‥‥‥‥‥」

    こまる「‥‥‥むぅっ‥」


    黙り込むボクに痺れを切らしたのかこまるは唸るような声を漏らす


    苗木「‥ごめん、そうだな。何だかボクらしくないや」

    前向きである事がボクの唯一の取り柄なのに

    こまる「そうだよ!普段なお兄ちゃんなら『江ノ島さんを見つける!』とか言ってバイクで街中を往来する勢いだよ!」

    苗木「いや、ボク免許持ってないし。それと言葉は意味を調べてから使おうな」

    往来に徘徊するという意味は無い(石丸君談)

    こまる「ぶー、っだ」プクゥ

    苗木「古典的な拗ねかただな‥」



    苗木「っと、そう言えば父さんと母さんは?」

    頬を膨らましたままのこまるを上手くなだめる手段が思い付かず

    ただ、ただ在り来たりな日常会話を口に出す

    こまる「ん、さっき商店街に買い物しに行ったよ。お父さんいるから車出して貰って」

    昔のように拗ねて会話を無視する様な事はなく、こまるは素直にそう返してくれた

    もう、子供じゃないんだな‥

    嬉しいような寂しいような

    苗木「近くのスーパーじゃないのか、道理で帰りが遅い筈だよ」

    こまる「うん!お土産に期待だよね」

    苗木「何だその脈絡のない会話は」

    訂正。子供だった






    カチャリ‥



    そんなことを話していると
    まるでタイミングを見計らったかのように玄関の鍵が開いた‥



    ガチャっ
  5. 5 : : 2015/08/13(木) 07:24:31


    こまる「ほら、噂をすれば何とやら!お帰りーっ」タタッ

    苗木「おい、廊下を走るなよ!‥全く」

    苗木(何か、今日のボク石丸君っぽいな)


    自分で思い浮かべた事にクスリと笑いながら、ボクはこまるの後を追った




    こまる「おっかえりーっ!」

    母「こまるちゃん。ただいま」


    玄関に居たのは普段通りの両親だった

    勿論ゾンビになったり、寄生生物に身体を乗っ取られてなどいない


    父「誠。悪いが荷物をいれるのを手伝ってくれないか?」

    苗木「うん!」

    父「ああ…それと、こまる。誠‥後から大切な話がある」

    こまる「ん?分かった」

    誠(大切な話?)


    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


    正座。何故か家族四人が正座

    異様な雰囲気

    異質な空気

    何か悪いことしたか?と脳内で検索を掛けるが何も思い付かない


    そんな熟考するボクを知ってか知らずか、軽い口調で父さんは言った


    父「何と、母さんが旅行のチケットを当てたんだ!!」

    苗木「ええっ!!」


    唐突である


    母「ふふっ、これが超高校級の幸運の母の力よ!」

    こまる「凄いよ!お母さん!お兄ちゃんより!」

    苗木(最後の言葉は要らないだろ!)

    こまる「それで?どこのなの?海外?パリ!?」

    苗木「おいおい、落ち着けよ」

    父「九尾蔓(くびつる)村って言ってな。天然の温泉や美味い料理があるらしい」

    苗木「九尾蔓‥村?」

    こまる「なんだか物騒な名前だね‥」

    母「ふふっ、それにしても家族四人で旅行に行くなんていつ振りかしら」

    怖がるこまるを他所に、母さんは嬉しそうに身体を揺らしている


    苗木「それで、いつ行くの?」

    ボクの口から自然に出た言葉に対し、母さんはこう答えた


    母「明日よ」


    マコまる「「明日!?!?」」




    やはり唐突である

  6. 6 : : 2015/10/19(月) 01:30:49


    ーーーーーーーーーー

    【九尾蔓村】
    8月11日 AM09:07:04

    霧切「ここが、江ノ島さんが姿を消した場所‥」



    九尾蔓村


    霧切がここを訪れたのは一つの疑念があったからだ


    資料によれば他の行方不明者は前後の動きが不明の状態で。つまり一人の状態で消えた


    だが、江ノ島盾子だけがその規則から外れ


    ロケでこの『九尾蔓村』に訪れた時に忽然と姿を消したのだ



    霧切(資料によればこの村では一昨年以降土砂崩れが起きたことは1度も無く、急な崖なども無いので転落した可能性も無い‥)

    霧切(つまり彼女自身の意思で行方をくらましているのか‥攫われたのか)

    霧切(まあ、どちらにしろ神隠しなんてあり得ない)



    霧切はオカルトを信じない

    故に神隠しなど信じていない

    だからこの村に脚を運んだ

    人為的なものなら何か証拠が残っている筈だから






    無料配布されている真新しいパンフレットを見ると、この村の名所らしき場所が地図に載せられていた

    天然の温泉が湧いており山の上流から川も流れているようだ。
    他にも宿のこと、妙に若い村長の写真に加えコンビニまでも載っていた

    霧切「‥‥‥‥」

    辺りを見渡すと家は昔ながらの木造建築なものが目立ち
    道を挟むように田んぼや畑がズラリと並んでいた


    霧切「昔ながらの良さがあって良い所ね‥」


    霧切(ただ、名所にコンビニが描いてあるのはどうかと思うけれど)

    風情に浸ることなく。
    寧ろ若干呆れながら霧切は宿へと歩を進めた

  7. 7 : : 2015/10/19(月) 01:32:38


    ーーーーーーーーーー

    【九尾蔓村】

    8月11日 AM11:27:26


    こまる「夏だ!山だ!村だぁ!!」

    苗木「うん。海はないもんな」

    結果を簡潔に。無事到着

    母「あらあら二人とも楽しそう」

    父「ふう‥、やっと着いた」

    山の(ふもと)にある駐車場に車を停めたボクたちは、荷物を入れた鞄を背負い、数分の石階段を経て村へ辿り着いた

    母さんの分まで荷物を持っていた父さんはクタクタのようだ


    こまる「お兄ちゃん!探検に行こうよ!」

    年甲斐もなくはしゃぐ妹だ

    苗木「ちょっと待てよ、今、Twitterで呟く所なんだから‥あれ?」

    こまる「どうしたの?お兄ちゃん」

    苗木「電波が悪いのか、ツイート出来ないや」

    こまる「またそんなのしてるの?2チャンネルってやつも好きだし、お兄ちゃんってオタクだよね‥」

    苗木「別にオタクじゃないよ!普通だよ普通!」


    これが年甲斐ってやつだよ。




    こまる「お父さんに荷物預けてきたし探検しよう!」ギュッ

    アンテナを求めグルグル回りながら腕を動かすボクを制止するように

    こまるはボクの背中に手を当てた

    苗木「はいはい、分かったから押すなよ」


    こまる「つまり押せと?」グイッ







    苗木「押すなだよ!!って、っおワァ!?」ドタバタ


    踏ん張りが利かず。

    重力に逆らえず。

    ボクは道なき道を転がった


  8. 8 : : 2015/10/19(月) 01:34:17


    ガシャーンッ!!!


    こまる「お兄ちゃん大丈夫!?」

    苗木「いてて‥、大丈夫なわけないだろ」



    こまる「ごめん‥‥っ!‥きゃぁぁあ!!!」

    心配そうに此方を見据えるこまるの顔色が悲鳴とともに青くなる

    苗木「どうしたんだ?」

    こまる「お兄ちゃん‥後ろ‥」

    震える手でボクの背後を指し示す指、その先を目で追いそこにあったのは‥

    苗木「地蔵の首‥っうわぁッ!」

    祠に奉られた石の地蔵

    その地蔵は首から上が()
    胴体だけが虚しくその場に佇んでいた。

    言い訳をするようだけど、ボクはこれを見て情けない声を出したわけじゃない

    ボクが恐怖を示した対象は

    ドロリ‥っと

    石の胴から滴り落ちる赤黒い液体に対してだ

    こまる「お兄ちゃん?どうしよう!!」

    苗木「どうしようったって‥」

    こまる「取り敢えず首戻そう!!取り敢えずッ!!!」

    苗木「う、うん。そうする」



    テキパキ、とまではいかないが元の通りに地蔵を頭に戻す

    そして

    苗木「ごめんなさい!」

    手を合わせ、深々と一礼


    こまる「ねえお兄ちゃん。もう‥行こ?」

    苗木「‥そうだね」

    その後僕たちは逃げるようにしてその場を後にした




















    立札『クビツリ様』


  9. 9 : : 2015/10/25(日) 01:19:53
    ーーーーーーーーーー



    【旅館】

    P.M 00:12:25

    女将「お食事をお持ちしました」

    20代で在ろう現女将が襖を開け丁寧にお辞儀した後、そう告げた

    霧切「ええ。ありがとう」

    女将「夕食の方はどうなさいますか?団体様が居ないので宴会場も使えますが?」

    霧切「いえ、結構よ。8時に個室で」

    女将「かしこまりました。どうぞごゆっくり」

    スーッ

    襖が閉まり

    部屋は静寂に包まれる





    霧切(おちつかないわね‥)

    その出処は一人で居るには不釣り合いなほど広い部屋

    では無く

    霧切(まるで、誰かに見られているような)


    確かに培っていた探偵としての勘




    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




    【九尾蔓村】

    P.M 05:45:02



    霧切「収穫が無さ過ぎるわ」


    食事を終えた霧切は4つの事を調べた


    ・江ノ島盾子を最後に見た時間帯の聞き込み

    ・ロケ現場の調査

    ・最近村で数日顔を出してない人物

    ・神隠しの前例の有無


    最後の神隠しは遠回しに過去に誘拐犯が現れていないかの聞き込みだったが、努力も虚しく全て空振りだった

    霧切「警察も介入してるし、少し安直な行動をし過ぎたかしら?」

    誘拐犯の場合まず考える事は調べられる可能性のある村から、誰にも見つからず江ノ島を連れて出る事。

    だが、偶然立ち寄った観光客ではそんな大それた事は出来ない。

    事前にロケを知らされていた村の者にしか…


    霧切「今の所さっぱりね…」


    木陰に入っても未だ滴り落ちる汗

    ワイシャツが体に吸い付く


    霧切「‥‥‥‥少し暑かったものね」


    湿って重たくなった襟。それを扇ぐようにしながら、思考のリセットとベタつく汗を流す為霧切は再び宿へ向かう





  10. 10 : : 2015/10/25(日) 01:21:56

    ーーーーーーーーー


    【旅館】


    P.M 06:21:29


    こまる『私お兄ちゃんと一緒の部屋になるよ!だからお父さんとお母さんは一緒の部屋になりなよ』

    ただの福引なのに2つ部屋が用意されてるなんて何と贅沢な。

    案内された部屋を見てそう思っていた矢先こまるがそう提案した。

    珍しく空気を読んだ。



    そして今に至る



    こまる「おっふろ、おっふろ、おっふっろー♬」

    苗木「お前はなにデックスを目指してるんだよ‥」

    こまる「だって、温泉なんだよ!」

    こまる「効能はなんと美肌効果!!!」

    苗木「僕は肌より背の方が気になるんでけどね」

    恨めしそうにこまるの頭頂部を見つめる。

    悲しい事に越されているのだ。

    まあ背の伸びる温泉なんてそもそも無いし、有った所で結局こまるが伸びるなら平行線なのだけれど




    こまる「貴方はぅもぅぉう忘れたかしらんっ♫」スキップ♬


    苗木(歌詞がゲシュタルト崩壊してる!)

    ちなみに赤い手拭いは持っていない


    苗木「湯船で泳いだりするなよ」

    こまる「はいはい、分かってるよ」

    苗木(女風呂、中に誰も居ないと良いな…)

    着替えを持ち、軋む廊下を弾むように歩くこまるに呆れながら

    僕は『男』と書かれた暖簾をくぐった





  11. 11 : : 2015/11/01(日) 11:58:56



    ーーーーーーーーーー



    【旅館】

    P.M 07:32:01



    こまる「ふぅ…のぼせて来ちゃったし、そろそろ上がろうかな。霧切さんはどうするの?」

    霧切「…ええ、私もそろそろ出ようかしら」

    霧切(どうしてこうなったのかしら?)


    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


    霧切「たまには、広い温泉も悪くないわね」

    手袋を付けて湯船に浸かる霧切

    人がいない事を確認して入ったのだが


    こまる「一番風呂だっ!」(?)


