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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

この作品は執筆を終了しています。

黒い髪の女神は孤独な男に恋をする〜第1話 出逢いと再会〜

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  1. 1 : : 2020/01/27(月) 05:29:36
    エレフリ

    ファンタジー系

    キャラ崩壊

    注意すべきはこの3つのみです。
    受け入れられない方はお戻りください
  2. 2 : : 2020/01/27(月) 06:09:09
    ある日の冬。

    幼い少年は泣いていた。

    少年の名は"エレン・イェーガー"ここから先の物語の中心となるべく存在。
    そんな彼が今、自身の世話をしてくれた女性に抱かれて泣いている。

    原因は父・グリシャと母・カルラの死。
    父は母へと手を伸ばしながら胸と口許から血を流し、母は胸と腹を刃のような物で斬られた痕を残して逝った。

    数々の思い出が浮かんでくる、想いが次々と溢れ出ているのであろう事を抱き寄せる彼女は感じ取っていた。

    そして、彼女はある提案をする。

    ───旦那様方の為にも、最期まで生きる為に、修行を致しましょう。


    ここより始まるは、エレン・イェーガーの物語。
    父から剣術を、母からは智慧と技術を、世話をしてくれた女性、桜からは剣を受け継いだ。

    心の中には家族は意志と共に生きてはいるものの、孤独となってしまった彼が、一体如何様にしてこの世を生きるのか。

    全ては少年から青年へとなった彼のみにしか分からない。

    この日より運命の歯車はカチッ、と音を立て、回り始める。
  3. 3 : : 2020/01/27(月) 06:39:49
    聖暦844年

    「・・・・・・・・・・・・・・・」


    「おい、またアイツ独りだぜ」

    「やめとけよ、下手にいじると何が起こるかわかったもんじゃねぇ」

    「いつまでもあんな雰囲気されてると、こっちまで気が滅入っちまうぜ。何時になったら此処を出ていくんだろうな、“エレン”くんよぉ?」


    今日もまた、周りからの陰口は収まることを知らずにエレンの耳へ届いていく。これにはもう慣れたエレンだが、正直いい気分はしない。


    エレン「・・・・・・・・・・・・」


    自分自身でも分かってるつもりだ。
    いつまでもこんなとこにいる訳にはいかない。
    言われずとも直ぐにここから立ち去る。

    しかし行く宛てが無いからこそ、こんな辺鄙な場所に居るのだ。


    エレン「顔出しに行くか」


    そう呟いたエレンは椅子から立ち上がり、その場を去った。


    エレンが赴いた場所、それは人集りの多い通りの脇道を通った路地にある店だった。


    「エレンか?よく来たな」


    幼少期の頃から親と仲が良かった人物がカウンターの向かいに立っていた。


    エレン「・・・ハンネスさん」


    ハンネス「少し見ねぇ間に男前になったじゃねぇか、最近はどうだ?」


    ──男前とかやめてくれよ。そう言ってエレンはカウンターに腰を下ろす。


    エレン「別に、いつも通りだよ」


    ハンネス「そうか・・・ほれ、珈琲」


    エレン「ありがと・・・」


    エレン曰く、彼の淹れる珈琲は美味いらしい。数ヶ月ぶりに通ったこの店の珈琲を1口啜り、コトン、と音を立てると静寂が訪れる。

    暫くすると、ハンネスは口を開く。


    ハンネス「エレン、そろそろ決心してくれたか?」


    エレン「何度言われても変わらないさ・・・俺は絶対に兵士にはならない」


    あの日・・・桜との修行を終えた後、エレンは両親の死因を探っていた。

    ある日偶然それを耳にした時は驚愕した。

    ──あのイェーガーさんの両親、1人の兵士に殺されたって言うのが噂されてる。

    信じたくは無かった。
    幼少期、憧れだった兵士。父も母も、兵士になる事を良しとしてくれた。
    なのに、その憧れの存在である兵士に親が殺された。

    そういう話になれば、エレンが頑なに兵士にならないと言い張るのも理解出来る。


    ハンネス「そうか・・・」


    ハンネスは顔を落とした後、ニッ、とした表情でエレンへ言葉を放つ。


    ───今、暇か?


    エレン「え?まぁ」
  4. 4 : : 2020/01/27(月) 07:30:18
    馬車を走らせること約数時間。

    目的地に着いたとハンネスに言われ馬車を降りると、そこにはある男性が立っていた。


    ハンネス「すいませんな、お待たせしてしまって」


    「い、いえ!こちらこそ、遠路はるばる。来て頂いてありがとうございます!」


    エレン「ハンネスさん、この人は?」


    ハンネス「この人は、依頼人だ。なんでも、お前に頼み事があるらしいんだと」


    エレン「俺に?」


    ──しっかり依頼をこなすんだぞ。


    そう言ってハンネスは馬車を走らせてこの場から去ってしまった。
    残されたエレンは依頼人に導かれるままに後を追う。


    「どうぞ、お好きな場所にお座り下さい」


    言われるがまま、近くにあった椅子に腰を下ろすエレンは目の前の依頼人に目を向ける。


    エレン「それで、依頼って?」


    「実は・・・・・・」


    表情を暗くした依頼人を目にしたエレンは、何となく察しがついた。

    ──何の罪もない妻が、ある男に殺された。

    絶望した依頼人は彼の持つ剣についての噂を耳にしたらしい。

    彼の持つ剣。"妖刀・桜吹雪"
    この刀は、所持者であるエレンが持つ憎悪を喰らい、斬れ味を上げていく。そして斬った対象の血を喰らい欠けた刃を修復する力を持つという。


    エレン「なるほど、噂で聞いた俺の過去を上手く利用してきたという事か・・・」


    薄暗い部屋で紅く煌めく妖刀を携える彼の下には、背後から斬られた痕を残して倒れる男の死体があった。

    エレンは実行した。依頼人の願いを。例え、自分のする事が殺人であっても。

    しかし、これで依頼人の憎悪が無くなってくれるのならと。
    ハンネスに別れを告げたエレンは、こういった類の依頼を受けては転々と半ば旅をしていた。


    旅の最中、エレンはある人物と邂逅を果たす。


    「貴方、武装もしないでこんな場所で何をしているの?」


    焚き火を起こし、木を背に座り込むエレンへ近寄る影がいくつか。先頭に立つ女の声はエレンの耳に届く。


    エレン「何者だ・・・名乗れ」


    刀の柄に手を掛け、殺気を出すエレン。
    しかし、話し掛けてきた女は余裕の声音で再び声を掛ける。


    「私の名前はフリーダ・レイス。さて、次はこっちの質問ね。こんな場所で武装もしないで何をしているの?」


    エレン「見りゃ分かんだろ、野宿だ」


    「貴様、この方が次期国王と知っての事か!!」


    フリーダ「いいの、気にしないで」


    「黒い髪に金色の瞳・・・そして携える紅く煌めく刀・・・・・・フリーダ様!コイツ!国王様の言っていたエレン・イェーガーです!」


    フリーダ「──!!!」


    護衛と思しき男の言葉を聞いた彼女は眼を見開いた。それは驚愕に満ちていて、口をパクパクとしてこちらを見つめていた。


    エレン「俺の事知ってんのか・・・そいつは光栄だね。で?アンタらは何しにここに来たんだよ」

    自分の事を知ってる人間ならば、尚更だ。より強く殺気を立てるエレンにフリーダは慌てふためき制止を掛ける。


    フリーダ「ちょっ!ストップ!私達、別に貴方を探していたわけじゃないの!今回は隣国のマーレ国に行く為にここを通ってた訳で」


    エレン「マーレに行くならこっちは遠回りの筈だ。何で態々ここを通る必要があった?」


    依然、殺気を抑える事がないエレンに観念したフリーダは、少し息を吐いて真剣な表情で口を開く。


    フリーダ「エレン・イェーガー、貴方を探して王都まで連れていく。お父さんから頼まれてね」


    エレン「やっぱりそうか。けど、はいそうですかって言うわけが無いだろ?」


    フリーダ「はぁ・・・・・・やっぱりこうなるのかぁ〜。仕方ないっ」


    「フリーダ様!お下がり下さい!奴は危険です!」


    フリーダ「分かってるよ。けど、貴方たちじゃ彼を抑えられない。相手できてもほんの僅かの時間だけ」


    エレン「・・・御託は要らねぇ、さっさと来い」


    フリーダ「言われずともっ!!」

    今ここに、エレンとフリーダの邂逅は成った。少なくとも、邂逅の仕方は平和では無かったが。
  5. 5 : : 2020/01/27(月) 07:47:43
    戦闘が始まって数分。

    フリーダはエレンの戦闘能力に微かに驚いていた。剣術、魔術、そしてそれらを操る技術とスピード、そして一寸の隙も見せない姿勢。

    そのどれもが、自分と戦ってきた猛者よりも遥かに上回っていた。


    フリーダ「はぁ、はぁ・・・」


    それにしても、あの妖刀・桜吹雪。厄介だね。
    確か、所持者の憎悪を喰らって斬れ味が増す。そんな能力だっけ。

    今はどうにか交わせてはいるけど、このままじゃこっちの体力が尽きて終わりね。

    早いとこどうにかしないと・・・!!


