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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

前略、壁の上から【ベルトルト誕生日記念】

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  1. 1 : : 2014/12/30(火) 22:21:49
    ソイヤ!
    ソイヤ!
    ソイヤソイヤソイヤソイヤ!

    …ではなく(わからないかたは『一世風靡セピア』で検索してみましょう。人生の無駄知識がひとつ増えます)。

    ベルトルトさんのお誕生日作です
    シリアス…な気がします。

    一先ずお誕生日当日にスレッドたてて、他SSと並行して書きますので、ゆっくり更新かもしれません。


    読みやすさを優先し、執筆中はコメントを制限させていただいてます。
    応援メッセージをいただけますと、大変励みになりますので、よろしければグループにコメントお願いします。
    参加申請なくても書き込み大歓迎です♪

    http://www.ssnote.net/groups/749/archives/1

  2. 2 : : 2015/01/02(金) 00:49:11
    その日


    昼下がりの空の下
    眼下に臨んだ景色を僕は一生忘れないだろう。



    どこまでも広がる青空の中で
    太陽を背にした僕の影は街に注いでいた日差しを遮った。


    大気熱との温度差に蒸気を上げる僕の体に気づいて壁の上を見上げた人々は

    一瞬のうちに恐怖に満ちた目を見開いた。



    壁の上から顔をのぞかせて見下ろした景色は
    密集した建物も川も人々も全部
    精巧に作られたジオラマのようで


    逃げ惑う人々のちょろちょろと忙しなく動き回る様は、幼い頃に観察した道端の蟻のようで
    現実のようには感じられなかった。


    感じないように遮断していたのかもしれない。
    自分を守るために。


    そうして僕は
    サッカーボールでも蹴るような気軽さで
    100年も閉めきった閉鎖空間に風穴を穿った。



    壁の上から見下ろした景色は
    小さな蟻の支配者になったような優越感を与えると同時に
    現実のちっぽけな自分を思い出させるもので


    なんだかとても泣きたくなった。


    そして見上げた空の色はとても綺麗で
    それでやっぱり、泣きたくなった。

  3. 3 : : 2015/01/03(土) 02:32:56
    「なぁ、お前、でっけぇなぁ!何センチあるんだ!?」


    訓練兵団に入って間もなく、声をかけてきたのは坊主頭で物怖じしない明るい雰囲気の少年だった。


    周りの訓練兵たちより頭ひとつ分身長が高いので、目立つのだろう。
    僕自身は、とりたてて目立つ性格ではないし、目立ちたいとも思わないし、むしろ目立たない方が良いのだけど。


    話しかけてきた同期生を見下ろす形になるのは、身長差があるから仕方ないことなのだけど、それを偉そうだとか、高圧的だとかいう風には取られていないといいなと願いながら、答える。


    「192センチかな…。最近ようやく伸び止まったよ」


    「そっかぁ!すげえな。ちょっとした巨人並みだな!?」


    数値に驚いた坊主頭の同期生の言葉に、僕は内心冷や汗をかく。
    『巨人並み』
    …比喩だということはわかっていても、心臓に悪い。


    僕が固まっているのを見て、すぐに同郷の頼もしい仲間が助け船を出してくれた。


    「おいおい、あまり変な噂流すなよ?身長だけじゃなくてアッチのほうも巨人サイズだとかな?」


    短めに刈った金髪の仲間、ライナーは人付き合いが上手い。男同士にはちょっとした下ネタですぐ打ち解けることを知っている。


    「何っ!?聞き捨てなんねぇな…。こうなったら…今夜は風呂場で勝負だ!!」


    「ええっ!?なんの勝負っ!?」


    ライナーのお陰で難を逃れたと思ったのに、おかしな方向に話が流れていて、動揺する僕。


    「男には引いてはいけない状況がある。今がそうだ、ベルトルト」


    当のライナーは、完全に見物モードだ。
    …裏切り者め…。


    「よぉし!じゃあ、今夜、フタマルマルマル、風呂場で会おう!俺はコニー・スプリンガーだ!よろしくな!」


    「ベルトルト・フーバーだ…あの、本当にしないとダメかな、勝負…?」


    おずおずと、さりげなく中止したい気持ちを滲ませる。
    しかし、そんなデリカシーの通用する相手ではなかった。


    「おうよ!ハダカの付き合いで仲良く勝負すっぞ!?負けねぇかんな!?」


    仲良く勝負って何?という僕の疑問は却下された…。
  4. 4 : : 2015/01/04(日) 00:25:32
    「…男のデカさは見かけじゃねぇよ…」


    20:00(フタマルマルマル)の入浴時間の後で、コニーはブツブツと呪文のように呟いていた。


    「ま…まぁな!膨張率がすげぇとかあるしな、俺みたいに…」


    コニーの隣では目付きの悪い馬面の同期生が無理に明るく励ましている。
    ジャン・キルシュタインと言っていたな…。


    「いや。男なら器のでかさで勝負しようぜ…」

    答えたのはライナーだ。



    風呂場での仁義なき(?)裸の勝負のことは、夜までの間にかなりの男子訓練兵の間に広まっていた。

    結果、参加者多数になって、僕とコニーの勝負ではなくなったのはありがたかった…が、思春期男子のハダカの付き合いは想像以上にえげつなかった…。


    たくさんの同期生が集まって騒いでいるなか、タオルを奪われる前にそっと逃げ出そうとする僕を、コニーは目ざとく見つけ、無理矢理身ぐるみを剥がされた。


    巻いていたタオルを容赦なくクルクルと剥ぎ取るコニー。

    「良いではないか、良いではないか」

    謎のセリフを吐く彼に、どう反応して良いかわからず、恥ずかしさに真っ赤になる僕に、ライナーは助言をくれた。

    「あーれーっ、て言っとけ、ベルトルト」


    言われるままに
    「あーれー!お止めください、ご無体な…!」
    とやったら、周りの同期生がプッと吹き出した。


    「大人しそうに見えるが、意外に面白いんだな、ベルトルト!」

    「デカくて怖そうかと思ったのに、良いやつなんだな、ベルトルト」


    初めて話した同期生から気軽に声がかかる。
    ライナーの助言のお陰で、彼らと少し距離が近づいた。


    次々とタオルを奪われる奴や自ら素っ裸になる奴らで、わいわいと賑やかに騒がしくやっていた風呂場での狂宴だったが、そばかすの純朴そうな同期生が必死に隠そうとするタオルが奪われた瞬間、喧騒は静まり、誰もが沈黙した。


    風呂場での勝負の覇者は、そばかすの顔を真っ赤に上気させて、両手で顔を覆った。
    誰もが敗北にひれ伏した恥ずかしがりやの覇者の名は、マルコ・ボットと言った。
  5. 5 : : 2015/01/04(日) 02:57:44

    風呂場でのハダカの勝負の日からしばらくの間、男子からマルコはこっそり『キング』と呼ばれていた。

    秘密のあだ名で呼ばれる度に、キング・マルコは頬を赤らめた。

    男たちの内輪での呼び名を耳聡く聞き付けたお下げ髪の気の強そうな女子から呼び名の由来を聞かれたマルコは耳まで赤くなって困り顔をしていたが、

    「通過儀礼で王に身を捧げたいとか言ったからだろ」

    と、うそぶくジャンの言葉に、渡りに船とばかりに頷いていた。


    キング・マルコは予想だにしない注目を集めて困惑しているようだったが、持ち前の温和さでうまく対処しているようだった。


    彼のおかげで皆の注意を逸らすことができ、冗談でも僕を巨人に例える同期生はいなくなった。だから、彼には密かに恩義を感じていた。
  6. 6 : : 2015/01/04(日) 03:21:47

    訓練兵団で一番興味があったのは、立体機動訓練だった。僕たちが壁の中に来たときに初めて見た時には、そんな装置が発達していることに驚きを禁じ得なかった。


    兵士に求められる条件として、立体機動の操作が巧みであることが求められる。
    立体機動の適性をみるテストから、僕らの訓練は始まった。


    初歩の訓練は、腰に付けたベルトで宙吊りにされた状態での姿勢制御ができるかどうか。
    初めての体験でドキドキはしたけれど、やってみると意外と簡単だった。
    ブランコの紐が腰にあるだけ。僅かな体重移動でバランスを保てばいい。


    自在に操れるようになるにはもちろん訓練が必要だろうが、一先ずは安堵した。
    ライナーも、難なくこなして次の訓練兵に場所を譲ると、にやっと笑って僕のほうにやって来た。


    「ぶら下がるだけでいいとは、拍子抜けだったな、ベルトルト」


    ライナーが言い終わったその時、奥の訓練設備での適性テストで逆さ吊りになっている同期生がいた。

    茶色の髪に緑の瞳の逆さ吊りの同期生は、前の夜の夕食の時間に威勢良く「巨人を駆逐する」と宣言したエレン・イェーガーだった。
  7. 7 : : 2015/01/04(日) 18:16:28

    夜になって宿舎で過ごしていると、キング・マルコの紹介で、昼間の訓練で逆さ吊りになっていたエレン・イェーガーと、彼の幼馴染みだという金髪の小柄な少女のように見える少年、アルミン・アルレルトがやってきた。