    その数分後に少女が現れた



    その少女は身体を洗ったのち湯船に飛び込んでバタフライを始めた

    こまる「これが温泉一番風呂(?)の特権だよね!…あっ」

    霧切「……」

    2人の目が合った

    こまる「あっ…あっ…」

    少女の顔が真っ赤になる

    霧切「あら、もうのぼせたのかしら?」

    と、霧切がジョークを放つも

    こまる「ご、ごめんなさい!私1人だけだと思って!」

    今度は逆に青ざめた少女が何度も頭を下げる

    霧切「…別に謝らなくて良いわ。だって私も手袋(水中用)を付けて入ってるもの」

    見せ付けるように湯船から手を出す

    こまる「これが、演奏者(ピアニスト)…!」

    霧切「それは違うわ」


    なし崩し的にその後の会話は続いた
  12. 12 : : 2015/11/01(日) 12:06:35


    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




    こまる「おにいちゃーん?」

    『男』と書かれた暖簾の前で両手で筒を作るようにして、浴衣を着た少女はそう呼び掛けた

    返事は返ってこない

    霧切「…」

    こまる「部屋に帰っちゃったのかな?」

    嫌な予感がした

    霧切「部屋の前まで付いて行くわ」

    こまる「え?本当?」

    霧切「ええ」




    二階の205号室。ドアノブを回すこまる

    鍵は開いていた


    キィ……


    軋む音を立てながら開く扉

    二人の少女が見たものは


    こまる「うそ…」



    閉められていない鍵

    床にぶち撒けられるように置かれた衣服

    少し年季の入った備え付けの家具




    それ以外何もなかった









    彼女の兄の姿は何処にも無かった



  13. 13 : : 2015/11/01(日) 12:08:04


    こまる「どういう…」

    霧切「落ち着きなさい」

    こまる「だって、お兄ちゃんが…!それにこれっ!」

    散らばった衣服。開かれた鍵

    それを指差しながらこまるは口を開くが上手い言葉が思い付かないのか何も声は出ない

    霧切「おそらく大丈夫よ」


    こまる「…これのどこが───」


    霧切「──まず最初に!」


    錯乱するこまるの言葉を堰き止めるように
    霧切は力強い口調で話を遮る


    霧切「この旅館には貴女達兄妹の二人だけで来てるのかしら?」

    こまる「いいや…違うよ。もう一つの部屋にお母さんとお父さんが居るんだけど…。そうだ!2人の部屋に行ったんだね!」

    こまるは分かり易いほど顔を明るくするも

    霧切「いいえ。おそらく二人も居ないわよ」

    その一言ともにまた不安な表情に戻る

    こまる「どういう…?」

    霧切「単純な推理…というより連想ゲームのようなものね」

    こまる「?」

    霧切「貴女は随分と長くお風呂に入っていた様だけれど、貴女のお兄さんも長風呂が好きなのかしら?」

    こまる「ううん。平均くらいだと思うよ」

    霧切「そう。じゃあ、貴女のお兄さんは先にこの部屋に戻ってきたと考えられない?」

    こまる「うん。鍵が空いてるからそういう事だと思う」







    霧切「部屋には畳まれていない洗濯物が1セットだけ…ここまで言えば分かるわね?」

    こまる「えっと、さっぱり分からないよ」

    霧切「…ねえ、貴女の部屋から無くなってるものは無い?」


    その言葉を聞いてこまるは改めて部屋を見渡した


    こまる「えっ?…あ、鞄が無い!」

    霧切「そう。‘‘着替えしか無い”のだから当然ね」

    こまる「お兄ちゃんだけじゃなくて鞄まで盗まれちゃったの?図書室で借りた本入ってるのに…」

    霧切「違うわ。…いや、一概にもそうとは言えないわね」

    こまる「でも現に鞄は…」

    霧切「貴女達の鞄は確かに盗まれた。そう、貴女の兄の手によってね」

    こまる「!?!?」

    霧切「正確には移動させられた…なのだけれど」

    こまる「なんの為に?」

    霧切「当然窃盗防止よ。部屋を開けっぱなしにしても荷物を取られないように」

    こまる「まず開けっぱなしにするのは何で?!」

    霧切「おそらく貴女が部屋に入れるようにする為ね。中からは当然鍵が掛けられるわけだし入れば安全面では問題ないわ」

    こまる「…じゃあ、なんでこの服だけ残されてるの?」

    霧切「ここから見ても砂で汚れているように見えるのだけれど、貴女のお兄さん。今日派手に転んだりした?」

    こまる「…!したよ!私が押しちゃって!!」

    霧切「そんな泥で汚れてた洋服をわざわざ親の部屋に持っていくかしら?」



    霧切「きっと最後まで迷っていたんでしょうね。持っていくか持っていかないか、手に持って悩んでいた筈よ」

    霧切「だけど、結局持っていく事を躊躇った。時間が無くて畳む暇もなかった。これが私の答えよ」

    こまる「でもでも!誘拐された可能性だって!」

    霧切「誘拐なら普通鍵は閉めるわ。だってこんな状況、ここで誘拐が起こってますよって言ってるようなものじゃない」

    こまる「あっ…」

    霧切「それにリスクが高すぎる」



    霧切「きっと貴女のお兄さんは、部屋の荷物を親に預けた後その親と共に何処かへ出掛けたのよ」

    霧切「そうとう急ぎの用事だったようね」


    霧切「貴女の親。きっと隣の部屋でしょうね…出ないだろうからインターホンを押してみたら?」

    霧切「出なかったらこの推理は立証されるわ」

    こまる「うん…分かった」スッ

    隣の部屋の扉の前に立ち、こまるはインターホンを押した


    ピンポーン!


    だが、返事も扉が開く様子も無かった


    こまる「本当だ!凄い!!名探偵みたいだよ!!」

    霧切「ふふっ。ありがとう」

    霧切(本職なのだけれどね)




    こまる「じゃあ、お兄ちゃん達がどこに行ったか分かる?」

    霧切「いや、そこまでは流石に…エ──」

    エスパーじゃないんだから、と言いかけた所で某アイドルを思い出して霧切はそれ以上言うのをやめた

    こまる「そっか…」

    霧切「…私はそろそろ夕食なのだけれど、貴女も来るかしら?」

    不安に押し潰されかけたこまるを見かねて霧切はそう提案した

    こまる「良いの?」

    霧切「ええ。部屋は貴女と同じで二階だけど、周りに木が無いぶん見晴らしが良いわ」

    こまる「ありがとう霧切さん!」

    霧切「別に感謝される程の事じゃないわ。…そういえば貴女の名字を聞いてなかったわね」

    こまる「あ、えっと苗木って言います!」

    霧切「そう。……今更だけどお兄さんの名前は…?」

    こまる「誠だよ!」

    霧切「…!!!!」



  14. 14 : : 2015/11/29(日) 01:10:07


    ーーーーーーーーーー


    【旅館:廊下】


    P.M 06:46:25




    苗木「あぁ、気持ちよかったなぁ」

    割と早風呂の僕は早々に湯船を出た。

    十数年同じ屋根の下に暮らしている妹が長風呂だという事は知っているので待たずに部屋へ向かう。

    ヒソヒソ

    苗木「ん…?」

    その道のりで僕は若い女将や女中が話してるのを意図せず聞いた。

    「えっ、お地蔵様が!?」

    苗木「」ビクッ!

    ここに来て直ぐの事を思い出す。

    こまるに背中を押され地蔵を壊してしまったあの一件を。

    若女将「そうなの…。私にもよく分からないだけど…」

    弱々しい声で女将は言い、小さなため息をついた。

    「怖いわね…」

    「何か悪いことが起こらないと良いんだけど…」

    若い女中達も憂わしげな表情を浮かべている。

    苗木「………」

    だから僕は会話の輪に入りながら

    苗木「あの…僕、地蔵の首を壊しちゃったんですけど…」

    そう白状した。自首をした。

    若女将「!!」

    苗木「すいません…」

    恐らく誰かあの地蔵に触ってしまったのだろう。そしてまた首が取れた。
    乗せただけだから力を加えれば落ちてしまうのは当然だ

    若女将「そう…なのね」

    苗木「はい…」

    若女将「…その件なんだけど結構大事になってるみたいなの、村長の家で行ってる集会に来てもらえないかしら?」

    苗木「え゛」

    大事(おおごと)?…いや確かに道から外れた所にあったとはいえ奉られているものを壊したら大事になるか

    それで、地蔵って幾らくらいするの?

    僕の御年玉貯金で払えるのか?


    そんな事を思っていると。


    母「あら、誠君どうしたの?」

    青い顔をする僕を見てか、女将さんと話してる事を見てか、母さんが声を掛けてきた。

    後ろには父さんの姿もあった。

    苗木「母さん…どうしてここに?」

    母「ふふっ。お散歩デートよ」

    デートって…!

    その歳で、しかも二児の母の台詞じゃない!

    母「誠君。女性は幾つになったってそういう言葉を使うものよ」

    苗木(なんで心読まれてるの!?)

    母「お母さんですから」

    苗木「?!」

    父「ははっ、母さんは相変わらず元気だな」

    状況が分かってないこともあってか、いつも以上に上機嫌の二人。

    だけどそれに付き合ってる場合では無い。

    僕は「どうしたの?」の問いに答え、話を戻すことにした。

    苗木「実はね、父さんと母さんが別れた後、こまるに背中を押されて坂を転げ落ちた時に地蔵にぶつかっちゃって…」

    母「誠君本当なの!?」

    苗木「」ビクッ

    突然大きな声を出す母さんに驚き、目を合わせないようにしながら、ほんの数センチだけ首を縦に振る。

    母「怪我は無かったの?」

    そんな僕を下から覗き込むようにしながらそう言った。

    そこに負の感情は一切無く。単純に僕の身を心配していた───だから余計に胸が痛い。

    苗木「うん、体の方は大丈夫。でもその時に地蔵を壊しちゃって、それが大事になってるみたいだから村長の家に行かなきゃいけないみたいなんだ」

    説明下手な僕は幾度か言葉を詰まらせながら、そう伝えた。

    父「そうか、分かった。じゃあ父さん達も行こう」

    苗木「え?!いや、でも父さん達は関係ないよ!?」

    父「関係ない事なんて無い。私はお前の父で、お前は私の息子なんだからな」

    苗木「…ごめん」

    母「ふふっ。謝る事なんて無いのよ。迷惑だなんて少しも思ってないんだもの」

    苗木「うん…。父さん、母さん、ありがとう…」

    弱々しく言う僕に対し、母さんは優しく微笑み父さんはポンポンと二回頭を撫でた。


    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



    【旅館:苗木部屋前】

    苗木「あぁ、こまる遅い!」

    鍵を閉めれば当然こまるは締め出される。かといって開けっ放しは危ない。

    苗木(そうだ!)

    僕は荷物を母さん達の部屋へ移動させた。

    こうすれば鍵が開いてても何か取られる事は無い筈だ。


    苗木「着替えは…あっ、でも若干砂付いてる」


    父「誠。そろそろ行くぞ」

    苗木「…うん。分かった」ポイッ

    急かされた事を理由に入り口から服を投げ捨てるように置き、扉を閉じる。

    そして、鍵を掛けずに既に歩き始めた父さんの背中を追った
  15. 15 : : 2015/11/30(月) 22:22:07

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


    【村長の家】


    村長「突然の事で申し訳ない」

    風貌は父さんよりも明らかに歳下。

    恐らく20代であろう男性は、畳に座る村人と僕らを一瞥した後そう言った。

    ちなみにこの会合に集まってる村人は若い大人達ばかりだ。

    女将は村長と少し話した後、帰ってしまった。

    村人A「それでなんで突然の会合に部外者がいるんだ?」

    村長「それは話を進めれば分かる」

    村人B「観光客かな?」

    隣にいた男性が声を潜ませながら聞いてきた。

    父「はい。そうなんです」

    父さんも小声で返す。

    村人B「此処に越してくる人なのかなとも思いましたが、やはりそうでしたか」

    男は何かを結論付けるように1人うんうんと頷いた。

    そんな事を話している間にも会合は進展していた。

    村長「知らない者も何人か居るだろうから今の状況を簡潔に言おう」

    村人C「お、やっと本題だな」

    村長「グビツリ様が──────




    ─────────────紛失した」


    苗木「…!!」


    部屋は一瞬だけ鎮まり返った


    村人A「そんな!」

    村人B「た、祟りが…祟りが!」

    村人C「一体どういうことなんだ」

    だが、1人を皮切りに集まっていた若い村人が狼狽え、どよめきが起こる。

    苗木(紛失…?破損じゃなくて?)

    村人D「クビツリ様の祟りが…」

    苗木「あの、祟りってどういうことですか?」

    先程から話題に上がっている言葉の中で、「祟り」という二文字が僕の頭に引っかかっていた。


    村長「昔からある言い伝えだよ。クビツリ様に手を出した愚かな人間が九尾に憑かれて殺されるという話がね」

    村人D「その祟りを村以外の者が受けた事はあったのか?!」

    村長「いや、無い。とういうより前例がないんだ。地蔵がなくなった事に関しても」

    村人E「そんなっ!どうしてなの!!」

    村長「それは…」

    村長が僕に視線を向けた

    苗木「えっと、転んだ拍子に壊してしまって」

    村人A「はぁ!?」

    苗木「で、でも!紛失は知らないんです!確かに直した筈で…」

    苗木(と言っても、上に乗せただけだけど)

    村人D「きっと、グビツリ様が怒って動き出したんだ。ば、罰当たりな人間を殺すために!!」

    村人B「この場合誰が殺されるんだ?外部の者が、まして壊したなんて事前例はないぞ!!」

    村人C「皆殺しにされるかもしれない…自ら動き出したんだ!!そんなことが起こってもおかしく無い!」

    村人E「頭祓いの儀でもダメだったらどうなるの?!」

    村人B「だから分かんないんだよ。こんな自体初めてなんだから」

    村人A「坊主!!どう責任取るつもりだ!!」

    各々が騒ぐ中。

    僕に向けて男が荒げた声をあげた。

    それと同時に視線が一斉に此方を向く。

    苗木「…………」

    答えは決まっていた。

    苗木「僕が見つけ出します」

    周りの村人達が騒めく。

    村長「君は宿に居た方が」

    苗木「いや、元は僕が蒔いた種ですし、それに」

    心配そうにする両親と村長を他所に僕は続ける。

    苗木「先へ進むには、危険を避けては通れない。から」

    村長「……分かった」

    短い沈黙の後、村長は此方を見据えそう言った。

    村長「何かあれば言ってくれ。出来る限り力になるから」

    苗木「あ、ありがとうございます」

    紛失した地蔵。この村を精通した村人が見つけられないものを今日来た僕が闇雲に探しても見つかることはほぼ無いだろう。

    今の僕に圧倒的に足りないのは情報だ。

    苗木「じゃあ早速なんですけど、この村の歴史が分かる所ってありますか?」

    村長「ああ、それなら役場に少し資料があった筈だ」

    苗木「それ、今から見に行っても大丈夫ですか?」

    村長「うむ。役場に確認を取らない事にはどうにも言えないが多分大丈夫だと思うよ」

    苗木「すいません。手間を掛けさせて」

    村長「良いんだよ、私達にとっても呪いの件は藁にも縋りたいようなことだから」

    苗木(藁って…)

