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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

ジョジョの奇妙な冒険 第5.5部「海姫怪奇譚」第1話

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  1. 1 : : 2021/09/08(水) 12:43:14
    ジョジョの奇妙な冒険二次創作です。

    厨二病が突発的に発現して、大して構想も固まってないのに始めます。

    このssについて、以下のことを先に提示しておきます。


    ・和風学園ラブコメ異能バトルファンタジーにするつもりです。何を言ってるかは自分でもよく分かりません。

    ・本編「ジョジョの奇妙な冒険」の第一部〜第六部の世界と地続き。本編のキャラも出てくる。

    ・時系列は第五部と第六部の間。2000年代。

    ・オリジナルキャラが主人公。ということは当然、オリジナルのスタンド能力も出てくる。痛々しいの嫌いな人はとことん嫌だと思います。

    ・舞台はジョジョ本編にも出てない日本の架空の街。

    ・バトル系ssはスピード感が命だと思ってるので(カネキ・イェーガーさんのssみたいな)極力セリフだけで進めて地の文はあんまり入れたくないなあ(理想)


    そういうssです。よろしくお願いします。
  2. 2 : : 2021/09/08(水) 12:44:22
    ジョジョの奇妙な冒険 第5.5部「海姫怪奇譚(ウミヒメカイキタン)



    第1話「寺育ちのジョジョ」



    ____



    ───なんてタイトルの、何時からやってたドラマだったかな……?
    月9?土曜日9時?あー、火曜日の10時からっぽいかも。

    思い出せないけど、中学校の時にお気に入りだった俳優が出てたから見てた、チョー平凡なドラマ(不治の病に冒されたヒロインとそれに寄り添う優しいカレシみたいなヤツ)があった。

    そんで、そのヒロインのこれまた凡庸なセリフ。


    「『思い出』こそ人生なの。私の人生は短かったけど、あなたのおかげで私は幸せだった」


    そう言ってヒロインは死んじゃった。22歳で死んじゃった。

    当時は「ふーん、そんなものかしら。まっ、本人が幸せなら良いんだろうけど、私はそんな若さで死ぬだなんてごめんだワ」なんて、ポテチつまみながら呟いてた。


    けれども、なるほど。ナイフという形をとった「死」が目の前まで近づいて来て、ようやく彼女に共感できた。

    「『思い出』こそが人生の全てである」と。


    多分私はこれから死ぬ。

    眼前に迫り来るナイフに刺されて死んじゃう。

    ナイフはかなり錆び付いて切れ味が悪そうだから、多分何回も何回も刺される。血もいっぱい出てきて、すごく痛いだろうな。

    そして、その難病系ヒロインも私も、近い内に苦しい思いをして死んでしまうという点において、何ら変わりはない。

    けれども、彼女はいくら不治の病にとはいえ、優男のカレシ(しかも国民的俳優!)がいたし、二人の間には、時間とは代え難い良き思い出があった。

    それに比べて、私はまだ17だし、初恋も叶わないみたい。今まで積み重ねてきた思い出だって酷いものばかりよ。

    彼女と私の人生を比較するかの如く、脳裏にめくるめくる悲劇の人生パノラマが展開される。走馬灯ってやつかしら?


    まず初めに思い浮かぶのは、海岸線沿い……古くて汚い、でも無駄にデカい、寺のすぐ側に建てられた屋敷の家……。


    次からは、もう、ロクなもんじゃない。


    ダルマみたいな厳つい顔した親父に説教される私。


    イジめられて、ハブられて、泣いてる私。


    浸かったらほぼ死ぬと噂されている温泉に強制入浴させられる私。


    もう二度と戻らないだろう禿頭を鏡に映して凹んでる私。


    そしてこれから少し先の未来。切れ味の悪いナイフで何度も何度もメッタ刺しにされている私。


    やっぱロクな思い出がない。


    思い出こそが人生であるというのなら、どうやら私の人生は17年という短い歳月の間に、思いつく限りの不幸を詰め込めるだけ詰め込んだ小さな呪いの宝石箱といったところかしら。


    ……つーか、走馬灯長くね?


    長いついでに、振り返ってみるとすっか。

    どうしてこの私、フツーの女子高生こと、「浄土ヶ浜(じょうどがはま) 浄海(じょうかい)」がこんなフツーじゃないサイテーな目に遭ってしまったのか……。(まー、「誰のせい」かは分かりきってんだけどね)
  3. 3 : : 2021/09/08(水) 23:31:28
    ____



    ───2005年5月。A県M市、海姫(カイキ)町。



    サイテーな出来事が起きるからといって、必ずしも何かしらの前触れがあるわけじゃない。

    交通事故しかり父親のリストラしかり、全ての不幸は突然降り注ぐ。

    「今日も一日何事もなく終わるんだろうな」

    そういう平和ボケをしている時に限って、思いもよらぬトラブルが起こったりする。


    実際、私も平穏で何も起こらない、最後の安息をのんきに享受している真っ最中であった。


    ───A県立海姫(ウミヒメ)高等学校、2-B


    浄海「あーーっ……。クッソだるぅぅぅぅーーーーーいっ」


    4限目の終わった後の昼休み、言っても言わんでもいい、恐らくクラスの皆が思っているだろう一言を吐き出す。

    机を4つくっ付けて、一緒に昼ごはんを囲んでいた友人たちが一斉に私の方を見た。


    「分かるー……。七日間もゴールデンウィークあったのにさー、いきなり学校来いとかこれもう拷問だよ。リハビリ期間が必要だよ!」

    そう言って私と同調するように机に突っ伏すのは、遊んでる大学生みたいなゆるふわパーマ(例によって茶髪)を揺らす「夜凪(やなぎ) あげは」。

    あげは「てゆーかさー、宿題で出てた『私達の海姫(カイキ)町をよく知ろう』ってやつ?あれ絶対やってこないと地理の山岡怒るよねー」


    「ンなもんやってくる必要ないっしょ」ポチポチ

    あっさり切り捨ててケータイばっかいじってんのは「田那川(たなかわ) 聖子(せいこ)」。

    「聖子」だなんて某昭和の清楚系アイドルみたいな名前してるクセに、その外見は清楚からは程遠い、いかにも今時の「ギャル」って感じ。ややこしいんだよ。聖子ちゃんカットにしろよ。

    聖子「だいたい何が『私達の海姫(カイキ)町をよく知ろう』だよっつーかさーッ、そもそもうちの高校の名前『海姫(ウミヒメ)高校』だっての。読み方違うっての。ウチらがよく知る前に学校側が勉強するべきじゃね?」

    浄海「言えてる。実は私もやってきてないんだよねぇーーーッ……。山岡の説教マジだるい……」ハァ…

    私がため息を吐くのを「あ、あの」と「恐山(きょうやま) 小糸(こいと)」が小さくか細い声で遮った。


    小糸「だ、だったら私の写す?昼休みのうちに全力でやれば間に合うよ」

    恐山 小糸はその「恐ろしい山」だなんて苗字に反して、私たち4人組の中では1番まともで、聖子よりも断然清楚。

    ただちょっとだけネクラが過ぎるっつーか、なんつーか……。要は自分に自信がなさ過ぎる。

    ルックスだって小柄で可愛いし、長い黒髪のストレートなんて、女の私がマジに一目惚れしちゃいそうになったくらい。

    それなのに地味ぃーな黒縁メガネなんてかけてホントもったいない。

    だから小糸はよくこうやって「宿題私やってきたから写す?」だなんて言ってオドオドしてる。下らない。


    浄海「小糸、そういうのやめろって言ったよねーーっ?」ジロリ

    小糸「で、でも……」オドオド

    聖子「そーだよ、キョーヤマちゃん。そういうのってさ、なんか『パシリ』みたいでヤじゃん?ウチらはマジにキョーヤマちゃんを友達だと思ってるんだけど。つーか、キョーヤマちゃんの話毎回シュールでオモロいんよなあ。ウケる。この前の話なんか、どうやったらそんなシチュになるんだよ!みてーな……」ペラペラペラペラペラ……‼︎

    あげは「聖子ちゃんベタ褒めじゃん……!」

    浄海「ほら、だから下らないこと考えんなって」ポン

    小糸「……う、うん。ありがとう。浄海ちゃん」
  4. 4 : : 2021/09/08(水) 23:40:19
    浄海「それに宿題をやって来ないのは私たちの意思だ!この宿題がいかに下らねェものなかっつーことを教師陣に知らしめるための身体を張ったデモなのよッ」

    小糸「! そ、そうだったの⁉︎じゃあ私もレポート破くからちょっと待ってて……!」ガサゴソ……‼︎

    聖子「いやいや、マジの話じゃないから!」

    小糸「えぇっ⁉︎」ピタァッ‼︎

    浄海「アハハッ‼︎アンタってマジでバカ真面目!小糸はちゃんとレポート出しなよ。推薦狙ってるんじゃん!」

    小糸「うぅっ……」カァッ…

    あげは「ちなみに私も小糸ちゃんと同じで、ちゃんと宿題やってまぁーす」ニコニコ

    浄海「……アンタ外面『だけは』良いもんねェーーーっ。どう思いますゥ?聖子さん」

    聖子「う〜〜ん……これは、けしからんビッチすわ。海ちゃん、死刑」ビシィッ‼︎

    浄海「合点承知!」ガタッ

    あげは「うわっ。ちょ、ちょ。ガハマちゃんこっち来ないで!」ビクッ

    浄海「ウルサイ。覚悟しろよ、この八方美人ンーーーッ」コチョコチョコチョコチョコチョ‼︎

    あげは「わひゃっ。うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!ちょっと、やめて!マ、マジで変な声、出るから!」ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャ……‼︎

    聖子「一人だけ良い子ヅラしてねーで、たまには変な声出して周りからバカに思われやがれ」

    小糸「良い子ヅラ、か……。あはは……」ニガワライ

    浄海「小糸ォー。アンタはマジに良い子なんだからいいのっ!それより小糸もこのビッチ懲らしめんの手伝えッ」コチョコチョコチョ……‼︎

    小糸「う、うん!」ワキワキ……‼︎

    あげは「う、うわっ。ちょっ、小糸ちゃんまでぇぇーーッ⁉︎ うひゃひゃひゃひゃひゃ!!!も、もうやめっ、やめてぇーーーっ!」

    浄海「やめねェーーーっ」ニタァー

    小糸「……うふふ」クスッ
  5. 5 : : 2021/09/10(金) 07:18:24
    浄海(……こんな調子でバカばっかやってたのが私たち4人の日常だった)

    私とビッチとネクラとギャル。性格のバラバラな私たち4人だけどいつの間にか、仲良くなってた。

    きっと人は自分にはない何かに惹かれてしまうのだろう。

    人と人とが友人になるにあたって重要なのは「共感性」じゃない。「意外性」だ。

    自分が当たり前に思ってる事を当たり前に喋って、返してくる子なんてつまんない。刺激がない。

    それよりも人間が求めるのは自分と異なる考え方。

    例え全てが理解できずとも他人の自分と全く異なる「心の形」を理解「しようとする」のが私は好きだ。それが大切なんだ。
    まー、これは私の好きな人が言ってた言葉の受けおりなんだけどさ。

    ともかく私は、このサイコーに馬鹿で楽しい三人が好きだ。
    まるで、誰が欠けても自分の一部が亡くなってしまうみたいで、「自分」の思い通りにならない「三人の自分」と話ているみたいだった。