    姿勢制御のコツを教えてほしい、ということだった。


    「頼む!二人ともすごく上手いって聞いたぞ。ベルトルト…、ライナー…」


    真剣な瞳で請い願うエレン。
    だが、コツと言われても…僕もライナーも、特に意識せずに出来てしまったので、あえて聞かれると、返答に困ってしまった。


    ライナーは、少し考えているように腕を組んでいたが、申し訳なさそうに返答した。


    「すまんが…ぶら下がるのにコツがいるとは思えん…。期待するような助言はできそうにないな…」


    ライナーの返事を聞いたエレンは、心底落胆した様子で俯いた。

    昨夜食堂で大見得を切ったエレンは、心の底から兵士になることを望んでいるのだろう。
    しかし、姿勢制御ができなければ、訓練兵としての生活は続けられない。


    「明日に懸けるしかない…」


    一緒にいるアルミンも、僕たちから有益な助言が聞けると期待していたのだろう、同じく落胆していたが、まだ希望は捨てていないように見えた。


    どうして、この二人はそんなにまでして兵士になりたいのだろう。
    二人は、シガンシナ区の出身だと聞いている。


    あの日
    壁の上から見下ろした街の住人


    蟻のように逃げ惑う人々の中に、今目の前にいる二人は居たのだろう。


    あの日

    ちょろちょろと逃げ惑う彼らを蟻のようだと
    現実感なく見下ろした僕は、彼らが今ここに現実として存在している意味を知らなくてはならないと

    責任感とは違うかもしれないけれど、そう思った。



  8. 8 : : 2015/01/04(日) 18:56:19
    「二人は…あのシガンシナ区の出身だよね?」

    「うん。そうだけど…?」


    金髪の同期生が答える。
    ここからが本題だ。


    「じゃあ、巨人の恐ろしさも知っているはずだ。なのに…どうして、兵士を目指すの?」


    壁に穴を穿った後に、次々と巨人が侵入した街の様子を思い出す。
    巨人化を解いた自分自身も、捕食されないように避難する住人に紛れて逃走した時の恐怖感が蘇る。

    僕は…選べるものなら、巨人を相手にする仕事など選びたくはなかった。


    なのに、彼らは自ら志願してここにいる。

    訓練兵に入団できる年齢になった開拓民は、訓練兵に志願するのが世間での暗黙の了解だとしても、適性がないとなれば話は別だ。

    なのに、なぜ彼らは姿勢制御訓練を乗り越えて兵士を志すのか。


    ベルトルトの問いに答えたのは、血気盛んなエレンではなく、アルミンのほうだった。


    「えっと…。
    僕は直接、巨人の脅威を目の当たりにした訳じゃないんだ。
    開拓地に残らなかったのも、あんな滅茶苦茶な奪還作戦を強行した王政があることを考えるとじっとしていられなかっただけで…。
    自分に何かできるか何てわからないけど…。
    この状況を黙ってみているなんて、できないよ…」


    巨人の脅威を直接見た訳ではないと話すアルミンだが、兵士を選ぶだけの理由を過去に背負っている口ぶりだった。


    「聞いてもいいかな?」


    今度はアルミンの方から問いかけられた。


    「二人はどこの出身なの?」


    挨拶がわりに気軽な調子で聞かれる普通の質問だ。
    僕ら以外にとっては、だけど。


    少しだけ、胸の痛みを感じた。
  9. 9 : : 2015/01/04(日) 21:34:20
    「…僕とライナーは、ウォール・マリア南東の山奥の村の出身なんだ」


    これは、嘘。
    僕たちの過去を確認しようにもできない場所、避難できた人がほとんどいない場所を出身地にしようと、ライナーと申し合わせて決めた僕らの架空の故郷。


    「…!!えっ!?そこは…」


    エレンとアルミンの目が見開かれる。
    そう、ウォール・マリア南東の山奥の村と言えば、鎧の巨人によってウォール・マリアの開閉扉が破られた時に
    多大な被害が出た地域だからだ。


    「あぁ…川沿いの栄えた町とは違って、壁が壊されてすぐには連絡が来なかった。
    なにせ、連絡より先に巨人が来たからね…」


    彼らに語った出身地こそ偽りだったが、すべてを偽ればどこかに破綻が生じる。
    僕は、僕の生々しい体験を彼らに語ることにした。


    壁の外の、故郷での体験を。


    「明け方だった…やけに家畜が騒がしくて。耳慣れない地響きが次第に大きくなり…
    それが足音だと気づいて急いで窓を開けたら―」


    彼らは僕の話に息を飲んだ。


    「窓を覗き込む巨人の顔があったんだ…」


    そう、それは、僕が本当の故郷で体験した巨人の襲来の話。壁になんか守られていない僕の集落は、その日たまたま警備が手薄になっていて、運悪く突然巨人に襲われた。


    巨人の恐怖を知っているのは、君たちだけじゃない。
    むしろ、これまで壁の中で安穏と巨人のいない平穏を貪ってきた君たちなんかにはわからないだろう苦難を乗り越えてきたんだ。


    心の中に、怒りのような悲しみのような思いが沸き上がってきたが、もちろんそれを打ち明けることなどできないので、慌てて話を戻し、辻褄を合わせることにした。


    「その後は…えっと…あまりよく覚えていない。皆ひどく混乱していたんだ。僕らはウォール・シーナまで馬に乗って逃げた…。
    後は君たちも同じだろ?」


    僕の話に声もなく聞き入っていた二人に同意を求める。…大丈夫、話に破綻はなかったはずだ…。


    「2年間開拓地に勤めて今に至る…だよな?」


    そう応じたエレンも隣のアルミンも、僕の話を微塵も疑っている様子はなかった。
  10. 10 : : 2015/01/05(月) 00:11:51

    「まったく…お前は何だって突然そんな話すんだよ」


    ライナーが少しだけ苛ついた口調で僕を責めた。
    ボロが出るような話題は掘り下げるなといったところか…。


    「ごめん…えっと、つまり…僕の言いたかったことは…君達は彼らとは違うだろ?」


    ライナーに謝り、エレン達には話を纏めるふりをして話題を逸らす。


    「彼ら?」


    エレンは僕の誘導にうまく乗ってくれた。


    「巨人の恐怖を知らずにここにいる人達だ。
    彼らがここにいる大半の理由は世間的な体裁を守るため…。
    ウォール・マリア陥落以降の世論に流されて訓練兵になった。
    かといって、調査兵団になるつもりもなく、憲兵団を目指しつつ、駄目だったら駐屯兵を選んで憲兵団への異動のチャンスを伺う…」


    僕は訓練兵の多くがどんな心づもりでここに来たのかをエレンとアルミンに解説する。

    そうだよ。誰だって、安全で楽な道を選びたいよ。
    僕だって、できることなら…。


    「臆病なのは、僕も彼らと同じだ…」


    「え?」

    エレンもアルミンも、意外そうな顔で僕を見つめる。


    「体動かすの得意だから…憲兵団の特権階級狙いで兵士を選んだ。それが駄目だったら全部放棄するかもしれない…」


    訓練兵の多くが目指す特権階級の憲兵団…僕がそこを目指すのは、不自然な話ではないはずだった。

    実際には、できるだけ壁の中心に近づいて潜入するという任務のために、憲兵団を目指すよう指令を受けていたのだけれど。


    「僕には…自分の意思がない…」


    命じられるがままに憲兵団を目指す僕は、エレンやアルミンのように強い思いで自らの未来を選びとることができる人を羨ましく思った。


    「羨ましいよ…自分の命より大事なものがあって…」

    そして、選択肢は少ないかもしれないけれど、それでも、自分がどうなりたいのかを選ぶ自由があって…。

    後半の部分は、言葉を飲み込んだ。
  11. 11 : : 2015/01/05(月) 00:42:30
    その後の会話でも、エレンはやはり調査兵団を希望していると語った。

    巨人と遭遇した後も、その思いは変わらなかったと話した。


    「恐怖もたっぷり教わったが、それ以上に…
    殺さなきゃならねぇと思ったよ…。
    奴らを…一匹残らず…」


    そう言いきったエレンは凶暴な獣のような瞳をしていて、その思いの強さに圧倒されると同時に、やはり羨ましいと思う気持ちを止められなかった。


    ただ巨人だけが悪者だと
    憎い敵だと
    そう思い込んでいられたなら、僕たちももっと楽にいられたかもしれないと。


    嘘を重ねる良心の呵責なんて感じたりしないで、自分の選んだ道の正しさに揺るがない自信を持てたかもしれない。


    立場が違えば僕だって、きっと…。
  12. 12 : : 2015/01/05(月) 00:57:01
    そんな僕の思いを見透かしたのか、彼も同じ思いを抱いたのか、ライナーが口を開いた。


    「俺にも…俺にもあるぜ、絶対曲がらないものが」


    ライナーの瞳は遠く虚空を眺めているかのようだった。
    エレンとアルミンは、黙ってライナーの言葉を待った。


    「帰れなくなった故郷に帰る。俺の中にあるのはこれだけだ」


    ライナーの瞳にも、凄惨な光が宿っていた。


    「絶対に…何としてもだ」


    ライナーなりの、宣戦布告だった。

    エレン達には、それは失われたウォール・マリアの奪還のように聞こえたとこだろう。
    帰れなくなった故郷…彼らにはたしかにそう説明したから。

    けれども実際は…帰ることの許されない壁の外の故郷への帰還の誓いであった。
    使命を帯びて潜入した僕らがそれを果たせるのは、エレン達のような壁の中の人類が白旗をあげるときだ。


    たから、僕達は壁の外の故郷に帰るために、例え同期生を敵に回すことになっても、何としても帰る。
    そんな強い宣言だった。





  13. 13 : : 2015/01/06(火) 23:14:39
    翌日


    エレンは見事に姿勢制御を成し遂げた。


    彼が苦戦していたのは、立体機動の適性が無いからではなかった。

    立体機動の固定用ベルトの不具合によるものだったのだ。



    「あの状況で一瞬とはいえ姿勢制御をやり遂げたのか…。エレン・イェーガー…口ばっかりの死に急ぎでもないらしいな」


    ライナーはエレンの根性と執念と潜在能力に感心したようだった。
    皮肉っぽい言葉を使ってはいたけれど、ライナーなりの誉め言葉だとすぐにわかった。


    「…そうだね…」


    僕は特に感慨もなく応えた。



    だって…彼がどんなに正義感に満ちた努力家でも、キラキラとした力強い気持ちが眩しくて好ましく思えても



    結局僕たちは、わかりあえないよ…?