    エレン「考え事か?敵に隙を見せたら終わりだぜ?」


    背後より聞こえる彼の声、即座に振り返ろうとするが、既に遅かった。


    フリーダ「やばっ────!」


    勢い余って目を瞑るが、斬られた感覚や衝撃が来ない。ゆっくり、その瞼を開くと・・・。


    エレン「ぐっ──!っ、ぐぅぁっ」


    刃を地に突き刺し、膝を付き、両手で頭を抱えて痛みに悶えるエレンの姿があった。


    フリーダ「・・・・・・!今のうちに、気絶させないと!!」


    瞬時にエレンの背後に回るフリーダはエレンの意識を飛ばし、倒れる彼を見やる。


    フリーダ「エレン・イェーガー・・・・・・剣術において右に出る者は居なかったグリシャ・イェーガーと、高ランクの魔術を操る技術と幅広い智慧を持つカルラ・イェーガーの息子。何で、この人の剣からは・・・」


    ───悲しみに溢れているの?
  6. 6 : : 2020/01/27(月) 08:04:25
    「エレン、今日もまた稽古を付けてやろう」


    エレン「ホントに!?やったぁ!」


    「ちょっとグリシャ?エレンをいじめないでよ?」


    グリシャ「はははっ、心配しないでくれカルラ。稽古中のエレンは物凄く真剣なんだ。それに全力応えてやるのが当たり前と言うだろう?」


    カルラ「どうだかね〜。あっ、桜〜!洗濯物たたむの手伝ってくれるー?」


    桜「はい!直ちに」


    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


    エレン「っは!はぁ、はぁ。夢?」


    エレン「ここは・・・」


    上半身を起こし、首を左右に揺らす。
    すると、扉が開き、男と先程まで戦っていたフリーダの姿が眼に入る。


    「眼が覚めたようだね。エレン・イェーガー君」


    エレン「アンタは・・・?」


    「私は今この国の王をやっている、隣にいるフリーダの父。ロッド・レイスだ」


    フリーダ「やっほ〜。さっきぶり〜!」


    丁寧に自己紹介済ませたロッドの後についてフリーダは軽く挨拶を済ませる。そして、エレンは彼らに疑問をぶつけた


    エレン「国の王様とその娘が一体俺に何の用だ?こんな大層な部屋まで用意して」


    ロッド「君の両親の事は、ハンネス殿に聞いておる。まっこと、残念だったな」


    エレン「っ───!何で、知って」


    ロッド「君は知らないのかもしれないが、グリシャは私の友人でな。奥方のカルラも同様、私の友人だ」


    エレン「・・・・・・・・・」


    確かに、知らなかった。父と母がこの国の王と友人関係だったとは。

    しかし、問題はそこではない。


    エレン「質問に答えろ、俺に何の用だ」


    ロッド「なに、簡単な話だ。是非とも、うちの婿に来ないか?」


    エレン「・・・・・・・・・・・・」


    沈黙・・・。当然だろう、突然知らない人間に、婿に来ないかと言われて「喜んで!」という馬鹿がどこに居る。エレンは本日最大の声量で叫んだ。


    はぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああっ!?
  7. 8 : : 2020/01/28(火) 05:48:06
    あの日、ロッドの爺から誘いを受けてから、俺の日常は一変する。

    やけにレイス家のメイドや護衛騎士に言葉を掛けられたり、時にフリーダ本人からつきまとわれ、挙句にロッドの爺までもが、俺を婿に来させようと奮闘している。

    意味が分からない・・・父も母も、あまつさえ桜をも失い孤独になった俺に何故そこまで関わろうとする?

    ここ十数年独りだった俺に、そんな事を理解出来る事は無かった。

    そんなある日のこと─。


    エレン「今度は何だよ・・・前にも言ったが婿には──」


    ロッド「あぁ、今回はその件で呼んだわけではないのだ。君にある提案をしようと思ってね」


    エレン「提案?」


    ロッド「今、フリーダは南方、つまりローゼ市内にある訓練所で日々の鍛錬に励んでいる。そこでだ」


    ──君もそこで力をつけてみないか?


    鍛錬に励み力を付ける。それは訓練所とやらに行かなくても出来ることだ。しかし、この老爺が言うには、可能性があればの話だが、俺の両親を殺した兵士が所属する憲兵に近付けるのだとか。


    親父とお袋の仇に近付ける。しかし、その為に嫌っている兵士そのものにならなければならないという。

    兵士なんかにならなくとも、俺は俺自身の力で仇を打つ。そもそも嫌っている兵士に進んでなってやるという阿呆は何処にも居ない。


    エレン「確かに、それは魅力的な提案だけどよ。俺は兵士なんかにならなくとも、俺自身の力でケリをつける」


    去り際に言葉を吐き捨てた俺は、邸を出ていった。もうアイツらと関わらない為に。


    エレン「そう・・・・・・俺は独りだ。それでいい」
  8. 9 : : 2020/01/28(火) 07:02:43
    あれから1年と半年。

    妖刀を抱える俺は、とある小屋で座っていた。


    エレン「本当に、偶然耳にした出来事ってのは本当だったんだな。1年半前まではそこまで魔獣の奴らは闊歩して無かったってのに」


    半年前、この世界を絶望の淵へ叩き落とすかの様な災厄が起こった。

    “魔族の復活”今まで人類に封印されていた魔族はどういった経緯なのかは誰も知らないが、長年の時を経て、封印から解き放たれた。

    その日を境に、この“外の世界”には魔物や魔獣といった怪物が当たり前のように生息するようになっていた。


    エレン「しかし、こんな所に留まっても意味はねぇか。早いとこ別の場所に移らねぇとな」


    眼を閉じて瞑想し、半径10メートルの範囲の魔力を探査する。感じる魔力は無し。魔獣共の気配も無い。出るなら今のうちか。


    即座に小屋を出て屋根に登り辺りを見回す。


    エレン「さてと、何処に行くかな」


    行く宛ての無い俺はただひたすらに歩き続ける。
    しかしそこで、魔物の群れに遭遇する。


    「グルルルルッ」


    エレン「こんな時にっ」


    剣を抜くと同時に地を蹴った。コイツらは無駄に連携能力がある。厄介になる前に短期で殺す。


    エレン「──ッ!!」


    一匹目を斬り、赤黒い血飛沫が舞う。なるべくそれを避けるように次へと斬りかかる。


    エレン「毎度毎度っ!──俺の往く先々の道邪魔しやがって──ッ!!」


    二匹目、三匹目、そして四匹目。
    そして最後の五匹目を斬り終えると切っ先から垂れる血を振り払う。


    エレン「めんどくせぇ・・・」


    妖刀を納まって霊体化させ、再び歩き始める。
    宛もなく、放浪するように。


    数時間後、とある村に辿り着き。村人の質問に旅をしてるとだけ答えると、村の連中はゆっくりしていってくれと、快く俺を迎え入れた。

    エレン「なぁ、この村って貧しいのか?」


    女性「あはは・・・よく、分かりましたね」


    気まずそうに笑みを浮かべる家の主と思われる女性を一瞥してコーヒーを飲む。


    エレン「村の雰囲気がよ、活発さを失っているって言うか、どんよりしてるって言うか」


    女性「やっぱり、分かっちゃいますか。そうです、この村は半年前から貧しくなったんです」


    エレン「半年前って・・・魔族が復活してからか?」


    女性「はい。そして、1ヶ月に1度数人の兵士が村に訪れるんです」


    エレン「兵士?」


    彼女の言葉に過剰に反応した俺は眼を鋭くして、女性を見やる。


    女性「村長は女子供は家に入っていろと言ってくるもので、外で何が起きてるのか全く分かりませんけど、叫び声が聞こえたりするんです」


    エレン「・・・兵士、か」


    女性「実は、今日が。その兵士が訪れる日なんです。あと数分でこの村にも来ると思います」


    エレン「──!!」


    聞く限りだと、半年前まではこの村は貧しい様子は無かった、それから1ヶ月に1度訪れるという兵士。喧騒に包まれる村。



    エレン「間違いねぇ・・・・・・」


    女性「へ?」


    エレン「いいか?よく聞け、アイツら兵士は──」


    確信を以て話そうと彼女を見た時、それと同時に家の外から何やら叫び声が聞こえた。


    エレン「!!アンタは家から出るなよ、絶対だ!」


    そう言い残して、俺は家の窓から外に出て、騒ぎの中心を盗み見る。





    村長「げ、現状は、これしか」


    兵士「たったのこれだけか。貴様ら、本当に働いていたのか?」

    微かに震える様子の老いた村長は当然です、と。日々働いているんだと主張する。

    しかし、兵士はそんな主張を顧みず村長に向けて拳を振るった。


    村長「──ッ!!」
  9. 10 : : 2020/01/28(火) 07:03:04
    「なぁ・・・テメェら。こんな貧しい村から税金やら食料やらを奪って楽しいか?」


