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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

江ノ島「さぁ…終わりなき絶望の始まりだぁ!」【PROLOGUE】

    • Good
    • 8

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  1. 1 : : 2014/05/03(土) 10:07:38
    読者の皆様、ウィード(* ̄∇ ̄)ノ
    燃え尽くす雑草魂ですっ!



    今シリーズは自分が長い間考え続けていた、とっておきの自信作ですっ!



    起動日は只今執筆中のSS、【DANGAN・WOULD】が終了次第、始めたいと思いますので、皆様の応援等よろしくお願いしますっ!!
  2. 2 : : 2014/05/03(土) 10:14:38
    やっと始まるんですね!期待期待です(゚∀゚)!!
  3. 3 : : 2014/05/03(土) 13:15:38
    期待です!頑張ってください!( ̄Д ̄)ノ
  4. 4 : : 2014/05/03(土) 17:03:08
    深夜2時48分32秒………




    街灯の明かりは殆ど届かず、月だけが頼りの薄暗い裏路地にひっそりとそびえ立った荒れ果てたビル



    「………ここか」



    武装に身を包んだ兵の一人が壁を伝い、ゆっくりと入り口であろう鉄製の扉の前に近づく……



    「よし…」



    男は所持していたペンライトで、闇に支配された自身の後方を照らした、



    『ザッザッザッザッザッザッザ……』



    数秒後、多数の足音とともに 後方から姿を現したのは、10人程の武装部隊


    ソレを集めた男は目で人数を確認し、強く小さな声で声を出した。



    「いいか、相手はあの絶望だ……気を抜くなよ?」

    「「…了解」」



    兵のしっかりとした返答を聞いた男は軽く微笑むと視点を変え、今度は殺気の混じった目つきで扉を睨む



    「いくぞ……」

    「1、2………3!」



    カウントダウンと同時に閉ざされた扉をぶち破り、男を……部隊長を中心に集まった武装隊が一斉に突入した。



    ━━━━━━━━━しかし、




    「誰も……いない?」



    静寂に包まれた部屋は明かりもついてなく、引っ越しの後のようにもぬけの殻だった



    「……どういうことだ?」

    「隊長!これを!」

    「?」



    隊の一人が指差す先にあったのは、古ぼけたデスクの上に置かれた……白黒のクマのぬいぐるみ。



    「こ、コイツは確かアイツの……!」

    「うぷ……うぷぷぷ……」

    「ウププププププププププププププププププププッ!!」

    「!?」

    「マズイっ!全員撤……」



    それに気づいた時にはもう遅かった。




    「アーーハッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!」

    『ピ━━━━━━━━━━━━━ ッ………』





    高らかな笑いと鋭い機械音が鳴り響いた直後、漆黒の夜街に不気味な爆発音が轟いた…………。
  5. 5 : : 2014/05/03(土) 17:34:58
    >>2

    ありがとうございます!(* ̄∇ ̄)ノ


    >>3

    期待ありがとです
  6. 6 : : 2014/05/03(土) 18:41:12
    期待♪
  7. 7 : : 2014/05/03(土) 19:12:52
    期待ですよ!
  8. 8 : : 2014/05/03(土) 20:18:26
    超期待です!!
    自信作と聞いて、雑草さんのハードル上がってるなーと思いましたwww
  9. 9 : : 2014/05/03(土) 23:21:35
    雑草様!期待です!
  10. 10 : : 2014/05/04(日) 02:14:17
    期待です!
  11. 11 : : 2014/05/04(日) 22:52:53
    期待します!
  12. 12 : : 2014/05/05(月) 20:33:51
    >>6

    >>7

    >>9

    >>10

    >>11

    期待のお言葉、ありがとうございますっ!
    今まで以上に全力で頑張ります(* ̄∇ ̄)ノ


    >>8

    上げますよー!
    なんたって自信作ですからね!
  13. 13 : : 2014/05/07(水) 17:48:13
    数日後、希望ヶ峰学園





    『ザアアアアアアアアアア…………』




    苗木「雨……やまないね」

    舞園「ここ数日間ずっと降りっぱなしですよね」

    朝日奈「お陰で全然外で遊べないよ〜」

    葉隠「植物園はあんなに晴れてんのに変な話だべ!」

    不二咲「あれは作り物だよ?」


    桑田「あ〜あ!せっかくあの邪魔な鉄板取り外したってのに、これじゃあ太陽すら見れねえじゃん」

    大和田「雨ばっかでジメジメすんぜ……オイ苗木、ちょっと殴らせろ」

    苗木「理不尽っ!?」

    大神「よさぬか、あの日決めた誓いを忘れたのか?」


    大神「超高校級の絶望、江ノ島盾子を倒したあの日……我らはもう仲間同士で争わぬと」

    「……………!」

    大和田「…うっ……」



    そう、あの日……僕達を、コロシアイという名の絶望に陥れようした張本人、



    超高校級の絶望……江ノ島盾子。



    あの時、もし未来機関の到着が遅かったら、僕たちは本当に仲間をこの手にかけてしまっていたかもしれない……



    だからこそ僕らは互いに誓った、もうどんなことがあっても、絶対に仲間同士で傷つけ合わないと……!




    大和田「ま、間に受けんなよ、冗談だって……」

    大神「冗談でも言わぬ事だ、そなたは我らの仲間だろう?」

    大和田「分かってるっつの、チッ!シラケんな……!」



    静まった場の空気に大和田は髪を掻きむしりながら食堂を去っていった



    大神「やれやれ…」

    苗木「ま、まぁ別に大和田くんも悪気があった訳じゃないしさ」



    ……でも、『倒した』と言う表現は間違いかもしれない


    未来機関が来たあの日、江ノ島盾子及びその双子の姉に当たる戦刃むくろは、既に学園から姿を消していた……



    もしかしたらまだ絶望は健在かもしれない、そう思うとゾッと鳥肌が立つ



    でも……絶望が姿を消してから半年が経った今でも、世界に物騒な事件は起きていない



    苗木(やっぱり僕の思い過ごしかな……)

    舞園「苗木くん?」

    苗木「へ!?な、なに?」

    舞園「どうかしたんですか?」

    セレス「顔色がすぐれないようですが」

    苗木「ううん、なんでもないよ」



    (うん……きっとそうだ)

    (あんな悪夢は……もうゴメンだ……)



    朝日奈「あー、ジメジメしてあつ〜い……」

    朝日奈「あっそうだ!」



    襟をはたく手を止め、突如満面の笑顔を浮かべる


    朝日奈「ねえみんな!プールに行こうよ!プール!」

    葉隠「それ昨日も言ってたべ……」

    十神「お前の脳にはプールとドーナツしかないのか?」

    朝日奈「うん!」

    大神「朝日奈………」



    石丸「まぁいいじゃないか!ここでダラダラとするより、運動で一汗かいたほうがよっぽど健康的だ!」

    朝日奈「よし!じゃあレッツゴー!」



    プールへのスイッチが入った朝日奈を先頭に、一同は「やれやれ」と食堂を後にした



    苗木「はは、朝日奈さんは本当にプールが好きなんだな〜」

    「苗木くん…」

    苗木「?」




    不意の呼びかけに苗木の足がとまる





    苗木「あ、霧切さん 僕に何か用?」

    霧切「少し、話があるのだけれど……」



  14. 14 : : 2014/05/07(水) 23:16:47
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━






    「大事な話だから」と苗木は霧切の自室に招待された




    苗木(ここが霧切さんの部屋……)

    霧切「その辺に適当に腰掛けてくれるかしら?」

    苗木「あ、うん…」



    適当にと言われても、女子の部屋が初めての苗木にはその適当な場所が分からず、とりあえずベッドの角に腰を下ろすことにした



    苗木が座ったのを確認すると、霧切も机にしまわれた椅子を引き出し、ゆっくり腰をかける




    苗木「それで……話って?」

    霧切「その前に、この話を他の人達に話さないと保証できるかしら?」

    苗木「え?…あっうん、わかった」

    霧切「そう…」



    椅子からスッと立ち上がり、見下ろすように苗木を見つめる



    霧切「……単刀直入にいうわ」

    苗木「……?」




    霧切「絶望は……生きている」

    苗木「!?」




    絶望が……生きている。



    その言葉を聴いた瞬間、全ての臓器や神経が逆立った気がした



    (やはり絶望は死んではいない……)



    苗木が危惧していた最も当たって欲しくない予感が的中してしまった




    霧切「……でも聴いて、話はそれだけじゃない」

    苗木「え?」

    霧切「先日、未来機関から江ノ島盾子の本拠地を発見したと連絡があったの…」

    苗木「!」

    霧切「もうこの世界の様子を見る限り、江ノ島盾子に世界を脅かす力はもう残っていない…」


    霧切「つまり、この半年間一度も事件が起きなかったのは江ノ島の力が衰えているということ」


    霧切「だから私達未来機関は江ノ島盾子、及び生き残りの残党を生きたまま捕らえ、地下牢獄に隔離する……」


    苗木「隔離!?」


    霧切「絶望の元となる者が消えれば、また新たな絶望が現れるかもしれない…」


    霧切「別に拷問とかするわけでは無いわ……ただ、彼女を地上に出さないようにするだけ……」



    疲れたのか、立ち上がった腰を下ろし、再び椅子に腰掛けた



    霧切「未来機関の方からも直に連絡が来るはずだわ」

    霧切「具体的に彼女をどうするかは、それからにしましょう…」


    苗木「どうして……この話を僕に?」

    霧切「さぁ、何故かしら?」

    霧切「貴方なら信用できると思ったのかもね」

    苗木「え?」



    真顔で「何でもないわ」と顔をそらす霧切だが、その顔はどことなく笑っているように見えた



    霧切「さて、そろそろ戻りましょう?早く行かないと怪しまれるわよ?」

    苗木「え、何を?」

    霧切「さぁ……何をかしら?」






    その後もそんなやりとりを繰り返しながら、二人は皆のいるプールへと向かった。


  15. 15 : : 2014/05/09(金) 18:04:58
    個室の並ぶ廊下を過ぎ、二階への階段に差し掛かったところで突如霧切の脚が止まった



    霧切「…………」

    苗木「どうかしたの、霧切さん?」

    霧切「静かに……」



    霧切は人差し指で自身の口を閉ざし、もう片方の手を耳に当てる、



    霧切「何か聞こえる……」

    苗木「え?」



    クイッと首で指された窓の方へ耳を傾ける



    苗木「あ、本当だ……」



    雨の音に紛れる中、確かに窓の外で妙な物音がする……



    霧切「! 伏せて!」

    『ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!』



    突然窓ガラスを突き破り、飛び込んできたのは雨のように注がれる銃弾!