    親しくなればなるほど
    辛い訓練を前に団結を強めれば強めるほど
    苦しくなるんじゃないのかな


    僕たちにはいつか、その時が来るのだし…



    そっと耳打ちする僕に


    「そうだな…そのとおりだ、ベルトルト」


    ライナーは同意をしたけれど、生来の面倒見の良さはやはり隠しきれずに、いつの間にか訓練兵の中でも『頼れるお兄さん』みたいな扱いになっていた。
  14. 14 : : 2015/01/06(火) 23:50:00

    ライナーと僕は大概一緒に居て、秘密がうっかり漏れ出さないようにお互いをフォローしていた。

    そして、過酷とはいえ実戦を知らずに訓練を重ねる同期生達に抱く複雑な心境を、時々こっそりと打ち明けて支え合っていた。


    僕には自分の意思がない。
    与えられた課題や任務を従順に的確にこなすだけ…。

    ライナーのように自ら率先して意見を言ったり、誰よりもすばやく行動に移したりできる人が居てくれて本当に良かったし、この状況に順応している適応力の高さには憧れすら抱いた。


    そんな僕にライナーは言った。


    「ベルトルト。お前は自分が思っているよりずっと高い能力があるんだぞ?」


    お世辞でいってくれているのかな、と曖昧に微笑む僕にライナーは真剣な顔で続ける。


    「お前はなぜか、俺より前に出ようとはしないが…実力は俺と互角かそれ以上のはずだ。
    なのに何故か、そこで止まろうとするだろ?」


    僕が…?
    ライナーより実力がある?

    考えてもみなかったことを言われて、慌てて頭を振った。

    「そんな…そんなこと、ないよ。これが僕の実力だよ!」


    「…今はそういうことにしておいても良いだろう。今のところ、俺たちは二人ともそこそこ上位をキープ出来ているからな…」


    ライナーは軽くため息をついた後に、少しだけにやっと笑った。
    そして、また真顔に戻って、真っ直ぐに僕を見た。


    「お前に足りないのは、自分に対する自信だ、ベルトルト」


    反論の余地もない事実だった。
  15. 15 : : 2015/01/07(水) 00:46:06


    「…だからどうしたっていうんだい?」


    呆れたような声が背後から聞こえた。

    気配はほとんどなかったのと、聞き慣れた、けれども久しぶりの声を背にして、心臓が飛び出すような感覚に見舞われる。


    「ア…アニ…?」


    金髪の長い髪を無造作に纏め、氷のように冷ややかなアイスブルーの瞳はとりつく島のないほど鋭い。その小柄な少女の名を口にするのも久しぶりだった。


    「…自信があろうがなかろうが、どっちだって構わないんじゃないの?
    あんたはそれで困ってるのかい、ベルトルト?」


    独特のつっけんどんな話し方をするアニ。


    …いつから彼女はこんな風に笑わなくなったんだったろう。

    初めて会った頃は、もっと普通に明るく笑う女の子だったのに。


    「…私の顔に何かついてるかい?」


    いけない、久しぶりに近くで見るアニに、つい見入ってしまっていた自分に気づく。


    「あ…いや、あの…その…なんでも…ない…い、いや、変わりなさそうで良かったなって」


    しどろもどろになる僕を訝しげに見つめるアニ。


    僕を見つめる長いまつげは、美しい瞳の印象をより強くしている。
    彼女は少しだけ高過ぎると気にしているらしい鷲鼻も、気品ある顔立ちにはよく似合っている。


    「それで?」


    アニが僕に尋ねる。
    僕は彼女の低めの落ち着いた声に誘導されて、夢見心地になっていた。


    「…今日も綺麗だ…」




    「は?」



    アニの瞳が大きく見開かれる。


    「ぶっ…!!」


    視界の脇では、ライナーが吹き出しそうなのを懸命に堪えている。


    …や、やってしまった…。


    「い、いやあの…!き、今日も、夜空が綺麗だなって!そ、そう、空のことだよ…ね、ねぇ?ライナー!?」


    吃りながらも、必死で取り繕う。


    ライナーは笑いを堪えるので精一杯で声を出せないまま、うんうんと頷いてくれた。

    アニは僕の言葉に空を見上げて、



    「…曇ってるけど…?」


    と、心底呆れた口調で返答した。


    「ぶはっ…!!」

    ライナーは、今度こそ堪えきれなくなって、笑った。

  16. 16 : : 2015/01/07(水) 01:24:45

    「…特に用事がないなら戻るよ。抜け出すのだって簡単じゃないんだ。あんた達だってそうだろ?」


    しどろもどろな僕と、腹を抱えて笑うライナーを交互に見比べて、深刻な話はないと判断したアニは、顔にかかる前髪を耳にかけながら話した。


    前髪を触るのは、彼女の癖だ。


    「いや、用事というか…お前、いつも一人でいるようだからな…そろそろキツくなってるんじゃないかと思ってな」

    ようやく笑いを収めたライナーが、帰ろうとするアニに向かって語りかけた。


    訓練兵団に入ってからのアニは、僕たちとの接触を一切持とうとしなかった。
    その方が、僕らの秘密が漏れてしまうリスクが少ないというのが彼女の言い分だった。


    そして、彼女は…
    彼女は、訓練兵の誰とも距離を保っていた。
    来るものは特別拒みはしないけれど、深入りは決してさせない。
    彼女のミステリアスでクールな雰囲気そのままに、孤高に振る舞っていた。


    同期生の中には、彼女の容姿や成績に対するやっかみもあってか、

    「お高く止まってる」

    と評する輩もあったが、僕にはわかっていた。



    彼女は誰にも思い入れを持たないようにしているんだと。
    友達を作れば
    仲間を作れば
    それだけ情が湧く。


    悪魔の末裔と教えられたはずの壁の中の人びとは
    接してみると、残虐でも非道でもなく
    ましてやあの日僕が感じたような蟻でもなくて
    僕らと同じ血の通った人間で。


    そんなこと、これ以上知ってしまっては、この先僕らに託された使命を全うすることなどできない。

    少なくとも、彼女には。


    優しすぎる、彼女には。
  17. 17 : : 2015/01/07(水) 23:35:20

    「キツいのはあんたのシャツのほうじゃないのかい」


    アニは突き放したようにライナーを見た。

    ライナーの筋肉質な体は、たしかに窮屈そうに伸縮性のある素材のシャツを押し上げていた。


    アニの皮肉にめげる様子もなく、ライナーは気遣いの言葉を重ねる。


    「俺たちの複雑な心境は、お互いにしかわからないだろう。
    俺とベルトルトは男同士だし、二人でつるんでいてもおかしくはないだろうが…。
    アニ、お前が一人で重荷を抱えていやしないかが心配でな…」


    ライナーの真剣な口調にも、アニは特に表情を変えることはなかったが、突き放すような態度は少しだけ緩んだような気がした。


    「…別に、一人の方が楽だからそうしているだけさ。手を抜くときに説教をするヤツもいないからね」


    「手抜きも大概にしろよ。俺たちは、上位10位以内に入って中央を目指す任務があるんだからな」


    アニの言葉にライナーが釘を刺すと、一瞬彼女は眉根を寄せて険悪な表情をみせた。


    まずい。
    せっかく久しぶりに話ができたのに、ケンカなんてしたくない。
    そう思って咄嗟に僕の口をついてでたのは、意外な一言だった。



    「け、憲兵団のシンボルの一角獣ってさ、女の子にしか触れないんだって!知ってた?」




    一触即発といった様子だったライナーとアニの矛先が、僕に向けられた。


    「「はぁ!?あんた(お前)何言ってんだい、ベルトルト?」」


    機嫌の悪い二人の顔は、夜の薄明かりのなかでみるといつもよりも迫力が増して、昔話の鬼のようで…。
    僕は、泣き笑いの表情を浮かべる他なかった。
  18. 18 : : 2015/01/08(木) 00:22:23

    剣呑だった二人は、僕の顔を見た途端に急に口元を弛めた。


    「ちょっ…、ベルトルト、反則だよ…」


    「お前…叱られた犬みたいな顔してんじゃねえよ…ぶふっ」


    ライナーだけじゃなく、ポーカーフェイスのはずのアニまでが僕をみて吹き出しそうになっている…。


    なんだかわからないけれど、二人がケンカにならなくて良かったと困り笑いをする僕を、ライナーがいきなり羽交い締めにして頭をぐちゃぐちゃとこねくりまわした。


    「…まったく、あんたは変わらないね…」


    ライナーに揉みくちゃにされて下がった僕の頭は、小柄なアニの身長でも容易に届く位置にあったせいか、彼女も僕の頭をよしよしと撫でて…


    ぺちっ、と軽く叩いた。


    「痛いよ、アニ!酷い。ライナーも酷いよ…!」


    アニは僕の訴えを無視して、声にほんの少しだけ楽しそうな気配を滲ませて、僕に話の続きを促した。


    「それで?一角獣がどうしたって?」


    そこでライナーの腕が弛んで、僕はようやく姿勢を戻すことができた。そして、アニに正面から向き合うことができた。



    「一角獣は…その…清らかな乙女にしか、その身を触らせないと言われてる伝説の生き物なんだ。
    だから…だから、きっとアニみたいな乙女は一角獣に気に入られて、憲兵団に入れる…と思う…よ…」


    話しているうちに、何が言いたいのかよくわからなくなって、語尾がもにょもにょと曖昧になってしまう。


    だからなんだと怒られるかと、おそるおそるアニを見ると、彼女は驚いたように目を丸くしていた。


    「私が…乙女…だって?」


    うんうんと頷きながらも、機嫌を損ねてしまったかと顔色を伺う僕に、アニはふっと淋しそうに笑った。


    「…あんた、相変わらず優しいんだね、ベルトルト」


    そして僕たちに背を向けると、振り返らずに後ろ手に手を振った。


    「帰るよ。おやすみ」


    そして、とても小さな声で、続けて言った。


    「ありがとう。ライナー、ベルトルト」


    そのまま、アニの姿は夜の闇に溶けていった。
  19. 19 : : 2015/01/08(木) 00:41:49
    アニの後ろ姿を見送ると、ライナーは一言。