    それくらい私たちは「親友」だった。
  6. 6 : : 2021/09/12(日) 11:55:14
    ____



    ───放課後、帰り道



    聖子「地理の山岡のヤツさぁー、そりゃ当然『説教』はするよな、って覚悟はしてたけど……」ゲッソリ

    浄海「まさか『授業時間一時間まるまる』説教するか、フツー?別に怒鳴られンのは慣れてるから平気だけど?ずっと立ちっぱで足が死ぬわ、つーか死んだ……」ゲッソリ

    聖子「ウチらみたいなフマジメが怒られんのは百歩譲っていいとしてさー、ちゃぁーんと宿題やってきた子たちほっぽり出しての説教はないっしょ。教師ってバカなの?バカなんだろ?」

    あげは「先生って馬鹿だったのかぁ〜……」

    浄海「アンタら自習中何してた?」

    小糸「資料集めくってた」

    あげは「カレシと電話」ニコッ

    浄海「アンタも一緒に立たされてりゃ良かったのに……」イラッ


    あげはは私たち4人の中で1番モテる。(他3人が恋愛面ダメダメってのも差し引いて)

    ゆる〜くて、ふわ〜っとした雰囲気と、天然仕込みの「キャバ嬢さしすせそ」のおかげで男に困ったことはないっぽい。(「すごぉーい」とか「さすがですね〜」とか言ってお客さんの気分をよくするアレ)

    けれどもその腹の中の黒いのなんのって。乗り換えた男は数知れず、多分あげは自身も知らない。つまりは超ド級のビッチちゃん。

    ま、男性経験の疎い私たちにとって、なんだかんだあげはの腹黒ゲス話は貴重な情報源なんだけど。
  7. 7 : : 2021/09/12(日) 17:52:11
    浄海「先生や男子の前では猫がぶって、見えねー所でズルやってるアンタみたいな『世渡り上手』が得をするって思うと、私たちみたいな真面目な『不器用者』はヤんなっちゃうわよ。ねぇ、小糸?」

    小糸「じょ、浄海ちゃんは授業とかもっと真面目に受けた方ががいいと思うけど……」

    浄海「えぇーーーっ。そんな事ないっすよ。私ってば全然真面目……『自分、不器用ですから』」

    聖子「浄海ーー、あんた授業サボるは宿題毎回やってこないはで遊んでばっかの『不良娘』のクセに何言ってんだコイツ?って感じだよ〜〜?」

    浄海「うっさいなあ、聖子もだろ。てゆーか別に高校生ならさー、これくらい『フツー』じゃんか。『今が一番若い』んだから今のうちに遊ばねーと損ってやつだよ!『それが『青春』だろッ』」

    小糸「あっ、それ今やってるドラマのセリフ!」

    浄海「そーそー。KAT-TON(カトーン)の『亀有くん』が出てるさァー、『野ウシ。にプロポーズ』。小糸も観てたんだ」

    小糸「うん。面白いよね」

    浄海「あははー!小糸アンタ分かってるんじゃあないの!特にエンディングテーマの『アオハルアミーゴ』ッ。アレは絶対オリコンとるわね。この前『Mスタ』にも出てたし」ペラペラ

    あげは「ガハマちゃん本当ドラマ好きだよね〜」

    聖子「つーより『イケメン』好きってだけじゃね?」

    浄海「あーあ……亀有くん……付き合いてー……!この町に来てくれねーかなー……『ド田舎に泊まろう!』とかの企画でさー……」

    聖子「来たとしてさァー、海ちゃんと亀有くんが『そーゆー仲』にはならないと思うけどォー?」

    ザッザッ…

    浄海「ああッ!テメェ、聖子どういう意味だ!?しっかり説明しやがれッ!」クワァッ

    聖子「そーゆー喧嘩っ早いところがあるからだっつーの」

    ザッザッザッ…

    あげは「確かにガハマちゃんはもっと『女の子らしく』した方がいいね」ウンウン

    聖子「海ちゃんにはもっとワイルドで男らしい『ヤンキー系』が似合ってると思いまーす。キャハハハハハハ!」

    ザッザッザッザッザッ……‼︎

    浄海「ねえ、『そういう事』言わないでよ聖子!!」

    ザッザッザッザッザッザッザッザッザッ……!!

    浄海「『そういう事』言うからさァァ〜〜〜〜……!!」

    ザッザッザッザッザッザッ!!!


    浄海「……来ちゃったじゃあないの……。『ヤンキー系』がさァー……!」


    ヤンキー達「………………」


    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……!


    そこにいたのは浄海たち女子より「一回り」も「二回り」も体格のデカいヤンキー共であった……!そんなヤンキー共が彼女ら4人を黒い壁のように囲っている……!
  8. 8 : : 2021/09/12(日) 18:21:04
    小糸「ひっ……!」

    浄海「……なんスか。なんか用スか」

    ヤンキーA「用ってんならよォー……すぐ終わる……。浄土ヶ浜 浄海さんよォーっ」

    ゴゴゴゴゴゴゴ……!

    浄海「ふーん、そうなんだ。じゃ、大丈夫。OK、付き合ったげるわ」

    ヤンキーA「なら……そこの『路地裏』にカフェがあるからよ、お茶でも飲んで……話でもしようや……」

    浄海「友達待たせることになるから5分以内に済ませてよね。いや、『私が済ませる』……かしら」

    ヤンキーA「テメェ……ナめるのも大概にしろよ」ビキィ‼︎

    浄海「ナめてなんかないわよ〜〜ッ。私が舐めるのは大好物の『キャンディ』だけ……。ペロペロ〜ってね」

    ヤンキーA「……来い」クイッ

    スタスタ……

    ヤンキーの首魁らしき人物が首をクイっと『路地裏』の方向に向けて曲げると、舎弟たちはゾロゾロと路地裏へと入っていった……!

    結論から言うと、この路地裏に『カフェ』なんてものは存在しない!つまり、彼らは逃げ道のない路地裏で浄海を『袋にする』つもりなのであるッ!!!

    浄海「んじゃっ、行ってくるわ」スタスタ


    …………


    小糸「浄海ちゃん……!」

    あげは「大丈夫だよ、小糸ちゃん安心しなってえー」

    聖子「そーだよ、キョーヤマちゃん。浄海のヤツがさァー、喧嘩売られて一度でも負けたことってある?」

    小糸「で、でも……」

    聖子「それよりも心配すべきはさァー、海ちゃんの『アレ』を馬鹿にしてあのヤンキー共が『死んじゃわないか』ってことだけだよ」

    あげは「う〜ん、確かに『アレ』を馬鹿にすんのはヤバいね〜ッ。でも浄海ちゃんなんだかんだ優しいからな〜。『九割殺し』くらいで勘弁してくれるんじゃない?知らないけどォー」

    聖子「キャハハ!あげは、お前それほとんど死んでんじゃんかさ!!!」

    「「キャハハハハハハーーーーーッ!!!」」ウケケコケ‼︎


    キャハハハハ……‼︎


    小糸(違う……私が言いたいことは……違う。そういうことじゃあない)

    小糸「浄海ちゃん……」キュッ
  9. 9 : : 2021/09/12(日) 21:28:58
    ───路地裏



    ザッザッザッ……!

    浄海「───それでェー。なんの用スか?先輩」

    ヤンキーA「言われなくても、答えは分かってるんだろうがよ〜〜。『海姫町のじゃじゃ馬姫』様よォー」

    浄海(うっわ、ヤダ!いつの間にそんなダッサイ二つ名付けられてたのよォー……!いや、こりゃあ二つ名ってより『仇名』ねェー)

    浄海「……何のことか。全く身に覚えないっス。あっ!もしかして『デート』のお誘い⁉︎」

    ヤンキーB「あァ〜〜ん?」

    浄海「それだったら本当にスミマセンっ!確かに私がベリィにキュートにカワイイ完璧女子高生ってのはメチャクチャ分かるんすけどォー、私、KAT-TONの『亀有くん』が出てた『ぼくせん』っつー不良ものドラマに出てた俳優以下の顔のヤンキーとはデートすらしたくないんスよねぇ〜。
    あッ、知ってます?『ぼくせん』ンン〜〜?『ジャンクミ』っつー女教師の登場人物がァ〜、またいい味出してて私結構憧れてて───」

    ヤンキーC「んなモン知るかよダボがあああああ!!」ブンッ

    ガッシャアアン!!!

    ヤンキーの1人が!近くの水道管を木刀によって破裂させたッ!!!

    そしてその破裂した部分から水が勢いよく流れ出し、浄海の身体にぶち当たっていく……!

    バシャアアア……‼︎

    浄海「あっちゃあ〜。『器物損壊罪』、いっけないんだあ……!」ビチョビチョ……
  10. 10 : : 2021/09/12(日) 22:13:03
    ヤンキーA「答えやがれ、浄土ヶ浜。ウチのチームの『ダチ公』をヤったのはお前なんだろ……?」

    浄海「……」

    ヤンキーA「ズタボロのボロ雑巾にされた『ダチ公』は何があったか喋りやがらねぇ……。誰にヤられたのかすらもだ。その『敗北』がそれだけ「トラウマ』で『コンプレックス』になってるっつー事だ……。
    そしてこの俺は色々な情報をツギハギして、ある結論に達した……。その結論がお前、浄土ヶ浜だ……!」

    浄海「……」

    ドドドドドドドドドドドドドド……!!!

    浄海「先輩さァー、『蠅』っているじゃあないでスか?」

    ヤンキーA「……あァ?」

    浄海「私は心優しい乙女だからさ、滅多な事では虫って殺さないんだよ……。聖女のよーに優しいからね……。
    でもさァー、ただでさえブンブン羽音のウルセェ〜『蠅』風情がよォー、人間の言葉で『罵詈雑言』を撒き散らすようならよォー、それってめちゃ許せん事だよなァー……!」

    ヤンキーA「……何が言いたい?」ピクピクッ……‼︎

    浄海「アンタの舎弟どもは人の言葉を話す蠅みてぇーにメチャうるさかった。だから『ブチのめした』ってんだよ……このコンコンチキ!」

    ヤンキーA「このアマがああああ!!!オメェら!やっちまえェェ!!」グオッ

    「「応!!!」」バッ‼︎

    首魁の号令で!舎弟たちはまるでバネのように跳び上がった!!!

    浄海「くっ……!うっ……!」

    ガシッ!ガシッ!ガシッ!ガシィーンッ‼︎

    そして次の瞬間にはもう遅く、浄海の四肢を4人のヤンキー共が1人ずつ取り押さえていた!

    バァーーーーンッ!!!


    ヤンキーA「よォーし、いいぞお前らァー。そのまんま固定しとけ。今から俺が直々に『鉄拳制裁』を下してやっからよォー。人それぞれの『罪』に見合った『罰』を与える閻魔様のようによォー」

    浄海「お、お願い……!くっ……!痛い、離して……!」

    ヤンキーB「離すワケが存在する訳ねぇだろ、このアマがああ!!」

    ヤンキーC「俺らの『ダチ公』を『蠅』呼ばわりしやがってェ……。マジで……マジで許せねぇぜ」

    浄海「お願いだから、やめなさいよッ」

    ヤンキーE「兄貴ィーー!ムカついてるのはアンタだけちゃいますでェーーーッ。アンタが思う存分『鉄拳制裁』下したんならよォー、次は俺たちの番だろーが!!」

    ヤンキーA「あぁ……構わねぇよ……!お前の気が晴れるまでタコ殴りにしてやれ。ただし、俺の後だがなァー」

    ヤンキーE「そうこなくっちゃあ」ニヤリ

    ドドドドドドドドドドドドドド………!!!