    苗木「うわっ!?」

    霧切「っ!」



    いち早く気づいた霧切に押し倒され、苗木は間一髪銃弾をかわす



    霧切「走って!」



    降り注ぐ銃弾の中、霧切は苗木の服を捕まえ曲がり角に駆け込んだ



    苗木「はぁ……!はぁ……!」

    霧切「大丈夫?」

    苗木「な、何だよ今の!?」

    霧切「分からない…」



    壁を盾にし、外の様子をうかがう


    するといつの間にか銃声が止んでおり、今度はガラスを踏み割るような音



    霧切「マズイ、隠れて!」



    服を掴んだまま急いで階段を駆け上がり、下から見えない踊り場で身を潜める


    「……………………」


    数秒後…向かい角の壁から姿を現したのは、防弾着やヘルメットで武装した数人の男達



    苗木「あ、あの手に持ってる銃って本物?」

    霧切「……おそらくね」



    あまりの唐突な出来事に全然状況が把握できない


    男達は辺りを軽く見回し、その場を後にした



    霧切(一体どういうこと……?それにあの人達、どこかで見たような……)



    男達が完全に視界から消えたのを確認すると、こんがらがる頭の中を慎重に整理する



    「……………………」



    ……だからこそ、後ろへの注意がおろそかだった



    霧切「!?」

    苗木「うわっ!」

    「……見つけた」



    男は霧切たちの背後に狙いを定め、銃を構える



    あの片手には余る大きさ……よく映画やアニメで出てくるマシンガンだ



    だがそんなことはどうでもいい、銃だろうがマシンガンだろうが一発でも食らえば基本即死だ



    そしてそれがこんな至近距離なら尚更である



    霧切「くっ!避けられない!」

    「…はぁ〜………」



    不気味な吐息を吐き捨て、男は躊躇なく引き金に指をかける




    ━━━━━━━━しかし、




    肝心の弾が撃ち抜いたのは霧切達の背中では無く、その遥か上の天井



    霧切「!?」

    「かはっ……」



    同時に男の巨体が崩れ落ちた



    苗木「お、大和田くん!」

    大和田「怪我はねえか?」

    霧切「ええ、おかげで助かったわ…」

    大和田「ったく、何なんだコイツ等?そこら中にウジャウジャいやがる」



    右手に握った鉄パイプを担ぎ直し、倒れた男を足蹴にしながら大和田は言う



    苗木「そ、そこら中にって……大和田くん怖くないの?」

    大和田「あぁ?銃なんか族にいた時に何度も見てきたからな」

    苗木「そ、そうなんだ……」

    霧切「…………………」

    苗木「? どうしたの霧切さん?」



    ふと、目をやると倒れた男をジッと見つめる霧切の姿、


    そしてしばらくすると、突然霧切の目が大きく開き、冷や汗が頬を伝う……



    苗木「……霧切さん?」

    霧切「思い出した………」



    その表情はまるで世界の終わりでも見たかのような、「驚愕」の一言に塗り潰されていた



    そして同時に、霧切から発せられた言葉に苗木は我が耳を疑った、





    霧切「この人達………未来機関から来た人だわ」



  16. 16 : : 2014/05/09(金) 18:18:49
    大和田かっこええな!!
    (ちなみに、俺の最寄り駅の名前も大和田)
    ↑何の役にも立たない情報w
    期待♪
  17. 17 : : 2014/05/09(金) 22:11:04
    面白いですよ!!期待です!!
  18. 18 : : 2014/05/09(金) 22:29:40
    期待です!ファイトですよ!!
  19. 19 : : 2014/05/11(日) 16:30:31
    >>16

    >>17

    >>18


    期待のお言葉、ありがとうございます!
    それでは再起動です(* ̄∇ ̄)ノ
  20. 20 : : 2014/05/11(日) 16:32:48

    霧切「ほら、この肩に付いてるワッペン……」



    言われた通りに男の肩に目を凝らすと、確かに『未来機関』ハッキリ刻まれている



    大和田「診ない器官?なんだそりゃ」

    霧切「未来機関……希望の救済及び、対絶望として結成された組織の事よ」

    霧切「私達を助けてくれた人達……といえば分かるかしら?」

    苗木「ちょ、ちょっと待ってよ!なんで未来機関が僕達を襲ってきたの!?」



    あまりの衝撃的な事実に思わず声が上がる



    霧切「私にも分からない……」



    (だけど、見ているだけで自分を見失ってしまいそうなあの感覚……どこかで……)



    大和田「つーかよ、そのなんたら機関って奴らよりも先に、他の奴らはどうしたんだよ?」

    苗木「そうだ!朝日奈さん達も危ない!」



    勢いよく走りだした苗木だが、霧切に腕を掴まれたことによりその勢いは消える



    霧切「感情に動かされてはダメ、もしそれで見つかったりでもしたらどうするの?」

    苗木「だけど!このままじゃ皆が……!」



    緊迫した空気にも関わらず、苗木の深刻な顔に霧切は「馬鹿ね」と言わんばかりの笑みを返した



    霧切「大丈夫、皆には彼女がついているわ」

    苗木「かの……じょ?」




    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




    一方、二階では霧切の想像を絵に描いたかのような状況が展開されていた



    「ぐほぉっ!?」



    銃や装備も身につけ、200キロ以上はある男の巨体がまるで紙屑の如く宙に舞う


    そしてそのまま重力に逆らうことなく、背中から床に叩きつけられた



    「……ッ!」

    「愚かな……銃など我には効かぬ」

    「こ、この化物が!」



    とっさに銃を構えるも、その手は後ろから伸びてきた腕に捕まり不規則な方向へと強引に拗じられる



    「ぐあああああっ!?」



    それは世に言う、銃に対する護身術!
    石のような男の腕力も全く使い物にならない



    「如何に銃を持っていようと、当たらなければ意味はない」

    「……俺を殺そうなど図が高いぞ、愚民め」





    霧切「オマケに自称『超高校級の完璧』さんもいるから、落ち着いて慎重に行きましょう?」

    苗木(十神君の事か……)



  21. 21 : : 2014/05/11(日) 19:20:44
    噛ませキターーーーーーー!!
    期待♪
  22. 22 : : 2014/05/11(日) 19:47:21
    かませがカッコいいw
  23. 23 : : 2014/05/12(月) 15:33:35
    >>20

    >>21


    コメント等ありがとうございます!
    それでは再起動です(* ̄∇ ̄)ノ
  24. 24 : : 2014/05/12(月) 15:34:51
    十神「………こんなものか」

    桑田「い、一体なんなんだよコイツラ!?」



    突如襲ってきた武装者達……訳の分からない状況に一同の思考は恐怖と不安で埋め尽くされていた



    朝日奈「ねえねえサクラちゃん」

    大神「どうした?朝日奈よ……」

    朝日奈「あの人たちの肩にさ……何か書いてない?」

    大神「ムゥ……?」



    武装者の気絶を確認し、一同はソレを囲うように集まる



    セレス「未来機関……ですか?」

    舞園「何処かで聞いたことあるような……」

    不二咲「た、確か僕達を助けてくれた人達じゃなかったかなぁ?」

    桑田「はぁ?なんで俺達を助けてくれた奴が俺達を殺そうとすんだよ!?」

    不二咲「そ、それは………」

    石丸「喧嘩はやめたまえ!こういう時こそ、みんなで協力するべきだ!」

    大神「うむ、そうだな……」

    大神「今はまず、この場にいない霧切達の安否を確認せねば」

    舞園「苗木くん無事だといいですけど……」

    朝日奈「あ!ねえ、アレ苗木じゃない?」

    「「!?」」



    反射的に振り向くと、確かに遠くの方からコチラへ走ってくる苗木達の姿



    石丸「おお!苗木くん無事だったのか!」

    不二咲「大和田くんも無事だぁ……!」

    大神「いや待て……」



    三人をホッとした表情で出迎えようとした一同を、大神の腕が遮る



    朝日奈「ど、どうしたのサクラちゃん?」

    大神「何か様子が変だ……」



    そう言われ目を凝らすと、何やら口が動いているのが分かる



    苗木「……!…………!!…」

    舞園「何か叫んでいるようですけど……」

    山田「焦っているようにも見えますなー」

    苗木「………!!………テ……!」

    葉隠「な、なんて言ってるんだ?遠すぎて聞こえないべ」

    セレス「『に・げ・て』……ですか?」

    大神「分かるのか?」

    セレス「ふふ、相手の口動作を読み取るなど、ギャンブラーとして当然ですわ」

    桑田「逃げろぉ?なんだそりゃ?鬼ごっこでもしてる気なのか?」



    意味を理解できない一同は改めてその意味を思い知ることになる



    腐川「ひっ!?な、何よアレ!」



    苗木達との距離があと少しとなった瞬間、その後ろから現れたのは何十人もの武装者!



    「「!?」」

    石丸「な、何だアレは!?」

    大神「数が多すぎる……!」

    十神「チッ、全員走れ!」

    葉隠「セレスっち!そういうことはもっと早く教えてほしいべ!」

    セレス「あら、なんで私が貴方如きの言うことを聞かなくてはいけなくて?」

    葉隠「酷いべ!」

    大神「とにかく走れ!」



    走る一同に怒号を吐きかけると大神は苗木たちと合流し、同じ速度で走る



    大神「苗木よ……一体何が起きている?」

    苗木「そ、それが僕にも……!」

    霧切「詳しい話は後、今は彼らを振り切らないと……!」

    大神「任せておけ」



    大神は近くにあったドアを止め金ごと外し、ソレを天井目掛けて渾身の力で投げた!