    兵士「貴様っ!何をするっ!?」


    エレン「なぁ?答えろよ、貧しい村から搾取すんの楽しいか?」


    ギチギチと俺は兵士の腕を握り締める。徐々に呻き声を上げる兵士はこちらを睨み付ける。


    兵士「貴様、余程命が要らぬらしいな?」


    1人の兵士が戦闘態勢に入ると同時に周りの兵士も臨戦態勢に入る。

    それを見る村長は俺に向かって一言叫ぶ。


    村長「お止めくだされ!旅のお方!これは我々村の問題です、貴方にご迷惑をかけるわけにはいきません!」


    エレン「確かに、これは村の問題。俺が関わる事なんざ無いんだろうな。けどよ、こんなモノ見せられて、はいそうですかって引き下がれる程人間出来てねぇんだよ」


    村長「なりませぬ!兵士殿に逆らっては!」


    エレン「兵士に逆らえば殺す?今なら謝ってくれれば許してやる?随分上からモノ言うじゃねぇか」


    兵士「我ら誇り高き兵士を愚弄するか!?その態度、万死に値するっ!」


    エレン「殺してみるなら好きにしろ。但し、俺に斬られる覚悟があるならなァっ!?」


    妖刀を実体化、そして剣を抜く。包囲されてはいるものの、相手はそこらのチンピラと同レベルの強さとみて間違い無い。


    「かかれっ!何としてもこの男を始末するぞっ!」


    その言葉を合図に、兵士らは攻撃を仕掛ける。


    エレン「来いよ、下郎」


    数は15程度、少し遊んでやるか。


    5人ほどの兵士が同時に詠唱を唱え、炎、風、そして雷をそれぞれ孕んだ槍状のモノを投擲する。


    向かってくるソレを見据える俺はその5人を先に始末すべく、包囲網を突破し、駆ける。


    元々奴らに対して深い憎悪が、右の手に持つ剣の斬れ味を増大させる。
    ある程度距離の縮んだ投擲された魔術槍を斬り捨て、速度を落とす事無く駆け抜ける。


    「なっ!?魔術破壊(スペルブラスト)だと!?アレは高度な技術を用いる筈だぞ!?」


    「おいっ!気を抜くなっ!奴はそこまで来てるぞっ!」


    「ッ!!」


    エレン「まずはテメェらだッ!」


    「くっ!うぉぉぉおおっ!」


    「はァァァああっ!!」


    エレン「いいねぇ、そういう闘争心は嫌いじゃねぇぜ。けどな──」


    ───温すぎるんだよ。



    「い、一瞬で、首がっ・・・」


    エレン「どうした?さっきまでの威勢は何処にやった?まさか怖気付いてるわけじゃねぇよなぁ?天下の兵士だもんなァ!?」
  10. 11 : : 2020/01/28(火) 07:43:06
    数十分後


    エレン「・・・・・・手こずらせやがって」


    彼の下に転がる15の死体・・・それはとても見ていられるものでなく、夥しい程の血の溜まり場だった。

    紅く煌めく妖刀と、彼を覆う薄黒いオーラの様な影、それが死神を彷彿とさせる様子だったのもあり。それを見る気の強い村の男達は何か言いたげな眼をしてこちらを見つめていた。


    転がる死体を骨の髄まで灰になるまで焼き尽くし、妖刀の切っ先を血溜まりにそえると、鮮血はみるみる刃に吸収されていき、ここで兵士が惨殺されたという証拠は完全に無くなった。

    証拠隠滅という後始末を終えた彼は、村を出ていくと村長に伝える。これ以上村に迷惑をかけるわけにはいかないと。


    村の門を出ようと足を踏み出すと、1人の女が、先程家に入れてくれた家主が肩で呼吸をしながら追ってきた。


    女性「あの、はぁはぁはぁ、村を出る前に、お聞きしたい事が、はぁはぁ」


    エレン「何だよ、せっかくの機会だ。なんでも答えてやる」


    女性「貴方の名前と、どうしてそんなに強いのか。それをお聞きしたくて」


    エレン「そうだな・・・この力は親父とお袋、それから、俺を大事にしてくれた人から受け継いだ力。かな」


    哀愁漂う表情で俯き、歩みを進めるエレンに女は声を掛ける


    女性「あの!せめてお名前を!どうか!」


    エレン「名は、エレン」


    ──ただのエレンだ。


    振り向く事無く名乗った彼はゆっくりと宛の無い旅へと歩を進めた。


    女性「あ、ありがとうございましたっ!!!」


    彼女の感謝の言葉に対し、彼はボソりと聞こえない声量で呟いた。


    エレン「別に、感謝されるような事はしてねぇ。ただ、自分の憎しみをぶつけてただけに過ぎねぇさ」


    この先、彼女達と出会う事は無いだろう。
    自分と関わったとしても、その応酬はとても喜べるものでは無いからだ。


    エレン「なぁ、親父・・・お袋、桜。俺のやってる事って、正しいのかな」


    ───もう、何をどうしたらいいのか分かんなくなってきたよ。
  11. 12 : : 2020/01/28(火) 08:16:44
    聖暦845年 王都ミットラス


    その日、王都ミットラスの更に奥にある王宮・レイス家の邸は慌ただしい雰囲気に包まれていた。第一王女・フリーダが風邪を引いて体調を崩し床に伏せているらしいのだ。


    フリーダ「たかが風邪くらいで騒がなくても・・・」


    「仕方ないよ・・・お姉ちゃんは次期皇女。この国の王様になるんだから体調管理はしっかり気にかけておかないと。はい、林檎剥けたよ」


    フリーダ「ありがと、ヒストリア。ごめんね」


    ヒストリア「ううん。気にしないで、私もお姉ちゃんが心配だし、何より。お姉ちゃんの部屋、心地良いから」


    愛らしい笑顔でフリーダを見るこの少女の名前はヒストリア・レイス。レイス家の娘でありフリーダの妹。つまりは第二王女にあたる。

    そんな彼女はフリーダの部屋にて看病を行っていた。


    フリーダ「出来た妹を持つとは、私は幸せ者だね〜。幸せ過ぎて死んじゃいそう〜」


    ヒストリア「冗談でもやめてよ。妹として当たり前の事してるだけだから」


    フリーダ「それが出来た妹って言うのよ〜ほらこっちおいで。撫でてあげるからさ!ほらほら」


    ヒストリア「は、恥ずかしいから止めてよ」


    フリーダ「ヒストリアは可愛いね〜。所でさ、話を変えるけど。例の兵士達、まだ帰ってきてないの?」


    先程までニヘラ〜と笑みを浮かべていたフリーダは真剣な表情で窓を見て、ヒストリアに問う。


    ヒストリア「うん、村の巡回に向かった約15名の兵士が消息を絶ってるって報告を受けてるよ」


    フリーダ「そっか、村の人達に聞いてみたりもしたのよね?」


    ヒストリア「うん。でも、どの村に話を聞いても知らないって。でも、ある村の女の人に聞いたの。そしたらね───」


    フリーダ「・・・・・・!!!!」


    ヒストリアの口から語られし事実。それはフリーダの表情を驚愕に染めるのには容易い内容であった。


    フリーダ「うそ・・・・・・あの、“彼”が?」


    ヒストリア「うん。私が聞いたから間違いないよ。巡回に向かった15人の兵士は」


    ───紅く煌めく妖刀を携えた黒髪の旅の方に斬られた。


    フリーダ「そう・・・・・・ヒストリア。イェーガー夫妻の事は知ってる?」


    ヒストリア「え?うん、もちろん。名前のない村に住んでいた2人の事だよね?」


    フリーダ「そう、じゃあ。その2人の息子の事は聞いた事ある?」


    ヒストリア「うん、あるけど。具体的には」


    フリーダ「報告を聞く限り、紅く煌めく妖刀に光を包む黒い髪、そして綺麗な金の瞳を持った男が兵士を斬ったとあるわね?」


    ヒストリア「うん、それがどうしたの?」


    フリーダ「その女性が言ってる旅の方という人物こそ、イェーガー夫妻の一人息子。“エレン・イェーガー"兵士そのものにただならぬ憎悪を持つ者よ」


    ヒストリア「──兵士そのものに対する憎悪?」


    フリーダ「私自身、彼の事は詳しくは知らないの。けど、1度彼と戦った事があったの」


    ヒストリア「お姉ちゃんと!?」


    フリーダ「えぇ。戦ってる時に分かったの、いや。気付いたって言うのが正しいのかな」


    表情を暗くしていたフリーダはその表情をどこか悲しげにさせて呟いた。


    フリーダ「彼の中にあるのは憎しみや怒りなんかじゃない。とても深い悲しみ。彼の持つ剣からは悲しみしか感じ取れなかったの」


    ヒストリア「・・・・・・・・・・・・」
  12. 13 : : 2020/01/28(火) 18:29:24
    南方訓練所 食堂


    「ねぇ、聞いた?ミカサ。この前、兵士が15人くらいが行方をくらましたっていう事件」


    ミカサ「アルミン、食べながら話しちゃダメ。行儀が悪い」


    アルミン「あぁ、ごめんごめん」


    「聞いたぜ、俺もその事件」


    アルミン「ライナー、ベルトルト、君らはどう思う?この事件」


    ライナー「さぁな、その事件は外の世界で起こったことなんだろう?毎日訓練に明け暮れている俺達は確認の仕様がないさ」


    ベルトルト「紅く煌めく妖刀、黒い髪、金色の瞳。特徴は聞いた事はあるけど、僕には何とも」


    2人がそれぞれ意見を話した所で、アルミンは再び支給されたパンに齧り付く。


    ミカサ「昔、聞いた事がある」


    アルミン「昔って?」


    ミカサ「まだ私とアルミンが出会う前。噂に聞いた事だから確証を得てはいないけれど、名前のない村の事を知ってる?」


    ライナー「あぁ、もちろんだ。このエルディア王国とマーレ公国の境目にある小さな村だろ?」


    ミカサ「そう。その村で、1つの家族が殺されたという話を聞いた。それも、1人の子供を残して」


    ベルトルト「なんて酷いことを・・・」


    ミカサ「その子供が今どこで何をしているのかは分からない。それに、紅く煌めく妖刀・・・何処かで聞いたような、聞かなかったような・・・そんな気がする」


    アルミン「この事を考えていても仕方ないよ。ほら、そろそろ時間だし、集合に遅れないように急がなくちゃ!」


    アルミンの言葉を境にその話は終わりを迎えた。
    彼らは知らない、今から半年後。その1人の子供という人物に出会う事を。


    ─────────。


    集合場所に全員が集まったと見たスキンヘッドの男・キースは声を上げる。


    キース「皆、揃ったようだな。此度の訓練は、王都ミットラスより、第一王女が見学に来られる!呉々も粗相の無いように行動しろ!訓練メニューはいつも通りだ!さぁ!訓練開始だっ!」