    僕=藁

    苗木「そうだ、父さんと母さんは宿に戻っててくれないかな?こまるが心配でさ」

    母「あらあら、自分の事よりこまるちゃんの心配をするなんて流石お兄ちゃんね。…でもやっぱり心配だわ」

    苗木「やめてよ母さん、恥ずかしいから…。それに大丈夫だよ」

    周りの生暖かい視線を感じ、前半は声を潜ませるようにしながら言った。

    父「頑張れよ」

    一方の父さんは僕を止める事は無く。逆に激励の言葉を掛ける。

    苗木「うん!」


  16. 16 : : 2015/11/30(月) 22:23:06


    母「でも…」

    それでもなお渋る母さんに声を掛けたのは父さんだった。

    父「母さん。男にはやらなければいけない時があるのさ」

    それを聞いた母さんは思案するように少し間を空けてから

    母「ふふっ。おねしょしてた頃とは大違いね」

    と言いながら微笑んだ

    苗木「だから!!恥ずかしいから!!やめてってば!!!」

    周りの視線に僕は耐え切れず、今度は声を張り上げた。

    クスクスという笑い声も聞こえた。

    生暖かい視線が、生(ぬる)い視線に変わる。

    これじゃ、僕=(笑)だよ…


    母「大きく…なったのね」

    身長の話ではないだろう。大人になった、成長したと言ってくれているのだ。

    苗木「行ってくるよ」

    母「ええ」

    不安を悟られないように口に力をいれているのが僕には分かった。

    そこへタイミング良く村長が戻ってくる。

    村長「許可を貰ってきたよ。道は…、そうだな───」

    そう言いながら周りを見渡す。だが誰も目線を合わせようとしない。

    村長「───俺が案内しよう」

    ついに折れた村長が小さなため息を漏らしながら提案した。


    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


    【道中】


    村長「別にみんな悪気があるわけじゃ無いんだ、ただ若い事もあって祟りが怖いんだろう。許してやってくれ」

    まだ明るい道を歩く中、不意に村長がそう言った。

    その言葉は村人を庇っているというより、僕を慰めてくれているように受け取れた。

    苗木「大丈夫ですよ。元々僕が原因なんですし」

    村長「ありがとう。君は、若いのに強いんだね」

    苗木「いや!そんなこと!…それに若いから怖いものを知らないだけかもしれませんし」

    村長「ハッハッハ、面白いことを言うな君は」

    苗木「あはは、別に笑いを取ろうとしたわけじゃ」

    村長「ああそうか、すまない…実は俺も怖くないんだ。なんでだと思う?」

    苗木「ん…若いからですか?」

    村長「嬉しい事言ってくれるね。だけどハズレだ」

    苗木「………」

    村長「………」

    苗木「えーっと、早いですけどお手上げです。答えは何なんですか?」

    村長「それはまだ内緒さ。…そうだな、この一件が終わった時にでも話すよ」

    そう言いながら男は足を速めた。

    なんとなくだけど、この人が若くして村長を務めている理由が分かった気がした。

    苗木(ただそれ死亡フラグ…)


    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


    【役所】

    小さな郷土資料館を連想したがやはり役場は役場だった。

    年季の入った建てつけの悪そうな引き戸が特徴的だ。

    村長「じゃあ俺はこの辺で」

    村長は中に入る事無く。建物の前に着いた時点で踵を返して帰ってしまった。


    苗木「ご、ごめんくださーい」

    キュルキュルと音の鳴る引き戸を10センチほど開け顔を覗かせる。

    電気は一応付いているようだ。

    苗木「ごめんくだs「ここに何の用じゃ」

    突然背後から声がした。

    苗木「うわッ!」

    振り向くと、いつの間にかそこに居た老人が、不機嫌そうにこちらを睨んでいた。

    苗木「こ、ここで調べ物をさせていただく苗木誠です!」

    老人「…ふぅむ。そうかそうか、お前さんが…」

    髭をいじりながら見定めるように僕を足の爪先からアンテナの先まで見たあと。

    老人「入りなさい」

    そう言いながら、中へ入っていった。

    苗木「お、お邪魔します」

    明らかに家では無い。というか施設なのだが。
    招かれればそう言ってしまうのは日本人の逃れられない(さが)なのかもしれない。


  17. 17 : : 2015/12/23(水) 17:54:32


    【役所:資料室】

    老人「ここに来たのは正解じゃの、人に聞くよりよっぽどの」

    案内され部屋に入った直後。老人は自ら口を開いた。

    苗木「どうして人がダメなんですか?」

    老人「ダメとはいっとらん。文献ってのは受け入れられたものしか残らないんじゃよ。それが間違えていたとしても人と違って嘘はつかないじゃろ?だから良いんじゃ」

    苗木「嘘…ですか」

    苗木(間違いと嘘は意味としては同じじゃないの?)

    老人「いや、そこは別に気にせんで良い。ただ古い事柄を知るにはここが良いって事じゃよ」

    苗木「なるほど」

    老人「あっ、そうじゃ、閉館時間を抜きにしても12時までじゃ、それ以降はワシも眠い」

    老人は大きな欠伸をしながら言った。

    ちなみに今の時刻は8時だ。

    苗木「分かりました。それまでには宿に戻ります」

    老人「じゃあワシはこの辺で、…頑張りなさいな」

    苗木「はい!ありがとうございます!」

    老人「ほっほ。良い返事じゃ」


    しゃがれた声で老人は笑った。



    ーーーーーーーーーー
    ーーーーーーーーーー


    【旅館】


    P.M 07:50:23


    霧切「苗木…誠?」

    こまる「うん。そうだよ」

    霧切「差し支えなければ教えて欲しいのだけれど、貴方のお兄さん。希望ヶ峰学園に通ってないかしら?」

    こまる「えっ!?凄い!なんで分かったの!?」

    霧切「いや、推理とかじゃなくて最初から知ってたのよ」

    こまる「遂にお兄ちゃんが有名人に!?」

    霧切「違うわ」

    こまる「だ、だよね。平凡で凡人だから有名人っていうより平凡人だもんね」

    霧切(実の妹にここまで言われる兄って…)

    霧切「じゃあ改めて自己紹介をさせてもらうわ」

    こまる「霧切さんの?」

    霧切「ええ。私は霧切響子、貴方のお兄さんと同じ学校に通う超高校級の探偵よ」

    こまる「ふぇっ!?た、探偵?!本物なんて初めて見たよ!!」

    霧切「本来正体を曝け出す探偵なんて居ないから、気付いてないだけで普段見てる人が探偵かもしれないわよ?」

    こまる「ま、まさか、平凡人なお兄ちゃんが!?」

    霧切「違うわ」

    こまる「私が探偵だ(?)」

    霧切「何言ってるのかしら?」

    こまる「あっ!!」

    突然甲高い声をこまるがあげた。

    視線は霧切の背後に向けられている。

    霧切「?」クルッ

    振り返った先に居たのは2人の男女だった。

    苗木母「こまるちゃん。1人にしてごめんね」

    こまる「ううん。1人じゃ無かったから大丈夫」

    苗木父「あれ、そちらのお嬢さんは?」

    こまる「えっとね、霧切さんって言うんだけど、お兄ちゃんのクラスメイトなんだよ」

    霧切「ええ。どうも」ペコリ

    苗木父「どうも初めまして誠の父です」ペコリ

    苗木母「同じく母です」ペコリ

    こまる「同じく妹です」ペコリ

    霧切(最後のはいるのかしら?)

    苗木母「立ち話もなんだし、中で話しましょうか」

    霧切「いえ、私は今から夕食なので」

    こまる「ええ〜、一緒に食べようよ」

    丁重に断ろうとする霧切に、こまるは駄々をこねる様に食いさがる。

    霧切「いや、でも…」

    苗木父「君さえ良ければ私達の部屋で食べてもらっても大丈夫だよ。女将か女中に頼めばこっちに持ってきてくれるだろうし」

    こまる「そうだよー。一緒にたべよーよー」

    霧切(これは、断れないわね…)

    霧切「はい。ではご一緒させていただきます」

    好意を無下には出来ないと結論付け、その提案を受けることにした。


  18. 18 : : 2015/12/23(水) 18:03:54


    【旅館:苗木の両親の部屋】


    こまる「お母さん。さっきまでどこ行ってたの?」

    苗木母「村長さんの所よ」

    こまる「ふーん、で、お兄ちゃんは?」

    苗木父「誠なら、…調べ物をするみたいだ」

    こまる「調べ物?Wi-Fiスポットとか?」

    苗木父「…まあ色々あったんだが、誠なら大丈夫さ」

    霧切「………」


    そんな会話を見ながら、霧切は実の父の事を思い浮かべていた。

    彼らのような関係では無く契約の関係である男の事を。


    霧切「信頼…してるんですね」

    苗木父「ああ。なんたって私の息子なんだからな」

    自身の境遇との違いに困惑し、つい口に出してしまった言葉が失礼な事だと気付くのに時間は掛からなかった。

    霧切「すいません。別に苗木く…誠君の事を信頼出来ないって思ってるわけじゃ」

    苗木母「ふふっ、大丈夫よ」

    上品な笑みを浮かべながら苗木の母はこう続けた。

    苗木母「そういえば、誠君は学校ではどんな感じなのか教えてもらっても良い?あの子、自分の事は全然話さないの」

    母として、息子の学校生活が気になるようだ。

    霧切「そうですね…。お人好しで、皆を引っ張るタイプじゃないけど誰よりもクラスの中心に居ます」

    こまる(お兄ちゃんが褒められてる!)

    苗木母「ふふっ。自分の事のように嬉しいわ」

    こまる「他にないの?恥ずかしい事とか!良くない事とか!」

    身を乗り出すようにしながらこまるは言う。

    霧切「そうね。馬鹿正直で、誰よりも前向きで、凄くお節介で、でも不思議と嫌じゃない…です」

    苗木母(あらあら)

    苗木父「そうか。良かったよ」

    こまる「霧切さん、敬語似合わないね」

    苗木父「…こまる。空気を読みなさい」

    こまる「あ、そうだ!お兄ちゃん彼女居るの?」

    苗木母(気になるわ)

    苗木父(気になるね)

    霧切「居ないわ。でも好きな人は居るみたいよ」

    こまる「え、誰々?誰なの?」

    霧切「さあね、本人に直接聞いてみたらどう?」

    適当にあしらいながら霧切はお吸い物に手をつける。

    こまる「もしかして相手は霧切さん?」

    霧切「ゴッホッ!!」

    こまる「き、霧切サァン!!」

    霧切「大丈夫。変な所に入っただけ、ちなみに違うわ」

    むせて咳をしながらも霧切は言い切る。

    こまる「ごめんね。霧切さん」

    霧切「いいえ、気にしなくても良いわ。それにしても(くだん)の苗木くんがまだ戻ってきてないわね」

    苗木父「ああ、その事なんだけど…、言わないとダメだよな…、2人とも落ち着いて聞いてくれ。今の君たちなら言っても大丈夫だと信じて言う」

    こまる「……?」

    霧切「………」



    〜〜(中略)〜〜



    こまる「ええ!?お兄ちゃんが事件に巻き込まれたの?!」

    苗木父「そうだ。調べ物の件もこの事件関連のことらしい」

    苗木母「誠君。今どうしてるかしらねぇ」

    こまる「ねえ。霧切さん。お兄ちゃんを助けてあげて…全部、全部私のせいなの…」

    こまるは霧切の袖を引き縋った。

    霧切「ええ。私もそのつもりよ。所で、なんで貴方のせいなのかしら?」

    こまる「私がお兄ちゃんの背中を押したせいで、…まさかこんな事になるなんて…」

    罪悪感からか、顔を伏せ声のトーンはかなり低かった。

    霧切「…なるほど。でも大丈夫よ。祟りなんて存在するはずないわ」

    こまる「そう…かな?」グスッ

    涙ぐんだ目を拭いながらこまるは顔を上げる。

    霧切「そうよ。絶対に人為的な何かよ。それなら私の本分」

    そんな目を見据えながら、霧切はそう言い切った。

    こまる「ありがとう…霧切さん」

    霧切「感謝される様な事じゃないわ。既に食事は終えたし、今からでも向かう事にするわね」

    苗木父「待つんだ」

    手を合わせ立ち上がろうとする霧切を苗木の父は静止させた。

    苗木母「今はもう暗いし、何があるか分からないわ。本当に祟りがあるかもしれないしね」

    霧切「でも、私は超高校級の探偵です」

    苗木母「探偵なんて関係ないの。大人として、子供を、ましてや女の子を危険な真似には合わせられないわ」

    苗木父「それにそんな事したら誠に会わす顔が無いしね。あの子を信じてあげてくれ」

    霧切「…分かりました」

    苗木父「ありがとう」

    霧切は何故感謝の言葉を投げ掛けられたか分からなかった。

    分からなかったが、その言葉はチクリと胸に刺さった。


  19. 19 : : 2015/12/23(水) 20:43:53


    ーーーーーーーーーー

    【役所】


    文献に目を通し始めてから数十分。


    ギシッギシッ…


    静寂を破るように廊下から床の軋む音がした。


    苗木(誰?)


    ギシッギシ…


    その音源は徐々に此方へ近付いてきている。


    苗木(役所のおじいさん…?)


    スーッっと近くの部屋の扉が開かれる音がし、数秒後それを閉める音が聞こえた。


    ギシッギシ…


    床を軋ませる音源が動き出す。


    苗木(違う!あの人なら僕がこの部屋に居るって知ってる筈なんだ!)