    「お前はアニに甘過ぎやしないか、ベルトルト…?最近あいつはかなり手を抜いた訓練してるんだぞ?」


    僕は、久しぶりに話ができたアニの淋しげな笑顔が焼きついて離れなくて、ライナーの話は半分聞き流してしまっていた。


    「ひとりで悩んでいるのかとも思っていたが…。
    あいつがサボってるところを見かけたら、渇を入れてやらんといかんな…戦士としても兵士としても、弛んでる!」


    そう息巻くライナーの話もまったく耳から耳をすり抜けていたので、

    「ああ…そうだな…」

    と適当に相槌を打ってしまった。

    僕がライナーを止めなければいけなかったのに…。



    翌日ライナーは、アニと対人格闘するようにけしかけたエレンと共に、仲良くアニに投げ飛ばされた…。
  20. 20 : : 2015/01/08(木) 01:20:19
    毎日の訓練に座学、立体機動装置の整備演習に、登坂訓練、森林サバイバル訓練…。


    訓練兵の毎日は一日一日が濃厚で、同期生は時にチームとして、時にライバルとして切磋琢磨する関係の中で、それぞれの絆を深めていった。


    僕もライナーも、同期生とは一線を画して接していこうという宣言はどこへやら、人懐こいコニーや穏やかなマルコといつもマルコと一緒のジャンをはじめ、座学の成績は他の追随を許さない秀才、アルミンとその親友の死に急ぎ野郎エレン、ちょっとキザなサムエル、陽気なトーマス、バランスのよいミリウス…などなど。


    気がつけば、いつも誰かが僕らの側で馬鹿話をしたり、戦術の意見交換をしたり、効果的な鍛練法の情報交換をしたり、食事のメニューの裏技を教え合ったりしていた。


    訓練はキツいと感じることは多かったが、皆で乗り越えようとする団結力が働いているのを感じていた。


    時々、本来の自分が戦士であることを思い出して複雑な気持ちになることはあったけれど、すぐに次の訓練が待っているので深く悩んでいる余裕はなかった。


    僕らはいつの間にか、104期生という集団に馴染んで、すっかり同化してしまっていた…。



    いつか来る日のことを、考えないようにして…
  21. 21 : : 2015/01/08(木) 01:40:31
    過酷な訓練は休みなく毎日続けられるが、流石に例外はある。


    一年の締めくくりで新しい年の始まりである正月だけは、近隣に実家がある者には帰省の許可が出る。


    座学と戦術理論、立体機動の斬激の深さの改善など、宿題も沢山出るが、親元に久々に帰れる者は、帰省の日が近づくにつれ、浮わついてそわそわとし始める。


    もちろん、ライナーや僕や、エレンとアルミンと、エレンの家族だというミカサのように、親が行方不明になったり孤児になり、帰る場所も迎えに来てくれる親もいない者達は、訓練兵舎で正月を迎えることになるのだった。


    また、コニーや芋女サシャ・ブラウスのように、故郷はあるが帰省するには遠すぎる者達も、訓練兵舎で年越しをする。

    帰省できるものは多くはないが、それでもいつもの半数程には兵舎に残る人数は減るのだった。
  22. 22 : : 2015/01/09(金) 01:47:08

    「だああぁぁぁ!!!正月休みだってのに訓練キツすぎるうっっっっ!!」


    コニーが、自分の体が隠れそうに大きくて重そうな機械を運びながら叫んだ。
    帰省する連中を見送ったあとには、残った訓練兵で兵舎と訓練施設の大掃除と機材整備が課せられる。
    一年お世話になった機材を、来年も僕たちが安全に技術を高められるように、しっかりと汚れを取り除き、劣化した部品は取り替えるのだ。


    機材整備は、建前上は訓練兵の誰でもが出来る技術があることにはなっているが、実際に整備に当たるのは知識と手先の器用さの確かな者に限定されていた。


    当然の如く、座学での赤点常連のコニーは力仕事要員としての役割を割り振られていた。


    「てか、なんで一番力仕事に向いてそうなライナーとベルトルトが整備班に入ってんだよ?」


    額に汗を光らせながら、コニーは采配に対する愚痴を述べた。


    「うん、そうだね。マルコが帰らなかったら、ライナーとベルトルトは運搬作業だったかもしれないね」


    作業中の機械から目を話さずに答えたのは、誰もが認める座学のトップ、アルミンだ。
    彼は頭がいいだけじゃなく、並外れた集中力と手先の器用さを兼ね備えていた。

    同じくメカニックが得意なマルコと共に、模擬訓練用の教材機械の整備を教官から任せられるほど、彼の技巧の腕は確かなものだった。


    しかし、今回マルコは帰省中。
    彼らに次いで、技巧の知識と技術がある僕らに、整備の手伝いにお呼びがかかったのだった。


    「ライナーもベルトルトも、体力はあるし立体機動も上手くて、その上戦術や技巧の成績もよくて手先も器用とかさ、どんだけ才能に恵まれてるんだろうね。羨ましいよ」

    金髪の整備班長は、少しだけ作業の手を止め、僕らを羨望の眼差しで眺める。


    「ま、天は二物を与えたってことだな」


    ライナーがイタズラっぽく親指を挙げた。


    「けど…僕らよりも、ミカサの方が詳しいし、手先もずっと器用なんじゃないの?」


    僕は、アルミンがなぜ、幼馴染みで訓練兵団始まって以来の逸材と評される東洋系の少女を整備班に入れなかったのかという疑問を訊ねた。

    彼女の方がずっと有能だし、アルミンも気兼ねなく接することが出来るのでは?


    「…ミカサはねぇ…エレンと一緒じゃないと、持ち場放棄するから…」


    成る程。
    ミカサのエレンへの執着は僕らも知っている…。
    彼女がエレンと離れる持ち場を良しとするわけがなかった。
  23. 23 : : 2015/01/10(土) 11:51:13

    「…私は持ち場を放棄などしない。エレンを守るのが私の持ち場」


    整備作業を進めている後ろから、やや機械的にも聞こえる落ち着いた声がかかった。

    振り向くと、三角巾を頭に巻き、両手にはブレード…に一瞬見えたが、実際にはハタキを携えた噂の主、訓練兵団始まって以来の逸材、ミカサ・アッカーマンだった。


    彼女の身体能力の高さは、ライナーと僕が本気を出しても敵わないほど圧倒的で、正面から敵対したくはない人物だ。


    アルミンは、幼なじみの気軽さと彼女の扱いに慣れているためか、ミカサの言い分を軽く受け流した。


    「はいはい、ミカサの持ち場はエレンの護衛でいいよ。ほら、こんなところで油売ってると、エレンが一人で埃まみれになっちゃうよ?」


    「エレンが埃にまみれたら、私が拭ってあげよう。…ので、むしろ埃待ち」


    うん、身体能力云々意外でも、大分アブない…。


    「埃の溜まっていそうなところか…なら、備品置き場の奥の方はどうだ?
    あまり使っていない備品を置いてるから、埃もたんまりつもってそうだぞ?」


    ライナーが事もなげにミカサに提案する。
    …応援、するんだ…アブない逸材の妄想を…。


    「備品置き場の奥…わかった、エレンと掃除に向かうことにする。ありがとう、ライナー」


    ミカサは少しだけ弾んだ足取りでエレンを探しに向かった。


    「さて、僕らは整備を続けよう。夕方までに終わらせないと、イベントに参加できないからね!」


    アルミンは何事もなかったかのように、整備班長らしく皆を鼓舞した。
  24. 24 : : 2015/01/11(日) 01:13:14

    「な…なんとか間に合ったね…」


    「ああ。しかし、ずっと整備ばかりだったから、体が固まったような感じだな…」


    僕たちは、顔に似合わず人使いの荒い金髪の整備班長アルミンの指示に従って黙々と整備ノルマをこなしていった。


    「ベルトルトとライナーが頑張ってくれたお陰で、予定よりも早く作業が終わってよかったね!」


    仕事中に見せる笑顔は、天使の皮を被ったゴリ押しの悪魔のようだったアルミンの笑顔も、いつも通りの明るさを取り戻していた。


    ミカサも怖いけど、アルミンも十分怖い。
    今日、僕が学んだ重要事項。


    「集合時間までの間はどうする?」


    ライナーは整備班長に采配を求めた。


    「大きな運搬とかはほとんど終わっていそうな話だったけど…。あ、もうひとつ残っているって言ってたかな?」


    「大物の運搬はコニーがうんざりしている頃だろう。俺とベルトルトで引き受けるぞ」


    ライナーの申し出に、アルミンは天使の微笑みで頷いた。


    「体力のない僕が行くよりずっと良いよ、ライナー、ベルトルト。
    僕は雑巾かけと整理整頓を手伝ってくるから、二人は教官に指示を仰いでね」


    整備仕事ですっかり凝り固まってしまった体を動かしたかった所だから丁度いいや。


    そう思ってライナーに目配せすると彼は頷いて、どちらからともなく走り始めた。

    教官のいる場所まで競争だ。
    整備仕事は頭と目は酷使するものだったが、体のほうは力をもて余していた。
  25. 25 : : 2015/01/11(日) 01:30:16

    皆それぞれの持ち場で忙しいのか、廊下には他に誰もいなかった。
    だから、僕たちは心置きなく全力で駆けた。


    「やるじゃないか、ベルトルト!」


    「全力で走ってるときに無駄口叩くと舌噛むよ、ライナー!」


    そんなやりとりをしていたら、不意にアニが通りかかった。

    幅の狭い廊下ではないので、そのまますれ違う。

    彼女は人前でもそうじゃなくても、僕たちとの接触を好まない。
    僕らは同期生だけど、特に接点のないただの同期。
    彼女がそう望むから、そう演じ続けていた。


    けれど、その日は違った。
    すれ違いざまに彼女の口から出た言葉に、僕は耳を疑った。



    「誕生日おめでとう、ベルトルト」



    とても小さな声だったけど
    バタバタと走る音にかき消されそうにそっとだけど


    彼女の口からたしかに発せられたそれは、僕が生まれてきたことへの言祝ぎ(ことほぎ)