    浄海「ねぇ……お願いだからやめて。本当にやめて。私は何も特別な事はしてない『普通』の乙女なのよ……!」

    ヤンキーA「『普通』なワケねぇだろーがっ!!!うちのグループ……『海ぶどう高校の狂犬』……カケルくんがヤられたっつーのはよォー、海ぶどう高校では一大事なんだよ。
    しかもその犯人がまさか、ただのチンチクリン女とはな……。リーダーの『昨作(さくさく)』さんはウチのチーム……『海ぶどう連合』に泥を塗られたと思ってる」

    浄海「『海ぶどう高校の狂犬』ン〜?『海ぶどう連合』ウ〜?アンタのチームのネーミングセンスってかなり変ねェ〜〜。ま、リーダーの名前が『昨作(さくさく)』だもんね……。そりゃあ当然かァー」

    浄海(……って、イケネ。また出ちまったわよ……。この『無駄に相手を煽るクセ』……。でもなんだか……『血の熱くなる感じ』がして止められないのよね……闘争心)
  11. 11 : : 2021/09/12(日) 22:47:58
    ヤンキーA「じゃかあしいッ!」ブンッ

    ドンッ!!

    浄海「……!」

    シュウゥゥゥ……‼︎

    ヤンキーの首魁が殴ったのは浄海の頭のすぐそばにある『石ころ』……。

    その石ころはなんとっ!彼の拳に触れて粉々に砕けたッ!
    その拳の向かう先がもし、浄海の頭だったのなら……彼女のソレは粉々に砕けていた事であろう!!!

    浄海「ヒッ……ヒイィィィ………っ!!!」ブルブル……!

    ヤンキーA「俺は『鉄拳のジュンイチ』!テメェの手足を潰してよォー二度とまともな生活できないようにしてやるぜぇーーー!!」ドォーーーンッ‼︎

    内心、浄海はビビっていた!先程言ったナマイキな挑発のセリフを全て取り消そーと思うくらい……彼女はビビっていた!!

    浄海(『鉄拳のジュンイチ』ーー?やっぱネーミングセンスわるっ!でもこれって今言わない方が身のためだよなァー?)

    浄海「ご、ごめん。謝るわ……。深く『謝罪』する。……でも、ただ、一つ言い訳させてもらうと私がブチのめしたアンタの舎弟どもは……私の心を傷付けたの……。『決して言ってはいけない言葉』を言って……私を傷付けた!
    だから『そういう結果』になってしまったの……。私も本意じゃあなかったのよ……」ブルブル……!


    ゴゴゴゴゴゴゴ……‼︎


    ヤンキーA「あぁ?何ブツブツ言ってやがる聞こえねぇなあ!?」
  12. 12 : : 2021/09/13(月) 04:45:18
    ヤンキーB「ヒヒっ!ビビってやがるぜっ!さっきまで威勢の良かったくせしてよォー」

    浄海「あ……ああっ?誰がビビるかッ!!」ガクガクブルブル……‼︎

    ヤンキーC「ビビってるついでにさ!ついでにコイツの精神をたっぷりいたぶってから身体の方をボコボコにするってどうスか?」

    ヤンキーA「ふぅーん……なかなかいい『嗜好』じゃあねぇか。
    だいたいよォー、俺はオメェのその『バンダナ』と『額当て』がさっきから気にいらねぇんだよ浄土ヶ浜ァァァーーーっ」

    浄海「……えっ」ピクッ

    ゴゴゴゴゴゴゴ……‼︎

    ヤンキーA「だからッ!言った通りだ浄土ヶ浜 浄海!!テメェーのその意味不明の頭周りはイケスカネェー!!!」

    ヤンキーB「そーだそーだ!しかも『バンダナ』と『額当て』に宝石やら花とかのアクセサリをくっ付けやがってよォー!カッピョイーとでも思ってんのかこのクソアマがァーッ!!!」

    不良C「こんなダッセェ『バンダナ』さァー、引っぺがしちまおうぜェーっ!」ガシイッ‼︎

    浄海「やめて……『それだけは』やめて……。私、そんな事されると『どうなっちまうのか』分かんないの」

    ヤンキー共の言う通り、彼女……浄土ヶ浜 浄海の頭には白い布地の「バンダナ」がかぶさっていた……。そして「額当て」。

    それらの上から「宝石」や「花」をあしらったアクセサリが乱雑にくっ付けられているのであった。

    不良D「ああ……そうだな。なんだかムカついてきたその頭、ムカついてきたぜ!そのムカつくアクセサリ……引っぺがしてやりたくなってきたぜぇ」

    浄海「やめて……!」

    そして、不良たちはついに……!

    不良C「やめねェよバーーーカ!!!」

    ベリィッ!!!

    浄海「いやぁッ!!!」

    「バンダナ』と「額当て」を浄海の頭から引っぺがしてしまった!彼女の「頭髪」の全容を知ってしまった!!それが「命取り」となることも知らずに!


    ゴゴゴゴゴゴゴ……‼︎


    浄海「か、返せッ!私の『バンダナ』返せッ!」

    ヤンキーB「お、おい……!これってよォー」

    ヤンキーC「ああッ。これはよォー、『スッゲェーもの』見つけちまった気分だぜェー。例えるなら『親が掃除中にたまたま息子のエロ本の隠し場所知っちまった時』みてぇな、なぁ……!ククク……!」ププププ……

    ヤンキーD「コイツよォー、この浄土ヶ浜 浄海よォー……ククッ。ダメだ。『笑っちまう』ゼェー……!ウケケコケッ!」クククク……


    「コイツ!女のクセして髪の毛が『つるっ禿げ』だ!!うっとおしい『バンダナ』と『額当て』はただのハゲ隠しだぜェー!!!」

    ドォーーーンッ!!!


    浄海「うぅっ……ぐすっ……ひくっ、ひくっ……」ポロポロ…

    ヤンキーB「これって女がするにはスッゲェマヌケな髪型じゃあねぇか?『不倫バレて反省してる風装う女アイドル』気取ってるつもりかァー?」

    ヤンキーA「ククッ……!『顔のいい美人』もその髪型のせいで台無しだなァー?浄土ヶ浜?
    せっかくの『極上の料理』も糞で固めた皿に盛り付けりゃあ例えノラ猫でも食ってくれんだろーが!それとお前は同じだなァ?」

    ヤンキーE「ガッハハ!兄貴ィ言えてるぜ!」

    「「ギャハハハハハハハハハハ!!!」」

    浄海「うぅっ……ひどい……。ひどい、ひどい……!」ポロポロ…

    ヤンキーE「兄貴ィ。よく見たらコイツ小さく泣いてますぜェ。髪型バカにされてよォー。きっと『コンプレックス』だったんだぜェー」

    浄海「……るさい」ボソッ

    ヤンキーA「ふんっ。だったら最初から俺らに喧嘩なんて売らなきゃよかったんだろーがよー。普段はベラベラ調子乗ってるクセに機嫌そこねりゃすーぐ泣きヅラ引っ提げてきやがって……。
    『涙は女の武器』ってか?こーゆー女が俺ァ一番嫌いだぜェー」

    浄海「……さい、うるさい……!」
  13. 13 : : 2021/09/13(月) 04:46:11
    ヤンキー共は浄海の『コンプレックス』……『ハゲ頭』を刺激し続ければ彼女の『心の力』が弱まって抵抗しなくなるだろうと考えていた。
    実際彼女は自身のコンプレックスをバカにされて泣いてしまっている。


    浄海「うるさい……!」

    ヤンキーA「ン〜〜……?今なんか言ったかァー?お淑やかな女の子だから小さな声しか出せなくなっちまったのかァー?
    お淑やかな女の子はこんな『パンクな髪型』しねぇだろーがよー、このハゲアマ〜〜〜ッ!!!」


    だがそれが『逆に』ッ!

    浄海「ウルセェって言ってんだよ、モヒカン野郎!!!」ギロォッ

    ヤンキーA「───へっ?」

    浄土ヶ浜 浄海の逆鱗に触れた!


    浄海「うおらあッ!!」ブンッ‼︎

    ヤンキーA「はぐのおおぉっ!!」バキィッ‼︎

    ドンガラガッシャァーン!!!

    「「てっ『鉄拳のジュンイチ』さぁーん!!」」


    浄海「ふんっ」ドォーーーンッ‼︎
  14. 14 : : 2021/09/13(月) 07:05:01
    ヤンキーB「オメェちゃんと腕ぇ押さえてたのかよォー!ジュンイチさんがブっ飛ばされちまったじゃあねぇーか!」

    ヤンキーC「あっ、あれえ……?確かに押さえてたハズなんだが……?あ、あれぇ?」


    浄海「……この私の『ハゲ頭』……『コンプレックス』をバカにして『泣かした』ヤツは絶対許さねぇーーーッ。うぅっ、あんまりだっ……!あんな酷いことまで言わなくていいじゃんかさああ、先輩たちさああああ……!」ボロボロ…‼︎

    ヤンキーD「ううっ……コイツ!泣いてるぞ!でもキレてるぞ……!『泣きながらキレてる』ぞッ!」

    ヤンキーE「『クレイジー』なヒステリック女かあああコイツうぅぅーー!?」

    浄海「先に私ンことを『バカにした』のはお前らなんだからな。私は『バンダナを取るな』と警告したんだからな」ザッザッザッ……‼︎

    ヤンキーA「おいテメェら何ちんたらしてんだああああ!早くその『ハゲアマ』袋にしちまえええ!!!」ズキズキ

    浄海「ーーッ!」プッツーン

    「「応!!」」

    浄海「……先輩」

    ヤンキーB「何よそ見してんだあああ!!」ブンッ

    浄海「今、私のことさああああ〜〜〜〜〜……!!!」ヒョイッ…

    ヤンキーB「あれっ……」スカァッ

    浄海「またハゲ呼ばわりしやがったわねええぇーーーーっ!」ブンッ

    ヤンキーB「バッギャアアア!!!」ブッシューーーンッ‼︎

    ヤンキーB(こ、コイツ……この俺『瞬足のハヤテ』の攻撃をノールックで避けて……さらに反撃してきやがった……!)

    ゴロゴロゴロン‼︎

    ヤンキーB「ぐげえぇ……!」バターン
  15. 15 : : 2021/09/13(月) 07:05:38
    浄海「私って『如来さま』のように優しいからさァー、二度目までは許したげる……。でも三度目はこうだ」ギロッ


    ヤンキーC、D、E「……えっ」

    言って浄海は睨んだ先にいる残り三人の方へ向かっていった。そして、それに対応するように三人は抵抗するが、その抵抗も虚しく体勢を崩される……。
    そして、浄海はそこを逃さず、殴るは蹴るはのやりたい放題!

    一人の女が三人の大男たちを袋にしているという『奇妙』な図が出来上がった……!


    浄海「こうだ!こうだ!こうだ!」

    ドカッドカッ‼︎バキィッ‼︎

    ヤンキーC「ヒ、ヒイィィィ!痛え!痛えよ!」

    ヤンキーD「テメェェー、ソウタくんを離しやがれ……ブベラアアアッ!」ブッシャァー…‼︎

    ヤンキーE「なんつー強さだ、この女……!乱暴で雑だがこの動き……よく見るとルーツは『空手』だな……バッギャアアア!!!」ベキィィ‼︎


    バキッバキッ‼︎バキイィィッ……‼︎


    浄海「次私のこと泣かしたら、テメェら全員『女の子』みてェーに泣かしてやっからな。覚悟しろよ」

    ヤンキーA「……ちっくしょおおおお」ギリィッ

    ヤンキーA(きっと俺の『ダチ公』らもこーやってヤられちまったんだ……。奴のハゲ頭をバカにしてボコられちまったんだ……!)