    苗木(じゃあ、誰なんだ?!)


    バクンバクンと心臓の鼓動が聞こえるようだ。


    ギシッギシ…───ギシッ



    床の軋む音が、部屋の前で止まった。

    そして、扉が力強く開かれた。











    ??「やっほー、いる?」

    苗木「え?」

    扉の向こうにいたのは何処か見覚えのある女性だった。

    苗木「女将さん?」

    旅館で見たときと雰囲気の全く違う事に困惑しながらもそう聞いた。

    女将「そうだよ」

    八つ子もいるくらいだ、双子という可能性を考慮しながらした質問、返ってきたのは当然ながらそれだった。

    女将「それで、どうしたの?そんな部屋の端で身構えて────ああっ」

    首をかしげながら言う女将は、何かに気付いたように右手の握り拳と、開いた左手をポンッと合わせる。

    女将「…なるほど、グビツリ様と思って怯えてたわけだね。確かに恥ずかしいよね、()だけに」ドヤッ

    勤務とは一線を画しているからか砕けた口調で女将は言う。しかもドヤ顔で

    苗木(反応に困る!!)

    勤務中は結んでいた髪も今は解いていて、女将が動くたびに長い髪が後を追うように揺れる。

    腕に手提げ籠とポットを下げ、そこから饅頭が飛び出しているのが見えた。

    女将「そうだ、これ。いつも余分に作って女中のみんなと食べるんだけど特別よ。お腹空いたでしょ?」

    苗木「あっ、ありがとうございます!」

    差し出された無数の饅頭を両腕で抱くようにして受け取る。

    苗木「それにしても、わざわざこういうのを作るなんて何か理由があるんですか?」

    苗木(おそらくグビツリ様関連だろうけれど)

    女将「そうね。それじゃ食べながらでも話しましょうか、お茶も持ってきたし」


    女将は手提げ籠の底からコップを2つ取り出すと、腕に提げたポットからお茶を注いだ。

    女将「あっ、本当はここ飲食持ち込み禁止なんだけど内緒よ」

    そして思い出したようにそう言うと、女将は自身の唇に縦に人差し指を当てながら白い歯を見せた。


    女将「饅頭を沢山作る理由は、グビツリ様が原因だよ」

    苗木「お供え物ですか?」

    女将「いいえ、違うわ。それにお供え物だとしてもグビツリ様が紛失した今、備える事はできないしね」

    女将「だから饅頭を作るのは食べるためなんだよ」

    苗木「自分で作って自分で食べる?」

    女将「正確には配るんだけどね。頭祓いの儀について説明すれば一応合点がいくと思うんだけど」

    苗木「そういえばそんな言葉を村長の家で聞きました」

    女将「ほんと?じゃあ話が早いわね」

    苗木「いや、聞いたのは単語だけで中身はさっぱり」

    女将「中身は白餡よ」

    苗木「そっちの中身じゃなくて…」

    女将「冗談よ。冗談」クスクス

    女将「私が生まれる前から伝えられてて、何時からかは定かじゃないんだけどこんな言い伝えがあるの。グビツリ様の災厄を逃れるには饅頭を食えってね」

    苗木「………はい?」

    女将「つまり饅頭を食べれば饅頭が身代わりになってとり憑かれないってこと」

    女将「ほら、饅頭って漢字に「あたま」って入るじゃない?そこから来てると思うんだけど」

    苗木「は、はぁ」

    女将「まあ、確かに胡散臭い話だけど…」ニヤッ

    苗木「?」

    不敵な笑みを浮かべた女将は饅頭を1つ手に取り、こう続けた。

  20. 20 : : 2015/12/23(水) 20:46:16

    女将「グビツリ様の祟りを受けた人は誰1人として饅頭を食べていなかったわ」

    苗木「!!」

    未だ手を付けていなかった饅頭を口いっぱいに頬張る。正確には1つまるまる口に含んだ。

    女将「そんなに急いで食べなくても…、別にグビツリ様が目の前に居るんじゃないんだし…」

    呆れた視線が此方に向けられる。

    苗木「もがもご…むごっ」

    女将「ああっ、一気に食べるから」

    口の中の水分を一気に奪われ、喉に饅頭が詰まり咽せる僕へ、女将は慣れた手付きでお茶を差し出した。

    苗木「すっ、いま…ごほっ」

    女将「謝らなくて良いから、今は飲むことを優先して」

    背中を摩られながらお茶を徐々に口に含む。

    苗木「んぐっんぐっ…ふぅ」

    咀嚼し終え一息付ける。

    苗木「すいません」

    女将「良いのよ。溢さなくて良かった」

    苗木「はい。文献が汚れなくて良かったです」

    女将「そうじゃないわ」

    苗木「……?」

    女将「だって、溢して此処に食べ物が持ち込まれたのがバレたら私も怒られちゃうでしょ?ここのは堅物で、厳しいから」

    そう言いながら両手の人差し指を突き立てながら頭の後ろにやり、鬼のジェスチャーをした。

    苦い顔をしているのは怒られた経験があるからだろうか。

    女将「二年ほど前からルール変えたらしいんだけど、張り紙の1つもないのよ。そりゃあ煎餅の一枚や二枚持ってくるわよね?」

    苗木(持ってくるわよね?と言われても…そもそもなんで役所に煎餅?)

    女将「っと、長居しすぎたね。饅頭だけ持って行ってすぐ帰るって伝えてたから、女中の皆が心配してるかも」

    バタバタと荷物を纏めながら、女将は立ち上がった。

    苗木「すいません。話に付き合わせちゃって」

    女将「良いのよ、私も君と話してて楽しかったし。それに話し出したのは私だしね。じゃっ、私はこの辺で」

    苗木「暗いし旅館まで送りましょうか?」

    ギシギシと床を軋ませながら歩く彼女を同じくギシギシと音を立てながら追いかけ、隣に並ぶ。

    女将「大丈夫よ。ずっとこの村に居るんだし。あっ、もしかしてグビツリ様?」

    またもポンッと手を合わせながら、女将はそう言い、こう続ける。

    女将「ほら、2人とも饅頭を食べたんだから…ねっ?」

    苗木「はい。でも、気をつけてくださいね」

    女将「勿論」

    そして女将は音の鳴らないようにゆっくりと扉を開け、空の容器とポットを持ってスルリと抜け、此方を向く。

    女将「風邪を引かないようにね?おやすみなさい」

    開いた扉から顔を覗かせ、小さく手を振る。

    苗木「ええ。ありがとうございました」

    僕は軽い会釈をし、少し照れ臭かったが手を振り返した。


    苗木(綺麗な人だったな)


    閉まった扉を見ながら、暫くその場に立ってそんな事を考えていると。

    老人「んん?綺麗な姉ちゃん連れ込んで随分偉くなったな枝木」

    またも後ろから声を掛けられた。

    いつの間にかそこに居た老人が髭をいじりながらニヤニヤと笑う。

    苗木「苗木です」

    老人「ほっほ。そんな否定しなくて良い。大丈夫じゃ、あの嬢ちゃんが宿の若女将……いや、現女将ってのは知っておる」

    苗木「はぁ、そうだったんですね」

    苗木(否定してるのはそっちじゃないんだけどな…)

    老人「あの嬢ちゃんも大変だのぉ、2年前からあの宿の主な仕事をこなしておる」

    苗木「2年前?」

    老人「先代の女将さんがな、土砂崩れに巻き込まれて亡くなったんじゃよ───っと、関係ない話じゃな。すまん忘れてくれ。じゃあの」

    役場の老人は言い切った後に話を切り、去っていった。

    苗木「………」

    苗木「何しに来たの?」


  21. 21 : : 2015/12/23(水) 21:07:00


    ーーーーーーーーーー


    【旅館:苗木の両親の部屋】


    時刻は9時を回り、木に囲まれ街灯や建物のないホテル周辺は外界から切り離されたように暗くなる。

    苗木の両親は夕食を食べ終えると温泉へ向かった。

    こまる「そういえば霧切さん。お饅頭残してるけど食べないの?」

    思い出したようにこまるが言う。

    夕食には饅頭が付いていた。お茶請けとしてではなく、メニューとして。

    同時に、「絶対残さないで」と念を押された一品でもあった。

    霧切「あまり甘い物は好きじゃないのよ」

    こまる「えー。勿体ないよぉ、食べた方が良いよぉ」

    こまるが何故饅頭に付いてこうも引き下がらないのか、霧切はその意図に気付いた。

    霧切「…そうね。じゃあ代わりに貴方が食べてくれないかしら?」

    こまる「え?本当に?」

    霧切「嘘をつく理由がないわ」

    こまる「やったー!」

    こまるは本日2つ目の饅頭を美味しそうに頬張った。

    霧切「じゃあ私はそろそろ戻るわね」

    こまる「もふふこひいへも大丈夫だよ?お母さん達まだ温泉だと思うし」

    口に含んだまま喋るこまる。

    霧切「いいえ。これ以上家族の時間を邪魔するのは悪いもの」

    こまる「そんな!邪魔なん────

    霧切「それに今日は凄く疲れがたまっていて、今にも眠ってしまいそうなのよ」

    立ち上がり既に扉に手を掛けている霧切が、こまるの言葉を遮りながら、わざとらしく目を擦った。

    こまる「…そっか、分かった。おやすみなさい霧切さん」

    それを見てこまるは渋々ではあるものの引き下がる。

    霧切「ええ。こまるさん、おやすみなさい」

    霧切はそう言いながら、静かに扉を閉めた。



    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



    【旅館:霧切部屋】


    霧切「はぁ…」

    備え付けられた机に突っ伏しながら溜息を漏らす。

    捜査した事に疲れ。

    何もわからない事に更に疲れ。

    慣れない人との距離感に疲れ。

    家族との関係に疲れきっていた霧切にはそれら全てが追い打ちだった。

    霧切「技術だけを信頼されてる私とは大違い…」

    霧切「少しだけ羨ましいと思ってしまうの自分が恨めしいわね」

    霧切(恨めしくて女々しい───いや女々しくて良いのだけれど)

    霧切「今日は早めに寝た方が良いわね…」

    約束は破ろうと思えば破れたのだが、霧切はそれをしなかった。

    1つは霧切が情報と気持ちを整理する時間がほしかった事。

    もう1つは苗木へ、その家族が向ける信頼を侵害したくなかったから。




    P.M 09:45:00



    寝支度を整え、霧切は部屋の電気を消した。


  22. 22 : : 2015/12/23(水) 21:52:43

    ーーーーーーーーーー

    【役所】

    苗木「全然分からない…」

    それが、数時間にわたり文献や資料を見た僕の素直な感想であり、結論であった。

    分からない。理解できないではなく分からない。

    頭祓いの儀に付いては確かに書いてあった。

    ただ、他の内容は文献であり伝承あり誰かの書き記したものであるため、歴史の教科書と昔話をぐちゃぐちゃに混ぜたような内容だった。

    苗木(幾度となく、この村はダムに沈んみそうになった。それを救ったのはグビツリ様?)

    苗木(殺した化け狐が石になった殺生石?フィクションすぎる!)

    苗木「ゲームだとこういう所って重要な情報がある筈なんだけどな…」

    77期の先輩のような物言いでボヤく


    ここの資料室はカテゴリーごとに分類されており、村の土壌など関係ないものは省くと文献はかなり少なかった。

    少ないからこそ情報も少なかった。

    苗木(全部一通り目を通したけど、……さっぱり……だ…)

    時刻は11時半。

    前日あまり寝れなかった事と張りつめていたものが途切れた事もあり、雪崩のように睡魔が襲ってきた。

    苗木「……………」

    意識は途切れ、覚醒し、また途切れ。

    うとうとを通り越し机にうつ伏せになる。


    そして、僕の意識は、沈んだ





    ーーーーーーーーーー






    【旅館:霧切部屋】


    A.M??:⁇:⁇


    コツン…コツン…

    霧切「っ!」バッ

    窓を叩く音で霧切は目を覚ます。

    そのまま体を起こし音のなる方を見た。

    窓。

    若干差し込む月の光。

    映し出されていたもの。

    それは見慣れた顔。

    霧切(嘘…)

    江ノ島盾子の頭部だけがそこにあった。

    吊り下げられた首のように。

    霧切(あり得ない。この部屋の窓の先には木なんて無いし、吊るすための縄も見えない…なのに何故!?)





    霧切(あり得ない。あり得ない。あり得ないあり得ないあり得ない。あり得………)


    此処で霧切は1つの答えに辿り着く


    人1人分を吊るすのならば太い縄が必要である。
    太い縄なら当然薄暗くても見える筈だ。

    だが頭部だけを吊るすのなら?────と

    江ノ島盾子は殺された。

    それが彼女の出した答えだった








    ただし、その解答が正解であるとは限らない。



    エノシマ[…ァ]



    霧切「っ!?」



    死体である筈の彼女の口が弱々しく動く。





    そして言葉を紡いた。







    エノシマ[タ ス ケ テ]











    何故かそう聞き取れた。否、聴こえた


    霧切「────────ッッ!!!!!」

    悲鳴はあげなかった。
    ただし、それは許容出来たからでは無い。

    理解不能。

    見る事を、受け入れる事を、理解する事を霧切は拒んだ。

    だから目を閉じた。

    耳を塞いだ。


    霧切「はぁっ…はぁっ…!」


    呪い。
    占いと同じで信じてないけど気になってしまう。



    一度認識してしまえば。




    完全に目を背ける事が出来ない。




    例え目を瞑ろうとも。



    霧切(しまった──!)