    「!?」



    直後、ガラスが割れる音と気味の悪い電流音が轟き、あたりが暗闇に包まれる


    同時にバチバチと白く弾ける閃光



    「ッ!?」

    「な、何だ!?何が起きた!?」

    「チッ!誰か明かりをつけろ!」



    大和田「うお!?なにしやがったんだお前!」

    苗木「急に電気が……!」

    霧切「なるほど……蛍光灯を壊したのね」

    大神「今だ、奴らが暗闇に慣れぬうちにこの場を駆け抜けるぞ……!」

  25. 25 : : 2014/05/14(水) 18:08:08
    ●━┫寄宿舎2F・【2ーB】┣━●




    苗木「はぁ……!はぁ………!」

    大神「皆無事か?」

    大和田「だあー畜生っ!一体なんだってんだよ!?」



    呼吸よりも先に怒りを吐き捨てる大和田



    舞園「とにかく怪我人が出なくて良かったです……」

    不二咲「で、でもぉ……こ、これからどうするの?」

    セレス「2階は最も部屋の少ないフロア……ここが見つかるのも時間の問題ですわ」

    山田「袋のネズミというわけですか〜……」

    桑田「クソッ!このままじゃ全員殺されちまうじゃねえか!」


    大神「……一体、何が起きているというのだ」

    苗木「どう霧切さん、本部に繋がった?」

    霧切「いえ、依然と音沙汰無しだわ……」



    使い物にならない無線機をスカートのポケットに入れ、霧切は混乱している一同に声を発した



    霧切「聞いて、今この場で何が起きているかはまだ分からない……」

    霧切「……だけど、今はそんなことよりも状況下を切り抜けることが先……そうでしょ?」

    「「…………………」」



    多くの言葉はいらない。


    霧切はシンプルかつ、丁寧な口調で場の空気を落ち着かせる



    石丸「そ、そうだな……」

    舞園「ここでグタグタしていても何も始まらないですもんね!」

    朝日奈「で、でもどうやってこの場を乗り切るの?」

    葉隠「そうだべ!相手はマシンガンを持ってんだぞ!?」

    十神「まさか何の策も無しに言ったのではないだろうな?」

    霧切「大丈夫、策ならあるわ……」




    そう言って霧切が指差したのは、教室内に並べられた机と椅子、そして正面に置かれた 落書きだらけの黒板だった。

  26. 26 : : 2014/05/14(水) 20:41:50
    霧切さんカッコええ!!
    期待♪
    頑張って!
  27. 27 : : 2014/05/16(金) 19:32:35
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



    二階は照明を破壊されたことにより暗闇に包まれていた。


    頼りなのは夜戦用に銃口に取り付けられたウェポンライトのみ


    しかしこれは敵に自分の居場所を悟られないよう最小限に抑えられてある為、光の範囲は極めて狭い



    「クソ……何にも見えねえ……」

    「だがこの階にいることは確かだ。確実に見つけろ!」

    「「はっ!」」



    男らは散開し各々の託された場所へと散っていった



    「…………って痛っ!」



    散開した男の一人が暗闇の中、何かにぶつかった



    「んだぁ?」

    「……なぁ、ここって行き止まりだったか?」

    「はぁ?何言ってんだ、地図にはこの先教室があるは………」



    暗闇にライトを照らすと、その教室があるはずの通路は山のように積まれた机で阻まれていた



    「な?」

    「な?ってお前……馬鹿だろ?」

    「へ?」

    「こんな幼稚な発想に引っかかると思ったか?」

    「お子ちゃま共っ!!」



    力強く机の足を押し蹴るとバランスを失った山は呆気なく崩れ落ちた



    「へ、机でバリケードなんて小学生が考えるレベルだぜ……」

    「ほら見ろ、やっぱり奥に扉が……」



    「!!」



    しかし、男が驚いたのは教室の扉が姿を現したことではない


    その障害が消えたことにより露わになった二つの人影……



    霧切「かかったわね…」

    「ッ!」

    霧切「今よ!」

    大神「ヌウウンッ!!」



    驚く暇もない男達に突き出されたのは、崩れ落ちた机を吹き飛ばすほどの空圧とその空圧を生む豪腕!



    銃弾の如く撃ち出された鉄拳は迷うことなく男たちに突き刺さる!



    「グハァッ!」

    「ガハァ!?」



    渾身の一撃に飛ばされ男等は凄まじい勢いで後ろの壁に叩きつけられた



    「!?何だ!」

    「おい!どうした!」



    音を聞きつけ、向かおうとした瞬間突然銃口のライトが砕け散った



    「!?」

    「がッ!」



    その直後、隣にいた仲間が苦痛の声を上げる



    「グッ!」

    「ガッ!?」



    それに続くかのように暗闇の中、次々と苦痛の声が飛び交う



    「オイ!どうかしたの………ガッ!?」



    突如頭に走る激痛、あまりの痛みに思わずその場に膝をつく



    「……ッ」



    反射的に手を当てるとパラパラと粉末のようなものが落ちてくる



    「これは……チョーク?」

    「オラァッ!」

    「ッ!?」



    気合いの入った声を聴覚が捉えたと同時に後頭部にまたあの刺さるような激痛が走る



    「あがっ!?」



    二度の頭部へのダメージにより足腰がガクンと折れる



    霧切「流石は超高校級の野球選手ね……」

    桑田「ったく、光目掛けてチョーク投げろとかハードル高すぎだろ!?」

    桑田「オイ、早く次のチョーク持ってこいって!」

    苗木「あ、うん!」

    大神「全く、無茶な発想をするものだ」




    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




    霧切『作戦はこう……』

    霧切『まず、教室の前を机と椅子で積み上げバリケードを作る』

    大和田『ああ?バリケードだぁ?』

    舞園『そ、そんなことしても相手は大人なんですよ?』

    葉隠『すぐに壊されるに決まってるべ!』

    霧切『大丈夫、それはフェイクよ』

    十神『どういう意味だ?』

    霧切『彼らがそのバリケードを崩したその一瞬に奇襲をかけるの』

    霧切『それには………大神さん、貴女の力が必要不可欠だわ』

    大神『……?』


    霧切『貴女はあの男達を何人まで相手できる?』

    大神『そうだな……ざっと10人ぐらいか…』

    霧切『十分ね』


    霧切『恐らく敵は暗闇に警戒し、少人数組んで散開するはず……』

    霧切『そこでコチラ側に来たその男を大神さんにぶつけ、周りの注意を引く……』


    霧切『そして最後は貴方よ、桑田くん』

    桑田『は?俺?』

    霧切『超高校級の野球選手である貴方にしか出来ないことなの』

    桑田『?』

    霧切『あの銃……多分ウェポンライトが付いている』

    桑田『ウェポン……何だって?』

    十神『……ウェポンライト、夜戦や敵の視界を奪うための銃口につけられた小さなライトの事だ』


    霧切『貴方にはそのライトを目掛けてこのチョークを投げて欲しいの』

    桑田『はぁ!?ちょ、ちょっと待てよ!そんなの流石に無……』


    舞園『お願いします桑田くん、貴方が頼りなんです』

    桑田『頑張ります!』

    『『……………………』』


    霧切『…………じゃあ、作戦開始よ』




  28. 28 : : 2014/05/16(金) 21:24:30
    桑田wwwwwwww
    期待♪
  29. 32 : : 2014/05/18(日) 23:48:26

    桑田「これで最後ッ!」

    「ガハァッ!?」



    最後のライトが消失し、また辺りが漆黒の闇へと包まれた



    桑田「あー疲れた……もう投げらんねえぞ………」



    そう言って大きく肩で息をする桑田



    霧切「チョークはまだ残ってる?」

    苗木「うん、あと1箱残ってるよ」

    霧切「一応持っておきましょう、ただのチョークでも桑田くんが投げれば十分武器になることは証明されたわ……」

    霧切「それに敵がこれで全てとも言えないし」

    苗木「分かった」



    苗木はチョークが入った箱を教室で見つけたリュックサックにしまった




    〔所持品リスト〕

    ・チョーク (New)




    霧切「とりあえずここから脱出しない限り何も始まらないわ……」



    辺りに気配が無いのを確認し、一同は霧切を先頭に慎重かつ素早く1階へ続く階段へと進んだ



  30. 33 : : 2014/05/19(月) 02:45:36
    チョークで撃退したんかΣ(・□・;)
    桑田凄えな!!

    期待♪
  31. 34 : : 2014/05/19(月) 23:03:56
    ●━┫寄宿舎1F・1階廊下 上がり階段前┣━●



    霧切「なんとか来れたわね…」



    目の前に散らばるガラスの破片と床を埋め尽くす程の大量の薬莢。


    そしてその場に微かに立ち込める火薬の匂い……



    苗木「何も変わってないね……」

    霧切「…………」

    葉隠「な、何だべコレ!?一体何があったんだ!?」

    大神「そなた達も大変だったようだな、苗木よ…」

    苗木「霧切さんのお陰だよ」

    十神「フン、悪運の強い奴らだ」

    桑田「てか早くここから逃げようぜ?またさっきの奴らがきたらヤベえって!」



    焦りが生んでしまった言動なのか、桑田は一人廊下の先へと駆け出す。



    霧切「っ!?待って………!」



    何とか桑田の首根っこを捕まえて引っ張り戻そうとするが、その手も空を掴む。



    桑田「ほら!お前らも早く来………」



    独走を続けていた足が少しずつ減速し、遂には完全に立ち止まる



    桑田「………い?」

    「………発見……」



    ガクッと腰をぬかす桑田の前にいたのは壁のように立ちはだかった数人の武装者



    苗木「桑田くん!」

    大神「苗木後ろだ!」

    苗木「!?」



    後ろへ振り向くとそこにはその倍近くはいる武装者の大群!


    おまけに体育館へ続く脇道も塞がれていた



    苗木「囲まれた!?」

    霧切「くっやはり罠……!」

    十神「チッ!マヌケが……」

    大和田「数が多すぎるぜ!」

    朝日奈「サクラちゃん!」

    大神「ヌゥ……」

    「……ターゲットを捉えた、これより拘束する」

    『ザ……ザザ……了解……殺すなよ?』

    「んなヘマしねえよ……」



    無線機を切り、冷酷な眼差しで一同を睨みつける武装者達……



    苗木「どうするの霧切さん!」



    苗木が口を開いた時には霧切は既に行動を開始していた



    霧切「貴方達、未来機関の武装隊でしょう?」

    「………………………」

    霧切「何故こんな真似を?」

    「……………………」




    そう簡単には口を割らないことくらいは分かっている。


    だが男は「フッ」と軽く唇を緩ませゆっくりと話し始めた



    「………時代は変わった……」

    「………やがて災厄の闇がこの世界を覆い尽くす……」

    「その為にこの国、いやこの世の全てを闇に塗りつぶす……」

    「それが我々の意志であり、あの方の意志なのだ……!!」

    霧切(あの方……?)

    「おっと、少し喋り過ぎたな……」

    「取り押さえろ」

    「「はっ!」」



    声に反応し、武装隊が一斉に抑えかかった!



    不二咲「うわぁ!?」

    大神「やむを得ん……やるぞ」

    十神「フン、貴様らに従う気は微塵もないが……礼儀を知らん犬には調教せねばな」

    大和田「上等だゴラァっ!!」



    数で見れば勝率はゼロ。


    だが、一同は一斉に軍隊の波に立ち向かう………しかし、


    その二つの勢力がぶつかることは無かった。



    「!?」

    『『ドッゴオォォォォォォッ!!!』』



    耳を塞ぎたくなるような凄い轟音で壁を突き破り、双者の中に割り込んできたのは巨大な工事用トラック!



    「なっ!?」



    トラックはそこで停止し、双方を阻む壁となった。



    苗木「な、なんだ!?」

    大神「新手か……!」


    「みんな無事かっ!?」



    しかし、トラックから聞こえてきたのは聞き覚えのある声



    苗木「こ、この声って……!」



    助手席の窓からひょっこり顔を出したのは白いワイシャツにアンテナの立った髪。



    苗木「日向くん!?」

    霧切「何故ここに?」

    日向「細かい話はあとだ!とにかく全員乗れ!」



    指差す場所にはトラックに接続された巨大な荷台



    「ちっ!逃がすな!」



    我を取り戻し、苗木サイドを取り押さえていた数人の男たちが襲いかかる


    だが向かい側と比べればその数差は歴然!