    自分でも忘れていた誕生日のことと
    アニがそれを覚えていて、祝いの言葉をくれたこととで
    僕は急に足を止めた。


    アニは立ち止まることなく、スタスタと立ち去った。


    僕はライナーの呼び声にも気がつかずに、アニの背中を見送った。
  26. 26 : : 2015/01/11(日) 02:59:52
    夕方
    兵舎前広場にて


    「っかー!!力仕事のあとにまた力仕事かよっ!?」


    コニーが毒づいたのも無理はない。
    居残り組の訓練兵の大掃除を労うイベントとは…

    東洋の島国に伝わるという米を用いた保存食の一種を作ること。

    教官いわく、『餅つき』という行事らしかった。


    「正月も訓練兵舎に残る貴様らに、餅米が特別配給された!
    貴様らには、一年の無病息災を願ってこれから伝統の『餅つき』をしてもらうっ!!」

    教官はそう声高に叫ぶと、僕らが用意した大きな木の器…臼と、巨大なハンマーの様な杵を指し示した。
    食堂からは、蒸した餅米が運ばれてきて湯気を立てている。


    「なぁ、ミカサ。餅ってなんだ?」


    エレンは誰もが思っていた疑問を、東洋の血が流れるミカサになんの躊躇いもなく訊ねた。

    聞かれたミカサは、彼女にしては嬉々とした様子で返答した。


    「餅米を蒸してこねてついたもの。
    粘り強くなるとか、伸びる様から寿命が延びるとか、力が出るとか言われている。
    保存食として、円盤上に形成したものを重ねて正月に飾る」


    へぇ、と僕も含めた皆で感心すると、ミカサは珍しく更に話を続けた。


    「つきたての餅は、ものすごく美味しい…」


    その言葉に真っ先に反応したのは、もちろん兵団きっての食いしん坊、サシャだった。


  27. 27 : : 2015/01/11(日) 14:47:25
    「いいか、貴様ら!餅つきはつき手とこね手がタイミングを合わせてリズミカルにつくのがポイントだ!
    タイミングがずれると、こね手の手をついてしまって大惨事になるからな!
    気を引きしめろ!」


    教官の檄が飛ぶ。

    蒸した餅米が、濡らした臼に入れられた。


    旨いものに反応し率先して杵を持ったサシャが、さっそく餅をつこうと振りかぶるのを、教官が制した。


    「まだだ、ブラウス!蒸した米はまずはつくのではなく、米粒をすり潰すように臼のなかで杵をグリグリと動かすのだ!」


    「はぁ~、キレイなお米さん…!今私が美味しいお餅にしてあげますからね~!!」


    サシャは腰を入れ、餅米をこねる。
    見ている限り、結構な力仕事だ。


    「ここが一番重要な行程だからな…熱いうちにしっかり粒をなくすんだ!」


    キース教官が眼光鋭く指示を続ける。
    サシャは、臼から…いや、正確には米から目を離さずにグリグリとこね続ける。


    「はい!一粒残さず、駆逐してやります!!」



    「…おい、セリフパクられた気がするのは、俺の耳が悪いせいじゃないよな?」

    サシャの宣言を聞いたエレンの言葉に、

    「俺のセリフもパクられた気がするのは、俺がバカだからじゃないよな?」

    コニーがすかさず突っ込んだ。




  28. 28 : : 2015/01/11(日) 15:21:42

    「ふん!ふん!」

    ぺったん、ぺったん。


    「はい、はい」

    こね、こね


    教官のついて良し!の号令のあと、ようやく杵を高く振り上げての餅つきが始まった。

    つき手はサシャ、こね手はクリスタだ。

    しばらく頑張っていたサシャだったが、次第につく動作がキツくなってきたようで、顔には疲労がにじみ始めていた。


    「俺が替わろう」


    ライナーが申し出る。サシャは、おとなしくライナーに杵を渡し、休憩に入る。


    「いやぁ、お餅って結構大変なんですねぇ…」


    水を飲みながら、汗を拭くサシャ。


    「まだまだこれからもっと粘るから重くなるぞ」


    教官がサシャを見下ろしながら言った。


    ぺたぺた。
    餅の位置確認をしながら、ライナーは杵で餅をこねる。
    そして、こね手のクリスタに微笑みかけた。


    「ある程度リズムが整ったら入ってくれ。無理はするなよ」


    「うん、サシャとやってコツはつかめたと思うから大丈夫。ライナーのペースでやってね!」


    しゃがんでいるクリスタは、ライナーを見上げて飛びきりの笑顔を見せた。
    ライナーの頬が、少しだけ赤くなる。

    あ、ライナー、今『天使ッ!!』って思った。
    わかりやすい親友の反応が可愛らしくて、僕まで微笑んだ。


    ぺったん、ぺったん…
    こね…こね


    途中、余りに息ぴったりの二人をからかいたくなったのか、ユミルがクリスタと代わると言い出したり、

    何か勘違いしたミカサが
    「エレン、は、初めての共同作業をしよう//」
    とかよくわからない発言をしたりして、相変わらずの騒々しさではあったけど…。

    和気藹々と餅つきは進行し、ついに完成した。


    教官の指示で、いくつかに分けて、一部は大きな丸を形成する。
    鏡餅、というらしかった。


    僕とアニが鏡餅を作る担当になって、皆はまた次の餅をつき始めた。

    片栗粉を振った台のうえで、餅を整える。
    まだ暖かい餅は、柔らかくてすべすべで、触り心地が良かった。

    アニは無言で作業を進めていた。
    僕は、皆が餅つきに夢中になっているのを確認して、そっとアニに話しかけた。


    「アニ、さっきはありがとう。すごく嬉しかったよ。僕、自分でも忘れてたんだ、誕生日」


    アニは、無言のままで、餅から目を離さなかった。

    …やっぱり、話しかけちゃいけなかったかな?
    そう思った時、アニの口からぼそっと言葉が漏れた。


    「別に…たまたま思い出しただけさ」
  29. 29 : : 2015/01/11(日) 17:23:18

    アニとはそれ以上言葉を交わすことはなかった。

    二人で作った鏡餅は、一晩乾燥させてから、ミカンをのせて兵舎のあちこちに飾られると教官は言った。

    誕生日に二人で作ったものが、飾られる…そう考えると、なんだか照れ臭くなって、顔が赤くなるのがわかった。



    「鏡割りは帰省している連中が戻ってからだ。…それまでにもし、鏡餅がなくなることがあったら…」


    教官は、サシャの頭を掴むとぐりっと自分の方を向かせた。

    「貴様に鏡餅の責任者を命ずる!もし鏡餅がなくなることがあったら、貴様に責任をとってもらうからそのつもりでいろ!!」

    サシャは、一瞬がっかりと項垂れたが、次の瞬間には真剣な表情で教官に返答した。


    「承知しました!サシャ・ブラウス、鏡餅の警護に当たります!
    …しかし…ミカンの無事までは保証できかねますがよろしいですよね!?」


    サシャは無言でげんこつを食らった。


  30. 30 : : 2015/01/11(日) 17:38:57

    「おい、餅ちょー旨いな!」

    ユミルが餅を頬張りながらクリスタに話しかける。

    クリスタはつきたての餅を咥えて、のびーっと伸ばしながらなかなか切れずにいるようだが、ユミルの言葉にうんうんと頷く。


    「…結婚しよ…」

    クリスタを見ながら、ライナーが小声で呟いた。
    僕はあえて聞かなかったことにした。


    「エレン、大根おろしで食べるのも美味しい。ほら」


    「いや、俺は今、砂糖醤油食ってるからいい…って、おい、ミカサ!無理矢理口に突っ込むなって!!」


    「ははは。胡麻醤油でいただくのもなかなかだよ?ミカサ、エレン」


    ミカサとエレンを笑いながら眺めるアルミン。


    「むっはー!!餅!餅って何ですかこれ!!超美味しい!何個でも行けます!!」


    「おう!餅は飲み物だな!するする入るぜ!!」


    「お前たち!一人4個までだからな!!」


    サシャとコニーは騒ぎすぎと食べ過ぎで教官から怒られている。


    アニは…?

    見回すと、アニは何となく皆の輪に入りながらも、黙々と餅を食べていた。

    その様子に、僕は少しだけほっとした。
    そして、慣れない餅を一生懸命食べるアニの姿が可愛いと微笑ましく思った。
  31. 31 : : 2015/01/11(日) 17:51:19
    食事が終わって、手分けして後片付けをしたあとに、ライナーが後ろから羽交い締めにしてきた。


    「ベルトルト、お前今日誕生日だろ?背中流してやるから風呂行くぞ!」


    ライナーの言葉を聞き付けたコニーを始めとする男子達がわいわいと寄ってきた。
    アルミンやエレンもいる。

    「今日誕生日かよ!?お前、もっと早くに言えよな~!!」

    「そうなんだ!おめでとう!」

    「なんだ、遅くなっちまったな。おめでとう!」


    口々に祝いの言葉を言ってくれる同期生たち…。


    「あ、ありがとう。あのでも、気持ちだけで良いからさ、僕…」

    お礼の言葉で締め括ろうとした僕の言葉は無視されて、皆に風呂場に連行された。





    その後のことは、あまり思い出したくない…。




    普通に背中を流されているうちはまだ良かった…が、だんだんとエスカレートしていって…

    気がつくと、僕はなぜか、複数の人間スポンジで体のあちこちを洗われていた…。

    「サービスサービスぅ♪」

    とか言われながら、こすり付けられる石鹸まみれの男の体が気色悪い…。



    悪ふざけが過ぎる…。
    そして、そういうときのこいつらの団結力は半端ない…。


    この…悪魔の末裔どもがっ!!!