    呼吸を乱しながらも目を瞑ること(それ)が如何に愚かな事だと気付いた霧切はすぐに目を開いた。

    霧切「……消えた?」

    だが、既に江ノ島の姿は其処には無い。

    あるのは、ほのかに窓際を照らす月の光のみだった。



  23. 23 : : 2016/01/03(日) 03:44:02


    ーーーーーーーーーー


    【役所】


    苗木「ん……?」

    エアコンの肌寒さで目が覚める

    背中にはタオルケットが掛けられていた

    どうやら眠っていたらしい

    苗木「今、何時だ…?」

    垂れた涎を袖で擦りながら携帯のディスプレイを見る。示された時刻は朝の6時

    苗木「しまった──!」

    僕はタオルケットを腕に巻き付けるように持ち廊下を駆ける。

    老人「おぉ、やっと起きたかの」

    目的の場所に着く前に目的の人物と出会った。

    苗木「ええっと、そのすいませんでした!」

    老人「気にしなくて良いんじゃよ。風邪を引かれても困るからのぉ」

    老人は髭をいじりながら目を細めた。

    老人「それで何か分かったかの?」

    苗木「いえ、さっぱりです。資料の数は少なかったので一通り目を通したつもりなんですけど」

    老人「一通り…か」

    ぼそりと老人は呟いた。

    それはとても含みがあるような発言だった。

    苗木「他に何かあるんですか?」

    老人「あるにはあるんじゃが、これは…。それにあまり関係ないかもしれんし」

    苗木「お願いします!どんな些細な事でも良いんです!」

    渋る老人に、僕は深々と頭を下げる。

    老人「ふむ。ワシは今から朝食なもんでな。1時間程此処をあけて隣の家に戻らせてもらうかのぉ」

    苗木「そんなっ!」

    老人「机の一番下にある大きな鍵の付いた引き出し」

    苗木「えっ…?」

    老人「其処に鍵挿しっぱなしにしても1時間なら誰も中は見ないじゃろうなぁ」

    老人「ほっほっ。じゃあ苗枝君、留守番を頼んだぞ」

    苗木「苗木です」

    そんなわざとらしい事を言い残し老人は去っていった。

    苗木「………」

    渋るって事は当然見せて良いものでは無いはず。鍵も付いているなら尚更だ。

    苗木(でも、あれは見ろってことだよな?)

    多少の罪悪感はあったが、あそこまで言ってもらって見ないのは逆に相手に悪いと結論付け
    僕はその重厚な引き出しを開けることにした。正確には引いた。

    中を見ると大量の薄いファイルが並べられていた。色は赤と薄緑の二色だ。

    苗木「何だこれは…」

    そんな風に独り言を呟きながら一番手前にあったクリアファイルを手に取る。

    苗木「死亡…届」

    ピラッ

    『二年前土砂崩れにより死去』
    『遺言書の内容通り、村長の職務は義理の息子が継ぐものとする』


  24. 24 : : 2016/01/03(日) 03:48:34


    苗木「これは、流石に見ちゃ駄目なやつだよね」

    だが、見てしまったものは仕方がないと思考を切り替え、そのクリアファイルを元の場所にしまう。

    苗木(此処に何か手掛かりがあるのかもしれない)

    罪悪感に押しつぶされそうになりながらも、念の為にと他のクリアファイルを確認する為に手を伸ばす。


    緑→土砂崩れ
    緑→老衰
    緑→焼死
    緑→老衰
    緑→縊死
    赤→縊死
    緑→老衰
    緑→心筋梗塞
    緑→溺死
    緑→老衰
    緑→縊死
    緑→縊死
    赤→縊死
    緑→溺死
    緑→老衰
    赤→縊死
    緑→老衰
    (etc…)

    が、どれも死亡届のようだ。






    苗木「あれ、そういえば」

    戻したものも含め赤のクリアファイルを1つ1つ確認する。

    苗木「!…やっぱりそうだ」

    何故二色に分ける必要があったのか疑問だったのだがこれで合点がいった。

    赤いファイル。
    その全ての死因が縊死──つまり首を吊って亡くなっていた。

    恐らくこれがグビツリ様の祟り。

    そこから更に2つの疑問が浮かぶ。

    1つは現代に近づく程赤いクリアファイルの数が減っているという事だ。

    逆に緑のクリアファイルは数を増している。赤が減るより圧倒的に多いので人口が増えたのが大きな原因であると云える。

    そして2つ目

    苗木「赤いファイルは有権者が圧倒的に多い?」

    有権者。つまり大の大人が地蔵に危害を加えるとはどうしても思えない。

    苗木「つまり有権者の子供なのかな?」


    そんな誰に向けたわけでもない独り言に


    霧切「さあ、どうかしらね」

    返事が返ってきた。

    苗木「………」

    苗木「霧切さん…?」

    思考が追いつかず間抜けな質問を口にする。

    霧切「そうよ」

    苗木「………」

    苗木「霧切さんッ!?!?!?」

    思考が追いついた。


  25. 25 : : 2016/01/03(日) 17:04:59
    拙者、少しずつ謎が深まるサスペンスが大の好みでござる故。期待せざるを得ないですぞ。
  26. 26 : : 2016/01/04(月) 06:14:39
    >>25
    サスペンスなんて大それたものじゃないです!ホラーでもないですが!!
    ありがとうございます!
  27. 27 : : 2016/01/04(月) 06:15:14


    苗木「どうして此処にいるの!?」

    霧切「貴方の部屋の鍵が開いたままだったから、まだ帰ってきて無いと思ったのよ。つまり此処にいるとね」

    苗木「そうじゃなくて、『何でこの村にいるの』って事なんだけど」

    霧切「探偵の仕事よ。ちなみに何で苗木君が此処にいるか分かったのかと謂うと、昨日貴方の妹さんと両親に会ったから」

    苗木「こまるに!?」

    霧切「良い……家族ね」

    苗木「あはは、ありがとう」

    彼女の家庭の事情はやんわりと知っているので否定も肯定も避け曖昧な返事をする。

    霧切「それにしても苗木君。どうやら大変な事になってるみたいね」

    ファイルに手際よく目を通しながら彼女は言う。

    苗木「うん。そこも聞いてるんだよね?」

    霧切「逆に聞かれたりもしたわね。そういえば苗木君って、案外家族に希望ヶ峰学園の事話さないのね」

    苗木「いや、この歳になって家族に学校の事話すのはあまり普通じゃないと思うよ?」

    相手は学校に家族がいる身なので一概に否定はできないのだが。

    霧切「てっきり、クラスメイトの女の子の話、例えば舞園さんの名前でも出してるかと思ったわ」

    苗木「な、な、ななななんでそこで舞園さんの名前が出てくるの!?」

    霧切「別に。アイドルだからよ。他意は無いわ」

    未だファイルに目を通しながら彼女は言った。

    苗木「そ、そっか、そうだよね。でも話してないよ。江ノ島さんは事件の事もあってこまるには話しちゃったけど…」

    霧切「…そういえば妹さん、貴方の弱みを握ろうとしてたから気を付けなさい」

    苗木「え゛っ」

    霧切「気にしなくて良いわ。それとさっきの独り言。答えはNOよ」

    ファイルから僕へ目を移した彼女の顔にはクマが出来ていた。

    苗木「何がノーなの?」

    苗木(気にしないでと言われたが、こまるの一件が気になってしょうがない)

    霧切「もう忘れたの?祟りの原因が子供だという事よ」

    苗木「ああっ!!…でも何で?」

    霧切「少なくとも50年分ざっと見たのだけれど、赤のファイル。その全てに子供に対する記載は無かった」

    苗木(あの短時間で僕以上にファイルを!)

    霧切「もっと言うなら、子供が縊死している案件は1度も無かったわ」

    霧切「ただ、一時期赤いファイルの後に緑のクリアファイルで縊死の人が何人も居たわ。それには子供に関する記載があったけど」

    苗木「自殺…だよね」

    霧切「私にはそう思えないわ」

    苗木「探偵としての勘ってやつ?」

    霧切「いいえ、規則性があるもの。ただ一時期期間が空いていたのが気になるわね」

    苗木「それっていつのこと?」

    霧切「約20年前から一定期間。赤の後に緑の縊死が無いわ。それと30年以上前にはそんな規則性無かったわね」

    苗木「仲の良い人が祟りにあっちゃって自殺…とか?」

    霧切「考えられない事も無いわね。ただ苗木君、祟りという前提は止めた方が良いわよ。『前提が間違っていたら何も見えなくなってしまうもの』」

    苗木「うん。…分かったよ、そういえば霧切さんは祟り信じてないんだね」

    霧切「…ええ。当たり前よ。だってそれって思考の放棄じゃない」

    苗木「あはは、流石だね。確かに霧切さんってお化けとかも信じてないイメージがあるよ」

    霧切「……え、ええ」

    苗木(え?)

    霧切「………」

    苗木「………?」

    その時、まるで空白の時間を狙ったかのように。

    〜〜♩
    〜〜〜♬

    馴染み深い音と共に、僕のスマートフォンのディスプレイが光った。

  28. 28 : : 2016/01/11(月) 22:30:01



    その電話の主は


    ピッ

    戦刃『やっと繋がった』

    苗木「戦刃さん?!」

    戦刃むくろ。僕のクラスメイトで、行方不明になった江ノ島さんの実の姉に当たる人物。

    苗木「どうしたの?」

    戦刃『盾子ちゃんを‥見つけたの』

    苗木「本当!?」

    戦刃『でも、様子がおかしくて‥声を掛けたのに何も反応もしてくれなかった‥』

    苗木「人違いじゃないの?」

    戦刃『そんな筈ない。私が盾子ちゃんを見間違えるはず無い!』

    苗木「ご、ごめん」

    霧切「…苗木君。ちょっと貸しなさい」

    ガシッ

    苗木「あっ」

    霧切さんはボクの腕から携帯を強引に奪うと、そのまま耳を当てた。

    苗木(スピーカーにすらしてくれない)

    霧切「端的に今分かっていることを話して」

    戦刃『霧切さん?…分かった』

    戦刃『今分かっていることは、全ての行方不明者が姿を現したの』

    霧切「…っ」

    戦刃『だけどその全てがその人らしく無かったらしい。そしてまた消えた』

    霧切「消えた?」

    戦刃『壁をすり抜けたり、一瞬目を離した隙に消えたり、まるでドッペルゲンガーみたいに』

    霧切「そんなのあるワケが…」

    戦刃『私は‥ガガー‥お願い』

    霧切「何?聞こえないわ」

    戦刃『だから、気を‥ガー‥ガガー盾子ちゃ‥ガガー見つけ‥ガガー‥ガガー‥』

    ピッッ

    霧切「切れたわ」

    苗木「そうみたいだね」

    霧切「掛け直してみるわ」

    ピッピッ……ツーツー

    手際良くリコールをするも電話は繋がらなかった。

    苗木「なんて言われたの?」

    霧切「行方不明者が現れて、また消えた。まるで煙のようにね」

    苗木「江ノ島さん…」

    霧切「思い詰めていても仕方がないわ。それよりもこれからどうするか考えましょう」

    苗木「これから…」

    霧切「まあ、貴方には直ぐに行くべき場所があるでしょうけどね」

    促すように彼女は言った。

    一から十まで言わない所が実に彼女らしい。

    苗木「うん。僕は一旦旅館に戻ろうと思うよ。こまるも心配してるだろうし、霧切さんは?」

    霧切「私はここを調べてみる事にするわ。聞き込みは事前にして収穫が得られなかったしね。力になれるかは分からないけれど」

    苗木「いや百人力だよ!でも、江ノ島さんの件は大丈夫なの?」

    オーバーに聞こえるかもしれないが、これでも大分控えめだ。

    霧切「ええ、大丈夫よ。案外この事件が解決への糸口かもしれないし」

    苗木「?」

    霧切「…気にしなくていいわ。それと首を傾げてないで早く行ってあげなさい。貴方の妹さん、とても心配していたわよ」

    苗木「そうだね、じゃあそろそろ行くよ。霧切さんありがとう」

    霧切「感謝されるような事じゃないわ。私は私の為にするだけだもの」

    苗木「じゃあ、またね」

    霧切「ええ。また」

    手をヒラヒラと振る彼女に、此方も右手を振りながら僕は役所をあとにした。


  29. 29 : : 2016/02/24(水) 22:29:51



    【旅館:苗木の両親の部屋】


    A.M 07:58:59


    苗木「何故か凄く久し振りに感じるな…」スッ

    インターホンを押す前にドアノブに手を掛けてみる。

    鍵は開いているのか、ドアノブはすんなりと捻られた。

    僕はそのまま扉を開いた。

    こまる「……」バリバリ

    扉を開けて最初に目に入ったのは、奥で1人テレビを見ながら煎餅を頬張るこまるの姿。

    ブレない妹である。

    ブレない妹を見習って、僕もいつもの様にこう声をかけた。

    苗木「ただいま」

    こまる「えっ?」

    こまるは驚いたような声をあげ此方へ向く。

    こまる「…っ」ジワッ

    僕を見て、大きく目を見開き、口に運んでいた煎餅を床に落とした。

    こまる「あ、っああ…お…、お…」ポロポロ
    クシャっとした顔から涙が溢れる。

    苗木「おいおい、泣くなよ」

    未だ玄関に立ちながら僕は言った。

    それを聞いたこまるはスクッと立ち上がり。


    こまる「お゛に゛い゛ち゛ゃ゛ぁ゛ぁ゛ん゛!!」


    低い姿勢から此方へ突進してきた。


    突進してきた。


    突進。


    タックル。


    苗木「ハァ!?!?────ぐェッ!!」

    こまる「良かった。心配で夜しか眠れなかったよぉ」

    苗木(寝てんじゃん)