    キース。キース・シャーディス。
    人一倍高い観察能力を持つ、過去に“岩窟のキース”という異名を持っていた現役を引退し、教官という役柄に落ち着いた厳しい人物。


    キース「どうしたこのノロマ共!その程度では魔物共に喰われて終わりだぞ!!それとも、自ら奴らの餌になるかっ!?」


    こうして発破を掛けて挑発し、兵士となるべく小さき芽を育て上げていくという重要な役を任されている。


    キース「ふむ。中々良い、アッカーマンを筆頭に良い成績を残している者が多いな。これなら、魔族への対抗もより強固なものとなるだろう」


    キース「特にアルミン・アルレルト。体力や筋力は平均以下という兵士として絶望的ではあるが、その分を自身の頭脳でカバーしている。身も心も成長すれば化けるな」


    フッ。と笑みを浮かべるキースは背後より感じる気配を察知し、振り向き様に声を掛けた。
  13. 14 : : 2020/01/28(火) 18:37:42
    キース「お待ちしていました。第一王女」


    フリーダ「ごめんなさいね、思ったより馬車の進みが悪くて、少し遅れちゃった」


    キース「いえ、そんな事はありませぬ。して、此度は見学に来られたという事でありますが?」


    フリーダ「そうね。貴方の指導する生徒は如何なものかなって思ってね。それに、気にかけておきたい子も居るしさ」


    キース「貴方の妹君であれば多少ながら遅れを取ってはおりますが、強い精神を持って日々励んでおります」


    フリーダ「そっか、なら安心」


    微笑んで妹の存在を確認したフリーダはその笑みを更に和らげた。


    フリーダ「ふふっ。あなたの言う事も、あながち間違ってないね。ヒストリアったら、あんなに息を切らして」


    キース「ここにいる以上は私の生徒です。妹君だけを特別扱いするわけにはいきませぬ故、お許しを」


    フリーダ「あー。怒ってないから、その辺は気にしないで」


    キース「お聞きしました。1年半前、グリシャの息子と出会ったと」


    突然の彼の話に度肝を抜いたフリーダであるが、すぐさま表情を戻して、口を開く。


    フリーダ「あぁぁぁ。うん、会ったよ」


    キース「奴は、やはり?」


    フリーダ「そうだね。当たり前と言うべきか・・・兵士に対して酷い憎悪と怒りを抱えていたよ。あの尋常じゃない殺気、ヒストリアの様なか弱い女の子には受けられない」


    フリーダの話を聞くキースは、少しばかりか表情を暗くして、自分が知るあの日の出来事を軽く語る。

    キース「そうでありましょうな・・・奴は、グリシャの息子は人一倍思いやりの出来る子供であった。家族への愛情も深かった。そして何より──」


    キース「兵士に対して憧れを持っていた」


    目を瞑って空を仰ぎ、重々しく言葉を紡ぐキースの顔は後悔の念に包まれていた。


    キース「止められなかった。止める事は愚か、話を聞いてすらくれなかった。それ故、グリシャとカルラを助ける事が出来なかった」


    フリーダ「貴方のせいじゃない。これは私達レイス家の責任でもある。名前のない村・・・あの村はこの国とマーレ公国の境目にある、無闇矢鱈に近付けば村の人達の安寧が崩れてしまうかもしれない」


    震える身体、握り締める拳、やり場の無い悲しみ。それらを抱える彼女の姿は王女というより、1人の少女と言っても過言では無かった。


    フリーダ「それを恐れた臆病者の私達レイス家は、止める事が出来なかった。だからこそなんだよ・・・私は彼の抱える感情を、怒りを憎悪を・・・・・・悲しみを取り除いてあげたいの」


    例えそれが彼にとって邪魔でしか無い余計なお世話だったとしても。噛み締めるような言葉を並べる彼女の今の姿こそ、王女の名に相応しい。


    フリーダ「なんて・・・・・・こんな事並べておいて。初めて会った時に絆されちゃった私が言えることじゃないけどね」


    あはは・・・・・・。と苦笑する彼女は寄る場所があると伝えてその場を離れた。

    その場に残ったキースは今も尚、訓練メニューをこなしている者達を見据えて、心で彼女に語り掛ける。


    ───きっと、貴方なら出来る。


    そしてキースは声を荒らげた。


    キース「遅いぞっ!!そんな程度では到底一人前の兵士になどなれるものかっ!ペースを上げろっ!!」
  14. 15 : : 2020/01/29(水) 06:35:51
    ある程度の見学を終えて訓練所を離れたフリーダはある場所へ向かっていた。

    それは、とある喫茶店。
    あの“人類最強”と謳われるリヴァイの舌を唸らせたと言う程の美味な紅茶や珈琲を扱っていると専らの噂。

    そんな場所に、第一王女たるフリーダは何をしに来たのか。

    それは、エレンの父・グリシャと友人関係にあったハンネスという男に用があったからだ。


    フリーダ「ご、ごめんください。ハンネスという方は居ますか?」


    ハンネス「これはこれは、第一王女様。如何様で?」


    フリーダ「貴方がハンネスさん、ですか?実は、聞きたい事がありまして」


    ハンネス「聞きたい事ですかい?えぇ、答えられる範囲なら何でも」


    フリーダ「彼・・・エレン・イェーガーの事についてです」


    ハンネス「───。へぇ、エレンの」


    一瞬だけ眼を見開いたハンネスだが、即座に険しい表情で彼女を見つめる。


    フリーダ「彼の御両親については父から聞いています。兵士に対して激しい怒りを抱えている事も」


    ハンネス「そこまで知ってるなら充分なのでは?」


    フリーダ「以前、彼と相対した事があるんです。その時、彼の剣を通して伝わって来たんです」


    ハンネス「・・・・・・・・・」


    フリーダ「あれは怒りとか、憎しみとか、そんなじゃない。絶望、不安、悲しみ。そういったものでした。私知りたいんです。彼が今までどんな人生を歩んできたのか、どうしてあんなにも兵士を憎んでいるのかを・・・!」


    ハンネス「・・・・・・」


    彼女の意思を感じたハンネスはこの人なら、エレンを・・・・・・と、可能性を感じ、静かに口を開いた。


    今から約10年以上前──。
  15. 16 : : 2020/01/29(水) 07:15:29
    このエルディア王国とマーレ公国の境目にある小さな村。

    そこは名前のない村と、周囲にはそう呼ばれていた。そんな村にある家族があった。


    「エレーン!そろそろご飯出来るわよー!」


    エレン「おはようかあさん。とうさんは?」


    カルラ「グリシャなら、診療所に向かって仕事に行ったわよ」


    エレン「そっか、じゃあさ!とうさんが帰ってくるまで勉強教えてよ!かあさんの教え方上手いからよく頭に入るんだよ!」


    カルラ「まぁ!嬉しい事言ってくれるじゃないっ!良いよ、朝ごはん食べたら、教本とペンを持ってくるのよ?」


    エレン「分かった!いただきます!」


    彼らはごくごく普通のどこにでも居る家族だ。
    村の人達からはその村で1番幸せそうな家族だと、一目を浴び、影響力も高かった。


    「おや、エレンくん。カルラさんの授業は終わったのかい?」


    エレン「おはよう、おねえさん!これから頼まれた買い出しに行くとこ!」


    「エレンくんは偉いなぁ。うちの息子も見習って欲しいくらいだよ」


    エレン「おにいさんとこの息子さん、根はいい子の筈だからさ、きっと今は恥ずかしいだけなのかもよ?」


    「ははっ!そうかもな!おっと、買い出しに行くんだったね。馬車を用意するから乗ってくかい?」


    エレン「良いの!?お願いします!」


    エレンは村の人達への思いやりがあり、村の子供たちからも人気があった。中にはスキンシップと名乗って抱きついたり、頬に唇を当てる女の子も居た程に。

    そんな様子を見る男の子達も、彼のような気の利いた偉くてカッコいい男の子になりたいと、嫉妬することは無かった。


    「今日は何を頼まれたんだい?」


    エレン「えっと、お肉と野菜、それから魚だったかな。あ、あとは小さな釘も頼まれてたっけ」


    「怪我しないように気を付けるんだよ?」


    エレン「うん、わかってる!怪我したらかあさんに心配かけちゃうしね!」


    親思いで村の人達に優しく、それに賢い。
    大人から子供、更にはお年寄りに至るまでエレンは村の人達に厚意に接してくれるなど、かなり恵まれた環境に産まれた。


    エレン「ただいま〜」


    グリシャ「おかえり、エレン。頼んでいた釘は買ってくれたか?」


    エレン「もちろん!この袋の中に・・・・・・あ、あれ?」


    ゴソゴソと袋に手を入れて釘を探すエレンだが、買ったはずの釘が見つからない。
    焦りを見せるエレンはそこで気付いた。


    エレン「も、もしかして!普通に買い忘れたっ!?」


    グリシャ「ははは、エレンはおっちょこちょいだな。よし、一緒に買いに行くか?」


    エレン「えっと・・・怒らないの?」


    カルラ「買い忘れのドジを踏んだだけで怒るなんて無いわよ。ほら、2人で買いに行ってきなさい。夕餉を用意しておくから、ね?」


    エレン「う、うん。ありがと」


    グリシャ「ほら、エレン」


    エレン「! 行ってきます!」


    カルラ「行ってらっしゃい」


    本当に彼は恵まれていた。この村以外の人達が羨む程に。
    ある日、彼の下にある一通の手紙が送られる。


    エレン「手紙?誰からだろ」


    エレン「えっとなになに?・・・・・・お前の大事な教本を盗んだ。返して欲しければ手紙に書かれた場所まで来い?嘘だー、教本は大事に部屋な本棚に置いてあるんだ、そう易々と盗まれるわけないだろ?」