    大神「ヌウウンッ!!」



    大神は得意の格闘術で襲いかかる大男目掛けて渾身の一撃をかます



    「グホォッ!?」



    防弾チョッキの装甲を貫き、後ろに並んでいた仲間ごと数メートル先まで吹き飛ばした



    大神「今だ!全員乗り込め!」



    一番ひ弱な女子を初めに、一同は次々と乗車する



    苗木「大神さん!全員乗ったよ!」

    大神「ウム」



    苗木の言葉聞き、大神もすかさず乗り込む



    日向「おし、全員乗ったな?」

    日向「左右田!」

    左右田「おっしゃあ!任せとけ!」



    すかさずバックで向きを変え、使い慣れたハンドル裁きでトラックは全速力でその場を駆け抜ける



    「クソッ!」



    胸元から無線機を取り出し、電源を入れる



    「こちら β 部隊、ターゲットに逃げられた……」


    「………CODE【D・E】を起動させろ」
  32. 35 : : 2014/05/19(月) 23:11:01
    日向ナイス!!
    あの方って盾子ちゃん?
    期待♪
  33. 36 : : 2014/05/28(水) 19:50:00
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




    ……とうに学園は見えなくなり、トラックは荒れ果てた街の道路を、ただひたすら 走り続けていた



    耳に入ってくるのは激しく打ちつける雨と水を踏みつけるタイヤの音。



    流石、工事用トラックと言うだけあり、荷台の広さも30人の高校生を乗せても窮屈さはあまり感じなかった。



    苗木「ありがとう、日向くん達のおかげで助かったよ!」

    日向「気にするなよ、困った時はお互い様だろ?」



    運転席と荷台を繋ぐ小窓から日向は明るい笑みを送る



    弐大「なっはっはっはっ!みんな無事で良かったのう!」

    澪田「間一髪だったっすね!」



    日向と運転席の左右田以外は全員荷台に座っていて、入り口付近にいる苗木でも皆の顔を把握できた。



    苗木「あのまま日向くんが来なかったら僕達今ご━━」

    霧切「お話中の所悪いのだけれど」



    突然の発言に皆の視線が霧切へと向けられた



    苗木「ど、どうしたの霧切さん」

    霧切「日向くん、貴方は知ってるんでしょう?この世界で何が起きているのか……」

    日向「………………」



    そうだ、よくよく考えてみれば何で日向くん達は僕らの危険に気づいたのだろう……



    苗木「日向くん、何か知ってるの?」

    日向「………………」

    「話しておけ」

    日向「……十神」

    豚神「いずれは知らなくてはならない事だ……コイツラにも話しておくべきだろう」

    日向「……分かった」



    前を向いていた頭が振り返り、真剣な眼差しが苗木たちに向けられる


    その眼から発する気迫に一同の中に何とも言えない緊迫感が流れた



    日向「ZTBU−0000……」

    「「?」」



    突如日向の口から出てきたのは、聞いたこともない謎の暗号



    霧切「その数式……細胞の名前かしら?」

    日向「ああ、別名……『絶望病』」

    「「ッ!?」」



    苗木「ぜ、絶望!?」

    舞園「ま、まさか……」

    日向「あぁ、そうだ」

    日向「……超高校級の絶望、江ノ島盾子」











    日向「全ては……アイツから始まったんだ」






  34. 37 : : 2014/05/30(金) 21:50:09
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━








    そこは……何処かの実験室。


    変な色の液体が入ったフラスコや、大掛かりな器具……


    常人から見てみればこの一室はたいそう気味悪がるだろう



    それ程までに、この空間は不気味で、おぞましくて、悪趣味だった……。




    『カタカタカタカタカタカタカタカタカタ………』



    しかし、そんな事など気にもせず男はただひたすらキーボードを叩いていた



    『カタカタカタカタカタカタカタ………カタッ』


    「はぁ…………」



    薄汚れた白衣を纏い、目の前のパソコンを睨みながら松田夜助は怠そうにモニターに溜息を吐き捨てる。




    松田「………出来たぞ、ドブス」

    「本当っ!?流石松田くぅ〜ん!」



    悪口にも関わらず歓喜の声で駆け寄ってきたのは、見せブラを大きく露出したツインテールの美女。



    超高校級の絶望……江ノ島盾子。




    松田「ほらよ、コレで良いんだろ?」

    江ノ島「う〜ん、ちょっと待って!」



    モニターを見つめ、表示されているものを抜かりなくチェックする



    江ノ島「…………………」

    松田「近えんだよ、いつまで見てる気だ」

    江ノ島「ん〜松田くんと付き合えるまで?」

    松田「消去プログラム起動……と」

    江ノ島「わー!わー!冗談よ冗談!」



    『消去しますか?』に、対し『はい』を、選択する手をとっさに制止する



    松田「テメエと付き合うくらいなら死んだほうがまだマシだ」

    江ノ島「あ〜ん!大好きな松田くんに罵倒されるなんて絶望的〜!」

    松田「うるせぇ、で?コレでいいのか?」

    江ノ島「あ、めんごめんご〜♬」



    ヨダレを拭い、気持ちのない謝罪をする江ノ島に松田は舌打ちを鳴らす



    江ノ島「……うん、流石は超高校級の神経学者」

    江ノ島「正直ここまでとは思いませんでしたね」



    真面目な返答に松田も同じく真面目に返答する



    松田「ったく、無茶なこと言いやがるぜ」

    松田「直径0.01㎜も無い細胞組織を要望どうりに創り変えろってんだからよ」



    背もたれに全体重を任せ、またさらに大きなため息を吐き捨てた。



    江ノ島「でも流石だね、これなら大成功だよ」



    机の上のペトリ皿を手に取り、ライトに照らす


    中に入っているのは、針穴よりも小さい一つの黒い点。


    光に照らされ、黒点は濃い紫色に透ける。



    江ノ島「絶望病……あれは個人差があったからね」

    江ノ島「絶望的な細胞だったけど、使えなきゃシラケんのよね〜」

    松田「……………」



    下からでは逆光で顔は見えないが、その掲げたペトリ皿が下の江ノ島の顔を映し出している



    江ノ島「どんな薬も、どんな治療も受け付けない最悪の細胞……」

    江ノ島「感染者は全ての思考を消され、私様に従う忠実な絶望と化す……」

    江ノ島「そして世界は……黒くドス黒く染まっていくのです……」



    ペトリ皿を置き、ソレを抱くように机に上半身を押し付ける



    江ノ島「あ〜……なんて素晴らしいんでしょう……コレこそ……コレこそが私様の望んだ理想郷……!」


    江ノ島「絶望による、絶望の為の、絶望だけの世界!」


    江ノ島「うぷ……うぷぷ………」



    江ノ島「アッハハッハハハハッ!アッハハハハハハハッ!!」




    不気味な空間に、不気味な声が木霊する………


    それはまるで……人という偽りの皮を羽織った悪魔。







    「本当に……恐ろしい女だよ、お前は………」


  35. 38 : : 2014/06/05(木) 14:56:33
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





    日向「………これが俺たちの知った情報の全てだ」

    苗木「世界を黒く染める最悪の細胞……」

    舞園「そんな……!」


    霧切「半年間、彼女が目立った動きを見せなかったのは その為だったのね」


    日向「あぁ……おそらくな」

    日向「今や絶望病は空気感染する程にまで進化している」

    日向「もうこの世界にまともな人間はいない思う……」

    豚神「俺たちを除いて……な」



    もしそうなら、この人っ子一人いない 街の様子にも納得がいく。


    まぁ……街と言っても、過去に暴れた絶望達によって今はただ廃墟の並ぶ荒野と化してしまったけど……



    未来機関や希望を信じる人たち、そういった人々の希望への復興作業に励む光景が少なからずここにはあった



    葉隠「な、なぁ……」



    葉隠の不意の言葉が皆の視線を集める



    葉隠「空気感染ってことは俺らは何で平気なんだ?」

    霧切「恐らく物理室にあった空気清浄機のお陰でしょうね……」

    苗木「そういえば江ノ島盾子が言ってたね」



    『外の世界は絶望が渦巻いています』

    『今あなた方がこうしていられるのは超高校級の物理学者が作った、この空気清浄機のお陰なのです』



    苗木「まさか絶望が作ったものに助けられていたなんて……」



    憎むべきなのか感謝すべきなのか……感情の整理が上手くできない。



    朝日奈「で、でも今は私達……外にいるんだよね?」


    左右田「それなら心配いらねえぜ」

    左右田「このトラックにもアノ洗浄機と同じマシンを俺が搭載してやったからな!」



    鏡にうつる左右田の目線を追った先にあったのは、天井に取り付けられた幅1メートル程の四角い機械。



    桑田「あ、あれがあの……?」

    不二咲「す、凄い…あの大掛かりな機械をこんなコンパクトに!」



    「へへん」と左右田は自慢げににやける。



    ソニア「流石は超高校級のヒステリックですね!」

    左右田「メカニックです!似てますけど意味は大いに違いますよソニアさん!」



    ソニアの天然なボケと左右田の全力ツッコミ。



    日向「ははははは!」



    不穏な表情を浮かべていた一同も次第に笑いにつられ、吹き出し、笑いをあげる



    日向「まぁ……あれだ、俺達はまだ絶望していない!」

    日向「希望が絶望なんかに負けないってことを江ノ島に思い知らせてやろうぜ!」



    その一声に希望の高校生30名全員がうなずいた。




    (そうだ、僕は何を恐れていたのだろう……)


    (何があろうと希望は負けない……)


    (たとえ全世界が黒く染まったとしても、それを上回る白で塗り替えればいい!)


    (それが僕、僕達の……希望なんだ!)




    そう心に決めた途端、トラックの走行音が止まった。



    苗木「?」

    九頭龍「お、おい!なんで急に止まんだよ!?」

    辺古山「ガス欠か?」



    突然の停車に動揺の声がざわめく



    日向「左右田?」


    左右田「な、なんだ……アレ?」


  36. 39 : : 2014/06/05(木) 19:07:35
    左右田の見つめた先には 強い大雨の中、呆然と立ちつくす一つの人影。



    日向「……?」



    その人影は揺らぐことなく、ただただその場に佇んでいた……



    山田「難民……ですかな?」

    大和田「アホか、外の世界は空気清浄機が無いっていってたろ」

    舞園「という事は絶望……?」

    日向「ちょっと待ってろ」



    カバンから双眼鏡を取り出し、自分の視界に双眼鏡を重ねる



    日向「男……みたいだな」



    双眼鏡により映し出されたのは 二十代後半であろう若者。


    裾がボロボロになった麻ズボンの他に衣服は纏っておらず、上半身裸という奇怪な格好だった。


    おまけに首に銅色の鉄枷がはめられている、その姿は牢獄に囚われる囚人を思い描かせた。



    日向(鉄枷……?)