    ただ、こまるがこんな冗談を言うのは大抵照れ隠しだと僕は知ってるため、敢えて何も言い返さなかった。

    決して、痛みで言葉を発せなかったとかでは無い。



    〜〜〜30分後〜〜〜


    根掘り葉掘り聞いてくるこまるに僕は大雑把に状況を説明した。

    何故か途中で僕の恋バナになったのだが、此処では割愛する。

    役所での話が終わる頃には、こまるの鼻に提灯(ちょうちん)が出来て、机の上の煎餅は無くなっていた。

    1枚も食べた記憶は無いのに。



    苗木「と、言うわけだ」

    こまる「なるほどね!流石!」

    苗木(適当な相槌…)

    苗木「まあ、つまりはさっぱりなんだ」

    こまる「お風呂上がり?」

    苗木「いやそうじゃなくて」

    こまる「そうだよね。だって少し汗臭いもん」

    苗木「ホントか!?」

    苗木(霧切さんも汗臭いとか思ってたのかな、恥ずかしい…)

    苗木(『苗木君汗臭いなう』とか呟かれたら死のう、いや絶対そういう事はしないと思うけど)

    こまる「いや、嘘だけど」

    ケロッとしながらこまるは言った。

    苗木「やめろよ!ドキッとしたじゃないか!」

    こまる「嘘と言えば」

    声を荒げる僕を気にせず、こまるは思い出したように言った。

    こまる「もし祟りが無かったら、地蔵は誰かが隠したって事になるんだよね?」

    苗木「ん、確かにそうだな」

    こまる「でも、肝心の何処に隠したかがさっぱりなんだよね…」

    苗木「こまるならどこに隠す?」

    こまる「んー、森?」

    首を傾げながら、既に無い煎餅を掴もうとして空を掴む。

    苗木「いや、見つかるだろ」

    こまる「地蔵を隠すなら森の中?」

    苗木「それは木」

    こまる「地蔵を隠すなら地蔵地蔵地蔵の中?」

    苗木「3倍にすれば良いもんじゃないんだぞ!」

    こまる「やっぱり金庫みたいに鍵の付いた場所じゃないの?」

    苗木「そう…だよなぁ」

    こまる「それか粉々にされて川に流されちゃったとか?」

    苗木「いや、1日でそれは厳しいだろ。それに音もするし」

    こまる「うーん、流石に気付かれちゃうか」

    こまる「あっ、気付くといえば」

    またも何処かの高校生探偵のように──思い出した様にこまるは言った。

    こまる「何で村の人はあの地蔵が無くなったって気付いたの?あんな道から外れた所にあったのに」

    苗木「拝みに来る人とか居たんじゃないのか?」

    こまる「お供え物さえ無かったのに?」

    苗木「言われてみれば…」

    苗木(僕が聞いたのが女将さんで、女将さんが聞いたのが──)

    苗木「そうか、村長だ…。村長が人を集めるように呼び掛けたんだ」

    集める過程で何人かに話したのだとしたら女将達が知っていたことも説明がつく。

    苗木「これから村長の所に行ってみるよ。第一発見者が他にいて、村長に伝えた可能性もまだあるからね」

    苗木「こまるも来るか?」

    こまる「面倒だからパスー」

    おいKMR(こまる)

    さっきの涙はどこにいった。

    こまる「でも、気をつけてね」

    苗木「ああ。じゃあ、行ってくるよ」

    こまる「いってらっしゃーい」

    そう言いながら手を振るこまるは、やはり不安げな表情を浮かべていた。

    本当にブレない妹である。


  30. 30 : : 2016/03/09(水) 08:24:40



    【村長宅前】


    苗木「あのー、誰かいませんかー?」

    インターホンを鳴らしても応答無し。

    ノックをしても無反応。

    なので、今は声で呼び掛けている。

    苗木「留守…なのかな」

    ふと、堀で囲まれた家の奥にある物置に目が行った。



    苗木「えっ…?」

    僕は物置に向け1歩、また1歩と踏み出す。

    不法侵入になるかもしれないと考えたが、それでも歩を進めるのを止められなかった。

    苗木「なんだよ…これ…」


    村長の家にある物置。


    その閉ざされた扉から手招きするように、それは垂れ下がっていた





    それ────つまるところの










    金色の長い髪の束が







    苗木「………ッ!?」


    その髪には見覚えがあった

    行方不明になった、クラスメイトのものだ


    苗木「違う…っ…そんなわけ…」

    最悪の結論を思い浮かべ。
    首を振ってかき消すも、湧き出るように最悪の結論(それ)が脳裏に浮かぶ。

    苗木(逃げちゃダメだ…逃げちゃダメだ)

    不安を掻き消すように、縋るようにそう唱えるながら恐る恐る扉に手を掛け、そのまま勢い良く開いた。

    どうやら鍵は掛かっていないようだ。

    ガラガラ…

    開かれた扉の先から
    金髪の髪の主が此方へ倒れて来ることは無かった。


    ストンっ…と


    その金色の髪を纏った何かは重力に抗う事無く僕の足元へ落ちた。



    真下へ



    落下した



    苗木「っあァッ──────」



    金色の…



    苗木「…って、あれ?」

    足元に転がるソレを手に取る。

    苗木「マネキンの頭と、カツラ?」


    幽霊の正体見たり枯れ尾花と云う言葉をその身を持って経験したのだ。


    一息付いた後、僕は改めて倉庫を見渡す。

    そして見つけた。


    苗木「やっぱり、ここにあったのか」


    倉庫の中、僕の視線の先。首と胴の分かれた地蔵の姿がそこにあった。

    苗木「村長が恐れてなかった理由って…まさか」


    僕の中で1つの推理が繋がる。


  31. 31 : : 2016/04/28(木) 16:21:05


    苗木(村長が一連の犯人?いや、でも動機がない。それにあの人が犯人だって思いたくない)

    苗木(でも、村長がクビツル様を恐れない理由。これで辻褄があってしまう…)

    苗木(僕を貶める為?いや違う。だって何も被害は被ってないし、じゃあ何故──)

    霧切「あら、苗木君。一刻振りね」

    苗木「うわっ!霧切さん!?」

    霧切「うわって何?まるで幽霊でも見たような反応だけど」

    苗木「いや別に、ちょっと考え事しててさ、いきなり話しかけられたからビックリしちゃって…」

    霧切「ふーん、それで妹さんとは会えたの?」

    苗木「うん。会ったよ」

    霧切「じゃあ何でここに?」

    村長の家をチラリと見る。

    苗木「こまると地蔵の行方について話しててさ、1つ気になったことがあって、その事を聞きに来たんだ」

    霧切「もしかして第1発見者について?」

    苗木「!!…流石に僕の考える事はもう考えてるよね」

    霧切「別に、状況を整理して一番ありえそうな事を言っただけよ」

    苗木「そっか…」

    霧切「…………」

    苗木「…………」

    霧切「…………」

    続く沈黙。先に根を上げ、それを破ったのは僕だった。

    苗木「何かあった?」

    霧切「えっ?」

    不意にそう言われ、彼女はポーカーフェイスを崩し驚いたような表情で此方を見る。

    苗木「朝会った時から違和感はあったんだけど…」

    霧切「別に、何も無いわ。それにあったとしても一般人の貴方に話す義理は無い」

    苗木(無いって言ってるけど、この反応を見る限り何かあったんだね)

    苗木「情報の対価になるのは情報だよね。僕には君に対して有益な情報(カード)があるよ」

    若干セレスさんを意識したのだが、何故だろう。とても恥ずかしい。

    霧切「ふーん、苗木君にしては言うようになったじゃない」

    苗木「苗木君に()()()!?」

    霧切「で?そのカードって言うのは?」

    苗木「ああ、えっとね───」

    自ら折った話の腰を先払いと共に直し、改めてこれまでの経緯を大雑把に話した。

    当然先ほど見つけた地蔵についても。

    苗木「──と、これが僕の持ってる情報だよ」

    霧切「何で話してるのかしら?本当に何も無い可能性だってあるのに」

    苗木「だって、心配だから」

    霧切「何で何かあったと言い切れるのかしら」

    苗木「少し元気が無いからね」

    霧切「!」

    苗木「それに霧切さんの力になりたいんだ」

    霧切「………」

    苗木「………」

    またも続く沈黙。だが、今回沈黙を破ったのは彼女の方だった。

    霧切「はぁ。……分かったわ。でも、これは私の体験に基づくもので真実かは定かではない」

    苗木「うん。分かった」

    ズバズバと真実を言う彼女らしくない前置きに若干の違和感を覚えつつも、僕は頷いた。

    霧切「…江ノ島さんの生首が部屋の窓から私を見ていたのよ」


    苗木「江ノ島さんの生首!?」


    霧切「しかも喋ったわ」


    苗木「喋った!?!?!?」


    苗木「どういう事!?どういう事なの?!」

    霧切「夜中。二階の部屋から私の泊まってる部屋で誰かが窓を叩いたの。そちらを見ると首だけの江ノ島さんがそこに居たわ」

    苗木「何で生首だって思ったの?上から吊るしてるかもしれないよ?」

    霧切「人1人を吊るすのには一定の太さの紐が必要。それくらいの太さの紐なら暗くても見えるわ。でも、生首なら…」

    元々薄い肌の色をしている彼女が更に薄く、青ざめているように見えた。

    苗木「で、でもさ!まだ違う可能性だってあるかもしれないよ!黒い布を纏って木に登ってたとか」

    行方不明と繋がり不安になる気持ちを抑えながら、最悪の結末に繋がらないように生首では無い可能性を提示する。

    霧切「黒い布…は考えてなかったわね。でも窓の近くに木は無かったわ」

    が、それもあっさり流れてしまう。

    苗木「そっか…他に何か見てないの?」

    霧切「ごめんなさい。それ以上は何も分からないの、目を離してしまって…」

    彼女は溜息を漏らしながらバツの悪そうに目を逸らす。

    苗木「そりゃあ、僕だってその場に居たら凄く怖かったと思うし、しょうが無いんじゃないかな?」

    霧切「しょうがない……ね。少しだけ気が楽になったわ」

    顔色も声色も変えずに彼女は言う。

    その直後。

    「君達、こんな所に居たのか」

    僕の後方から、声が聞こえた。
  32. 32 : : 2016/04/28(木) 16:33:49


    声の方に目をやるとそこには村長と女将の姿があった。

    霧切「こんな朝早くから何処へ言ってたんですか?」

    村長「朝…早くはないと思うけどね。見回りさ」

    苗木「見回り?」

    女将「そうよ、グビツリ様の被害にあってる人が居ないか一部屋一部屋回ってたの」

    苗木(成る程、こまるの部屋の鍵が開いていたのは確認された後鍵を閉めなかったからか)

    苗木「そうだ、結果はどうだったんですか?」

    女将「ふふっ、皆無事だったわよ。たった今貴方達2人を入れてね」

    悪戯そうに女将は笑う。どうやら僕達の事を探してくれていたらしい。

    苗木「すいません…」

    女将「感謝はされても謝罪はあんまりされたくないかな、見回りは村長と女将の仕事だし」

    旅館ではないからか、女将は昨日の夜の様に砕けた口調でそう言う。

    苗木「あ、えっと、ありがとうございます」

    霧切「………」

    村長「逆に君達はこんな時間からどうしたんだい?」

    社交辞令か、自分の家の前で話しているのを見てか村長はそんな風に尋ねてくる。

    その問いに対し答えたのは霧切さんだった。

    霧切「ええ、少々お話があって。お時間宜しいですか?」


    先の前置きとは違い、これは実に彼女らしい前置きだった。


    村長「時間は大丈夫だけれど…何についてだい?」


    例えるなら、洋館で起こった連続殺人、その洋館内に居た全ての人をロビーに集めた後の様な。



    霧切「グビツリ様に……いや」




    そんな探偵の様な前置き。




    霧切「正しくはこの村の秘密について」


  33. 33 : : 2016/05/02(月) 18:09:57


    村長「そうかい。まあ立ち話も何だから入りなよ」

    そんな彼女の言葉を軽く流す様にし、村長は鍵を取り出しながら家へ入る様に促す。

    霧切「ええ」

    彼女は短い返事の後村長と女将の後を追う様に家へ入っていった。

    苗木「お邪魔します」

    当然僕もその後に続く。




    8月12日

    AM:09:12:05


    【村長の家】和室


    霧切「そういえば2人は何時から村長と女将になったのかしら」

    その発言が和室に招かれてから最初に発言されたものだった。

    女将「2人とも2年前よ。同時にね」

    脈絡の無い世間話。

    僕もそれに乗っかる事にした。

    苗木「その、変な質問だけど、元村長と元女将は今どうしてるんですか?」

    村長「前任村長は2年前当時の女将と一緒に死んだよ。大雨の日、ここから少し離れた山の中で土砂に巻き込まれて」

    苗木「!」

    霧切「失礼な質問だけれど村長との関係は?」

    村長「俺の……オヤジさ」

    言葉に詰まりながら、彼は言う。

    霧切「…ごめんなさい。あまりにもよそよそしく言ってたから」

    村長「いや、良い。気にしないでくれ」

    全く気にも留めず。顔色も表情1つ変えずに村長は話を続ける。

    村長「それでグビツリ様についての話ってどういう事だい?」

    惚けてるのか、本当に知らないのか彼はいつもと変わらぬ口調でそう言う。

    霧切「単刀直入に言うわ。グビツリ様の祟りなんて本当は存在しないわよね」

    村長「どうしてそう思うんだい?」

    特に動揺した様子も無く、村長は理由を聞いた。

    霧切「まず、饅頭が不自然過ぎるわ」

    霧切「最初の数回で誰も信じてない状況なら分かるけれど、食べてない人が死んでるのよ。普通食べるでしょ」

    苗木(…確かに)