    半分誰かの嫌がらせだと思って自分の部屋まで確認しに行くエレン。
    しかし、この手紙の内容は本当の事であった。


    エレン「教本がなくなってるぅぅぅ!?──じ、じゃあ、この手紙。ホンモノ?」


    溜め息をついて、手紙に記された場所までエレンは向かった。これから起こる出来事も知らずに・・・。
  16. 17 : : 2020/01/30(木) 02:38:33
    「お、キタキタ」


    エレン「教本返せよ!それ大事なもんなんだ!」


    「人にモノを頼む時って、どうすんだっけなぁ?“恵まれ者”は分かるよなぁ?」


    1人の子供がそう言うと、隣に居る子供もまた口を開く。


    「へっ!『その教本を返して下さい、お願いします。何でもしますから』って言ってみろよ!」


    エレン「───ッ!」


    ギャハハハッ!と笑いを立てる複数の子供達は、エレンが大事にしている教本に泥を被せたり、水で濡らしたりと、それはそれは酷いことをしたそうだ。


    エレン「言うからっ!それ以上汚さないでくれ!」


    「へぇ?」


    エレン「お、お願いします・・・その教本を返して下さい。な、なんでも、します──からっ!」


    僅かに沈黙が訪れ、そして聞こえたのは。


    「ブッ!ぷっ、ククク、アハハハハッ!!!」


    「マジで言いやがったぜコイツっ!誰も返すなんて言ってないのに!」


    無様に頭を地に付けて、土下座をして懇願するエレンを嘲笑う声だった。


    エレン「 」


    絶句するのも当然だ、あれ程言えば返してやると言ってるのと同じ事を言っておいて自分を嘲笑うのだ。子供たちには見えないが、エレンの表情は真っ青に染まりきっていた。


    「そこまで言うなら返してやるよ、ズタボロに引き裂いてからなっ!」


    その言葉を聞いたエレンは即座に汚された教本を奪い取る。


    「あっ!!何すんだお前っ!」


    エレン「これはかあさんから貰った大切なモノだ!それを引き裂かれる悲しみがお前たちに分かってたまるかっ!!」


    「うるせぇっ!!」

    1人の男子の蹴りがエレンの腹を襲う。


    エレン「──グッ!?」


    ドサッ。と、膝を付き嘔吐きながら睨みを利かせると、直ぐに後ろから前に蹴り倒される。


    エレン「あぐっ!!───ッ!」


    エレンは必死に教本を抱える。例え自分が傷付いても・・・母親から貰った命と同じように大事な物を守る為に。

    そうして、およそ5人の男子から踏んずけるように蹴りをエレンは喰らい続けた。

    男子たちが吐く罵詈雑言と同時に・・・。

    ムカつく、お前なんか居なくなればいい、恵まれない自分たちの気持ちなんかお前には分からない、さっさと居なくなれ。

    雨のように降り掛かる罵詈雑言や蹴りを受けても、エレンは教本を離そうとはしなかった。


    「もう行こうぜ、こんな奴に構ってても意味ないし」


    気が済んだのか、子供らはその場を去る。
    残されたエレンは、呼吸をしているものの、意識が無い。つまり、気絶していたのだ。


    その後、帰りが遅いエレンを心配する両親は、捜索を開始、気絶したエレンをカルラが見つけた後、グリシャの言葉のもと、診療所へと運ばれた。
  17. 18 : : 2020/01/30(木) 03:06:51
    名前のない村 診療所


    エレン「」


    カルラ「グリシャ!エレンの容態は!?」


    グリシャ「落ち着いてカルラ。命に別条はないから心配無い」


    グリシャの優しい言葉にカルラはエレンが横になるベッドの傍らで涙を流す。


    カルラ「良かった・・・・・・エレン。どうしてこんな」


    グリシャ「身体に異常は無いかも診た。骨折などは無かったが、背中全体に踏みつけられたような打撲痕が微かにだが複数見つかった」


    カルラ「──!?」


    グリシャ「少なくとも5週間は療養させないと、綺麗に治らない」


    カルラ「そう・・・・・・でも、命に別状は無いのよね?」


    グリシャ「あぁ、私が診たんだ。信じてくれ」


    カルラ「・・・・・・エレン。意識戻るかしら」


    悲しい表情のカルラはエレンの髪を撫でながら手を握る。グリシャもまた、彼女の反対側でエレンの手を握った。


    グリシャ「誰にでも優しく礼儀正しいこの子が・・・・・・一体なぜ、こんな目に遭わなければならないんだ」


    カルラ「この子、私があげた教本を大事そうに抱えてたのよ・・・・・・きっと何かあったんだわ」


    グリシャ「・・・・・・・・・」


    それから1週間。エレンの意識が戻る事は無かった。事情を聞いた村の人達も、子供達も、エレンが意識を戻すまで、暗い表情のままだった。


    2週間が経過した昼間のこと。


    カルラ「? エレン?」


    エレン「っ──」


    カルラ「───!!」


    エレン「・・・・・・かあ、さん?」


    カルラ「エレン・・・!意識が戻ったのね!少し待ってて、今グリシャ呼んでくるから!」


    バタバタと個室を出て、カルラはグリシャの元へ走った。暫くすると、両親揃って個室に入ってきたのをエレンは確認した。


    グリシャ「エレン!目が覚めたか!ここが何処か分かるか?」


    エレン「ここは・・・しんりょうじょ?」


    カルラ「そう、良かった。目が覚めて!」


    エレン「かあさん、なんで泣いて───ッ!?」


    グリシャ「エレン、まだ背中の打撲が完治してないんだ。今、じっとしてなさい」


    起き上がると同時に痛みに苦しむエレンを、グリシャはそっとエレンを横に寝かせる。


    カルラ「あなた、あの丘でコレを抱えて気絶してたの。覚えている範囲なら何でもいいの。教えてくれる?」


    エレン「き、ぜつ。・・・・・・そっか、俺、気絶してたんだ」


    グリシャ「エレン、あの丘で何があったのか。教えてくれるな?」


    エレン「うん・・・・・・実は───」


    エレンはありのままの出来事を心配そうな表情をする両親に話した。母カルラはエレンの手を握り、頷きながら話を聞く。父グリシャは険しい表情で話を聞いていた。


    グリシャ「つまり、知らない間に教本が盗まれていて、陽を浴びに外に出た帰りに手紙を見たら」


    カルラ「あの丘で男の子が待ってるって書いてあったのね?」


    エレン「うん、俺の部屋に手紙があるはずだから、それを見て貰えれば」


    事情を聞いたグリシャはカルラに朝食を食べさせて待っていてくれと一言言って、エレンの部屋へと手紙を取りに向かった。


    グリシャ「エレンの言っていたことは事実か・・・あとは手紙の差出人と、あの子に手を加えた子供たちを突き止めるだけか」
  18. 19 : : 2020/01/30(木) 06:39:04
    グリシャの考えは的中した。
    恵まれた環境に産まれたエレンに嫉妬した子供らが、エレンに暴行を加えた。

    危害を加えた子供は親の同伴のもと、名前のない村へ訪問。エレンが療養する部屋まで赴いた。


    「すみません、イェーガーさん。うちの息子が」


    カルラ「ほら、エレン?こうして遠路遥々謝罪に来てくれたんだから、そろそろ機嫌直して。ね?」


    エレン「別に俺を蹴った事については怒ってないよ。でも・・・・・・」


    俯くエレンの表情を汲み取るカルラは頭を撫でながらある提案をする。


    カルラ「教本なら綺麗にしてあげるから、それなら文句は無いでしょ?」


    エレン「・・・・・・・・・」


    「そうやって恵まれておいて、何平気な顔して──」


    「こらっ!!失礼な事言わないのっ!!」


    カルラ「エレン・・・・・・」


    エレン「かあさん。ホントに綺麗にしてくれる?」


    教本は貰った一冊しか無い。藁にもすがる思いで母の顔を見やる。
    すると、カルラは笑みを浮かべて「もちろん、シミの一つも無くしてあげるわよ?」と優しく伝えると。


    エレン「かあさんに免じて許す。けど、次やったらお前ら5人の大事な物ってのをぶっ壊すからな」


    カルラ「エレンも納得してくれたようですし、わざわざ謝罪に訪問してくれてありがとうございました」


    「いえいえこちらこそ、許して貰えてありがとうございます!ほら、行くよ!」


    見送りを終えたカルラは再びエレンのもとで教本の掃除へ取り掛かる。


    エレン「結局・・・余所者は余所者か」


    カルラ「エレン・・・・・・」


    エレン「平気な顔してんのはどっちだよ・・・」


    カルラ「・・・・・・・・・」


    エレン「あんな奴ら・・・兵士に叱られちゃえばいいんだ」


    その日を境にエレンの余所者に対する嫌悪感は表へ出るようになっていった。
    それと引き換えに、兵士への憧れも強くなっていた。

    それからというもの、打撲が完治してから数年が経過。エレンの歳も10を超えた。


    グリシャ「エレン、今日から本格的に剣術の手解きを教えよう。所謂稽古というやつだな」


    エレン「マジ!?」


    カルラ「えぇ。私もそろそろ魔術についても色々と伝授しようかなって思ってたところだし」


    エレン「おおおお!!!」


    グリシャからは剣術を、カルラからは魔術を教わるようになった。


    グリシャ「剣にも色々な流派があるが・・・まずはそうだな。いきなり流派だとかを教えるよりも、自分の好きなように剣を打ってこい」


    エレン「分かった!」


    カンッ、カンッ、と木刀が交わる音が庭中に響く。


    エレン「たぁっ!──ふっ!、せぇいっ!」


    グリシャ「・・・・・・・・・・・・」


    ────なるほど。動きに無駄が多いがこの太刀筋・・・どれにもハマらない動き。これがエレンの剣か。ふっ、成長が楽しみだ。


    いとも容易くいなしながら、内心喜びを感じるグリシャは微かに笑みを浮かべる。
    離れた位置でその様子を見ているカルラもまた笑みを浮かべた。


    カルラ「グリシャ、楽しそうね。エレンも何だか楽しそう。さて、お昼ご飯用意してこなきゃね」






    エレン「だぁぁっ!!」


    グリシャ「その調子だっ!しかしまだまだだ!」
  19. 20 : : 2020/01/30(木) 07:12:50
    カルラ「いい?魔術というのは、精神が安定した状態じゃないと、適正な威力は出ないの。つまり、戦闘中は常に冷静で居られる事が大事な事よ」