    ヤンキーA「お、お前ら撤退だテッタイィーーーー!!!」

    「「ヒッ、ヒイイイイィ!!」」

    ドタバタドタバタ…‼︎

    浄海「あっ!逃げんなオラアアア!!!」


    …………


    「うわぁーーーーっ!!」

    「にっ、逃げろおぉぉォー!」

    「撤退だテッタイ、オアア〜〜〜〜ッ!!!」

    ドタバタドタバタ…‼︎


    小糸「あっ……『終わった』みたい」

    あげは「さっすが、ガハマちゃん。ちゃんと宣言通り5分以内で用事済ませてるよ〜」ケラケラ

    聖子「キャハハ!不良共が女一人にボコられて路地裏から逃げてんの面白れえーーーッ。写メ撮って後で海ちゃんに見せたげよォーーっ」カシャァッ‼︎カシャァッ‼︎

    あげは「もう。やめたげなって、可哀想じゃん!」

    小糸「浄海ちゃん……怪我してないかな」ボソッ

    小糸(浄海ちゃんが不良に目を付けられるようになったのは去年のちょうど今頃です)

    その日は合コン(とはいっても田舎の高校生たちがカフェで開くちっぽけなやつです)があって、浄海ちゃんたちはそれに参加しました。
    私は……その、男の人って怖いから行かなかったんだけど。

    男子側のメンツは、当時「海ぶどう工業高校」に恋人のいたあげはちゃんのツテで集められました。

    けれどもあげはちゃんの当時の恋人がいた「海ぶどう工業高校」とは、海姫町で一番有名な「不良高校」だったんです!

    合コンの序盤はそこそこ上々、浄海ちゃんたちもけっこうマンザラでもない感じでお喋りできていたみたいなんですが、夕方になると不良のある一人が買い込んできた『お酒』を飲んじゃったのです。

    その不良は初めての飲酒だったみたいで、浄海ちゃんたちも面白がってただ見ていました。
    けれども、不良は少し『度が過ぎた』みたい。お酒でついつい気持ち良くなった彼は言ってはいけないあの一言を放ってしまったのです。


    不良「……な〜、浄海ちゃんってせっかく海外モデルみてェーに可愛いのにさァー、こんな変な『バンダナ』付けてよ〜台無しだぜェー?アクセサリもジャラジャラ付けて重そうだし……。な?それ外そうぜ?な?」グイグイ…

    浄海「ちょっ……やめて……!やめてって!」

    パサァッ……‼︎

    あげは「あ」

    聖子「あ」

    不良「……ぷっ。ハゲ頭……クハハハ、ハゲっ!ハゲ頭!だからバンダナで隠してんのォー?くっだらねえ!」

    浄海「ーーッ!」プッツーン
  16. 16 : : 2021/09/13(月) 07:18:06
    後は、ご想像の通りです。

    結局その日の合コンはハゲ頭をバカにされた浄海ちゃんが暴れ回ってメチャクチャになってしまいました。(まー、私は浄海を馬鹿にした不良が一番悪いと思いますけど)

    そして、不良が海ぶどう工業の先輩に浄海ちゃんの告げ口をすると、その噂はたちまち広まりました。

    不良たちは浄海ちゃんに報復すべくして何度も私たちの海姫高校の門を叩きました。けれども浄海ちゃんは幼い頃から「空手」を習っていてすっごく強いんです。

    不良たちは報復をしに来ては逆に浄海ちゃんに返り討ちにされ、報復に来ては返り討ちにされ、報復に来ては返り討ちにされ……。

    そうして喧嘩ばかりしているうちに浄海ちゃんはいつの間にか「海姫町最強」とまで呼ばれるようになったのです。(本人は当然不本意だけど)
  17. 17 : : 2021/09/15(水) 06:58:06
    浄海「……」スタスタ…

    あげは「あっ。ガハマちゃん帰ってきた!」

    浄海「おまたー。とっとと帰りましょ」

    小糸「浄海ちゃん」トタタ

    小糸「……大丈夫だった?」

    浄海「んー、大丈夫だよダイジョーブ。平気、ピンピンしてるン」

    小糸「……うん。よかった」

    浄海「ただやっぱり……つるっぱげをバカにされると、カァッと熱くなっちまうわ……。自分でもなるべく我慢するよーにはしてんだけど」

    聖子「だったら、もういっそそのスカーフ取っちまえば?」

    浄海「はあ!?」

    聖子「無駄に『隠す』からコンプレックスになるんだっつーの」

    浄海「んなこと言われたって……」

    小糸「浄海ちゃんは可愛いから大丈夫だよ。髪の毛なくても『それはそーいうファッションなのかな?』って思わされるくらい可愛いもん」

    聖子「そーだよ浄海。少なくともスッピンの時のあげはよりは美人じゃね?」

    あげは「……」ゲシッ

    聖子「いって!蹴んなし!」

    浄海「……ふふっ」クスッ

    浄海「……あはは。ありがと。でも、やっぱり……」

    聖子「〜〜??ナンだよ、その煮え切らない態度、ムカつくな〜〜」
  18. 18 : : 2021/09/15(水) 06:58:46
    浄海「だ、だって……」

    あげは「大丈夫だって!海姫高校の生徒はさ〜、もう全員ガハマちゃんの『恐ろしさ』知ってるんだから、バカにしてくるような人はいないと思うよ?」

    浄海「だ、ダメ!絶対に見られたくない」

    あげは「え〜?私たちには平気で見せてるじゃん、お風呂入る時とか」

    浄海「そ、そうだけど!『あの人』には絶対に見られたくないのよっ!『あの人』には……」モジモジ

    聖子「……?『あの人』ぉ〜?」

    あげは「!」ピコーン

    あげは「ガハマちゃん、その見られたくない人ってさァー」ニヤニヤ

    浄海「ーーッ。なんだよニヤニヤして気持ち悪いなあ」

    あげは「ズバリ言ってガハマちゃんの『好きな人』っしょ!スパーーンッ!」バァーーーンッ‼︎


    浄海「はっ、はァーーーーッ!?何言ってんのよ、そんな人いねぇーしッ!!」カァァァッ

    聖子「あー、そゆこと。これは図星っすね」

    浄海「ちがっ、違うから!」アタフタ
  19. 19 : : 2021/09/15(水) 06:59:18
    あげは「ねぇ、小糸ちゃんは何か聞いてるぅ〜?」

    小糸「えっ、えっ。私?」

    浄海(こっ小糸〜〜ッ!)ドギャァーーンッ‼︎

    ま、まずいッ。私は実は「小糸にだけには」好きな人のことを喋ってる!頼む、秘密にしておいてくれよぉー……!


    小糸「私も……何も知らないから、気になるな。浄海ちゃんの好きな人」

    あげは「な〜んだ。ツマンナイ」ガッカリ

    小糸「ごめんね」チラッ

    浄海(こっ小糸〜〜……っ!)ホッ

    さっすが小糸だわ〜〜ッ!アンタは「一番の」親友よ!まあ、だから好きな人も小糸にしか話してないんだけど……。
    今度海姫駅前のチョコレートパフェ奢ったげるわ!糖尿病になりそーなくらいっ!


    浄海「……つっ、つーことでさァー、もう帰りましょ?私はそこらの男より『亀有くん』一筋なんだから!あー『亀有くん』と付き合いてーッ。ぴひょーろろろろー」

    聖子「吹けてねーよ、口笛。嘘くさくね?」

    浄海「ーーッ!」ドキィッ

    あげは「これは『事情聴取』する必要がありますねェ〜」

    小糸「ふ、二人ともッ。浄海ちゃん嫌がってるし……そっとしておこうよ」

    あげは「えー、でもでも〜。さっき小糸ちゃんも、ガハマちゃんの好きな人のこと『気になるな』って言ってなかった?」

    小糸「あっ、確かに……。言ってました」

    浄海(こっ小糸〜〜ッ!!!)ガァーーンッ‼︎

    小糸(ご、ごめん浄海ちゃん!ごまかしてたら言葉の綾で、つい!)チラッ
  20. 20 : : 2021/09/15(水) 07:00:40
    聖子「んじゃ、今日は『女子会』決定ィィ。場所は……浄海ンちでいいっしょ?」

    あげは「話してくれるまで帰らないからね〜。夜になっても帰らないからね〜。お泊まりグッズ持っていくからね〜」フッフッフッ…

    浄海「ちょっ、ちょっと待て!勝手に決めんなッ!うちに来ていいのは『親父がいない時だけ』って言ったろーがッ!」

    あげは「それについては『リサーチ済み』ィィ〜〜。ガハマちゃんのお父さんさァー、今日M市のホテル借りて講演会……?みたいなのやるんでしょ?しばらくは家にいないはずだよ〜」ニッコォ

    浄海「なんで知ってんだよ……」チッ

    聖子「何でも何もあんだけCM打ってりゃ知ってるっての」

    浄海「あー……そう言われれば、そうだったよーな」

    浄海(チッ。あんなクソ野郎の『説教』好んで聞くヤツらなんて丸っきしヘンタイね、ヘンタイ)

    聖子「つーか今日、家に『海星さん』いる?海星さん」

    浄海「あぁー?うちのクソ兄貴のこと?……んー、確かいると思うよ。いる……。大学の講義……今日は早く終わるって」

    聖子「よっしゃラッキー。海星さんのお顔拝めばさァーッ、しばらく『眼福』続くっしょ」

    浄海「……私にはあいつの何が良いのか全然わかんねぇーけど」ボソッ


    あげは「それじゃあ早速いこーーッ!恋バナッ、恋バナッ!タノシー恋バナ!おっ泊まりだー!」キャーッ

    浄海「……?なに、あいつのテンション?ちょっとキモくね?」ボソッ

    聖子「言わないでやんなよ〜〜〜っ。あげはのヤツ『スレた』恋愛しかしてねーからさーッ、浄海みてェーな『ウブな』話に飢えてんじゃあねぇのぉ〜〜ッ?」ウケル


    浄海「はぁ……。ホント、ヤレヤレって感じだわ……」
  21. 21 : : 2021/09/15(水) 21:21:05
    ____



    浄海(私の家族……『浄土ヶ浜家』は先祖代々より続く寺院の家系だ)

    私の父……「浄土ヶ浜 厳善(ごうぜん)」は浄土真宗大谷派、「善光寺(ぜんこうじ)」の第六十六代目御院家(ごいんげ)(住職の意)で、私たちの住む町、海姫町で最も古くからある寺院の長としてその役務を全うしている。


    家系図を辿ると、その血筋は京都の総本山から続いてるらしい。

    応仁元年、狂乱の戦場となった京の街を命からがら逃げ出した私たちの先祖は何をそこまでビビったのか知らねーが、当時「蝦夷」と呼ばれていた未開の地の最北端へと辿り着いた。

    いくら時代の主役が「僧侶」から「武士」へと変遷されたからといって、さすがに逃げすぎだろ。

    ともかく私たちの先祖はこの東北の地に足を運び、野蛮人同然の暮らしをしていた蝦夷の住人に仏の教えを説いたらしい。


    「浄土ヶ浜家の説いた教えは蝦夷の人々に初めて『精神』の概念をもたらした。

    人々は『目には見えない心の力』を信じるようになった。

    そして、その『目には見えない何者か』に救済の希望を抱き、御恩に報いるため助け合い、励まし合い、いつしか海姫町という一つの共同体ができた。

    『海姫町』の歴史は『浄土ヶ浜家』の歴史そのものだ」


    ……なんて、ウソかホントかも疑わしい、大袈裟な歴史観を語って私を説教する一人の坊主頭がいた。

    言うまでもなく、私の父親である。
  22. 22 : : 2021/09/15(水) 21:53:34
    「『助け合い』の歴史こそが我々『浄土ヶ浜家』の歴史であり『海姫町』の歴史だ。俺たちはこの教えを紡いで今まで説法を説いてきた。そしてお前もそうなるんだ」