    僕はもう少しで、そう吠えそうになった…。
  32. 32 : : 2015/01/12(月) 00:58:44
    悪夢のような風呂場での誕生会(?)を経て、年末の行事は終わり…と思ったら甘かった。


    翌大晦日には、『年越しカウントダウン腕立て伏せ大会』なるものが予定されていた…。

    兵舎に残る全員参加で、体力作りをしながら新年を迎え、新しい年の健康と安全を願う…と銘打ってはいるが、要はイベントにかこつけた筋トレだ。

    23時集合で、軽いランニングとストレッチの後に、年越し腕立て伏せが始まる。

    最低ノルマは108回×3セット。
    108回というのは東洋に伝わる煩悩の数らしいと、アルミンが教えてくれた。
    せんな彼の顔は、すでに課せられた腕立て伏せの回数に悲愴な表情を浮かべていた。


    女子にも無論、同じ課題が課せられる。
    が、女子の場合は普段の体力テストにあわせて負荷をかけずに単純な腕立て伏せで良いものもいた。


    男子は一律、山岳装備を背負っての腕立て伏せ…20キロ程の負荷があるだろうか…。


    年を越すって大変なんだなと実感した。


    隣ではコニーが

    「帰省している連中は今ごろぬくぬくと家族と過ごしているってのにっ!不公平だッッッ!!」

    と息巻いている。


    そんなコニーに、

    「世界は残酷だから…」

    と、男子と同じ20キロの装備を背負ったミカサが告げた。



    教官の数える煩悩の回数に意識が朦朧とするなか、いつの間にか年は越していて、ノルマをこなした時には全員が仲良くばったりと倒れこんでいた。


    「明けましておめでとう!訓練納めと訓練始めが同時にできて何よりだ!貴様ら、今年も精進しろよ!!」

    言葉を発する元気が残っているのは教官だけで、僕らは皆、討ち死にしたように、あー、とかうー、とか言うので精一杯だった。
  33. 33 : : 2015/01/12(月) 02:04:16
    そんなこんなで正月は過ぎ、帰省していた同期達もぞくぞくと兵舎に帰ってきた。

    帰省していて鏡餅を初めて見た奴は、カチカチに固まってひびの入った餅をみて食い物なのかと顔をしかめた。

    鏡餅警備責任者のサシャは、はじめのうちこそ誘惑に揺らいでいたが、餅があまりに固くなるのを見るにつけ、少し怒っているようだった。


    「あんなに柔らかくて美味しい食べ物を、どうして美味しいうちに食べないんですか!?街の人間の考えることはわかりません!」


    サシャの言い分はもっともな部分はあった。

    ちなみに鏡餅の上に乗っていたミカンは元旦を過ぎてすぐに行方不明になって、サシャは教官に訓練所のランニングを命じられていた。

    もちろん冤罪などではなく、鏡餅警備責任者の

    「一番美味しいうちに食べてあげるのがミカンさんも幸せです」

    という持論に基づく確信的な行為だった。

  34. 34 : : 2015/01/12(月) 02:13:45
    鏡開きでは固くなった鏡餅をハンマーで割り、一部は焼いた後にスープと煮込み、一部は油であげてかき餅として、食堂で提供された。


    食いしん坊の鏡餅警備責任者は、固くなった餅に初めは不満げだったが、かき餅を頬張ると瞳を輝かせた。


    「何ですかこれ!外はカリカリ、中はふっくら餅か伸びるじゃないですか!」


    感動のあまり泣き出しそうなサシャに、ライナーは言った。


    「お前が手を出さずに我慢したお陰で、皆が旨い鏡開き料理を食えたな。良く我慢できたな、サシャ」


    「はい…。実は隙をみてかじりついたことがあったんですが、固すぎて全然ダメでした…。待ってて良かった…」


    正直に告白するサシャに、近くにいた全員が


    「やっぱり抜け駆けしようとしたんかいっ!!」


    定番の突っ込みを入れた…。
  35. 35 : : 2015/01/12(月) 02:28:16
    正月が過ぎ、またいつもの訓練生活が始まった。

    基礎体力訓練、立体機動訓練、そして崖から降りている途中に命綱を切られる不意打ちのトラブルへの対応力訓練…。

    毎日が訓練で日々辛いけれど、同期の仲間は豪快で活気があった。
    そして、時に有り余る血の気がケンカに発展することもあった。


    エレンとジャンのように。


    互いの主張や信条の違いは、時に騒動のもとではあったが、それだけ自分の未来を真剣に考えられているということで…。


    自分の意思がない僕には、ケンカになるほど主張するなにかがある彼らのことが、少しだけ羨ましいような気がした。



    そうして時は巡り、再び年越しの季節がやって来た。
  36. 36 : : 2015/01/13(火) 00:04:54
    その年も、アニは皆に気づかれないようにそっと、


    「誕生日おめでとう、ベルトルト」


    と言ってくれた。
    そして、その次の年も。



    変わらず僕ら居残り組は餅をつき、つきたての餅を頬張った。

    時にはコニーが餅を喉に詰まらせて、僕が逆さ吊りにして振って吐き出させて事なきを得るというちょっとしたトラブルはあったものの、概ね毎年同じ年末だった。


    恒例の『年越し腕立て伏せ大会』は『年越し腹筋大会』に『年越し反復横跳び大会』と、メニューに変化は見られたが、いずれも終わったあとはしばらく誰一人まともに口を聞けないほどキツかった。


    いや…ひょっとしてミカサは喋る余裕くらいあったのかもしれないけれど、もともと口数が多くはないからわからなかった。



    そして…


    僕が風呂場に連行されて同期生たちの気色悪いサービスを受ける誕生会も、なぜか恒例行事にされてしまっていた…。



    「最初の年より大分テクニシャンになっただろ?」

    …って、そんなことより座学の勉強しろよ、コニー!!!
  37. 37 : : 2015/01/13(火) 00:34:16
    三度目の正月の最中

    僕とライナーは水汲み当番で外での作業をしていた。


    冬の水汲み当番は寒いし、特に早朝当番では他に人が通ることもない。


    ライナーと二人での作業…通る人などいないだろうが、僕は注意深く周囲を確認した。

    他の人に聞かれるとまずい話をしようと思ったからだ。


    僕らはもうすぐ訓練兵を卒業する。
    そのときが来たら…

    僕らには5年前から続いている任務があり、作戦決行の日はじりじりと近づいていた。


    作戦は絶対だ。
    任務を遂行し、本懐を遂げるまで僕らは故郷には帰れない。

    だが…。
    だが、度重なる訓練や試験、年越し行事などで培ってしまった訓練兵同期に対する複雑な思いをどう整理して良いか、僕には良くわからなくなっていた。


    「…ライナーはさ…」

    「あ?どうした、ベルトルト?」

    「ライナーは、戦士としての僕らの役割をどう思う?」


    僕の抱いている複雑な思いをうまく言葉にできず、曖昧な聞き方になってしまったが仕方がない。
    察しの良いライナーは、僕の足りない言葉を補って解釈してくれるはずだ。


    いつものライナーなら…。



    僕の言葉に少しだけ首をかしげたライナーの返答は、期待したものとは全く違っていた。


    「…何を言っているんだ、ベルトルト?俺たちは訓練を終えたら兵士になるんだろう?」


    至極真面目に僕を見返すその顔は、冗談を言っているようには見えなかった。
  38. 38 : : 2015/01/13(火) 01:23:48

    「…ライナー…?」

    何が起きているのかわからなくて、何と言っていいかわからなくて、僕は彼の名を呼ぶので精一杯だった。


    「俺たちはこのまま行けば必ず上位10名には入れるだろう。当然、憲兵団だ。そうだろう?」


    「あ…ああ!そうとも!そう指示されて…」
    「憲兵団に入れば、特権階級だ。
    安全な壁内で、家族をもって…。
    なぁ、ベルトルト…その…クリスタは皆に優しいが、俺には特に優しいとは思わないか?」


    少しだけ頬を赤らめたライナーの頭のなかでは、憲兵になってクリスタをお嫁さんにもらって家庭を築く…そんな未来が描かれているようだった。


    「ライナー…戦士の君はどこに行ってしまったんだい?」


    頬を紅潮させて夢見心地だったライナーの瞳が、僕の問いにはっと正気を取り戻す。
    希望に満ちていた表情は、一転して強ばった重々しいものになった。


    「そう…だったな…。俺がどうかしていた…。
    俺たちは戦士で、故郷に帰らないといけないよな…」



    ライナー…面倒見が良くて、気がつくとリーダーシップを取っていて、一番に危険を侵して飛び出していく君。

    同期を敵に回して戦う僕らの任務は、君の心を蝕むほどに過酷な任務なんだよね…。


    僕らは彼らに近づきすぎた。


    ずっと、悪魔の末裔だと
    罰を受けて当然の連中だと
    弱々しい蟻の群れのようだと
    そんな風に、割りきって考えられたなら良かったのに…。
  39. 39 : : 2015/01/14(水) 02:03:27
    解散式の夜


    僕たちは、104期訓練兵の上位10名として名を呼ばれ讃えられた。
    ライナーは2位、僕は3位、アニは4位…故郷での戦士としての訓練を潜り抜けて来た僕たちにとっては、順当な結果と言えるだろう。


    専門的な訓練や座学を既に受けていた僕たちを上回る成績の者がいたことのほうが、むしろ驚きだった。


    ミカサ・アッカーマン…彼女の身体能力の高さと知能、天性の素質には、驚かされてばかりだった気がする。
    そして、エレンへの異様なまでの執着の強さも…。


    ともあれ、僕らは全員憲兵団への切符を手に入れた。
    そして、訓練兵達が解散式を済ませ、配属兵団を決めるまでの浮わついたこの期間こそが、僕らが次の行動に出る時だった。


    解散式の興奮冷めやらぬ兵舎の喧騒に紛れて、僕らは裏の林の奥に集合した。


    「ひとまずは、全員揃って上位に入れたことを祝おう。おめでとう、ベルトルト、アニ。
    …アニは途中手を抜いていたからな、本気を出せばミカサとも張ったんじゃないのか?」


    ライナーが切り出した。


    「ミカサみたいな化け物と一緒にしないでおくれよ。私は…乙女なんだからさ」

    途中でアニはチラリと僕を見たが、すぐに視線を外した。


    「…それで?お祝いにこんな藪の中に集まった訳じゃあないんだろう?」


    「もちろんだ。こんなシケたパーティなんざ俺だってごめんだ」


    アニとライナーの会話は、相変わらずどこか刺々しくて僕はハラハラしてしまう。
    そして、僕たちがこれからやろうとしていることを考えると、ますます口が重くなる…。