    エレン「ふむふむ」


    カルラ「魔力量が多かったとしても、人にも蓄えられる限界がある。その許容量を超えてしまえば、内側から身体が破壊されて、最後には魔力の過剰備蓄で死んでしまうなんてこともある」


    エレン「つまり、その許容量をより多くする為に、日々体力を付ける事が大事って事になるの?」


    カルラ「その通り。魔力の許容量はその人その人の体力に比例してより多く、限界値も高くなる」


    エレン「なるほど」


    エレンはカルラの話した事の大事なポイントを絞り、ペンで紙にメモしながら熱心に聞いている。


    カルラ「さて、基本的な事を教えた所で。次は魔術について色々教えていくわよ」


    ───遅れるんじゃないよ〜?


    エレン「了解!」


    ならばよし!とカルラが言った所で本格的な授業が始まった。それと同時にエレンもペンを取り、メモの準備をする。


    カルラ「魔術にも色々種類があるの。攻撃、防御、援護、回復、拘束や移動に至るまで、魔術を行使するには幅広い智慧が必要な事についてはもう知ってるわね?」


    エレン「うん、どの種類の魔術にも更に細かく種類が分かれてることも知ってる!」


    カルラ「なら上出来!今から教えるのは、魔術のランクについて」


    エレン「ランク?」


    カルラ「そう。魔術にもEランクからSランクまで種類分けされてるの」


    エレン「EからSまで・・・」


    カルラ「威力が低いけど魔力消費がが1番少なくて技術も差程必要ないEランクから、D、C、B、A、Sという順番で必要とされる魔力消費も技術も多くなるし高くなるの」


    エレン「つまり、自分の魔力量を考えながらって事になるのか。魔術ってなんか難しそう」


    カルラ「確かに、私も最初は全く出来なかったし、練習を継続する事でより簡単になれる。エレンもきっと大丈夫」


    エレン「あ、話の腰折っちゃった。母さん!続き!」


    カルラ「そんなに慌てないの。ある程度話し終えたら次は実践に移るから、それまで頑張るのよ?」


    エレン「俄然やる気出てきたーっ!」


    カルラ「ふふっ。これから教えるのは───」
  20. 21 : : 2020/01/30(木) 07:44:06
    それから1年。


    グリシャ「エレン、もうお前に教えられる事は全て教えた。今日は、私から1本取れ」


    エレン「もう、そこまで来たんだ」


    グリシャ「そうだ、それ程までにお前は強くなった。我流とは言え、私がアドバイスした事を忘れずに全てを私にぶつけてこい」


    エレン「父さん・・・・・・分かった」


    グリシャ「ふっ。あんなに幼かったお前がここまで逞しく成長するとはな」


    エレン「父さんや母さんの教えの賜物さ。さ、早く始めようぜ、父さん」


    グリシャ「──!!そうだな。お前の思い、剣を以て俺に伝えて見せろ!」


    2人の周囲を風が吹き抜ける。その風は肌に優しく、そして穏やかで暖かい。


    グリシャ「・・・・・・・・・・・・」


    二人の間をヒラヒラと2枚の花弁が落ちる。


    エレン「・・・・・・・・・・・・・・・」


    花弁が地についた時が開始の合図。


    グリシャ・エレン「・・・・・・・・・・・・」


    静かに花弁が舞い落ちし時、戦いは始まった!



    数え切れない程交わる剣撃、カンッ!カンッ!と力を増したその音は、エレンが成長した事を耳へと知らせて来る。


    グリシャの振るう木刀をいなし、弾き、返し、時には力を受け流しカウンターをも仕掛けてきたエレンにグリシャは驚いた。


    グリシャ「───。」


    剣を通じて、息子の思いが伝わってくる。思いを乗せて振るわれる太刀筋は鋭く、そして重い。

    試合が始まって十数分が経過し、大いに満足したグリシャは今までの中でも一番強い太刀筋を上から降ろした。


    エレン「!──ッ、ぐぅっ!!」


    上から来たソレを受け止めた瞬間、重みの増した太刀筋に驚愕する。


    父の剣は、これ程までに重いのか。と

    しかし、ここで負けるわけにはいかない。決めるのは今しかない。ここで決めずしていつ決める。


    エレンは重い一撃を受け流し、父の体勢を崩す。そのままの勢いで押し返し、力の限りを以て父から木刀を弾き飛ばした。


    グリシャ「───!!!」


    エレン「ここだぁぁぁっ!!!!」


    グリシャ「・・・・・・・・・・・・」


    グリシャは負けを覚悟した。そうして瞳を静かに閉じる。一本を取った証の衝撃が来ることを信じて。


    グリシャ「───?」


    エレン「やっぱり、父さんから1本は取れないや。父さんには、俺よりも強い人で居てもらわないと!」


    グリシャ「ふっ、くくくくっ。アッハッハッ!全くお前と言うやつは!どこまで親思いのいい子なんだ!」


    エレン「わっ!ちょっ!そんな乱暴に頭撫でないでくれよっ!」


    グリシャ「照れるな照れるなぁ!アッハッハッ!」


    エレン「か、かあさーん!父さん止めてー!!」
  21. 22 : : 2020/01/30(木) 08:08:56
    ハンネス「これが俺の知るエレンの人生。エレン本人から聞いた歩んできた道だ。あとの事は、知ってる通り。憧れていた兵士に命よりも大切だった両親を殺された」


    フリーダ「そう、だったんですか」


    ハンネス「まぁ、あと一人。アイツと関わりのある人が居たな」


    フリーダ「! その人は今どちらに!?」


    ハンネス「さぁ。俺もアイツに聞いては見たけど無言を貫いて教えちゃくれませんでしたね」


    フリーダ「そう、ですか」


    ハンネス「さて、これで俺が知ってる事は全部お話しましたが、どうでしたかい?」


    フリーダ「変わりません。変わるどころか、より一層想いが強くなりました。私、絶対に彼を悲しみから救います!」


    ハンネス「へっ。そうですかい。なら、景気付けに紅茶などは如何です?うちの美味いって評判でね」


    フリーダ「では、紅茶を」


    ハンネス「かしこまりました。少々お待ちを」


    ハンネスが作業に取り掛かると同時にフリーダは再び決意を固める


    フリーダ「絶対に・・・・・・」


    ───待っててよね。エレン・イェーガー。必ず貴方を悲しみから救ってみせるっ!!



    その頃、話の話題となっていたエレン・イェーガーはマーレ公国にてある人物と会おうとしていた。



    「貴様、何者だ。無断で入宮しようなど言語道断」


    エレン「あー。ここにジーク公は居るか?せっかくマーレ公国に赴いたんだ。公国の象徴に挨拶しないのは失礼だろ?」


    「・・・・・・まぁいい。少し待て」



    マーレ公国 拝謁の間


    「何やら異母弟(おとうと)の気配がするな」


    「ジーク様!」


    ジーク「どうした!」


    「ジーク様にご挨拶したいと申す者が!」


    ジーク「分かった、ここまで通せ」


    「御意っ!」


    ジーク「さて、何をしに来たのかね。俺のエレン(おとうと)は」
  22. 23 : : 2020/02/02(日) 02:20:32
    ジーク「エルェェェンッ!!!会いたかったぞーッ!!」


    エレン「・・・・・・・・・変わんねぇな。そのブラコン精神」


    無造作にワシャワシャと頭を撫で回すジークを尻目にエレンは冷たい視線を送る。


    ジーク「エレン、そろそろうちの国で正式に暮らす気はねぇか?好待遇させてやるからさっ!なっ!?」


    エレン「生憎、村の連中の処遇が決まってない。未だに俺の故郷は中立区域になってるらしいじゃねぇか」


    ジーク「あー。色々と難しいんだ。エルディアの連中に動きがない以上、無闇矢鱈に動きを見せれば村に危害が及ぶ可能性もある。だから現状何も出来ないんだよ」


    エレン「魔獣共が蔓延る今となってもか?双方国のお偉方は呑気らしい」


    鋭く睨み付けたエレンを軽く流してやる。


    ジーク「だからこそだよ。魔獣共がうじゃうじゃといる今だからこそ、下手に動けない。村の人らをこっちに移動させてる時に気付かれて数が多い奴らに襲われでもしたら精強とは言え、うちの騎士でも守れるかは保証出来ん」