    日向「ッ!!?」



    ソレを理解した瞬間、全身に一気に鳥肌が立つ



    日向「みんなマズイ!『D・E』だ!!」

    苗木「え?」

    豚神「なにっ!?」

    日向「何してる左右田!はやく走れ!」

    左右田「お、おう!」



    我を取り戻し、アクセルとバックを巧みに使い分け一気にその場から走り去る!



    豚神「くそ!こんな時に……!」

    西園寺「ちょ、ちょっとどうすんのよ!?」



    『D・E』という言葉を聞いた途端、トラックの中が慌ただしくなる



    苗木「日向くん、D・Eって?」

    日向「D・E……絶望病によって異形とかした感染者の成れの果てさ」


    七海「Darkness・Encroachment……通称『D・E』」

    七海「彼らは普通の絶望達とは違くて、化物……って言ったほうがいいのかな?」

    霧切「化物……」

    日向「早い話が希望の生き残りを容赦なく殺すハンターってことだ!」



    『ドンッ!!』

    「「!!?」」



    突如、天井に何かが飛び乗ったような重量音。



    日向「くっ!?もう追いつかれた!?」



    (追いつかれたって……確か僕らは今トラックで走ってるんじゃ……)



    『ガシャアアアンッ!!』



    運転席側の天井を突き破り、入ってきたのは紫に染まった異形の腕!



    左右田「わあああああっ!!?」

    日向「っ!」

    舞園「キャアアアアアアッ!!」

    苗木「日向くん!?」

    日向「大丈夫だ!それより罪木!空気が漏れる前に苗木達にアレを!」

    罪木「は、はいぃ……!」



    あたふたと自前のエプロンから取り出したのは人数分の注射器。



    罪木「わ、私が作った絶望病の予防ワクチンですぅ!」

    セレス「あら?絶望病に治療薬は効かない聞きましたが……」

    豚神「治すことは出来ないが、感染を防ぐことはできる」

    日向「早く自分に打つんだ!」

    葉隠「ち、注射なんて嫌だべ……!」

    小泉「ツベコベ言わずにやる!」

    葉隠「あだだだだだっ!」



    怒号に急かされ、苗木たちは急いで配られた注射器を注射する



    日向「はぁ……はぁ…!全員、打ち終わったな……?」



    気がつけば運転席にあの異形物の姿が消えていた。


    日向が追い払ったのだろうか、

    大量に湧き出た汗を拭う日向を余所に、左右田は半分失神しかけの不安定な表情で運転を続けていた。



    苗木「ひ、日向くん大丈夫!?」

    日向「あぁ……なんとかな」

    朝日奈「な、なんなの今の!?」

    日向「今のがD・Eさ」

    日向「江ノ島盾子によって遺伝子細胞そのものを改造された生物兵器……」

    「「!!」」



    苗木「じ、人体兵器……!?」

    山田「も、もう何が何だか〜」



    最悪の細胞、絶望病、人体兵器……訳の分からない未知の単語のオンパレードに脳みそが混乱する



    日向「まぁ……流石に一度に分かれってのも無理があるよな」

    日向「七海」

    七海「承知……!」



    ビシッと可愛げな敬礼を決める七海。



    七海「よいしょっと」



    そう言って取り出したのは回転式のホワイトボード



    七海「では、これより『千秋ちゃんレクチャー』を始めます……!」

    日向「いや別にそんな大掛かりな事しなくても……」



    『まぁいいか』と言い出しかけた口を押し止め、一同の興味と視線は白紙のホワイトボードへと注がれた。
  37. 40 : : 2014/06/05(木) 21:49:12
    すげー面白い
  38. 41 : : 2014/06/05(木) 22:14:58
    >>40


    本当ですか!

    うわぁー嬉しいです!ありがとうございます!
  39. 42 : : 2014/06/06(金) 22:58:58
    七海「じゃあ、早速始めるね」



    黒ペンのキャップを外し、『キュッキュ』と気持ちの良い音を鳴らしながら七海はホワイトボードに書き込んでいく。


    時々うたた寝することもあったが……まぁ そこは温かい目で見守るとした。



    七海「こんなもの……かな?」



    頭がボードから外れると、そこには絵文字や他の色などで丁寧にまとめられた大量の文字が書かれていた。



    七海「まず初めに、この世界がおかしくなっちゃった……って言うのは分かる?」

    苗木「うん」

    七海「じゃあその原因は?」

    舞園「えっと……絶望病っていう病気に感染したから……?」

    七海「うん、大正解…!」



    「ニコッ」と微笑み、次の文字列に指示棒を指す。



    七海「そこまで理解できたなら後は簡単だよ」

    七海「【ZTBU−0000】……絶望病って言うのは要は人を強制的に絶望させちゃうバイ菌みたいなものかな?」

    七海「で、ソレを簡単にまとめて見たのがコレ」



    次に指された場所には、何やら大きな模式図のようなものが描かれていた。




    【絶望病】

    ・江ノ島盾子が生み出した最悪の細胞。

    ・感染者した者を強制的に絶望させる。


    【感染者の言動】

    ・希望に対し、強い殺意を抱く。

    ・基本感染者に意思は無く、ただただ絶望を追い求める廃人になってしまう。

    ・(※尚、例外により意思を保ったまま、江ノ島の忠実な手下になる事もある。)



    桑田「例外?」

    七海「一般人とかじゃなくて、兵士とか意思の強い人とかの事だね」

    霧切「なるほど……確かにあの未来機関の武装隊は正気を失った様子は無かったわね」

    七海「そしてこれが一番の山場だよ」



    模式図の中でも一際目立つその文字は全て赤ペンで書かれており、大事だと言うのはすぐに分かった。



    【D・E】

    ・絶望病による感染者の成れの果て。

    ・細胞を改良され、異形の姿となった元人間。




    苗木「細胞を……改良……」



    聞いただけで全身に鳥肌が立った。



    七海「細胞を改良って言うのは、絶望病に自分の遺伝子を書き換えられて別の細胞に変化させられちゃうこと、」

    七海「遺伝子を書き換えられたが最後……その人はもう人間じゃない……んだよ?」

    「……………」



    細胞に細胞を書き換えられる……


    その恐ろしい事実に全員が生唾を飲み込む。



    大神「ちょっといいか?」



    シンと静まった空気を裂き、大神が手を上げる。



    七海「うん、何かな?」

    大神「そのD・Eとやらをお主達はかなり警戒していたようだが、具体的に一般の絶望とはどう違うのだ?」

    七海「えっとね〜………」

    十神「それはこの目で見たほうが早そうだな」

    苗木「え……?」



    窓の外を見つめ、壁に寄りかかり腕組みをした十神は呟くようにそう囁いた。
  40. 43 : : 2014/06/07(土) 16:00:09

    『ドオオオオォォォンッ!!』



    次の瞬間、トラックの左面を何かがぶつかったのか、とてつもない振動がトラックを襲う!


    慣性の法則に逆らわず、一同は勢いよく左側の壁に叩きつけられる



    花村「あいたっ!」

    小泉「何!?何なの!?」

    日向「ッ!」



    『ギギ……!メキメキメキメキ……!!』



    今度は歯を食いしばりたくなるような、金属を捻じ曲げるような雑音



    苗木「ま、まさか……!」



    苗木の予感は当たってしまった。


    なんでこういう悪い予感ばかり的中するのか、幸運という肩書きが聞いて呆れる。


    天井の壁に亀裂が走り、鉄板が引き裂かれていく



    ………たった一人によって。



    大和田「ぬおっ!?」

    舞園「きゃあああああああっ!!」

    桑田「で、出たああああああっ!?」

    「ウウウウ…………」



    それは先ほど見た男。


    全身は紫に充血し、その目に生気は無かった。



    「アアアアアアアアアアアッ!!!」

    霧切「ッ!?」

    澪田「こ、鼓膜が破けるっす!」

    山田「ひいいいいいいっ!!」



    その怒号は正に恐竜


    鉄の壁に反響し、その音は益々脳裏に突き刺さる!



    苗木「うぐ…!」

    日向「みんなどいてろ!」



    火薬の匂いを嗅ぐわせ、無数の弾丸を撃ちはなったのは大型のショットガン!


    弾丸は吸い込まれるようにその異形の生物に命中し、大量の血しぶきを散らす!



    「アガァッ!?」



    弾幕に押され、男の図体は外にへと吹き飛ばされた



    日向「ふぅ……」

    山田「あわわわわ……!」

    大和田「あ、アレがD・Eって奴なのか!?」

    七海「うん、そうなるね……」

    大神「鉄の装甲を素手でだと……!?」

    弐大「なんでも絶望病は細胞だけでなく、筋肉や知性……外見まで変えてしまうらしいからのう」

    九頭龍「これが絶望病の恐ろしささ」

    霧切「彼女はなんて危険なモノを生み出したの……」

    日向「とりあえず、今は何処か安全な隠れ家を探そう……話はそれか━━━━」



    話に区切るを付けようとした寸前、またしてもあの衝撃が車体を揺るがす



    苗木「うわっ!?」

    左右田「こ、これ以上は車が持たねえって!」

    日向「やっぱそう簡単には死なないか……」

    葉隠「え?死んでないって……あの化物のことか?」

    七海「活性化した絶望病は時として肉体をも強化するんだよ」

    左右田「クソ……!」



    何とか車体をコントロールするものの衝撃で視界はブレ、オマケにこの大雨だ。ワイパーなど焼け石に水。


    目隠しで運転しているような状況下、突如目の前を大きな何かが遮る!


    それは崩れ落ち、荒れ果てたビルの瓦礫。



    左右田「げっ!?」



    もはや障害物の有無など目と鼻の先にまで来ないと分からなかった。


    そして当然、そんな至近距離で車……ましてやトラックなんて大型車が避けられる筈もない!



    左右田「全員何かに掴まれええっ!!」

    日向「無茶言うなって!」



    左右田の必死の足掻きも虚しく、トラックの車体は猛スピードで瓦礫に突っ込んだ!



    『ドガアアァァァァンッ!!』



    鉄とコンクリートが正面からぶつかり、今までとは否にならない衝撃が襲いかかる!