    そういう綺麗事を如何にも、万世一系の人間の「真理」であるかのように言うのだから、幼い頃から私は父親に辟易していた。

    「私のお父さんは『普通』じゃあない」

    そう思った。

    初めて「自分の気持ち」を言葉にして父親に伝えたのは小学6年生の頃だった。


    「何が『助け合い』よッ。私、そんなバカみたいなこと、学校の皆の前で絶対言えないわ。

    ハッキリ言って私は私のことしか考えてないし、世界のどこかで誰が不幸になろうがちっとも悲しくない。それが『普通』の感情でしょ?
    お父さんの言ってることって全部『変』よッ……。

    クラスの皆が言ってる……私の家は『普通じゃあない』って……。『気味が悪い』って……」


    一息に言うと私は打たれた。初めて打たれた。

    罰として一日中「物置小屋」に閉じ込められて、私は声が枯れるまで泣き続けた。

    私が明確に家族を嫌いになった瞬間だった。
  23. 23 : : 2021/09/15(水) 22:48:16
    だから、この戒名みてーな「浄土ヶ浜 浄海」っつーヘンテコな名前も心底嫌い。

    クラスの皆は気を遣って「海ちゃん」とか「ガハマちゃん」とか呼んでくれる。

    変わりダネだと、バンドの「ビートルズ」が好きなクラスメイトが付けた「ジョジョ」ってニックネーム。

    「『浄土ヶ浜』の『浄』とォー、『浄海』の『浄』をくっ付けて『ジョジョ』。
    こりゃあ絶対流行るぜ、浄土ヶ浜……いや、『ジョジョ』ォーっ?」

    幸いなことに流行らなかった。

    なによ、そのダッセェーあだ名。だいたい名前のくっ付け方がむりやり過ぎるっつーの。


    でも学校の皆が気を遣ってどんなニックネームで呼んでくれようと、家に帰ると私は「高校を卒業したら寺に残って手伝いをしなさい」と言い付けられてる「浄土ヶ浜 浄海」だ……。

    ふざけんな。どうして私がこんなカビくせー寺に一生住み込みで働かなきゃならねーんだ。

    私は家にいるとまるで『見えない鎖』に縛り付けられて、そのままシワクチャのおばあちゃんになるまで朽ちていくような心地がする。


    だから私は家に帰るのが嫌なんだ。そして友達を上げるのはもっと嫌。

    ……それなのによー、くそッ。聖子とあげはのヤツ、むりやりうちに押しかけやがって!

    まあ大方目的はうちのクソ兄貴なんだろーけど……。はあ、早く帰ってくれないかしら。


    そんな事を考えながら海岸線沿いを歩いていると、否が応でも家へ着く。
    「浄土真宗・善光寺」「浄土ヶ浜温泉」……二つの施設を敷地内に有する、この無駄に広い我が家へ。


    そして、私の家には……決して町の人々には知られてはならない、水底に沈んだ枯葉にへばり付いたヘドロのようにうごめく「秘密の世界」があった。
    そして浄土ヶ浜家の一員である私もまた、その暗闇に隠された秘密の一端しか教えられていない……。

    私の家族は娘の私にすら言えない何かを隠している。


    それこそが、私が家族を嫌っている最大の理由であった。
  24. 24 : : 2021/09/17(金) 07:22:26
    ____



    ───浄土ヶ浜家、浄海の自室



    小糸「お邪魔します」

    あげは「おじゃま〜♪」

    浄海「邪魔だと思ってんなら帰れ」

    聖子「お邪魔しな〜いッ」

    浄海「うちの敷居を跨いだ時点で邪魔なんだよっ」ムスッ

    聖子「んだよ、感じワリィーな。ウチら友達じゃんウェーイ」

    浄海「……友達だからヤなんだよ」ボソッ

    聖子「? 海ちゃん、なんて?」

    浄海(私の家族は町の人には言えない『秘密』をこの敷地内に隠している……。いや、私自身だってそうだ。『秘密』の一部を知っている)

    ただでさえうちは変な家なのに……その秘密がコイツらに知られた時……また、昔みたいに一人ぼっちになってしまうのが怖い……。
  25. 25 : : 2021/09/17(金) 18:18:14
    聖子「……浄海?」

    浄海「何でもない。はいはい、好きなだけくつろいでいけばいいわよ、全く。こんなボロ屋敷でよければねェーーーっ」

    あげは「こんなに広いお屋敷、海姫町にいくつもないのに贅沢なこと言っちゃだめだよ」

    浄海「広いっつってもうちは廊下で寺と繋がってるし、寺なのか家なのか分かんないっての」

    聖子「ウチは浄海んちみてーな和室って好きダケド。『千利休』?『侘び寂び』?よく分からんけど渋くてカッケー。ウケる」

    浄海「なんもウケねーよ」イラッ

    あげは「聖子ちゃんのペラッペラな感想は置いといて、本当にこの部屋センスいいと思うけどな〜〜。モデルルームに出せそうなくらいっ」

    浄海「あげは〜〜っ。私、見え見えの世辞って嫌いなんだけど」
  26. 26 : : 2021/09/17(金) 21:01:43
    あげは「いや全然お世辞でも社交辞令でもないよーッ。確かに女の子の部屋が畳の座敷ってちょっぴり無念な感じだけど〜〜、ガハマちゃんって逆に可愛いインテリアとか小物好きじゃん?」

    浄海「別に逆でもなんでもねーけど、まあ、好きだよ。ベリーにキュートな私の部屋にはやっぱ可愛いモン置かないとね」

    あげは「そうそう、それなんだよ〜〜。地味ぃーな和室を敢えて!カラフルなデザインで彩ることで『コントラスト』っていうか『対比効果』っていうのかな〜〜?とりまギャップが出て逆にオシャレって感じ〜〜」

    彼女の言う通り、畳敷きの地味な和室は浄海自身の好きなもの(真っ赤な丸テーブル、パッチワークの布で包んだブラウン管TV、積み木のおもちゃみたいにカラフルな収納棚、男性アイドルグループのポスター)で溢れていた。

    あげは「めっちゃイケてる、オシャレでやばい」

    浄海「そ、そう……?」

    あげは「そうそう」

    あげは「こういうの『レトロポップ』っていうんだっけ?最近ひそかに流行ってるらしいよ、逆に〜〜」

    浄海「……『逆に』?」

    あげは「そうそう『逆に』ぃ〜。ガハマちゃんたら最先端!」

    浄海「そ、そっかなァ〜〜?最先端かな?私センスいいかなァ〜〜……⁉︎『逆に』?」

    あげは「うんうん!逆に逆に!センスあるよ〜〜。『インテリアデザイナー』とかなれるんじゃあないの〜〜ッ?」

    浄海「そっか、『逆に』インテリアデザイナーか〜〜ッ!」

    あげは「逆に、逆に逆に〜〜〜ッ!」

    浄海「逆に逆の、逆のギャクゥゥゥ〜〜っ!!!」


    「「あっははははははははは!!!」ケラケラケラ‼︎

    聖子(うっさ!『ゲシュタルト崩壊』起こすっつーの!)


    あげは「だからさ〜、ガハマちゃんのチョーイケてるインテリアセンスを実地で学びたいから今日お泊まりいいでしょ?おねがい」

    浄海「いいわよ、全然いいっ!好きなだけ居てちょーだいっ」

    あげは(チョロい)フッ


    小糸「……浄海ちゃんがチョロすぎるってのもあるけど、流石あげはちゃん……。人を気分良くノせるのがうまい」ヒソヒソ

    聖子「スナックの一人娘として英才教育受けてきただけあるよね〜〜。笑うわ」
  27. 27 : : 2021/09/17(金) 22:38:44
    イイネ
  28. 28 : : 2021/09/18(土) 14:35:22
    >>27
    ええやんええやん
  29. 29 : : 2021/09/18(土) 14:35:27
    浄海「んじゃー、私お菓子持ってくっから。アンタら、そこら辺好きに漁ってていいよ」トタタ

    ガラッ

    聖子「うーい」

    あげは「んじゃまあ、許可も降りましたのでお好きに物色いたしますか。ガハマちゃんの好きな人へのヒントが隠されてるかもだからね〜」ガサゴソ……

    聖子「まだ諦めてなかったのかよ、まあウチも気になるっちゃ気になるけど?……おっ、『UNO』だ。やっぱ女子会ったらこれっしょ」ガサゴソ

    あげは「諦めるわけないじゃんか〜〜。『ガハマちゃんの好きな人を聞き出す』、それが本会のサイジューヨー目的です。……おっ、『トランプ』もやっぱ定番だね〜〜」ガサゴソ

    聖子「うおっ、うおっ。これ『スーファミ』じゃんか!うわっ、なっつ。小学校の頃やってたわ」

    あげは「何でも出てくるね、この押し入れ。でもスーファミなんて今さら買うかな?浄海ちゃん別にテレビゲームとか好きなわけでもないのにな〜〜」

    小糸「そういえば浄海ちゃん、この前『先生』からお古のゲーム機譲ってもらったって言ってたな」

    聖子「先生……?ああ、海ちゃんに『空手』教えてるっつー習い事の先生だっけか」

    あげは「中一から四年間、マンツーマンで教えてもらってるんだもんね。そりゃチャラチャラしてるだけのギャル男みたいな不良よか強いに決まってるよね〜〜」

    小糸「うん。浄海ちゃん、空手は真面目に頑張ってるみたいだから」
  30. 30 : : 2021/09/18(土) 14:58:59
    聖子「でもさーー、不思議じゃね?」

    小糸「何が……?」

    聖子「まーウチが言えたことじゃねーんだけどさ、浄海ってぶっちゃけ学校も勉強も嫌いな不真面目じゃんか。
    それなのに、あの『喧嘩の強さ』はどーも習い事の空手を真面目にやっている証拠だとしか思えないんだよねーーっ」

    小糸「……」

    あげは「確かにそーだよね〜〜。しかも、その習い事って多分親に勧められて始めたってことっしょ?あの家族嫌いのガハマちゃんが、親の言うことを素直に聞くとはどーも思えないんだよね。何か『真面目にやる理由』があるはず……」

    小糸「べっ、別に深い理由はないんじゃない……?ほら、浄海ちゃんって身体動かすの好きだし!」

    聖子「まっ、確かに考えすぎかもねーーッ。案外『その空手の先生』がイケメンだから気に入られるために続けてるってだけかもしんないしな」

    小糸「ーー!」ドキーン

    あげは「えー!それって、もしかしたら歳の差の『禁断の恋』ってことーーーッ⁉︎キャーーーーッ♡」

    聖子「じゃないと、アイツが真面目に習い事やるなんて考えられないっしょ。ま、下らない妄想かもだけどさ。ねー、キョーヤマちゃん?」チラッ

    小糸「そっ、そーだね!浄海ちゃんって良くも悪くも単純だから、そーいう理由で頑張ることもあるかもね、うん」

    あげは「……小糸ちゃん?」

    小糸「それより他にも何かないかなーーっ。小学校時代のアルバムとかないかなーーっ」ガサゴソ

    聖子「あっ、それウチも気になるんですケド!小六ったらまだギリギリ髪生えてた時期なんじゃね?」ガサゴソ

    小糸「だよね。きっと可愛いよ」ガサゴソ


    小糸(……危なかったあ)フー


    聖子ちゃんの言ってたことが図星だなんて……。

    浄海ちゃんが習い事を頑張るのは、空手の『先生』に一目惚れしたからだなんて……死んでも言えない。

    彼女は私を信じて、「秘密」を話してくれたんだ。私なんかに……。だから、その信用を裏切るわけにはいかない。

    でも、やっぱり、どうして私になんだろう……?