    「…5年ぶりの、作戦決行だよ…それで、集まったんだ…」


    それでも、なんとか僕は会合の目的を伝えることができた。
    伝えたところで、誰も喜んで話したいことではなかったけれど。



  40. 40 : : 2015/01/14(水) 02:26:04
    「明日は俺とベルトルトのところとエレンの班、その他3班で壁上砲の固定整備を行う日だ」


    アニは黙ってライナーの話を聞き始めた。


    「前回から5年…。故郷からの指示はないままだ。故に、俺たちは予定通り再び壁内の人類に警告をしなければならないだろう…」


    そう…壁の中の一般民衆にとって壁の破壊は巨人の侵入であり、即ち死の恐怖を意味する。

    それが、この壁で真の実権を握っている者にとっては、僕たちの故郷の仲間たちからの警告となるのだ。
    もちろん、逃げ惑う人々にとっては警告だろうと気まぐれだろうと同じことだ。


    自らの命が危険に晒されるのだから…。


    「明日…か…。
    大丈夫なのかい?
    またアンタじゃなきゃ出来ないんだろ、ベルトルト?」


    そう。
    閉ざされた状態の開閉扉をこじ開けて、巨人が自由に入れるようにするのは…そして人々を恐慌に落とし入れるのは


    紛れもなく
    この僕だ

  41. 41 : : 2015/01/14(水) 20:43:41
    「僕は…」


    僕はあの日壁の上から見た光景を思い出す。


    どこまでも広い空の下で
    高い壁でその空を切り取ってしまって安寧を得たつもりでいた人々の驚く顔を

    恐怖に凍りつき、身動きも忘れて僕を見上げるあの顔を…。


    おもちゃのように整然と立ち並ぶ町並みを

    ようやく走り始めた人々が様々に叫びながら、走り、迷い、足がもつれて転びながらも逃げようとするその様子を
    他人事のように観察して蟻のようだと思ったことを。


    「…僕は…」


    そして同時に脳裏をよぎるのは
    訓練兵として過ごした毎日。


    苦しい訓練を歯を食いしばって乗り越えてきた仲間たち。


    馬鹿話でもりあがっては教官に叱られた就寝時間。
    僕の寝相が芸術的だと呆れを通り越して感心していた同室の皆…


    餅をついたり、イベントだと激しい筋トレをさせられたり
    ジャンとサシャが料理対決をしたり
    命がけの雪山踏破訓練やサバイバル訓練で死にそうになったり…



    それも全部、壁と一緒に打ち砕くことができるのだろうか?
    僕にそれが…できるの…か?


    ライナーでさえも、耐え切れずに一兵士としての未来に逃避してしまいそうになっているのに…?


    「…僕には、わからない…」


    そう、わからなくなってしまったんだ。



    元から僕には何一つ、わかってなんていなかったんだ。



    僕らにとっての正義と
    彼らにとっての正義が違う中に潜入するってことの意味も

    その苦しみも

    何一つ。
  42. 42 : : 2015/01/14(水) 22:32:42
    「わからないって…お前…」


    ライナーが愕然として僕を見る。

    ここまで来て今さら何を言っているんだ…と表情が語っている。


    驚いた顔のライナーが、おそらくは僕にかける言葉を探している間に先に口を開いたのはアニだった。



    「私は構わないよ」



    予想もしていなかった言葉に、ライナーも僕も目を見開いた。

    アニはいつも通りの無表情で、前髪を耳にかけた。


    「ベルトルト。アンタにしか出来ないことだから、やるもやらないもアンタが決めればいい」


    ライナーはアニの言葉を黙って聞いたあとで、なるべく動揺を抑えようとして、ゆっくりと問いかける。


    「…だが…命令違反は重罪だぞ…?ベルトルトがやらなければ、俺たちは故郷に帰れないどころか、追っ手がかかるだろう」


    ライナーの言う通りだ。
    僕がやらなければ、僕らは全員が命令違反の裏切り者として追っ手がかかり、闇に葬られるだろう。


    どの道、やらなければ僕らに未来なんてないんだ。
    それがどんなに血塗られた未来でも…。

    僕に選択肢なんて、もともとないんだ…。


    そう思った時、アニがまた口を開いた。


    「…そうなったら、その時に考えるさ」


    「アニ!お前は帰りたくはないのか!?俺たちは、ここで兵隊ごっこをやるためにあの壁を越えて来た訳じゃあないだろう?」


    冷静さを保とうとしていたライナーの語気が少しだけ荒くなる。

    アニは冷ややかな眼差しのまま、フッ、と自嘲気味に笑って答えた。


    「…私は…別に、自分が助かりたいだけさ…」


    「だったら…!」


    更に問い詰めようとするライナーの言葉を遮って、アニは僕をじっと見つめて言った。


    「ベルトルト…アンタはずっと、自分には意思がないって、そう言っていたね…?」


    そう。
    僕にはエレンやマルコの様に強い目標が有るわけでもなく、ジャンのように楽に暮らしたいと宣言できるほどの何もない。

    アニの言葉に、僕は頷くしかなかった。

    そんな僕に、アニは呆れることも叱ることもしなかった。
    ただ、俯いてポツリと一言


    「私だっておんなじさ。ただ流れに流されているだけの弱いヤツだよ…」

    そう言って、もう一度僕を見上げた。
  43. 43 : : 2015/01/14(水) 23:37:21
    アニも…僕と…同じ…?


    何も言えずにいる僕をよそに、アニにしては饒舌に語り続ける。


    「そう…だから、流されることに疑問をもってわからなくなったなら、わかるまで考えればいい。

    やるかやらないか、はっきり決まるならそれでいい。
    けど、考えてもわからないままかもしれないし、それでやっぱり流されると決めるならそれでもいいさ。

    押し付けられたやりたくもないことを何も考えずにやってしまうより、気づいたのならそれがアンタにとっての転機なのかもしれない。

    ベルトルト、アンタが自分で決めることだ。
    私はどっちでも、私が助かるように動くだけ」


    アニの言葉は、これまで自分で何一つ決めてこなかった僕には厳しい言葉だった。
    そして同時に、とても優しい言葉でもあった。


    これまでずっと、誰かに言われるままに生きてきた。
    ここ数年は、もともと決断力のあるライナーに頼りきりだった。

    僕は君に頼りすぎだったね、ライナー…。
    君の苦しみも悩みも、分かち合っていたつもりだったけど、大事なことはいつも君が決めてくれていた。


    そして、アニ。

    誰とも必要以上に仲良くならないように
    情が移らないように、ずっと一人を貫いていたアニ。


    それでも、僕は知ってるよ。


    君が皆に気づかれないようにさりげなくそっと、周りを見ていたこと。

    僕の誕生日をこっそりと祝ってくれたこと。

    いつもクールな君が、餅を頬張った時に噛みきれなくてちょっと困って目を白黒させていたこと。


    そんな君が、流されっぱなしの僕に選択肢をくれていること。



    黙ったままの僕を、アニはもちろん、ライナーも黙ったままで見守っていた。
  44. 44 : : 2015/01/14(水) 23:52:12
    僕の頭のなかでは故郷への思いや、104期の仲間達との思い出や、僕が壁を壊したときの壁の中の人々の様子がぐるぐると渦を巻いていた。


    そして、ライナーやアニへの思いも…。


    望まない任務だったとしても、やるもやらないも自分で決めて良いんだ…。

    僕は…今まで流されて誰かに決定を委ねてきた分、今回こそは自分で決めてみたいと思った。


    そんな風に思ったのは、初めてだったかもしれない。


    選択肢は多くはない。
    やるか、やらないか。
    それしか選べない。


    けれどこれは、僕にとっては大きな一歩になるだろう。


    僕が守りたいもの。

    僕が手にしたいもの。


    それは…




    「ありがとう、アニ。大丈夫。

    僕は…やるよ、ライナー」


    他の何にも替えがたい幼馴染みで戦友の二人に、僕は初めて決意を宣言した。


  45. 45 : : 2015/01/15(木) 00:43:24
    翌日―


    壁上固定砲の整備は予定通り進んでいた。

    班長のライナーの指示のもと、僕たち班員は交換部品を運んだり固定砲の掃除や点検をしていた。



    固定砲のメンテナンスをしていた僕に、ライナーが目配せをする。


    周囲の注意が壁の外から逸れている。
    僕の近くに他の訓練兵の姿はなく、誰も僕を見ていない。
    壁の下にも、すぐに襲ってくる巨人の姿はない。


    やるなら今だ。


    ライナーの合図に頷くとすぐに、僕は壁の上からそっと飛び降りた。


    立体機動は使わない。
    普通の人間なら自殺行為でしかない。


    普通なら、ね…。


    普通ではない僕は、重力のままに落下する間に、自分の腕に噛みついて傷つけた。


    僕は僕の意思で、この壁を壊す!


    そう強く念じながら。


    カッ!!!


    落雷と共に、僕の体は空から湧き出た巨大な張りぼてのようなむき出しの筋肉に包まれて―

    高熱を発する僕の体からは大量の蒸気が吹き出した。
    僕らの班とは少し離れた所で固定砲の整備をしていた訓練兵達は、その熱風で吹き飛ばされた。


    あそこに配置されていたのは…

    エレン達の班だったか…。


    エレンの真っ直ぐな瞳を思い出して、胸がチクチクと疼く。


    しっかりしろ!
    こうなることもわかって決めたんだろ!?


    60メートルの体でも、心のサイズは元のままの僕は、自分で自分を鼓舞する。


    自分から発する蒸気のせいで、今日はまだ、壁の中の世界は見えない。


    そのほうがいい。
    見えてしまえば、また迷いが出てしまうかもしれない。


    僕は、目の下にある壁とその開閉部だけを確認して、唯一脆い構造の開閉部目掛けて、再び足を蹴り出した。

    サッカーボールを蹴るように。
    5年前と同じように…。




    ドオオオオオォォォン!