    霧切「もし苗木君がグビツリ様の話を聞いて、過去に食べてない人が死んだ事を知っているとして、饅頭を渡されたらどうする?」

    苗木「い、急いで食べるんじゃ…ないかな」

    いきなり話を振られた僕は、役所での事を思い出しながら答える。

    霧切「そう。その通りよ、大抵その場で食べるでしょうね」

    それを聞いて彼女は嬉しそうに頷く。

    苗木「でも、饅頭食べてない人が現れて、その人は殺されちゃうんだよね」

    霧切「逆よ」

    苗木「逆?」

    霧切「被害者の部屋に饅頭を置くのよ。自分達が祟りと見せかけて殺した亡骸の横にね」

    苗木「!!確かに、それだと不自然な流れが自然になるね」

    霧切「そして、それを仮定して話を次に進めるわ。その饅頭を誰が置くのかしら?苗木君。ここまで言えばわかるわね」

    苗木「一番最初に見回りを行う人物。つまり村長さんと女将さん…?」

    村長「………」

    霧切「そう。つまりグビツリ様は人為的なものなのよ」

    女将「違うわ!私達は何もしてないわ」

    霧切「ええ。そうかもしれないわね。だって前任の2人が亡くなってから未だグビツリ様の祟りは起こってないもの」

    彼女は全てを見透かしたように、ただ淡々と推理を述べていく。

    霧切「前任の村長と女将を殺したのは貴方達でしょう?」

    ハッタリなのか何か証拠があってなのかは僕には分からない。分かるのは当人達だけ。

    村長「おいおい、話が脱線してるぞ。何をもってそんな事を」

    霧切「そもそもおかしいもの。何故足腰の弱くなった老人が大雨の日に山へ向かったのかしら?ただの自殺行為としか思えないわ」

    村長「山にはグビツリ様の本殿が有ったんだよ。だから何か用があって行ったのかも…」

    霧切「そこが一番おかしいのよ。何故息子である貴方がそんな曖昧な発言をするのかしら?」

    霧切「普通、実の父が大雨の日に出掛けようとすれば声を掛けるわ。逆に父からも貴方へ何も伝えてない事に違和感がある」

    女将「ちょ、ちょっと待って下さい!」

    女将「何故ですか?何でそんな言い掛かりみたいな推理を押し付けるんですか?!」

    女将「それに私達に動機なん───」

    霧切「貴方達がグビツリ様という祟りをこの村から迫害しようとしていたからよ」

    女将の言葉に被せる様に霧切は言った。

    村長「!!」

    女将「!!」

    霧切「2人は知っていたのでしょう?グビツリ様が嘘っぱちの伝承だと。悪しき風習だと」

    霧切「だから苗木君に罪を被せる形で地蔵を隠した」

    霧切「グビツリ様の存在を殺すために」
  34. 34 : : 2016/05/02(月) 18:11:31


    村長「隠した?おいおい何の冗談だよ。そんな事するわけないだろ?」

    霧切「いいえ、隠したのよ。そして私達はそれを見つけたの」

    村長「!!ど、何処にあったって言うんだ」

    その時初めて村長が、僕にも分かる程の動揺を見せた。

    苗木「村長の家の倉庫、鍵が開いてたんです。それで中を見たら…」

    村長「そんなわけない!た、確かに鍵は閉めた!!」

    霧切「それは自白と取って良いのかしら?」

    村長「ぐッ!」

    焦りからか村長は口を滑らせる。

    霧切「ねえ、何でこんな事をしたの?」

    村長「…俺の血液型はAB型、元村長はO型だった。何が言いたいか分かるかい?」

    霧切「…血が繋がってない」

    村長「そうだよ。つまり養子なんだ」

    霧切「以前の家庭の事は覚えているの?」

    村長「覚えてるよ。ただの農家だった。決して裕福ではなかったけど幸せだった」

    村長「だから忘れない。そんな平穏を奪った彼奴らを!」

    苗木「平穏を奪った?それってどういう…」

    村長「グビツリ様の仕業に仕立て上げて殺された被害者。その息子が俺さ」

    苗木「そんな…っ」

    村長「似たような境遇の奴は何人か居た。皆何も知らず楽しく暮らしていたよ。俺以外は──!!」

    怒号を上げながら、村長は女将を指した。

    村長「こいつは酷い仕打ちを受けていた。暴力を振るわれたり、グビツリの罪の片棒も担がされて…」

    女将「なんで、相談してくれなかったのよ!!」

    言い終わる前に女将は叫ぶ様に言った。

    悲痛の表情を浮かべ、涙を流しながら。

    村長「君だけが、僕にとって…本当の家族のようなもの…だったからだよ」

    女将「っ!」

    村長「グビツリ様の真相が明るみになれば、辛い思いをする者や巻き込まれた為に共犯扱いされる人も出てくる」

    苗木「……」

    共犯扱い。間違いなく女将さんの事だろう。

    彼は彼女の為に。家族の様な存在彼女の為に僕というイレギュラーを使った。

    村長「グビツリ様は物語のまま殺さないといけなかった…」

    村長「だがそれは君に罪を被せて良い理由にはならない。すまなかった」

    そう言いながら彼は深々と頭を下げた。

  35. 35 : : 2016/05/02(月) 18:22:54


    苗木「そんな、頭を…あげて下さい」

    僕自身害は受けていないし。

    そんな事情もあったんじゃ怒る気にすらならない。

    でも聞きたい事はあった。

    苗木「2つ、お答えしてもらって良いですか?」

    村長「ああ、何でも答えよう」

    苗木「まず何でグビツリ様の伝承を終わらせようとしたんですか?」

    村長「簡単さ。アイツラが死んだ今、誰もグビツリ様として動く者が居なくなった。そうなれば若い者も気付くだろう『グビツリ様は人為的なものなのだ』と」

    村長「あの雨の日、村長と女将を手紙で呼び出した。…当然殺す為に」

    村長「俺がまだ子供の頃から彼奴らは日頃何かに怯えてたよ。それはきっと俺への恐怖なんだと思うが…」

    目を細めながらそう言い。話を続ける。

    村長「手紙の内容は、グビツリ様の秘密を暴いた文章を書いて、これをばら撒かれたくなかったら山の本殿まで来い。って内容だった」

    村長「証拠は洗い流される。俺は殺すつもりだった。だが、俺が殺す前に彼奴らは死んだよ、土砂崩れでな」

    女将「何それ…!私そんなの知らなかった」

    村長「この件だけは君を巻き込みたくなかったからね…」

    苗木「待って!霧切さん。これっておかしくない?」

    霧切「ええ。おかしいわ」

    村長「可笑しい?何がだ?」

    苗木「じゃあ呼び出した紙は何処に消えたの?さっきの様子じゃ女将さんは旅館で見つけて無かったみたいだし」

    霧切「不利益な情報を見られない様に捨てた。という可能性も捨てきれないけれど。万が一の時の為に持っておくんじゃないかしら?だって【グビツリ様の秘密】自体が書いてあったわけじゃないんだから」