    小糸(ごまかしたついでで小学校のアルバム探すだなんて言ったけど……昔の浄海ちゃん、可愛かったんだろうなあ。……よし、私もちょっぴり気合い入れて探しちゃお)ガサゴソ…

    キラッキラッ…

    小糸「……ん?」

    ゴゴゴゴ……

    キラッキラッ…

    押し入れの奥……薄暗い暗闇の中、窓から差し込む橙色の陽光に照らされて、恐山 小糸は何か小さなモノが煌めいているのを見つけた。

    キラッ

    小糸「……なんだろ、あれ。んしょ」スッ…

    チャラア…

    小糸(これは、ペンダント?)

    それは小さなビーズを輪のようにして繋げたペンダントであった。

    変わっている点といえば、本来なら宝石や十字架等の装飾品が収まるはずの位置に「小さなビン」がぶら下がっていることであった。

    そしてそのビンの中には何か、透明な「液体」が少量入っていた。
  31. 31 : : 2021/09/18(土) 15:30:20
    小糸(……なんで水が入ってるんだろ?)

    聖子「うっわ何それ、キレイ」ヒョコッ

    小糸「わあっ!?」ビクッ

    聖子「あっ、メンゴ」

    小糸「う、ううん大丈夫」

    あげは「それペンダント?なんでビン詰め?」

    小糸「分からない……けど、大事なものかもしれない」

    聖子「フツーに考えてさーっ、大事なものは雑に押し入れぶち込まないんじゃねーの?」

    小糸「そっか」

    あげは「ていうか、この物置きの中にあったのによく割れなかったよね、そのビン。安そーなのに」

    小糸「う〜〜ん……」

    小糸(確かに『安っぽい』……。だけど、何か……このペンダントがこの押入れの中にあったのは何か理由がある気がする。安いとか高いとかじゃ表せない……そういう何か、『心そのもの』の価値というか)

    薄暗い押入れの中で太陽に照らされて……一瞬力強くキラリと光った気がしたの。

    「私を見つけて!」って叫ぶみたいに……助けを求めるみたいに。……いや、誰かを助けに行きたかったのかな……?

    なんて、バカバカしいけど、直感でそう思ったのです。
  32. 32 : : 2021/09/18(土) 16:58:46
    ガララ

    浄海「お待たせ〜〜」

    聖子「浄海」

    浄海「アーモンドチョコとクッキーしかなかったけどいーい?」

    あげは「うん全然いいよ〜〜」

    浄海「あとポテチさえあれば『女子会三大美味』が揃ってたんどけどな、ちくしょー」ドサッ

    聖子「それって海ちゃんの完全な独断と偏見じゃね?」

    聖子(つーか浄海、最初は嫌がってたのに、今はすっかりノリノリじゃんか……。やっぱチョれーな)

    浄海「アンタらなんか遊びたいモン見つかった───って、えぇーー……」

    バラバラァ…

    浄海「……確かに私テキトーに漁ってていいとは言ったわよ?だけどこれはあんまり散らかし過ぎじゃない?家探し入ったみたいじゃあないの」

    聖子「海ちゃんがごちゃあっと入れてたからだろーが」

    浄海「ううっ。確かに。否定できねーわ……。つーか、アンタたち変なモン見つけてないでしょうねえ」

    あげは「ダイジョーブだよ。『激写スクープ!亀有 雄也(19)浄土ヶ浜 浄海(17)!夜の密会、熱愛発覚!』みたいな写真はなかったから!」ビシッ

    浄海「んなもんあるかっ……って、いや、ちょっとあればいいな、なんて思ったりして、ちくしょーっ」ブツブツ

    聖子「いちファンとして線引きしろっての」

    浄海「分かってるわよー、私はちゃあんと理解と愛のある健全なファンだから……って、あっ。スーファミやりたいの?『マリオ』と『ぷよぷよ』しかないけど……」カシャカシャ

    小糸「その前にちょっといい?」

    浄海「? どしたの」

    小糸「これ……」ジャラッ

    小糸が差し出したのは先ほど彼女が押入れから見つけた『ペンダント』であった。

    浄海「……ん?」

    小糸「これ……すっごい奥にあったけど大事なもの?失くしてたんだったらすっごい困ってるだろうな、って」

    浄海「んっ?ん、んんん〜〜〜〜???」ジトォーー

    小糸「……もしかして見覚えない?」

    浄海「んー……悪いんだけど全然ないわ。でも、そーだとしたら何でうちの押入れに……───って、ああっ……!」ゲンナリ

    あげは「心当たりありか」
  33. 33 : : 2021/09/18(土) 19:24:48
    浄海「ああ〜〜……そうだ、思い出した。うちのクソ兄貴が高二の頃……修学旅行のお土産って言って買ってきたんだったっけな〜〜……」

    聖子「なんで中に水入ってンの?」

    浄海「『清水寺』だか『下鴨神社』だったかなんだか忘れたけど……とにかく『ありがたーい聖水』が入ってるから、って私に押し付けたんだよ」

    あげは「へ〜え。海星さんが高二の頃ってことは今から三年前か〜〜」

    浄海「私、京都土産ならやっぱ『八つ橋』がよかったのにさ〜〜」

    聖子「つーか、浄海さ〜〜ッ!三年間も海星さんからもらったお土産放置してたのかよこのバチ当たりッ!」

    浄海「え〜〜、だってアイツのこと嫌いだし〜〜ッ。確かにアイツにしてはセンスのいい土産だったけど……」

    あげは(ん……?)

    小糸「センスいい、かな?100均で売ってそうな感じのペンダントなのに」ヒソヒソ

    あげは「ガハマちゃんちょっと感覚が周りとズレてるところあるからな〜〜。
    バンダナのアクセサリも『キモ可愛い系』のキャラバッジ、チラッと見えるし、『たまごっち』で好きなのは『おじっち』だし……。まあ本人に言ったら怒るから言わないけどさあ」ヒソヒソ


    浄海「確かにアイツにしてはケッコーシャレてるいい土産だったよ?けど、だからこそムカついて放置してたっつーか……まあ、捨てなかっただけありがたかったと思えって感じ?」

    聖子「いらないんならウチにちょーだいよッ!海星さんのくれるモノならウチは何でももらうっての!」

    浄海「どんだけアンタは海星のこと好きなんだよッ。やめときなって!ビン割れたらどーすんのよ!」

    聖子「じゃあ海ちゃんが付けろよ」ムスッ

    浄海「へぇっ?」

    聖子「浄海が付けろってんの。いいか?ウチはなァーっ、お前のその海星さんに対する態度がムカつくんだっつーのッ。海星さんの『思いやり』を無下にするその態度がさーーッ。マジでない」

    浄海「あのさァーっ……」タラリ

    浄海(海星はマジでアンタらが思ってるような聖人君主のイケメン僧侶なんかじゃあなくって、マジで裏表の激しいドグサレハゲ頭なんだっての!……って何回も言ってるはずなんだけどなあ……!)
  34. 34 : : 2021/09/18(土) 19:45:55
    聖子「とにかく今日一日、その『ペンダント』付けて過ごせよっ。せっかくの海星さんのお土産無駄にしてんじゃあねーぞッ!」

    浄海「あー、もう分かった。分かったわよ〜〜……!付けりゃいいんでしょ、付けりゃあ」

    浄海(聖子のヤツしつけーなー……。まあ別にいいか。今日はもう風呂入って飯つくってだらだらおしゃべりして寝るだけだしぃ……)

    カチャリ…


    浄海「ど、どう……?」


    聖子「お、おお……」

    あげは「なんというか」

    小糸「普通にサマになってる(安物の割に)」

    聖子「やっぱ元がいいと何付けても似合うよなーーッ。ハゲのくせに」

    浄海「ふふん。もっと褒めなさい。あとハゲは余計だコラっ」

    あげは「ガハマちゃん、ガハマちゃんセクシーポーズとって!写メ撮るから!」

    浄海「こ、こーう?」キメッ

    あげは「きゃーっ!」パシャッ

    浄海「ついでに『ペンダント』、胸元の間に落とし込んじゃったりして」チラッ

    あげは「きゃーっ、チラリズム!」パシャッ

    聖子「無い胸晒しても意味ねーぞー」

    浄海「うっせ。まだまだ私は成長期なんだよッ。見ろ、この色気。さらに肩なんかも晒しちゃったりして……」ヌギッ

    あげは「きゃーっ!ガハマちゃん超セクシーーーッ」パシャパシャァッ


    ガラァッ!!!


    浄海「あ」

    聖子「あ」

    あげは「あ」

    小糸「あ」

    ゴゴゴゴゴゴ……‼︎


    青年「……」バンッ‼︎


    浄海が肩を晒した瞬間ッ!部屋と廊下を隔てるふすまが空くと、そこには一人の青年が立っていた。

    漆黒の「袈裟」にキッチリ剃り切った「坊主頭」といった風貌で、誰の目から見ても彼が仏門の道に身を置く者と分かるであろう。

    その青年こそが浄土ヶ浜家の長兄、「浄土ヶ浜 海星(かいせい)」。すなわち、浄海の言うクソ兄貴である。

    ゴゴゴゴゴゴゴ……‼︎

    浄海「こっ……」

    海星「……」

    浄海「このバカ兄貴い!テメェ、レディの部屋に入る時はノックすんのが常識だろーがあああ!!!」カァッ

    海星「バカはお前だこの愚か者ッ!客人を家に招き入れてるというのにお茶の一つも出せんのか!だから僕がこうして代わりに持ってきてやったのだろうッ!」

    スススッ……

    聖子「はあぁ……っ。はあぁ……っ。海星さん……」ウットリ

    小糸「せ、聖子ちゃん……?」

    あげは(こりゃあ重症だねェ〜〜……)
  35. 35 : : 2021/09/18(土) 20:32:04
    海星「恐山さん、田那川さん、夜凪さん。いつもうちの愚妹に良くしていただき誠にありがとうございます」ペコーッ

    浄海「誰が愚妹だ、愚兄っ!」

    あげは「いやいや、そんな〜」

    小糸「こ、こちらこそ?」

    海星「こちら、粗茶ですが」

    カチャッ カチャッ カチャッ


    海星「では、ごゆっくり」ニコッ

    聖子「あっあのっ!」

    海星「?」

    聖子「よ、よければ海星さんも一緒にお話どうですか……なんつって。ほ、ほら!ウチらってあんま海星さんと話したことないし?一緒にお喋りして仲良くなれたらアゲアゲーっでイイカンジ〜……みたいな」

    あげは(聖子ちゃん……なんかもういっぱいいっぱいだよ!)