    エレン「・・・・・・・・・」


    ジーク「そこでだ。一つ提案があるんだけど、聞いてくれる?」


    エレン「なんだよ・・・変な事だったら聞かねぇぞ」


    ジーク「だぁいじょうぶだっての!」


    1つ咳払いしてジークは真剣な眼差しで口を開く。


    ジーク「お前の大事な村の連中はうちの国が絶対に保護してやる、絶対にだ。代わりに条件がある」


    エレン「条件?」


    ジーク「正式に、うちの王族として生活する。衣食住、メイド若しくは執事の世話付き、1人にする時間だっていくらでもお前の言う通りにさせる」


    エレン「───!!」


    ジーク「お前がエルディア王国に居るハンネスの爺さんに思い入れがあるのは重々知ってる。けどよ、ハンネス爺さん以外の奴らはどうしても信用出来ん」


    エレン「正気か?俺は向こうの国王直々に娘の婿に来いと散々言われてきた身だ。おまけにその娘には大変ご執心されてる。もし俺がこの話を受ければ間違いなく」


    ───争いになるぞ。


    ジーク「俺は可愛い弟を婿に出す許可は出してねぇんだけど!?」


    異母兄が騒ぎ出しても尚、エレンは表情を崩さずに話を続ける。


    エレン「今は魔族の奴らが復活して停戦関係にある。争いになればこの国も、エルディアも手薄になった隙を突かれるぞ」


    歳16にしてこの思考の持ち主、ジークは思わず内心驚いた。いや、驚く他になかったと言うべきか。


    ジーク「・・・・・・見ない間に、賢くなったもんだな。母親の教育のおかげか?」


    エレン「・・・・・・・・・」


    ジーク「確かに、お前の言ってる事は正しい。けど、こっちに来れば・・・ある人物に合わせてやる」


    エレン「?」


    ジーク「──レイナ・フィールベルア」


    エレン「なっ・・・!?」


    ジーク「幼き日よりお前の事を好き好んで慕って来た知らない人間は居ない聖女。覚えてないわけは無いよな?」


    エレン「・・・・・・本気、ってわけか」


    ジーク「あぁ、村の連中の安全も、聖女の安全も俺が保証してやる。だからよ」


    ジーク「こっちに来ねぇか?」


    エレン「・・・・・・・・・」


    “レイナ・フィールベルア”

    両親を亡くし、桜をも失ったエレンに心から寄り添った今や知らぬ人間は居ないとされる聖女。その彼女の存在を知るジークはどうやら本気でエレンをマーレ公国の王族として引き入れたいらしい。


    顔を俯かせたまま暫く黙り込んだ後、エレンは意を決した表情でジークへ視線を向けた。


    エレン「俺は────」
  23. 24 : : 2020/02/02(日) 02:49:54
    あれから2年、地獄も同義の訓練を耐え抜いたアルミン達は、晴れて兵士として依頼をこなす毎日を送っていた。

    そして今日、アルミン、ミカサ、ライナー、ベルトルト、ジャン、マルコの6人は、人類最強のリヴァイを部下に持つエルヴィンよりとある任務を受け、歩を進めていた。


    アルミン「紅い1つ眼の鬼・・・サイクロプスの討伐かぁ。何だか不安で仕方ないよ」


    ミカサ「大丈夫、いざとなったら私が守ってあげる」


    ジャン「へっ!そんな奴、俺がチャチャッと蹴散らしてやるぜ!」


    マルコ「そう見栄を張ってみっともない姿見せないでくれよ?」


    ライナー「気を抜くなジャン。相手は紅い1つ眼の鬼、サイクロプスだ。全長3mを超える巨体と巨大な棍棒が危険な相手だ、気を抜くと死んじまうぞ」


    ベルトルト「父さんに聞いたことはあったけど、本当にそんな魔獣が存在するなんて」


    アルミン「とにかく、警戒を怠らないように行こう」


    ライナー「アルミン、場所は南に10km進んだ神殿だったな?」


    アルミン「うん、任務内容の紙にそう書いてたから間違いないよ」


    ライナー「10kmか・・・要所要所で休憩しながら進むか」


    マルコ「肝心の戦闘で疲れてちゃ意味が無いし、そうしよう!」


    〜2時間後〜


    ベルトルト「此処が例の神殿、か」


    ライナー「どうしてこんな場所にサイクロプスが・・・」


    ジャン「さっさと行こうぜ」


    アルミン「皆、準備は良いね?」


    「「「「「あぁ!/大丈夫/うん!」」」」」


    アルミン「よし、行くよ!!」


    勢いよく神殿の扉を開けて、アルミン達が内部へ侵入した数十分後。



    「誰かが入った形跡があります!内部に多数の魔力反応があります。恐らく、サイクロプスを倒しに来た人達かもです。どうしますか?」


    「サイクロプスは放っておけ。俺達の目的はあくまでもそいつを倒す事じゃない。ヤツの体内で生成される魔石だ」


    「彼らを助けないんですか?」


    「大方、サイクロプスを殺りに来た兵士だろ。そんな奴らを助ける義理もクソもねぇ。行くぞ」


    「あっ・・・もう、クソだなんてはしたない言葉はダメですよ!」
  24. 25 : : 2020/02/02(日) 03:36:34
    謎の2人組が神殿内部へ入った頃、神殿最奥部では、壮絶な戦闘が繰り広げられていた。


    全長3mを超える巨体を前に肩で呼吸をする6つの影。


    巨体はあちこちから血がダラダラと流れているものの、力尽きる様子は無い。
    戦闘が始まって既に25分が経過した現在、巨体を相手にする6人の体力にも限界が近付いていた。


    ジャン「おい、こんな強えなんて聞いてねぇぞ」


    ライナー「倒れる気配がねぇぞ、どうする?」


    ベルトルト「どうするって言われても、何か逆転出来るチャンスが無いと」


    マルコ「体力も魔力も限界が近い・・・ベルトルトの言う通り、チャンスが見つかれば」


    ミカサ「アルミン、どう?チャンスはありそう?」


    アルミン「身体に傷を付けても意味が無い。かと言って時間を稼いでもこっちの体力と魔力が尽きるだけ・・・どうすれば」


    ブツブツとボヤくアルミンはふと巨体の眼を見やる。そこで漸く、アルミンはチャンスを見つけた。



    アルミン「眼だ、眼を狙うんだ!恐らくサイクロプスの弱点はあの紅い眼だ!」


    ライナー「ベルトルト、魔力は残ってるか?」


    ベルトルト「もちろん。アルミンが弱点を見つけたんだ。動きを封じるくらいの魔力はあるさ!」


    アルミン「ライナーとベルトルトはヤツの動きを封じてくれ!ジャンとマルコはどうにか速い動きで翻弄、あの棍棒をヤツの手から離してくれ!」


    ライナー・ベルトルト「了解!」
    ジャン・マルコ「あぁ!」


    アルミン「トドメはミカサ、君に任せてもいいかい?正直、僕の魔力は底ついてると言っても過言じゃないから、任せる事しか出来ないんだけど」


    ミカサ「分かった」


    1つ返事でミカサは地を蹴った。残されたアルミンは皆の勝利を祈る事しか、今は出来ない。アルミンは静かに口を開く。


    アルミン「頼んだよ、みんな」



    ライナー「ベルトルトォ!!」


    ベルトルト「あぁ!」


    ライナーは両の拳を地に殴り付けると、サイクロプスはその巨体の半分が地に埋まり、それに合わせてベルトルトは宙に描かれた魔法陣より灰色の溶液を放出、埋まった半身をガチガチに固めてみせた。


    ジャン「マルコ!左は任せた!ヘマすんなよ!?」


    マルコ「それはこっちのセリフだ!ジャン!」


    地を力の限り蹴り、それぞれ左右の腕に飛ぶと、ジャンは炎の刃を、マルコは風の刃を携え、斬り掛かる。


    ジャン「ハァァァァァッ!!!!」
    マルコ「うおおぉォォォォっ!!!」


    振るわれた刃は分厚い肉質の両腕を切り落とし、その剣圧で炎と風が程よく混ざり合い、赤く燃え上がる竜巻が生じた。2人の息が合ったが故の現象であろう。


    そしてこれでトドメ、4人はミカサへ叫んで声を掛けた。


    ジャン「今だミカサっ!!」
    マルコ「今がチャンスっ!」
    ライナー「やっちまえミカサっ!!」
    ベルトルト「倒せミカサっ!!」


    アルミン「今だっ!!!!!」


    アルミンの声と共にミカサは竜巻の中心へと上から速い速度で落下する。


    ミカサ「リミッター解除・・・50%!!」


    ドクンッ!!!とミカサの体内で鼓動が鳴り、拳に込められた拳の力が増す。

    同時に込められた右手に細く生じる嵐の風・・・落下するスピードと相性が良かったおかげか、出力が高くなる。


    ミカサ「これでっ、終わりっ!!!!!」


    50%解除されたリミッター、そして落下のスピードで威力が増した嵐の風、それらを合わせたミカサの拳の一撃は、サイクロプスの眼に直撃し、その衝撃で地面にもヒビが入る。


    静かに着地するミカサのもとへ、5人が集まり喝采が始まる。


    ミカサ「ありがとう、またアルミンのおかげで勝てた」


    アルミン「いや、皆の協力あってこその勝利だ」
  25. 26 : : 2020/02/02(日) 04:06:46
    笑い合う6人を眺める影が2つ。
    黒いフードが付いた外套の男に対を成すような白い修道服の女。