    苗木「ぐっ!」

    大和田「あだっ!?」

    田中「ぐおおおお!?」



    後輪が浮き上がり、土煙を巻き上げながら車体は重力に逆らうことなくその場で横転した



  41. 44 : : 2014/06/08(日) 21:56:57
    日向「ッ……」



    倒れた向きが運転席側だった事とエアバッグがあった事が幸いし、軽傷で済んだようだ。


    額から血が流れているが痛みはなく、軽く目眩がする程度。



    日向「!? おい左右田!しっかりしろ!」



    だが運転席側にいた左右田はエアバッグを無視し、逆さに落ちるような体制に、なっていた。


    シートベルトが着用されていたので、床……窓には激突しなかったらしい。


    しかし頭を大きくぶつけたのか、頭からはポタポタと血が垂れ落ちている



    左右田「ッてぇ………」

    日向「左右田!大丈夫か!?」



    全身の血が流れてしまう前に急いで左右田の身体を引き上げる



    日向「!他のみんなは!?」



    小窓へ振り向くも声がない。



    日向「くっ!」



    助手席のドアをこじ開け、急いで荷台の下へ走る


    嫌な妄想ばかりが脳を駆け巡り 日向は最悪の事態を覚悟した。



    日向「みんな!?」



    不安に高まった気持ちで引き裂かれた穴を覗き込む



    日向「!」

    弐大「なっはっはっ!危なかったのう!」

    大神「全員無事か?」



    そこには両手に全員を担いだ大神と弐大の姿。



    (まさか……あの状況で全員を!?)



    弐大「選手を守ることこそ、マネージャーの努めじゃからのう!」

    大神「大丈夫か?朝日奈よ……」

    朝日奈「うん、ありがとうサクラちゃん…!」

    日向「良かった……全員無事みたいだな」

    桑田「どうなるかと思ったぜ……」

    葉隠「た、助かったべ〜……」



    死なず済んだことに安堵のため息を吐く葉隠。



    大神「どうやらそなた達に心配は必要なかったようだな」

    十神「フン、あれしきのトラブルを予測できぬとでも思ったか?」

    終里「まぁ あれくらいならどうってことねえよ」

    大和田「ガキの頃から体だけは頑丈って言われてたからな」



    中には才能や自力で生き延びた者もいた。


    はは、心配無用だったかな?



    日向「よし とりあえずこの場から離れよう、いつ何処から襲われるか分からな━━━」

    左右田「そ、ソニアさん!ご無事ですか!?」

    ソニア「はい、田中さんのおかげで助かりました!」

    田中「フッ我が氷の魔王と呼ばれた俺に不可能は無い……」

    左右田「あー!テメェまたそうやってソニアさんにくっつきやがっ……テ……」

    ソニア「左右田さん!?」

    日向「あーあー、血が出てるってのに頭に血登らせやがって……」



    多分 出血多量による貧血だな。


    ひとまず目をうずまきにした左右田を肩に背負う。



    日向「さてと…じゃあ早いところココから離れ━━━」

    『バシャッ』

    日向「?」



    聴覚が捉えたのは 水たまりを踏みつけたような水音。


    この大雨だ、水たまりぐらい普通にできるだろう。



    だから気にしなかった。

    気にしなかったのだが………



    日向「誰も……動いてないよな?」



    日向と左右田を除いた全員はまだ荷台から出てきたばかりだ。


    しかも音が聞こえてきたのは後方から……



    日向「…まさか……」



    予感はドンピシャした。


    上半身の力を抜いたように両手をぶら下げ、不健康な紫の皮膚をしたソレは無言で佇んでいた



    「ウウウ………」

    葉隠「で、出たああぁぁぁっ!?」

    日向「くっ!こんな時に!」

    苗木「日向くん、さっきの銃は!?」

    日向「一発しかないんだよアレ……」

    桑田「ほ、他の武器とかは!?」

    日向「無い……たまたま道端で拾っただけだから」

    大和田「なっ!どうすんだよ!?」

    大神「戦うしかないだろう……」

    弐大「ここは強行突破じゃあ!」

    「アアアアアアアアアアアッ!!!」



    あの状態で言語が通じるのか分からない。


    だがコチラ側の戦意に合わせ、敵側も怒号を発する!



    日向「直接絶望者と戦うのはコレが初めてか……」

    終里「銃も効かねえんだろ?ワクワクすんな!」

    豚神「妙な感想に浸っている暇はないぞ」



    そうだ……これはただの戦いじゃない。


    どちらかが死に、どちらかが生き残るまで続くデスマッチ。


    だから……だからこそ……



    日向「絶対に」

    苗木「負けられないんだ!」


  42. 45 : : 2014/06/08(日) 23:38:52
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




    江ノ島「ねえ松田くん」

    松田「あ?」



    耳を傾けるも松田はキーボードを打ち続ける



    江ノ島「まだ絶望してない希望くん達って何人くらいいんの?」

    松田「なんだよ籔から棒に……」

    江ノ島「いーいーかーらー!」



    「はぁ……」っとため息をモニターに吐きつけ、松田は別のWindowを開く。



    松田「ちょっと待ってろ」

    江ノ島「やっぱ松田くんや〜さ〜し〜い〜!絶望的にI LOVE YOUー!」

    松田「うるせえぞドブス」

    江ノ島「えー酷い!せっかく一人の乙女が勇気を振り絞って……ふぐ!」

    松田「少し黙れ」



    このまま永遠に喋り続けるかもしれないと判断した松田は右手で江ノ島の口を塞ぎ、左手で器用に操作する。



    松田「…ほれ、出たぞ」



    モニターに映つし出されたのは監視カメラの映像だろうか。


    映っているのは、今まさに戦いを始めようとする希望の高校生達の姿。



    江ノ島「あーー!苗木と日向じゃん!懐かしー!」

    松田「もうコイツ等しかカメラに映んねえし、コレで全員じゃないか?」

    江ノ島「へー、やっぱ生き残ったんだぁ……」



    興味津々だった笑みはしだいに不敵な笑みへと変わる



    江ノ島「ねえ、松田くん 私いいこと思いついちゃった……」

    松田「あ?」

    江ノ島「細かい話は後回しです」



    眼鏡をかけ、再び江ノ島のキャラが変わる。


    もう流石に見飽きたな……


    ツッコむ気も失せ、松田は話を続ける



    松田「だったらアイツ等も呼ぶのか?」

    江ノ島「もちろん呼ぶよ?私達の大事な大事な戦力だからね……」

    江ノ島「さぁて!そうと決まれば早速準備準備〜〜♬」

    松田「はぁ……」



    あまりのキャラの切り替え速度に、たった一人との会話が何十人にも思えてくる。


    何を考えついたかは分からない。というか考えたくない。



    まぁ……とりあえず、一つだけ言えるのはコレだ。



    松田「今までに無いくらいヤバイって事考えついたって事か………」


  43. 46 : : 2014/06/13(金) 23:51:51
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




    大神「ぬうううん………!」



    右手から放つは 腰の回転を利用し、強力な兵器と化した右の正拳突き!



    大神「はああぁぁっ!!」



    会心の一撃。


    しかし、その拳は地を砕くも男には当たらない。



    大神「くっ!」

    「ウウウ………」



    拳をかわし、空へと飛んだ男は喉奥で不気味な唸り声を鳴らす



    苗木「速い!」

    七海「多分 脚力に特化したタイプみたいだね」

    日向「それでトラックの速度に追いつけたのか」



    だが、それも計算範囲。



    大神「終里!」

    終里「おっしゃああっ!」



    自慢の脚力で壁を蹴り、その反動は一瞬で終里の身体を標的へと届ける


    並の高校生には出来ない。

    超高校級の体操選手である彼女だから出来る芸当。



    「!!」

    終里「おりゃああ!」



    重力の作用を利用した痛恨の踵落としが男の脳天に炸裂する!



    「アガッ!?」



    『落ちる力』と『落とす力』が空中から加算し、男は頭から勢いよく落下した。


    速度はどんどん増し、あまりの速度に男は見動きが取れない


    そしてその真下で男に対し、戦闘態勢をとる者がいた。



    「!?」

    終里「頼むぜおっさん!」

    弐大「おうっ!」

    「……!……!?…」



    迎撃しようとも空気抵抗が妨害し、うまく手足を動かせない。


    正に絶好のチャンス!



    弐大「ぬおおおおおおおお」



    握られた右拳に全力を注ぎ込む



    弐大「見晒せいっ!コレがワシ……弐大猫丸の一撃じゃあっ!!」




    それは一瞬だった



    両者の距離があと僅かとなった瞬間、男の体に無音の豪腕が突き刺さる!



    「アアアアアアアアアアアアアアアっ!!!???」



    ショットガンを食らっても何ともなかった男が耳を貫くような苦痛の雄叫びをあげた


    その雄叫びと死を見てるような悍ましい表情が拳の破壊力を物語る。



    弐大「とどめじゃあぁぁっ!!」



    拳を突き刺したまま 弐大は地面目掛け 男を叩きつけた


    大地が砕け、凄まじい衝撃波が当たり一面に襲いかかる



    苗木「うわっ!?」

    日向「やったか……!」


    弐大「……………」

    「……………………」



    男の体が地にひれ伏し、それ以上活動を行う事は無かった。



    桑田「よ、よっしゃあああ!」



    桑田の歓喜の声に続き、一同からも喜びの声があがる



    舞園「やりましたね!」

    豚神「まさか本当に倒してしまうとはな……」

    葉隠「流石はオーガだべ!」

    九頭龍「へっ大したもんだぜ」



    物陰に避難していた一同はゾロゾロと大神達の元へと駆け寄る。



    大神「無事だったか?朝日奈よ」

    朝日奈「私は平気だよ、それよりサクラちゃんも怪我とかしてない?」

    大神「無論、問題ない」

    終里「一発で仕留めんなんて 流石だぜおっさん!」

    弐大「なっはっはっ!お前さん方の協力があってこそじゃ!」



    大神達の元へ集まる者達を他所に、それとはまた違うモノへ足を進ませる四人の姿があった。



    霧切「………これね」



    足元にあるのは、大口を開け 地にひれ伏した男の亡骸。



    日向「どうするんだ?」

    霧切「話から察するに、この世界には『コレ』と似たようなモノが何体も存在するのでしょう?」

    七海「その可能性は十分にある……と思うよ」

    霧切「敵の情報は未知数……その為には少しでも手がかりを集める必要があるわ」

    苗木「でもどうやって?」

    霧切「こうするのよ」



    そう言い切ると霧切は男の口の中に大胆に手を突っ込んだ



    「!?」



    これには流石の七海も唖然としている。



    苗木「ちょ、何やってんの霧切さん!?」

    霧切「何って……調べてるのよ」

    日向「危ないからやめとけって!毒とか入ってたらどうすんだよ」

    霧切「その時はその時よ」



    冷静な口調で口の中に突っ込んだ手をグチュグチュと掻き回す。


    お腹の中まで入っているのか、男のお腹がモゾモゾと動いているのが一目でわかった。



    苗木「…うぷ……」

    日向「おい霧切、そこまでにしとけって」

    七海「瑠璃色に光る宝玉とか火炎袋とか出てこないかな……!」

    日向「お前はお前で何に期待してんだよ!?」


  44. 47 : : 2014/06/14(土) 22:01:37
    霧切「………特に気になるものは無さそうね」



    かれこれ10分以上お腹の中を弄っているが、これといった感触は無い。


    一息つくと突っ込んだ腕をスッと引き抜いた。



    苗木「ど、どうだった……?」

    七海「宝玉でた!?」

    日向「そんな物は無い!」

    霧切「残念だけれど、収穫は無いわ……」

    七海「そっかぁ…」

    日向「お前のそのガッカリようは絶対意味が違うよな」

    苗木「ま、まだ続ける気なの……?」



    正直もう異物が喉奥にまで登ってきている。


    顔から血の気が引き、青ざめていく自分の顔が見なくても理解できた。



    霧切「………………」


    (正直、少しくらい手掛りがあると思ったのだけれど……)



    まだ何かあるかもしれない。


    もはやこれは「超高校級の探偵」としての意地だ。



    何かあるはず……まだ何か………


    霧切「!」



    瞬間、霧切の頭上に電球が点灯した。



    霧切「日向くん」

    日向「ん?どうかしたのか?」

    霧切「貴方はこの男を誰より早くD・Eと識別したけれど、一体どうして?」



    そういえばそうだ。


    男は確かに常人離れした力や、声量、言動を持ってはいたが、それは実際に体感しないと分からないものばかり……


    中には難民、絶望と見間違える者がいた中、何故日向は瞬時に見極めたのか?