    海星「……」ニコッ

    聖子「ーーー!」ドキーン

    聖子(ヤッベェーー、マジでヤッベェー、海星さんの『アルカイック・スマイル』うぅぅ〜〜ッ。ホントーはウチみてぇーな頭の悪いガキ迷惑に思ってんだろーけどっ!それを敢えて感じさせない穏やかなイケメンスマイル……そーゆー大人な対応に痺れるうぅ〜〜ッ)ドキドキ

    海星「すみませんが……年頃の女の子同士でしか喋れないこともあると思いますので、僕はやっぱりお邪魔かと。何か困ったことがあれば御堂の方で相談を受けますので。それでは」

    ガララッ
  36. 36 : : 2021/09/19(日) 07:26:52
    聖子「いつ見てもマジで眼福だわ……。つるっぱげの頭に後光がさして見える……。あと100年は生きていけるわ……」ブツブツ

    あげは「聖子ちゃんが『重症』ってこと差し引いてもさーーッ、坊主頭なのに美男美女ってどういう事っすか『浄土ヶ浜兄妹』ッ。反則っしょ、こんなん」

    聖子「決めた、ウチ。海星さんのお嫁さんになる」ガタッ

    浄海「えぇっ……?」

    聖子「ねえ、マジでイッショーのお願いッ!海星さんにウチのこと良く言っといてよ!お経も覚えるからさーーッ、鐘だって何回もつくからさーーッ」

    浄海「……はぁーっ。アメェ考えしてるんじゃあないわよ」

    聖子「してねーから!言っとくけど今回はマジです。本気(マジ)

    浄海「いーい?一般家庭の女が寺の息子に『嫁ぐ』ってことはさーーッ、『出家』するってことなの。家出じゃあないわよ?『俗世の華美』を捨てて仏門に身を置くっつーこと」

    聖子「は、はあ……。なんか急に小難しい……。なに?『臆せよカビ』?」

    浄海「……簡単に言うと、『俗世の華美』ってのは髪型とかファッションとかの『自分を良く見せるもの』ってこと。アンタなんて『パツキン』『デコ盛りネイル』『ギャルメイク』の(スリー)(アウト)よ」

    聖子「うっ、うぅっ……」

    浄海「それを『捨て去る』ってことができんならさーーッ、応援してやってもいいけど。まー、そんな人生『女捨ててる』よーなもんどけどさー。私はオススメしないなー」

    聖子「諦め……ます。生理きてるうちはまだ女捨てたくないっス」

    浄海「でしょー?それがフツーよ、フツー。私だってこんなクソな家とっとと出てーのに」

    小糸「浄海ちゃんは出家じゃなくて家出するんだね」
  37. 37 : : 2021/09/20(月) 09:09:45
    聖子「マジメンゴ海星さん、チックショー、俗世捨てきれねーっ」

    あげは「まあまあ。海星さんが淹れてくれた美味しいお茶でも飲んで……───って、にがあ!」ケホケホ

    聖子「あっはは、ガキ舌かよ!どれどれ……」ゴクゴク

    聖子「……に、にっがい」ンベェ

    あげは「でしょー?」

    浄海「あーー……ごめんごめん。アイツ馬鹿だから馬鹿みたいに苦い抹茶点てんのよね……。言うの忘れてた。バカみてェーに苦いっしょ?」

    あげは「小糸ちゃん平気そーだね?」

    小糸「おいしい」

    浄海「あんたオバちゃんみたいな舌してるわね〜……」

    小糸「オバっ……!」

    浄海「とりま砂糖持ってくる。ザバザバ甘味入れてもっと美味しく飲みましょ」トタタ

    ガララッ


    小糸「オバ……オバちゃん……」ズーン

    あげは「舌が成熟してるって意味だよ」ポンポン
  38. 38 : : 2021/09/20(月) 10:09:34
    ───浄土ヶ浜家、台所



    浄海「さっとう、さっとう、スゥイートなおっさとう♪恋の魔法はげっき甘なのよ〜♪」ガサゴソ

    海星「なんだ、その馬鹿みたいな歌は」ヌッ

    浄海「うっせえバカ。お前がバカみてーににっがいお茶出すから、女の子たちはうんざりなんだよ。おっ、砂糖みっけ」

    海星「あの渋みが分からんとは愚物どもめ」

    浄海「いや、純度100%の抹茶とかマジ女心ナメてっからね?せめて和菓子と一緒だったら分かるけどそういのもねぇしさ。お前の狂った味覚にアイツら巻き込むな」

    海星「ふん。お前の甘党っぷりも大概だがな」

    浄海「……」

    海星「……」

    ゴゴゴゴゴゴゴ……‼︎

    浄海(やっぱ海星とは合わねぇーーっ。考え方も嗜好も趣味も生き方も、何もかも……。コイツの心なんて永遠に分かりっこないんだわ……。ま、実の兄貴じゃあないんだから当然か……)

    浄海(コイツといつまでもツラ付き合わせてんのも気分悪ぃーし、とっとと戻るか……)スクッ

    海星「浄海」

    浄海「……」ピタッ

    浄海「……なに」

    海星「学校の方はどうだ」

    浄海「はっ、はあぁーー……!?ど、どうって……フツーよ、フツー」

    海星「はぁ……あのなあ、浄海。僕は別にお前が学校でどういう風なことをしてるかってことを聞きたいんじゃあないんだよ。
    『教師がテスト時間中居眠りこいてて腹が立つ』とか『A組のナニちゃんがC組のホニャララちゃんとバチバチでヒヤヒヤしてる』だとか……そういう俗世の下らないことなんて露ほども気にならない。世間話がしたいんじゃあない」

    浄海「何言いたいの。てか別に私もお前と世間話なんてするつもりねーし」

    浄海「僕が聞きたいのは数字……もっと言えば『成績』の話だよ」

    浄海「……ッ。それこそフツーよ、フツー。別に悪くもなく良くもなく……まあ、ちこーっと頑張ればヨユーで上位10位には入れるかしら?ってカンジ」

    海星「……そうか」ピラッ

    浄海「ゲッ」

    『浄土ヶ浜 浄海 数学Ⅱ 34点』

    海星が袈裟の内側から取り出したのは浄海のテストの答案用紙であった。

    海星「ちょっと頑張れば10位以内には入れる?じゃあなにか?このテストの最高点は60点くらいってことか?お前のクラスは『腐ったミカン箱』か?」
  39. 39 : : 2021/09/20(月) 22:09:52
    浄海「はっ……。なにさ、急に兄貴ヅラなんてしちゃって。そんなに私のことが心配になった?」

    海星「それはもちろん心配だ」

    浄海「……えっ」

    浄海(コイツが……?私の心配?)

    海星「お前の成績は家族にとっての最重要問題だからな」

    海星「そんな成績で大学行けるのか?就職できるのか?
    別にお前がどこへ行こうと構わないがな、就職もできず逃げ口上で、この寺に残られんのが一番困るんだよッ」

    浄海「……っ!……んだと」ボソッ

    海星「父さんはお前のことこの寺に残すつもりらしいがなあ……ハッキリ言って僕は反対だ。
    お前のような浄土ヶ浜家の誇りを屁とも思ってないチャランポランには、とっとと出て行ってほしいと思ってるよ。
    しかし、そのためには最低限の『学』を付けてもらわなくてはな。人様に迷惑をかけることになるだろう」

    浄海(海星のヤツ……さっきから黙って聞いてれば……)ピクピクッ

    海星「だから必要最低限の学を身につけてから、この寺を出てってくれないか」ニコッ

    浄海(ああーーーっ。このクソ憎たらしい笑顔、聖子のヤツにも見せてやりてえぇーーーっ)
  40. 40 : : 2021/09/20(月) 22:26:15
    浄海「さっきからブツブツうっせぇぞ陰険坊主ッ。テメェに指図されなくてもこんな狂った家、私はとっとと出て行くつもりだっての!
    高校卒業まであと二年の辛抱だからさ〜〜ッ、それまでそのスルメくせぇー口閉じてろボケッ」

    海星「その『高校卒業』ができなさそうだから心配してるんじゃあないか。遊んでる場合なのか?あのバカ女たちと」

    浄海「あぁっ……!?バカ女……?誰のことよ?」

    海星「決まってるだろう。今日遊びに来てるズッコケ三人組のことだよ」

    浄海「ーーッ!」

    海星「いや、お前含めると四人か……。
    ああいうヤツらってなーんにも考えないで大人になって、それで下らないことに苛まれ続けて一生を終えていくんだろうなあ……。実に下らない愚物たちだよ……───」

    バチンッ‼︎


    物静かな台所に浄海の音高い平手打ちの音が響き渡った。

    浄海「……」

    海星「……なんだ?今の」ヒリヒリ

    浄海「……謝れ」

    海星「はぁ?」

    浄海「今すぐっ!!謝れッ!!私の友達を侮辱したことを!!!」ガッシィ

    海星「毛頭、謝る気はないな。愚物を愚物と蔑んで何が悪い」グググ…

    浄海「キモいんだよ、そのウラオモテある態度がさあ……!聖子たち、割と本気でアンタのこと慕ってんだぞ?お前の引き攣った気持ち悪い笑い方……私には何がいいのか分かんなくて理解不能ってカンジだけど、アイツらはアンタに憧れてる」

    海星「……」

    浄海「その気持ちを裏で散々踏みにじりやがって……マジで許さねえからなぁ……!」

    海星「ふうん。裏で、か」

    浄海「……」

    海星「そんなことを言ったら彼女らだって同じことだろう」

    浄海「どーいうことだ」


    海星「本当に彼女たちは『友達』なのか?心は許し合えているのか?表ではニコニコしてるかもしれないが、裏ではお前のことを蔑んでいるかもしれない。今、この瞬間だってな」

    海星「『浄海ちゃんは変わっててキモいけど、家は広いし温泉も入れるからな。仲良くしてやった方がいいかもしれない』なんて……そう思ってるかもな」

    海星「……彼女ら、いや……この海姫町の町民は一人残らず『愚物』だ」

    浄海「テメエェェッ!今度はマジにぶん殴るぞッ!!」ギュウッ‼︎


    海星「だが」ギロリ

    浄海「……ッ!」ビクッ

    海星「それと同時に、守るべき『弱者』でもある」
  41. 41 : : 2021/09/20(月) 23:24:18
    ドドドドドドドドド……‼︎

    海星「我らが寺院、善光寺の在り方……それは『開かれた寺』だ。これは浄土ヶ浜家の海姫町に対する『供給』であり『特権』であり、あるいは『果たすべき責務』だ」

    浄海「!……いきなり関係ねーこと話してるんじゃあないわよ」

    海星「いいや、関係ある。そんなことも分からないからお前はこの寺にいる資格がないのだ」

    浄海「こんな狂った寺にいる資格なんて、とっくに下水に流して捨てちまったっての……」

    海星「……浄土ヶ浜家は代々『力』を持つ一族だ。そして、その力を行使するのは町の弱き人々を俗世の下らないしがらみから救うために行使する。それが浄土ヶ浜家の社会に対する姿勢だ」

    海星「けれどもそれはあくまで浄土ヶ浜家の『寺院』としての顔だ……。『プライベート』じゃあない。『力』は、我々が尊ぶ仏の法に由来するものだ。
    欲望にまみれた俗世に身を置いていては『力』はどんどん汚らわしい、脆弱なものへと変質してしまう……なあ、僕の言ってること理解できるか?」

    浄海「意味は『分かる』けど、『理解』はしてねーわよ……。何千回とクソ親父から説教された話だけどね」

    海星「……とにかくお前は少なくともあと二年は浄土ヶ浜の人間なのだ。あのバカ女たちと関わるのはやめろ。寺の門を叩いてやって来た時に関しては救ってやるべき『弱者』だが……家のインターホンを押して敷居を跨いだのなら話は別だ。我々の力を汚す、招かれざる俗世の『愚物』だ。付き合いを考えろ……」

    浄海「海星……ッ。アンタやっぱ一回ぶん殴られたいみたいね……!」グウゥッ

    海星「……」


    タタタタタ‼︎

    小糸「浄海ちゃん!何してんの!」トタタ


    浄海「……ッ!」ブンッ

    バキイィィッ!!!