    硬くて大きなものが蹴り出した足に当たって、くだけ散っていく音がした。


    僕は再び、壁の中の人々にとっての死神になった。
  46. 46 : : 2015/01/15(木) 01:36:28

    「……よぉ……」

    蒸気の切れ間から話しかける声が聞こえた。


    「…5年ぶりだな…」


    壁の上には、先程の熱風で吹き飛んだはずのエレンがブレードを構えて立っていた。


    …立体機動で壁を上がったか…。
    流石の判断の早さと行動力だね。


    エレンは真っ直ぐに敵を見るギラついた目付きで僕を見る。
    無理もない。
    親の仇だもの…。

    だけど、僕は容赦はしないよ。


    構えるエレンのいる壁の上ごと右手で凪ぎ払う。
    固定砲を封じるためだ。


    エレンは僕の腕を避け、立体機動で壁に一旦はぶら下がり、体制を整えて向かってくる。


    その敵意に満ちた真っ直ぐな瞳。
    まっすぐに、超大型巨人と呼ばれる僕を仕留めようと迷いなく攻撃体制をとるエレン。


    エレン、僕は君が羨ましいよ。


    敵は巨人だと
    全て巨人が悪いのだと信じて戦える君が。
    正義の味方でいられる君が羨ましいよ。


    立場が違えば…君だったらどうしていたのだろう。
    流されるばかりではない、正しいことを正しいと言える君ならば…。


    考えても、仕方のないことだけれど。


    僕は蒸気でエレンを煙に巻いて巨人化を解き、ライナーの元に戻った。
    班員は皆混乱していて、ライナーの指揮下にあって、僕がいなかったことにも気づいていなかった。



    僕は壁の上から、これから地獄と化す街を見下ろした。
    シガンシナ区…。


    この地に生きる人々も、この地を守ろうと戦う人々も、皆僕たちと同じ赤い血の通う人間だ。


    それを理解した上で、僕は選んだ。
    自分達が生き残る道を。



    けれど僕らは、まだ誰一人として予想していなかった。
    組織に属さない
    自覚のない巨人化能力者の存在を…。



    ねぇ、エレン。
    壁の上から見た君の強い瞳を、僕は忘れない。

    君が壁の外を含むこの世界の全てを知るときが来たら、君ならどうするのかな。


    いつか
    その答えを君と話し合えるときがくると良いのにね。





    前略、壁の上から…


    【完】
  47. 47 : : 2015/01/15(木) 01:46:19
    あとがき的なもの


    ベルトルトさん視点で訓練兵団時代を追いたいぞ、とか
    アニを目で追いすぎ(ライナー談)なベルトルトさんを書きたいぞ、とか思っていたら長くなっちゃいました…。

    自分の意思がないベルトルトさんにも、やはり葛藤はすごくあって、彼なりに悩んだ末にもやもやしながらちょっとだけ成長する話にしたかったのですが…。

    ベルトルさんの独白、しつこすぎましたかね?(笑)


    例によって、誕生日っていつだっけ?な感じになりましたが、終わってホッとしています。

    コメント解禁しますので、感想などいただけますと大変励みになります。
    よろしくお願いいたします。
  48. 48 : : 2015/01/15(木) 06:45:22
    執筆お疲れさまです。


    「空気」とも揶揄された感情の解りづらい訓練兵団時代のベルトルさんの心境をとても丁寧に追っていらっしゃり、流石です。

    餅つきやソー⭕のようなギャグっぽい流れから、あの日までの落差が見事でした。

    最後のベルトルさんじゃありませんが、超大型がエレンだったら、マルコだったら、ジャンだったら、どうしていたんでしょうね?

    因みに、一斉風靡セピア、リアルタイムではさすがに知りませんが、例のごとく知ってます(笑)
    若き日の室井管理官がせいやって歌ってた(^-^)
  49. 49 : : 2015/01/15(木) 15:48:43
    執筆お疲れ様でした!

    ベルトルトは104期の中で私の一番好きなキャラでして、その彼をとても魅力的に書いていらっしゃって羨ましいやら有難いやら。

    とても楽しく読ませていただきました。
    ありがとうございます。
  50. 50 : : 2015/01/15(木) 19:38:16
    >>ありゃりゃぎさん

    コメント&お星さまありがとうございます!

    ベルトルさんと言えば寝相!!のエピソードを全部まるっとスルッと忘れてたぁ!…ってことにラスト近くになって気づきました…。

    キングとか餅とか泡男祭りとか書いてる場合じゃなかった…orz
    そして、真面目な語り口で遊びすぎたので、シリアスに戻すのに苦労しましたよ、ええ…(涙)


    ベルトルさんのある意味『選ばれし者』の苦悩が、いつか報われることを願っています…。

    一世風靡セピアは、多分私もリアルタイムじゃなかった…はずですが(記憶障害)
    たしか、懐かしのナントカとかのテレビで数回見て、「かっけー!」とか思ってました…。

    ギバちゃんも、そう言えば…そうでした!!さすが!


  51. 51 : : 2015/01/15(木) 19:44:46
    >>キミドリさん

    コメント&お星さまありがとうございます!

    なんと!ベルトルト好きでいらっしゃいましたか!!
    いやぁ、さすがお目が高い!

    ベルトルさんはスタイルいいし、べらべらしゃべらなくてどことなく品がいい感じで、それでいて成績優秀なオススメ物件ですことよ、奥さま!!

    …どこのテレビショッピングだ…。


    今回、執筆が主に深夜の就寝直前だったせいもあって、うだうだだらだらと書き連ねてしまいました。

    最後まで寝ぼけなすたまにお付き合いいただいてありがとうございました!

  52. 52 : : 2015/01/15(木) 23:20:30
    なすたまさん!
    執筆お疲れ様でした。
    SSで泣いたの久しぶりです…。
    ちょっと思いが溢れすぎて言葉にできないので、後でゆっくり研究室に書き込まさせていただきますm(__)m
    ベルトルトさんのお誕生日おめでとうございました(•́ι_•̀ )
    素敵な作品をありがとうございました!
  53. 53 : : 2015/01/15(木) 23:51:24
    >>つーるさん

    コメント&お星さまありがとうございます!!

    泣くほど感情移入してくださったのですね。
    そんな風に大切に読んでいただいてありがとうございます!
    作家冥利につきます!

    ベルトルトさん視点での104期を書いてみたかったので、終わりまで持ち込めてほっとしています。
    だいぶん過ぎてしまいましたが、ベルトルトさん、お誕生日おめでとうございます!


    てか、なんでベルトルトだけさん付けしたくなるんでしょうね(笑)
    ライナーさん、とかジャンさん、とか絶対言わないのに…。


    こちらこそ、ずっと応援していただいてありがとうございました!
  54. 54 : : 2015/01/17(土) 00:35:25

    執筆おつかれさまでした。
    少年らしいベルさんの心情は悲壮感も暗さもなく前向きで、だからこそ尚更胸が痛くなりました。
    為すべき事のベクトルの違いから生まれる悲しみは、なすたまさんのように彼らを純粋に描ける方の手にかかると、切なさが増しますね。
    一角獣の話をするシーン、一番のお気に入りです。素敵でした。
    アニを乙女と言ったのはベルさんだったんだなぁ…と、すっかり原作と混同(笑)
    毎度の事ながら心が浄化された気分です。ありがとうございました(。-_-。)
  55. 55 : : 2015/01/17(土) 08:26:33
    >>月子さん

    コメント&お星さまありがとうございます!

    一角獣の話のところ、気づいていただけましたか!

    原作でクールなアニの口から「乙女」と出てくるのが意外性があって面白いなぁとずっと思っていて、誰か彼女にそう言ったことがあるんだろうなぁと妄想してました。

    今回はしどろもどろなベルトルトさんに言ってもらうことにしました。


    浄化作用、ありましたか!?悲しいだけにならずに済んで良かったです!
    いつも読んでいただいてありがとうございます。

  56. 56 : : 2015/01/17(土) 23:23:58
    訓練兵時代の104期の賑やかな年越しが目に浮かんで来るような作品でした♪
    ベルトルトは特に思い入れもなくスルーしていたのですが、このSSでベルトルトが好きになりました‼︎
    とても面白かったです。
    執筆お疲れ様でした!
  57. 57 : : 2015/01/17(土) 23:47:33
    >>ハンジがかりさん

    これを読んでベルトルトを好きになってくださったとか!なんて殺し文句…ぐはっ…。

    良いのですよ、ベルトルト。
    地味に優秀で、地味にスタイルよくて、地味に男前です…あれ、私兵長推しからいつのまにベルトルト推しに(笑)

    コメントもお星さまもありがとうございました!
    ほんとに励みになります。
    ありがとうございます!
  58. 58 : : 2020/10/06(火) 13:09:18
    高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
    http://www.ssnote.net/archives/80410

    恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
    http://www.ssnote.net/archives/86931

    害悪ユーザーカグラ
    http://www.ssnote.net/archives/78041

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    http://www.ssnote.net/archives/81774

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    http://www.ssnote.net/archives/85091

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    【キャロル様教団】
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    何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
    コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
    http://www.ssnote.net/archives/86986
  59. 59 : : 2020/10/06(火) 13:09:26
    高身長イケメン偏差値70代の生まれた時からnote民とは格が違って、黒帯で力も強くて身体能力も高いが、noteに個人情報を公開して引退まで追い込まれたラーメンマンの冒険
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    恋中騒動 提督 みかぱん 絶賛恋仲 神威団
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    害悪ユーザースルメ わたあめ
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    害悪ユーザーエルドカエサル (カエサル)
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    【キャロル様教団】
    http://www.ssnote.net/archives/86972

    何故、登録ユーザーは自演をするのだろうか??
    コソコソ隠れて見てるのも知ってるぞ?
    http://www.ssnote.net/archives/86986
  60. 60 : : 2020/10/27(火) 14:00:47
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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miyatama55

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