    日向「あぁ、その鉄枷だよ」

    霧切「鉄枷……?」



    目線を追った先には首を覆う銅色の鉄枷。



    日向「どうやら感染者とD・Eの違いはその首輪の有無らしいんだ」

    七海「これは私達全員が確認したことだから本当だよ?」

    霧切「……………」



    数センチ程の厚みがあろう その枷は鍵穴がついていなかった。


    そして、その首枷に何らかの文字が刻まれていたことに霧切はいち早く気づく。



    霧切「被験体番号 : 0514……『ガースト』」

    日向「ガーストォ?」

    七海「クトゥルフ神話に出てくるアンデッドのことだね」

    霧切「アンデッド……ゾンビ?」

    苗木「人を人とすら見てないってことかよ……!」



    フザケてる。


    こんな生物にしたのも、ゾンビみたいにしたのも、全部はアイツのせいだってのに……


    被験体?ガースト?ふざけるな!



    こみ上げた怒りが足元の水溜まりを踏み潰す。



    日向「お、おい苗木……」

    七海「怒りに身を任せたらだめ……だと思うよ?」

    苗木「……ごめん」

    霧切「とりあえずこの枷は持って帰りましょう、何か分かるかもしれないわ」



    そう言って枷に触れた瞬間。



    「あーダメダメ!ストップストーップ!」

    霧切「!?」



    不意に耳が捕らえたのは聞き覚えのある声。


    この声……忘れたくても忘れられない。


    だってコイツが…コイツこそが……!



    苗木「…なんでお前がここにいんだよ……」

    苗木「モノクマァッ!!」



  45. 48 : : 2014/06/16(月) 09:44:16
    モノクマ「何でって酷いな〜半年ぶりの感動の再会なのにさ〜」



    ぶつけられた怒りを陽気なテンションでスルーするモノクマ。


    既にコレだけでこの不愉快な人形を踏みつぶしたい心境に駆られる。



    霧切「久しぶりね……モノクマ……いえ、江ノ島盾子」

    モノクマ「あーあー言っちゃった」

    モノクマ「たく、面白くないよーネタバレとか絶望的だよー!」



    爪を立て 威嚇の姿勢に入るが、それも長くは続かなかった。


    やはり何か目的があってきたのだろう、この事件の首謀者が何の意味もなく現れるわけない。



    霧切「……何のようかしら?」

    モノクマ「くぅ〜!そのCOOLさ、流石は霧切さんだね!」

    霧切「御託はいいわ。何しに来たの?」

    モノクマ「……その首枷は取らないほうがいいよ」

    霧切「どうして?」

    モノクマ「………………」

    苗木「お得意の黙りかよ……」



    もう我慢ならない。


    体中の血が沸騰しそうだ


    反射的に握った拳に爪がギチギチと食い込む



    モノクマ「アーーーーー・・・・」

    苗木「!」



    怒りが限界に達し 拳を振り上げた途端、モノクマの口から大量のレーザーが放射された。


    赤、青、緑……三色の多量なレーザーが鮮やかな光を放つ。



    七海「わっ…!」

    日向「なんだ!?」



    光はそこら中の壁や瓦礫に反射し、一定の場所をより強く照らした。


    レーザーが次々とその場に密集し、何らかの形を形成していく……



    霧切「ホログラム?」



    ホログラム……それはレーザーにより映し出される立体画像の総称。


    元はホログラフィという技術を応用して生まれたものらしいが、そんなことはどうだって良い。


    大事なのはそのホログラムが何を映し出そうとしているかだ。



    七海「腕、脚………人みたいだね」



    七海の言うとおりだ。


    この二足歩行、五本ずつある手の指と足の指……


    そして数え切れないほど見てきたこのフォルム……間違いない。人だ。


    今このモノクマが映し出そうとしてるのは人。


    誰かはまだ分からない。


    形が出来てきただけで肝心の顔や服装はまだ確認できないのだ。


    だけど、ある程度予想はつく。



    ………「アイツ」だ。




    『ここからは私様がお話しましょう!』



    ついに口が動き出し、ホログラムから声が発せられた。


    このフザケた口調も何度聞いてきたことだろう。



    『あれー?どうしたのみんな〜?鳩がガトリング砲食らったみたいな顔してさ〜』

    苗木「江ノ島……盾子っ!!」

    江ノ島『はーい!そうで〜す!超高校級の絶望、江ノ島盾子ちゃんでーす!』



    舌を出し、いかにも悪役のような不気味な笑みを浮かべる江ノ島。



    霧切「ホログラムで登場だなんて、洒落たことするわね……」

    江ノ島『まぁね〜私一応コレでも超高校級のギャルだし〜』



    この真面目なのか不真面目なのか分からない態度。


    あの時と何も変わらない。



    日向「江ノ島……」

    江ノ島『あ、日向も久しぶり〜』

    日向「ッ……どの面さげて!」

    七海「日向くん落ち着いて……」

    霧切「えぇ、今は争っている場合じゃないわ」

    江ノ島『そうそう♬そうだよね〜♪』

    江ノ島『せっかく私様がとっておきのサプライズを考えてあげたのに〜』

    苗木「サプライズ……?」



    「サプライズ」そう聞けば 何が起きるか楽しみに待つのが普通の反応だ。


    しかし、今回は違う。


    言ってる奴が奴だ。ロクな事じゃないことだけは分かっている。



    霧切「…何をするつもり?」

    江ノ島『まぁまぁ、慌てんなって!』

    江ノ島『この話は全員に伝えとかなくては いけませんからね』

    江ノ島『とりあえず、彼処で楽しそーに会話してる人達を呼んできて欲しいな〜♬』



    怒りや不満があるものの、今ここで争うのは得策ではない。


    いつどこで江ノ島の部下やら手下やらが僕らを狙っているのか分からないのだ。



    苗木「……わかった」



    言われたとおり 苗木は遠くで話している一同を呼びかけ、招集した。


  46. 49 : : 2014/06/16(月) 13:01:14
    期待です♪
  47. 50 : : 2014/06/16(月) 13:20:47
    >>49

    ありがとうございますー!
  48. 51 : : 2014/06/16(月) 20:19:12
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




    数分後、四人がいた場所には計30名の高校生の姿があった。


    そしてその場に先程までのような笑顔に溢れた空気は無い。



    江ノ島『みんなやっほ〜!久しぶり〜!』

    朝日奈「うそ……」

    葉隠「か、身体が透けてるべ!ゆ、幽霊か!?」

    霧切「ホログラム……立体画像を応用した立体映像よ」

    十神「フンッ 何台もの映写機を必要とするものをコイツ一体で成し遂げてしまうとはな」



    「大したものだ」と、十神は上からの口調で映像を映すモノクマを睨みつける



    大神「もはや何でもありと言うことか……」

    豚神「感染しただけで絶望させるような細胞を生み出す奴だ。これしきの事など造作もないだろう」

    江ノ島『あははははっ!ざんね〜ん!絶望病を作ったのは私じゃないよ〜?』

    霧切「?……どういう意味?」

    江ノ島『あ、ヤベ!口が滑っちまった』



    大袈裟な素振りで咄嗟に口を塞ぐ江ノ島。


    その話も気になるが、今は後回しだ。



    苗木「サプライズって……なんだよ?」

    江ノ島『はいはい、言われなくても分かってるって♬』



    悪戯っ子っぽく微笑み、そのテンションのまま江ノ島は続ける。



    江ノ島『聞いて絶望しやがれ!もうこの世界にはオマエラ以外の希望は存在しねえんだよー!』

    「「!?」」

    苗木「なっ……!」

    朝日奈「そんな……!」



    高笑いする江ノ島から告げられたのは、あまりにも残酷で絶望的なニュースだった。



    十神「馬鹿な!十神の一族が絶望などに屈しただと!?」

    十神「ありえん……俺の屋敷にも空気洗浄機同様、絶望に対する設備は整っていたはずだ!」

    江ノ島『相変わらず馬鹿だね〜十神白夜くん?』

    十神「なんだと……?」



    不意のフルネーム呼びや馴れ馴れしい君付け、

    挙句の果てに最も嫌いな上からの口調が言葉が十神の逆燐を掠める。



    江ノ島『もしその中に内通者がいたとしたら?』

    十神「ッ!?」

    江ノ島『外側ほど頑丈で内側ほど脆いものはないよね〜?』

    十神「まさか……そんなはずは!」

    江ノ島『それがあるんだな!【超高校級のスパイ】って凄いよね〜♬』

    十神「超高校級のスパイ……だと!?」

    霧切「じゃあ未来機関は?」

    江ノ島『ほぇ?』



    とぼけた音程で霧切の質問に応答する。



    霧切「超高校級の才能は、一つの才能につき一人存在しない……」

    霧切「だとしたら未来機関はどうやって屈させたの?」

    苗木「霧切さん!未来機関はまだ絶望したと決まった訳じゃ……」

    霧切「いえ、もう未来機関は機能していないわ」

    苗木「え?」

    霧切「もっと早く気づくべきだった……未来機関の最上部にも当たる武装隊は既に絶望に侵されていた」

    霧切「オマケに無線機も音沙汰無し。決定的な証拠よ…」

    苗木「そ、そんな……」

    江ノ島『ウンウン、そうだね!正解だよ!』

    苗木「!」



    未来機関が滅んだ?


    僕達を絶望から救い出してくれた「アノ」未来機関が……絶望に滅ぼされたということか?