    海星「くぅっ……!」ドサッ


    あげは「ガハマちゃん⁉︎海星さん⁉︎」アタフタ

    聖子「……な、何やってんのさ。浄海……!」


    海星「……」
  42. 42 : : 2021/09/20(月) 23:25:03
    浄海「皆……どしたの?部屋で待ってろって言ったじゃん」

    小糸「なんかさっき……すごい怒鳴り声聞こえたから……それでっ、心配で……!」

    あげは「け、喧嘩は良くないっしょ!せっかくの美男美女なんだからっ!ねっ?ねっ?」アタフタ

    海星「皆さん……すみません。これはちょっした家族のいざこざなのです。私たちの問題ですので……皆さんはお部屋に……」


    浄海「……悪いんだけどさあ」

    小糸「……!」

    浄海「ごめん、本当に……。せっかく来てくれたんだけどさあ……今日は、もう帰ってくれない?」

    あげは「……」

    浄海「別にアンタたちが悪いってわけじゃあないのよ……私の問題、メンタルの方の……。今日はもう、楽しくおしゃべりできそうにない」

    聖子「……浄海」

    浄海「だから、ごめん」

    聖子「……りょ。帰る……。行こ?二人とも」

    あげは「……う、うん。ガハマちゃん、それじゃあ……」

    小糸「……お邪魔しました」ペコッ


    スタスタ…

    ガララッ…ピシャンッ…!


    浄海「……」

    海星「……」

    浄海「……いつまですっ転んでんだよ」

    海星「……誰が転ばせたと」

    浄海「ふんっ。つーかさ、さっきのマジ殴りくらいさ、ご自慢の『力』を使って避けれたんじゃねえの?」

    海星「……これは弱者に振りかざすためにあるのではない。『救う』ためにあるのだ」

    浄海「……」

    海星「浄海。お前は、あの日『儀式』を受けていながらも未だに弱者だ、他の者たち同様にな。
    やはりお前のようなハンパ者は我が家には必要がない。とっとと出て行くんだな……」

    ドドドドドドドドド……‼︎

    海星「浄土ヶ浜の姓を冠しているというのにもかかわらず、未だに『心の形』……『スタンド』を発現させることのできない……ハンパ者はな……!」

    ドドドドドドドドドドドドドド……!!!

    そう言って立ち上がる浄土ヶ浜 海星の影法師は夕日に照らされ後方に伸びている。

    しかし、その影は時々三つに千切れ、それらが無邪気に遊んでいたりしてるように見えた。

    それは通常の人間には見えない『異常』なもの。

    けれども、少なくとも、この普通の少女、浄土ヶ浜 浄海はその異常を忌々しげに見つめていた。

    浄海「……」

    ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………‼︎

    浄海「キモいんだよ……。早くしまえ、それ」

    海星「すまない。感情が昂ると勝手に遊び出す」

    浄海「……昂ってんだ」

    海星「ああ。お前が目障りでね」
  43. 43 : : 2021/09/21(火) 07:08:04
    …………



    あげは「……大丈夫かな」

    聖子「喧嘩ばっかしてるって話だけだったら聞いてたけどさーーッ……リアルに見るのって初めてだったね。まさかのマジ殴りっすか、海ちゃん……」

    小糸「きっと何か理由があるはずだよ。私、やっぱり……」

    あげは「小糸ちゃん〜〜ダメだよ。戻っても意味ないって」

    小糸「でも!」

    聖子「アレはどー見ても、ウチらの出る幕じゃあねぇって。家族の問題ってのはさーーッ、茨みてーにこんがらがってる上に棘だらけってカンジなのよ。……そんな棘だらけに小糸ちゃんのほっそーい腕を入れてもさーーッ、お互いに傷つくだけだって……」

    小糸「……聖子ちゃん」

    小糸(そっか……聖子ちゃんも……)

    小糸「……うん、そうだよね。余計なことだったかも」

    あげは「どうする?どっか寄ってく?……といっても浄海ちゃんがあんなになってて楽しめる状況じゃあないけど……」

    聖子「トーゼン直帰っしょ。ウチも海星さんにフられてショーシンなんよ。家でゆっくり自分のこと慰めるン」

    あげは「いや、勝手に諦めただけじゃん」

    小糸「それじゃあね。二人とも」

    聖子「バイちゃん」

    あげは「またね〜〜」


    浄土ヶ浜家の門前で三人は別れた。小糸は一人で西側へ、そして町中に住んでいる聖子とあげはは南側へと歩を進めた。

    スタスタ…


    あげは「……そーいえば心配だね」

    聖子「は?海ちゃんのこと?」

    あげは「それもあるよ。だけどさ、最近『来てる』らしいし」

    聖子「……なにが?」

    あげは「はーーーッ。聖子ちゃんそれでもギャル?流行のトレンドには目ぇ張ってしっかりチェック!っしょ」

    聖子「だから何来てんだっつーの!マジ分かんね、韓流のコンサート?移動動物園?全然分かんねーっての!」

    あげは「……最近、この町に来てる……いや、もう『居ついてる』らしいよ」

    聖子「……」

    あげは「……『A市の連続殺人犯』」

    ゴゴゴゴゴゴゴ……‼︎

    聖子「……お前それ『流行のトレンド』にしては血生臭くね?」
  44. 44 : : 2021/09/21(火) 07:39:42
    あげは「もう、聖子ちゃんニュース見てないの?」

    聖子「お前こそマジメちゃんかよ。ビッチのくせに」

    あげは「ビッチビッチってうるさい。今日だけで何回言ったの?慰謝料請求するよ……」

    聖子「だったら男遊びやめろ」

    あげは「むりン」

    聖子「お前なあ……」

    あげは「……まあ、でも、そうだね。私も実家の仕事の都合で、さ。お客さんと世間話できるように朝のニュースくらいは目を通しておけって、ママがね……」

    聖子「ふぅん……」

    聖子(コイツもいろいろ考えてんのな)
  45. 45 : : 2021/09/22(水) 07:21:35
    聖子「……んで、その殺人犯って?」

    あげは「別に、変わったことはなにもないんだよ」

    聖子「じゃあ何も心配することないじゃんかさ。殺人事件の一件や二件、この広い地球で必ず毎日起きてンだし……。たま〜にウチらの身近で起こったって不思議じゃなくね?」

    あげは「うん。別に変わったことは何もない。ただ、まぁ……敢えて挙げるとすると被害者は全員殺される直前に『強姦』された痕跡がある」

    聖子「ご、ごーかん……ヤバ。つーか強姦の『痕跡』ってどーやって調べんの?」

    あげは「そりゃ〜〜、ま〜〜……検死に回して服脱がせて……?」

    聖子「……うわっ、うわっ。検死官って全員スケベかよッ!しかも死体専門ってそーとーマニアックじゃね?パねぇーなッ!ウケる」ケラケラ

    あげは「もうっ。笑いごとじゃないよっ!……でもね、ホントーに恐ろしくて『奇妙』な点はそこじゃあないのっ」

    聖子「……」

    あげは「その『犯人』ってのがかなり鈍臭い細身の男だったみたいでね。パトロール中のA県警がたまたま現場に鉢合わせしたらしいの……飲み屋の路地裏」

    あげは「足ももやしっ子みたいに遅くて、警察はすぐに捕まえられたんだってさ。でも捕まえたって思ったその瞬間ッ」

    聖子「……!」

    あげは「その瞬間からの記憶が朦朧として……『何もない』んだって〜〜……!」

    聖子「……は?」
  46. 46 : : 2021/09/22(水) 07:22:40
    ゴゴゴゴゴゴゴ……‼︎

    聖子「それって、気を失ったってことおぉ?」

    あげは「何が起こったのかは分からないんだって。でも確かなのは、その警官の犯人確保前後の意識が朧げで、目が覚めたら飲み屋街のど真ん中で寝っ転がってたんだって」

    聖子「それってさ〜〜、単にその警官がちょいとサボって酒入れながらパトロールしてたってだけじゃね〜〜?極度の下戸でさ〜〜。場所も場所だしィ?潰れちゃったんだよ」

    あげは「そうかもしれない。実際仕事の前にチョビィーッとだけ飲んでたみたいでアルコール反応もあったみたい」

    聖子「ほら、やっぱりィ〜」

    あげは「でも、いくらお酒が入ってたからって、さっきまで全力で人を追ってたアドレナリンムンムンな警官が急に気を失うなんてあり得る?なにか『恐ろしいこと』が起こったに違いないよ」

    聖子「……考えすぎじゃね?」

    あげは「でも、それより!も〜〜っと、恐ろしいことがあってええぇ〜〜〜〜っ!」

    聖子「っ!……それは?」ゴクリ

    ゴゴゴゴゴゴゴ……‼︎


    あげは「その警官、職務怠慢扱いされて、減給40%……!」ゴクリ

    聖子「……激ヤバァーーっ……!」ゾクゥーッ
  47. 47 : : 2021/09/22(水) 07:54:52
    あげは「でも、本当にかわいそうなのは被害者の女の子だよ……。急に訳のわからないまま殺されて……激ヤバなんてもんじゃあないよ」

    聖子「……」

    あげは「それで、そーいう『痕跡』のあった遺体の目撃現場がどんどん北上している……」

    聖子「なーる。A市からどんどん北上してってついにはこの町……M市の海姫町に来ちゃったってわけ」

    あげは「小糸ちゃん……私たちと別れた後は一人でしばらく歩かないといけないから心配だよ」

    聖子「ダイジョブじゃね?」ケロッ

    あげは「テキトーすぎ。私マジメに言ってんだから」

    聖子「ダイジョーブだって。だいたいさ〜〜、強姦とか、そーゆうのって……『合意』だと思って勘違いしちゃった男がその場のノリでヤっちゃって、後から女がギャンギャン泣き叫んじゃったからやむを得ず……みたいな感じっしょ?」

    あげは「あーー、ありそう」

    聖子「だからキョーヤマちゃんより身の心配をすべきは『勘違い男子製造機』……あげは、お前だけだっつーの」

    あげは「私だって好きで勘違いさせてるんじゃないも〜〜ん」

    聖子「そのとろーっとした喋り方がもう信用できないんだよっ」

    あげは「まあ、ともかく……私も聖子ちゃんもキョーヤマちゃんもガハマちゃんも……気を付けるに越したことはないっしょ」

    聖子「んだね。……てか、あげは。そーゆー情報ってどこから仕入れてくんの?流石にそこまで詳しくはニュースでやってねーよな」

    あげは「ママがやってるスナックのお客さんがね〜〜、ケーサツの偉い人で。気分良くなるとイロイロ仕事のことお喋りするんだ〜〜。さっきの喋り方もその人のマネ。あはは、『守秘義務違反』ンン〜〜」

    聖子「……笑いごとじゃなくね?それ」タラリ

    あげは「ショチョー『ここだけの話』って言ってたけど〜〜、聖子ちゃんも私の身内だし『ここだけ』の範囲に入るっしょ。てゆーか『人類皆兄弟』っ!ういーあーざ・ワールドっ!あははははっ」ヘラヘラ

    聖子「ふっわふわであまっあまな脳みそしてんな……。夏の日とかちょっぴり溶けてんじゃね?」

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たかのがわ すぎお

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