    村長「じゃあ何で手紙は見つからないんだ」

    霧切「処分したからよ」

    村長「言ってる事がめちゃくちゃじゃないか!!!!」

    霧切「違うわ。自分達の為じゃなく、犯人の為に捨てたのよ」

    村長「…俺のため?」

    霧切「きっと気付いていたんじゃないかしら」

    村長「じゃあ何で山に行ったんだ!俺の事を疑ってるなら直接問いただせば良いだろ!」

    霧切「最悪の結末にならないって信じていたから。または、そうなっても良いと思っていたからじゃないかしら?ただその時貴方が疑われない様に手紙を処分した」

    村長「俺の事を信じていた?じゃあ何故アイツは怯えていたんだ?グビツリ様が居ないのは本人が1番良く分かっている筈だ。俺以外に怯える相手は…」

    霧切「そう。やはりそうなのね」

    村長「やはり…?殺した人間の息子に復讐されるのを恐れていたからじゃないのか?」

    霧切「ええ、違うわ。この村にはグビツリ様に紛れて殺人を犯す人間が居るからよ」

    村長「!!」

    苗木「!!」

    霧切「きっと貴方の両親を殺したのは元村長では無いわ。模倣犯よ」


  36. 36 : : 2016/05/02(月) 18:26:38

    村長「なんで…そんなことが言えるんだ」

    霧切「さっき自分で言ってたじゃない。貴方の親が農家だからよ」

    霧切「役所にあった赤いファイルの人物。それは全員有権者だったわ。それを調べてみたらダム建設や村に良くない事を起こそうとしていた」

    霧切「つまり首吊りのターゲットに選ばれるのはグビツリ様に手を出した人間ではない。村に仇なそうとする人間」

    霧切「饅頭と同じで逆なのよ。罰当たりがターゲットじゃなくて、ターゲットが罰当たりに仕立て上げられるの」

    霧切「じゃないと事前に饅頭配りなんて行われないわ」

    村長「ぐっ…」

    霧切「元村長は貴方の事をとても大切にしていた筈よ。だって、貴方のために命を懸けれる人だったもの」

    村長「命を…かけれる?」

    霧切「遺書は書いてるのに、貴方から呼び出された手紙は処分されているのよ」

    霧切「遺体からそんな手紙が出てきたら事故じゃなくて捜査線は他殺に変わるわ。結果が事故だったとしてもね」

    苗木「さっきも言ってたけど分かっていたんじゃないのかな。誰が犯人か」

    苗木「だってグビツリ様の秘密を知っている人自体少なかったんでしょ?」

    村長「いや正確には勘付いてる人は結構居た筈だよ。だってアイツが死んでから殆どの年配者達はグビツリ様という存在に無関心になったからな」

    霧切「黙認してたお年寄りの人達がわざわざ山の上に呼び出すなんて考えられないわね」

    村長の言うアイツはおそらく前任の村長の事であろう。

    最初に村長の家に行った時の若い人の割合にも合点がいった。

    霧切「彼らも次の世代に移したのよ」

    村長「自首でも何でも方法は有った筈だろ!」

    霧切「それじゃ駄目なのよ」

    村長「何が駄目だって言うんだ!」

    霧切「彼らが自首すれば絶対的な存在であるグビツリ様の畏怖は消えるわ」

    霧切「そんな事が起これば、またダム建設や村の売買を考える輩が出てきてしまう」

    霧切「でも、グビツリ様を大切な息子にさせたくなかった。それが村長の考えの筈よ」

    村長「くそッ…くそ!!!何だってんだ…俺は…俺は」

    村長は行き場の無い怒りをぶつける様に壁を殴る。

    女将「彼はどうなるんですか…。そしてこの村は…」

    霧切と壁を殴る村長を交互に見ながら不安そうにする女将は弱々しく口を開いた。

    霧切「私は探偵よ。真実を見つけるだけ。後は管轄外よ」

    霧切「だから。何もしない。罪を犯していない彼には特に干渉しないわ」


  37. 37 : : 2016/05/02(月) 18:28:21


    ──それでだけど。と改めて村長の方を見ながら霧切は言った。


    霧切「神隠しに付いて、何か知らないかしら?」

    村長「………」

    その質問に対し村長は何も答えず。ただ俯いて黙る事しかしなかった。

    霧切「何か知ってるのね」

    苗木「ねえ霧切さん突然どうしたの?」

    霧切「江ノ島さんはこの村で行方不明になった。私にはどうもこれが無関係とは思えないのよ。その後に起こった事もね」

    苗木「その後の事?」

    霧切「貴方も聞いたでしょう?戦刃さんからの電話で行方不明者が集団で現れた事を」

    苗木「えっ…?」


    何か、おかしい。何か…


    何か────




    …ああ成る程。そういう事だったのか。




    ────推理は繋がった。



    苗木「僕も解けたよ。────────神隠しの謎がね」

    霧切「っ!?どういう事?」

    突然そんな事を言い出す僕に、霧切さんは本気で驚き、声を上げる。

    気付ける筈なかった。何故なら()()から違うのだから。















    行方不明者は複数人など居ないのだから。





















    苗木「ねえ。聞いてるんでしょ───」















































    苗木「───江ノ島さん」



  38. 38 : : 2016/05/02(月) 18:47:44



    江ノ島「ひゃっはーー!!!バレッちまったぜ!!!!」

    霧切「!!」

    勢い良く襖が蹴破られ、行方不明になっていた筈の彼女は姿を現した。

    江ノ島「苗木君如きにバレるなんて…絶望的です…」(キノコ

    苗木「如き!?」

    江ノ島「簡単に解説します。これはタダのネタバレを凝縮したお話なのでストーリーはありません」(眼鏡

    江ノ島「まず、私がこの村にロケで訪れました。そこでこの村の全貌を明らかにしたのです」(眼鏡

    江ノ島「その後、村長を脅し私を匿まわせます。警察犬を欺くために残姉に私のでは無く、彼女の衣服を渡します。これで完璧です」(眼鏡

    苗木「何で…こんな事したの?」

    江ノ島「いや、暇だから霧切でもからかって遊ぼうと思って」

    霧切「私の部屋にはどうやって?」

    江ノ島「ああ、あれは黒い布を纏って残姉の上に乗ったの。分かる?組体操の電柱」

    江ノ島「へへっ、今でもブルッた霧切の顔は忘れられねぇぜ!!」(出っ歯

    霧切「別に震えてなんか居ないわ」

    江ノ島「そんな真顔で言わないでください……嘘ついてるって思われるじゃないですか……」(キノコ

    苗木「僕が来たのも何か関係があるの…?」

    江ノ島「んや、そこは偶然だよ。でも面白そうだから苗木に罪被せた。元々壊したのは私だよ」

    苗木「酷いよ!!」

    江ノ島「それにしても村長さん。私にも村の秘密を見破られて、利用された挙句村にフラッと現れた探偵に解決されるなんて絶望的だよねっ♫」(きゃるーん

    村長「…いや、そうでもないさ」

    江ノ島「は?」

    村長「アイツは──オヤジは俺に、希望を残そうとしてくれたんだからな」

    江ノ島「はぁー、クッサ。そんな反応望んでないっつーの」

    七変化を止め素に戻った彼女冷めてしまったのか大きくため息をついた。

    江ノ島「じゃっ、私残姉が麓で待ってるから帰るわ」

    霧切「待ちなさい。貴方には幾つか聞きたい事があるわ」ゴゴゴゴゴ

    江ノ島「おーっ、怖。あとアンタ握力強く無い?もしかしてゴリラ?肩痛いんですけど」

    霧切「………」ゴゴゴゴゴゴゴ

    江ノ島「黙んなって、キャー怖いっ苗木助けて!」

    苗木「うわっ、こっち来ないでよ!」

    江ノ島「あ?今アンタうわって言ったな。スーパーベリーキュートな私様に向けてうわって…!うわっ!苗木希望臭!!」

    苗木「希望臭いって何!?」

    霧切「それじゃあそろそろ失礼するわね」

    女将「ええ、二人ともありがとうね」

    苗木「いえ!僕達は何もしてません!それよりもお邪魔しました」

    村長「ああ。ありがとう、是非またこの村に遊びに来てくれ」

    苗木「はい!是非!!」


    その後僕ら3人は村長の後にした。

  39. 39 : : 2016/05/02(月) 18:49:21

    江ノ島「さぁて霧切、今回私様の事件解決出来なかったけどどうだった?」

    村長の家を出た後、肩を強く掴まれた復讐なのか江ノ島さんは霧切さんを煽り始めた。

    霧切「別に。私のナンバーは8じゃなくて9だったもの」

    江ノ島「言い訳?言い訳なのかな?」

    霧切「役所の女性は良い人だったわね」

    江ノ島「あ、話逸らした」

    苗木「えっ?違うよ!役所の人はお爺さんだよ?」

    霧切「…何言ってるの?役所に勤めているのは彼女1人よ」

    苗木「ええ!?」

    霧切「まあ、その件は置いといて」

    苗木「置かないでよ!」

    苗木(じゃあ、あのお爺さんは…?)

    江ノ島「ちなみに役所に勤めてるのは女性だったよ。アンタだって女の人と話してたじゃん。あれは女将だけど」

    苗木「何でそんな直接見てたような言い方してるの?」

    江ノ島「ああ。監視カメラで見てたから」

    苗木「はぁ!?何で!?」

    江ノ島「霧切が不法侵入する動画を抑えて弱みにしようと思って村の彼方此方に」

    苗木「最低だよ!!!」

    江ノ島「ちなみにそれ以外はアンタ1人で喋ってたよ」

    苗木「え゛ぇ゛!?嘘だよね!嘘だと言ってよ!!」

    江ノ島「嘘じゃ無い。はい、嘘って言ったよ」

    苗木「………アポ」

    江ノ島「そ、れ、で、霧切。アンタの話はまだ終わってないんだけど」

    霧切「………」

    苗木「でも、戦刃さんが嘘を言ってたみたいだし分からないのはしょうがないよ」

    霧切「…いや、それ以外に1人だけ居るわ。正確には私に嘘の情報を吹き込んだ人物がね」

    苗木「…誰?」

    霧切「企業秘密よ」













    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


    その数日後。学園長が行方不明になるのを今の僕は知らない。

    苗木「嗚呼、何故彼は居なくなってしまったのだろう」

    霧切「さあ」


    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



    こうして、僕の奇妙な旅行と不可思議な事件は終わりを告げた。

  40. 40 : : 2016/05/02(月) 18:59:10


    ーーーーーーーーーー


    8月13日

    AM01:05:30

    男が目を覚ますと何故か首に吊るされた縄を掛けられた状態で椅子の上に立たされていた。

    腕は縛られ、身動きは取れない。

    村長「ん…何だこれ」

    ボヤける思考で現在の状況を理解出来ない男に、その身体を支えている女が声を掛ける。

    女将「あら、おはよう」

    村長「これは、どういう状況だ?何がどうなって…」

    震える声で男は聞いた。

    女将「死んでもらうの」

    村長「死んで…もらう?」

    思考がボヤけてる所為では無く。それを言うが女性が女将(彼女)の為理解できなかった。

    女将「首を吊って死んでもらうの」

    村長「なんで君が?なんで…!!!!!!」

    事態の異常性を理解した男は怒鳴り声をあげる。

    女将「それは、私が偽グビツリ様だから」

    村長「なっ…」

    女将「正確には二代目偽グビツリ様」

    女将「先代女将と先代村長が真に恐れたものってなんだったと思う?」

    村長「………真に恐れたもの…?偽物じゃなくて…」

    女将「偽グビツリ様と思って殺した私のママとパパが無実だったかもしれないという事よ」

    女将「まあ、結果は大正解なんだけどね」

    女将「気付ける筈ないよね。偽グビツリ様(パパとママの役割)を引き継いだ(二世)が居たから。偽の二世が居たんだから…ふふッ」

    村長「そんなっ…」

    冗談交じりに女将は笑う。だがそれは村長にとって到底笑えるものではなかった。突き付けられたの絶望的な真実なのだから。


    女将「そうそう」


    青ざめた表情の村長見て、思い出したように女将は


    女将「ねえ。良い夢は見れた?」


    甘くとろけるような声で、そう囁いた。


    村長「それは…何のことを言ってるんだよ、睡眠薬の事を言ってるのか…?それとも…今までのことを言ってるのか!!?!!?」


    この状況以上に、今まで信じていたものが根底から覆されてしまうかもしれない事に男は狼狽えながらも問う。


    女将「ごめんね。私の家族はママとパパだけなの。決して褒められない事をしたのは分かってる。でもたった2人の家族なの」


    女将は謝りながら、しかし確かに彼を拒絶した。


    家族のように思ってくれていた彼を、枠から外した。


    女将「先代の女将は厳しかったけど愛情も注いでくれたわ。私にはそれが嫌で、彼女が憎くて仕方なかったけど」


    村長「………」


    女将「でも感謝してる事もあるのよ。お嬢ちゃんの見抜いた、饅頭を使った偽装がしやすかったもの」


    女将「ママとパパは自分に渡された饅頭を使っていたわ」


    女将「元々容疑者としてリストに上がっていたみたい。だからママとパパの餡の色を変えられて、それが現場にあったからバレて吊られたの」


    女将「それも白餡にね…。皮肉すぎるわよね?」


    村長「なんで…こんな事するんだ…。なんでそんな事を続けるんだ!!!!なんで、なんで…!!!」


    女将「だって楽しいじゃない」


    まるでお気に入りのオモチャで遊ぶ子供のような無邪気な笑顔を浮かべた。


    子供なのだ。親の行動を真似る子供。


    村長「これも…これも遊びだっていうのか…!?」


    女将「遊び?そんな言い方しないでよ!人を殺すんだよ?」


    軽く頬を膨らましながら、女将は椅子に手をかける。


    村長「やめろ…やめろよ…っ」


    グラグラと揺れる椅子の上でバランスを取るようにしながら男は制止を乞く。


    だが、それは聞き入れられない。


    女将「天国で、もしパパとママに会ったら、あなた達の娘は立派に育ってるって伝えてね」


    村長「やめてくれぇええええええええ…!!!!!!!」


    誰かに助けは請うことはしなかった。


    だけど、命乞いはした。


    それは誰かが近くを通る可能性より、家族のように思っていた女性が踏み止まってくれると信じていたから。


    それに対し女将は「ふふふっ」と笑い、甘くとろける様な声でこう続けた。


    女将「だぁめ。…だって、ママとパパが殺した相手の子供を、ママとパパの子供の私が殺すって最高にロマンチックじゃない?」


    村長「……ッ!!!!」


    絶句し。言葉を失った彼に対し。女将は椅子に手を掛けながら声をかける。


    女将「逝ってらっ────────」




    ダンッ!!






    襖が蹴破られる。まるでこのタイミングを待っていたかのように。


    そして其処に立っていたのは。





    霧切「やっと。尻尾を出したわね」

  41. 41 : : 2016/05/02(月) 19:04:03


    女将「…なんで?」

    何でここに居るの?女将は震える声でそう言いながら首を傾げる。

    霧切「言ったでしょ、私は探偵。そしてこれは事件。立派な管轄内よ」

    女将「そうじゃなくて、何で此処に駆けつけてるの?!何も気付いてなかったのに!!!」

    霧切「私を監視する為に悪趣味なクラスメイトと父親がこの村に盗撮道具と盗聴道具を設置していたのよ」

    霧切「それと、気付いていなかった?勿論気付いていたわよ」

    霧切「死神の足音って信じる?」

    女将「は?」

    霧切「まあ、信じないならそれで良いわ」

    女将「まさか、それだけ?」

    霧切「いえ、決定的だったのは村長の発言よ」

    霧切はニヤリと笑い、突きつける。

    霧切「何で貴女が罪の片棒を担ぐような事があったのかしら?」

    霧切「口封じでしょ?貴女が模倣犯をしている姿を見られたんでしょ?」

    村長『こいつは酷い仕打ちを受けていた。暴力を振るわれたり、グビツリの罪の片棒も担がされて…』

    村長『グビツリ様の真相が明るみになれば、辛い思いをする者や巻き込まれた為に共犯扱いされる人も出てくる』

    霧切「同じ屋根の下に住めば違和感に気付くでしょう。偽物だって。屋根の下で過ごしてなくとも村の高齢者は勘付いてたし」

    霧切「暴力は偶然見てしまったか見間違いでしょうね」

    霧切「ただ、饅頭作りで罪の片棒を担ぐなんて言うかしら?」


    霧切「配るのも確認するのも、()()()の村長と女将の仕事でしょ?」


    霧切「動揺したでしょうね。思わず会話を遮る程に」

    霧切「焦ったでしょうね。直ぐに消さないとと思う程に」

    捲したてる様に霧切響子(探偵)は言う。

    女将「なんで…何で今更現れるの」

    霧切「証拠が必要なのよ。貴女みたいに狂ってる人間でも、捕まえるには」

    霧切「それに、まだ疑いの段階だったし。彼が貴女を庇う事も考えたうえでよ」

    女将「私が…狂ってる?」ピクッ

    霧切「ええ。狂ってるわ。貴女の両親も、当然」

    女将「…私の事は、まあ、良いよ。でも…」

    ジリッと距離を詰めながら、ゆらりと女将が動いた。

    女将「ママとパパの事を馬鹿にするなッッッ!!!!!」ダッ!

    女将は武器も何も持たぬまま手を伸ばし、霧切へ掴みかかろうとする。

    癇癪(かんしゃく)をおこした子供のように。単純に。

    霧切「哀れね」スッ

    伸ばされた腕を半身で避け、足を掛ける。

    それだけで女将は転び、ろくに受け身も取れず激しい音を立てながら畳に突っ伏す。

    カシャンッ

    立ち上がる時間も与えず、何処から取り出したか手錠を、女将に背中で円を描くように掛けた。

    女将「終わり…?終わりなの?終わり…」

    霧切「何も始まってなかったわ。貴女は…親の延長戦をしていただけ。終わり続けて。間違い続けて居たのよ」

    カシャンッ

    手錠を脚に掛け、動きを止める。

    そこで女将は抵抗を止めた。残った口すら動かす事は無かった。






    霧切「大丈夫かしら?」

    村長「嘘だ…嘘…、全部、夢なんだ。全部…ぜんぶっ…」

    未だ小刻みに震える村長へ近付きそう聞くも返事はなかった。

    その男に霧切の声は届いていなかった。

    それでも霧切は言った。

    霧切「ごめんなさい。村の外に停めてあるトラックから急いで駆けつけたのだけど、もっと近くで張り込むべきだったわ…」

    村長「悪い夢だ……、そうじゃなきゃ俺は……彼女は……夢。悪夢」

    霧切「でも、これからは私の手に負えないわ」

    霧切「だってこれは…管轄外なのだから…」












    数日後男は首を吊った。

    側には饅頭ではなく遺書が置いてあったらしい。

    3年後。その村は廃れ、土地はダムに沈んだ。



  42. 42 : : 2016/05/02(月) 19:04:25


    首吊る村 END
  43. 43 : : 2016/05/02(月) 19:08:08

    終わりました!

    動機、トリック、物語全て家族に関係する様に書きました!

    全然ホラーしてませんが精一杯でした。

    8月からなので9ヶ月かかりましたが、素敵な企画に参加出来て光栄です!
    ありがとうございました!
  44. 44 : : 2016/05/04(水) 14:47:41
    お疲れ様でした!
  45. 45 : : 2016/10/22(土) 17:08:24
    なんでクビツリ様から血が出てたんですか?
    いたずら?赤い絵の具ですかw
  46. 46 : : 2016/10/22(土) 23:22:34
    >>45
    好きにとってもらって大丈夫ですよ!
    その他ちょこちょこ曖昧にしている部分は、全部説明するより曖昧な方がホラーっぽいかなと思って!(内容がほぼミステリーのため)

▲一番上へ

名前
#

名前は最大20文字までで、記号は([]_+-)が使えます。また、トリップを使用することができます。詳しくはガイドをご確認ください。
トリップを付けておくと、あなたの書き込みのみ表示などのオプションが有効になります。
執筆者の方は、偽防止のためにトリップを付けておくことを強くおすすめします。

本文

2000文字以内で投稿できます。

0

投稿時に確認ウィンドウを表示する

著者情報
be_ta0620

ベータ

@be_ta0620

「ダンガンロンパ 」カテゴリの最新記事
「ダンガンロンパ 」SSの交流広場
【sn公式】ダンガンロンパ交流広場