    江ノ島『ご褒美に教えてあげましょう……』



    メガネを取り出し、クイッと眉間に釣り上げる。



    江ノ島『ようは彼ら……あの未来機関の武装隊が、絶望病最初の感染者だったのです』

    霧切「……!」

    江ノ島『絶望の居場所を突き止めた?そんなこと私達が気づかないとでも?』

    霧切「まさか……罠?」

    江ノ島『ピンポンピンーーポン!大正解!』

    『パアァーーンッ!!』



    ひょっこり現れた別のモノクマが盛大にクラッカーを鳴らした。



    苗木「ッ!?」



    心臓に悪い……


    ここまでくると怒りを超えて呆れてくる!



    江ノ島『そうです。彼らは自ら絶望を招き入れ十神家の二の舞いになったのでしたー♬』

    霧切「………」



    どうやって情報を得た?そんな事は簡単だ。


    予め本部に工作員を送り込み、盗聴器を何処かに仕掛ければそれで終わり。



    霧切「迂闊だったわ……」

    江ノ島『はぁ〜もう質問はいい?』



    質問攻め……と言ってもまだ二つしか聞いていないが、江ノ島は怠そうに眼鏡を放り捨てた。



    江ノ島『さぁて……』



    一度閉じた瞼を開いた途端、江ノ島の眼から少し禍々しさを感じ始める。


    本題が始まるってことか……。


    思わず生唾を飲み込んだ。



    江ノ島『始めるよ……最凶で最狂で絶望的な最っ高のサプライズをなっ!!?」




  49. 52 : : 2014/06/17(火) 19:33:22
    最凶で最狂で絶望的な最高のサプライズ………


    不吉な言葉だけを混ぜ込んだかの様な最悪のキャッチコピー。


    何をする気だ?
    この女は僕らに何をさせるつもりだ?


    そんな思考が脳の中で只ひたすら暴れまわる。



    江ノ島『本当はアンタらがゆっくりゆっくり絶望に侵されていくのを見たかったんだけどさ〜』

    江ノ島『どうせ今後も希望だの絆だのシラケる言葉で奇跡の生還とか果たしちゃいそうじゃん?』

    江ノ島『ウザいんだよね〜・・・そういうの』



    声は明るくとも雰囲気でわかる。


    何かが、江ノ島の中に隠れている未知の何かが、僕らを喰い殺さんと殺気に満ちているのが……



    苗木「うっ…!」



    思わず足が竦む……いや、怯える。


    相手はたかが映像、ホログラムだ。


    なのに……怖い。気を抜いた瞬間に心臓を食い千切られそうな悪寒が体中を駆け巡る。



    ………しかし。



    霧切「……………」



    霧切は動じない。


    探偵としてのプライドや数々の事件を体感した経験が、霧切の心を乱さなかった。



    霧切「それで?貴女は何を考えついたの?」

    江ノ島『うぷぷ……今から教えるって』



    江ノ島は霧切の冷静さに微笑を浮かべ、満ちていた殺気も消える。



    江ノ島『勝負さ』

    霧切「勝負……?」

    江ノ島『テメエら希望が絶望に墜ちるか、私様の絶望が希望に潰されるか、ソレだけの勝負だ!』



    狂気に満ちた微笑みを浮かべる江ノ島。


    それを余所に、三体目に現れたモノクマが霧切に薄い冊子のようなものを手渡す。



    霧切「……?」



    それは20ページ程のルーズリーフをホッチキスで挟んだだけのシンプルな作りだった。


    表紙と思われる一枚目には『解説書』とだけ書かれている。



    江ノ島『これから初めるサプライズの為に私様が手塩をかけて作っておいたよ……言わばゲームの取扱説明書って奴だな』

    江ノ島『本来なら自分達で見て学べって言いたいところですが……』

    江ノ島『寛大な私様が特別に教えてあげましょう!』



    霧切……いや、苗木達に向けられたのは、右手から突き出た三本の指だった。
  50. 53 : : 2014/06/17(火) 19:38:18
    不気味な笑みを浮かべたまま、江ノ島は続ける。


    江ノ島『このゲームのルールは主に3つだ!』


    江ノ島『1つ、このまま絶望になるまで足掻き続ける』

    江ノ島『2つ、この私様を倒し、この世界を救うか』

    苗木「そんなの2に決まって……」

    江ノ島『3つっ!!』



    苗木の声を遮るかの如く、3つ目は大声で叫ばれた。



    江ノ島『自分以外を全員殺し、たった一人この世界から救済されるかだっ!』

    「「!?」」

    苗木「なっ……!?」

    江ノ島『それだけじゃねえ、生き残ったソイツだけは絶望させず平和に生かしてやる!』

    江ノ島『更に更に!最高級の食事やフカフカのベッド……高級ホテルのスイートルーム並みのおもてなしを贈呈しましょう!』



    最高級の食事……フカフカのベッド……。


    そういえば学園を出てから何も食べてない。


    オマケにあんな緊張感溢れる状況を乗り越えた後だ……疲労が溜まらない訳がない。



    ここにいる皆を殺すだけ……


    山田くんや葉隠くん辺りは簡単だな、馬鹿だしトロそうだし。


    女子の皆も大神さん以外なら………



    霧切「苗木くん!」

    苗木「ハッ!?」



    気づけば雨は止んでいた。


    風もない、とても静かだ……


    いやそんなことより!



    (僕は……何を考えていた?)



    一瞬でも私利私欲の為にみんなを……仲間を殺す自分のビジュアルを想像していた。



    苗木「うああああああああああああああああああああああああああっ!!?」

    朝日奈「な、苗木!?」

    舞園「苗木くん!?」



    最低だっ!最悪だっ!死ねっ!死ねっ!


    妄想の中の自分を何度も何度も殺した。


    一人の自分がもう一人の自分を何度もナイフで刺し殺す。



    そうでもしないと、自ら生んだ罪の罪悪感に今この場で自殺してしまいそうで……気がおかしくなる!



    霧切「落ち着いて……」

    苗木「き、霧切さん……僕は……!」



    霧切は言い出しかけた苗木の口を塞ぎ、耳にそっと囁く



    霧切「気持ちは分かるわ……だけど、今それを言っては絶望の思うつぼよ?」

    苗木「あ……」

    江ノ島『あー惜しいなぁ〜!あと少しで希望が墜ちる瞬間が見れたのにー!』

    日向「…ッ…悪魔が……」

    江ノ島『でも、今言ったルールは本当だから皆も覚えといてねー♬』

    「……………」



    返事はない。


    しかし、江ノ島は一方的な会話を止めることなく続ける。



    江ノ島『絶望病の規模は世界にまで達した……つまり、アンタら希望の敵はこの世界!』

    江ノ島『世界を覆う闇とソレを打ち消す僅かな光……』


    江ノ島『コレが最期の戦いだ、あの時果たせなかった絶望計画を今こそ遂行してやるよ……』




    江ノ島『さぁ…終わりなき絶望の始まりだぁ!』


















    PROLOGUE
    ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
    ようこそ絶望世界へ・・・【終】※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




    ●━━┫生き残り人数 : 残り30人┣━━●


  51. 54 : : 2014/06/17(火) 20:26:07
    続き気になる

  52. 55 : : 2014/06/18(水) 08:37:33
    >>54


    ありがとうございます!
    楽しんで読んでもらえるよう頑張ります(* ̄∇ ̄)ノ
  53. 56 : : 2014/06/18(水) 08:45:40
    【CHAPTER1】へはコチラからどうぞ……。

    http://www.ssnote.net/archives/18542
  54. 57 : : 2015/06/10(水) 23:07:34
    ヤバイ 面白過ぎて 絶望てk 最ッッッ高じゃなぁい!!!
  55. 59 : : 2020/10/27(火) 10:18:10
    http://www.ssnote.net/users/homo
    ↑害悪登録ユーザー・提督のアカウント⚠️

    http://www.ssnote.net/groups/2536/archives/8
    ↑⚠️神威団・恋中騒動⚠️
    ⚠️提督とみかぱん謝罪⚠️

    ⚠️害悪登録ユーザー提督・にゃる・墓場⚠️
    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️
    10 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:30:50 このユーザーのレスのみ表示する
    みかぱん氏に代わり私が謝罪させていただきます
    今回は誠にすみませんでした。


    13 : 提督 : 2018/02/02(金) 13:59:46 このユーザーのレスのみ表示する
    >>12
    みかぱん氏がしくんだことに対しての謝罪でしたので
    現在みかぱん氏は謹慎中であり、代わりに謝罪をさせていただきました

    私自身の謝罪を忘れていました。すいません

    改めまして、今回は多大なるご迷惑をおかけし、誠にすみませんでした。
    今回の事に対し、カムイ団を解散したのも貴方への謝罪を含めてです
    あなたの心に深い傷を負わせてしまった事、本当にすみませんでした
    SS活動、頑張ってください。応援できるという立場ではございませんが、貴方のSSを陰ながら応援しています
    本当に今回はすみませんでした。




    ⚠️提督のサブ垢・墓場⚠️

    http://www.ssnote.net/users/taiyouakiyosi

    ⚠️害悪グループ・神威団メンバー主犯格⚠️

    56 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:53:40 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ごめんなさい。


    58 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:54:10 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ずっとここ見てました。
    怖くて怖くてたまらないんです。


    61 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:55:00 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    今までにしたことは謝りますし、近々このサイトからも消える予定なんです。
    お願いです、やめてください。


    65 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:56:26 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    元はといえば私の責任なんです。
    お願いです、許してください


    67 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    アカウントは消します。サブ垢もです。
    もう金輪際このサイトには関わりませんし、貴方に対しても何もいたしません。
    どうかお許しください…


    68 : 墓場 : 2018/12/01(土) 23:57:42 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    これは嘘じゃないです。
    本当にお願いします…



    79 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:01:54 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    ホントにやめてください…お願いします…


    85 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:04:18 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    それに関しては本当に申し訳ありません。
    若気の至りで、謎の万能感がそのころにはあったんです。
    お願いですから今回だけはお慈悲をください


    89 : 墓場 : 2018/12/02(日) 00:05:34 このユーザーのレスのみ表示するこの書き込みをブックマークする
    もう二度としませんから…
    お願いです、許してください…

    5 : 墓場 : 2018/12/02(日) 10:28:43 このユーザーのレスのみ表示する
    ストレス発散とは言え、他ユーザーを巻き込みストレス発散に利用したこと、それに加えて荒らしをしてしまったこと、皆様にご迷惑をおかけししたことを謝罪します。
    本当に申し訳ございませんでした。
    元はと言えば、私が方々に火種を撒き散らしたのが原因であり、自制の効かない状態であったのは否定できません。
    私としましては、今後このようなことがないようにアカウントを消し、そのままこのnoteを去ろうと思います。
    今までご迷惑をおかけした皆様、改めまして誠に申し訳ございませんでした。

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Deviltaiki

名も無い雑兵

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《Darkness・Encroachment》【終わりなき絶望と希望の高校生】 シリーズ

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