    男は舌打ちをして口を開く。


    「遅かったか・・・」


    「どうしましょう。情報によればあの鬼はこれで最後のはず。これでは魔石の獲得が出来ません」


    オロオロと慌て出す彼女を男は宥める。


    「しかし、よく気付いたものだ。奴の弱点は眼・・・普通の兵士。いや、魔導士には分かるはずもない情報だってのに」


    「ほ、本当にどうします?一応確認だけでもしてみますか?」


    「そうだな、粉々になって無ければ良いんだが」


    そして、2人は静かに倒れる巨体のもとへ、軽くジャンプした。


    「どうだ?」


    「うぅ、ダメですね。完全に魔石の反応が途絶えちゃってます。獲得は不可能ですね」


    「そうか・・・悪いなこんな事に付き合わせて」


    「い、いえ!」



    そんな2人の様子に気付いた6人は、警戒しつつ声を掛ける。


    ジャン「おい!お前ら誰だ!」


    「あ?」


    アルミン「っ!1つ睨んだだけでこの殺気・・・この人、尋常じゃないよ!」


    「よく分かったな。コイツの唯一の弱点は紅い眼。それに気付くって事は相当頭脳に優れた奴なんだろうな」


    ライナー「それより、アンタら誰だ?」



    「私達は──むぐっ!?」


    「お前らに名乗る名は無い。それも兵士と来た・・・そんな奴らがよくこの鬼を倒せたもんだ。褒めてやるよ」


    ジャン「さっきから偉そうな口訊きやがって、ムカつくぜっ!」


    マルコ「おい!ジャン!」


    炎の刃を携えて斬りかかると、黒い外套の男に軽くいなされて飛ばされるジャンを尻目にミカサは眼に移る男が持つモノに気が付いた。


    ミカサ「紅い・・・刀?」



    「その紋章・・・エルディアの人間か」


    「どうしますか?“エレン様”」


    エレン「どうもしねぇよ」


    ジャン「クソっ、まだだっ!!」


    エレン「はぁ・・・」


    「ちょっ!?フード取っちゃダメですよ!」


    エレン「・・・・・・あの馬鹿野郎の言い付けなんて守ってられるか」


    「知りませんからねっ!?」


    頬を膨らませて声を大きくする彼女を尻目にエレンは向かってくるジャンに意識を向ける。


    ジャン「だぁぁっ!」


    エレン「なってねぇな」


    ジャン「うぉおぁっ!?」


    アルミン「ジャン!無闇に仕掛けちゃダメだ!返り討ちにされる!」


    エレン「太刀筋が鈍い、力任せの振るい方。邪念が交ざったどうしようもねぇな」


    ジャン「アァっ!?」


    「その言い方は、ちょっと」


    エレン「事実を言ってるだけだ」


    ジャン「このイラつき、てめぇで解消してやるァ!!」


    エレン「・・・・・・脳筋馬面」


    ジャン「んだとコラァァァ!?」



    ライナー「なぁ、後ろに居るのは誰だ?」


    叫びながらエレンに喧嘩を振るジャンに気を取られていたが、ライナー達は、エレンの後ろで立っている修道服を着た人物に目を向ける。


    「私ですか?私は──むぐっ!?ンンンっ!!」


    エレン「さっきも言ったが、お前らに名乗る名は無いんでな」


    「──ぷはっ!!さっきからなんですか!手で口を塞がないでください!」


    エレン「うるせぇ、飴でもくれてやるから静かにしてろ」


    「!!!!」


    エレンが持つ左手の飴を見た途端に子猫宜しくピョンピョンと飴を取ろうとする彼女の姿にエレンは少しばかりキュンとしてしまう。


    「ちょっと!取れないですってば!それ私の好きな味のモノって知ってますよね!?意地悪ですか!?」


    ジャン「だぁぁぁぁっ!!!俺の前でイチャついてんじゃねぇぇっ!!!」


    まだ懲りないのかと溜め息を吐く馬面にエレンは魔術をかける。

    ピタリと動けなくなったジャンは憤慨して怒鳴る。


    ジャン「おい!!魔術で拘束とか卑怯だぞ!!斬られるのが怖いのか!?はっ!この弱虫野郎!」



    エレン「───」



    ジャン「な、何だよ」


    エレン「黙れ馬面のど阿呆」


    そう言ってエレンは拘束されて動けなくなったジャンの鼻へとあるモノを近付ける。


    ジャン「な、なんだそれはっ!?やめろ!鼻に近付けるなっ!」


    エレン「ワサビとカラシ。お前の鼻の穴に捩じ込むんだよ。よかったな」


    ジャン「良かねぇよっ!!やめろっ!やめろって!!聞けっつうの!!お前らも黙ってねぇで助けろ!!」



    ミカサ「ジャン、大人しくして。その人が困ってる」


    ジャン「俺達仲間だろっ!?なァっ!?」


    その後、とてつもない絶叫と共に鼻からワサビとカラシを垂らして倒れる無様な姿を晒したジャンを見るエレンのスッキリとした表情に修道服の女は震えながら口を開いた。


    「ドS・・・いえ、ドSを通り越してますよ」
  26. 27 : : 2020/02/02(日) 04:34:59
    エレン「さてと、帰るぞ」


    「えぇ!?何の成果もなしにですか!?」


    エレン「魔石が粉々になってる以上無理だ。あの馬鹿野郎にはテキトーに報告しとけばいいだろ」


    「え、あの、ちょっと、この抱き抱え方はおかしいですよ!聞いてますか?!エレ──」



    そうして、エレン達2人は一瞬でその場から消えてしまった。取り残された5人は、少しばかり唖然とした様子で立ち尽くしていた。

    依然としてジャンはピクピクと身体を震わせて、鼻からワサビとカラシを垂らしながら気絶したままだった。


    エルディア王国 応接室


    フリーダ「分かった。ご苦労さま、エルヴィン」


    エルヴィン「いえ。これでサイクロプスは絶滅。少し平和へ進みました」


    フリーダ「そうね。気になるね、彼らが出会ったという謎の2人組・・・」


    紅茶を飲むフリーダにエルヴィンはアルミン達から聞いたという2人の話をする。


    エルヴィン「彼らは、何も言わなかったそうです。ただ、サイクロプスの様子を確認し、ジャンを気絶させて一瞬でその場から姿を消したと」


    フリーダ「一瞬で・・・」


    エルヴィン「ミカサから聞いた話によると、1人は黒い外套を身に包んだ紅い刀を携えた者らしいと」


    フリーダ「!?」


    エルヴィン「?」



    フリーダ「な、なんでもない。黒い外套に紅い刀・・・」


    ──まさかね。


    マーレ公国 拝謁の間


    ジーク「そうか。魔石の回収は失敗したか」


    「うぅ、申しわけありません。私が無理言って連れて行ってなんて言わなければ、回収にも間に合ったのに」


    エレン「何言ってんだ“レイナ”元はと言えばジーク(コイツ)が魔石の回収して来いって五月蝿いからだろ」


    ジーク「エレン・・・兄貴をコイツ呼ばわりは無いだろ・・・」


    エレン「レイナを半ば監禁してたヤツに名前で呼ばれる権利もねぇよ」


    ジーク「うっ」


    レイナ「私は気にしていませんよ!?メイドさんにはお世話になりました!」


    エレン「両手を鎖で縛られて吊るし上げられてた癖によくそんなポジティブで居られるな」


    レイナ「そ、それは・・・お恥ずかしい所をお見せしちゃいました」


    モジモジと両手の指を絡ませて顔を赤くする彼女に不覚にも可愛いと思ってしまうエレンは溜め息を吐く。


    エレン「取り敢えず報告は終わった、部屋に戻る、勝手に入るなよ」


    ジーク「入らないってば、ゆっくり休めよ〜」


    レイナ「失礼しましたっ!」
  27. 28 : : 2020/02/02(日) 13:00:29
    レイナ「あの・・・1つ、良いですか?」


    エレン「?」


    レイナ「元々のあなたは・・・中立の立場の人。なのに、どうしてこの国の人間、それも王族になったんですか?」


    エレン「前にも言った通り、お前に会いたかったんだよ」


    レイナ「それは前にも聴きました。私が知りたいのはそうじゃなくて・・・・・・どうして、そんなに私の事、気にかけてくれるんですか?」


    部屋の前に立ち止まる彼女に次いでエレンも立ち止まる。彼女の質問に対して、思えば自分自身も疑問に思っていた。


    世間一般から、聖女と謳われ、崇められてきた彼女をどうしてここまで気にかけるのか。

    可愛いから?違う、誰かに似ている?それも違う。なら、辛い時に寄り添ってくれた心の支えだったから?分からない・・・。


    エレン「俺自身、まだ分かんねぇ。どうしてこんなに、お前に気をかけるのか・・・お前が苦しむ度に感じる胸の痛み。この感情が何なのか、分からない」


    レイナ「そう、ですか」


    エレン「この感情の正体が何なのか、理解出来てから、その質問に答えるとするさ。それまで、待っててくれるか?」


    レイナ「・・・はい、分かりました。絶対ですよ?」


    どこか不安気な雰囲気の彼女の頭を優しく撫でた後、エレンは自室へと入った。

    残されたレイナもまた、自室へと戻った。


    エレン「・・・・・・なぁ、桜。今の俺を見て、お前はどう思う?あんな風に優しく笑うのか?それとも悪い事だと諭すのか?」


    光沢に磨きのかかった愛刀を撫でるエレンは、独りでにそう呟いた。


    エレン「親父達を墓に埋めてやって、お前が修行をつけると言って来た時。正直、不安しかなかった」


    暗かった表情は更に暗さを増し、雰囲気は陰鬱に包まれる。


    エレン「このままやっていけるのか。親父やお袋が居なくても生きていけるのかってな」


    エレン「それでも、お前は家族の為に生き延びねぇといけねぇって、背中押してくれたんだよな」


    ボソボソと愛刀に語り掛けるが、返事は返ってこない。ただ、部屋の中に口から放たれる言葉が木霊する。


    エレン「俺は、この先どうすりゃいいんだよ」


    こうして1人の時にしか吐けない弱音・・・普段は強気で、冷静に振舞っていると演技しているに過ぎないのだ。


    エレン「父さん、母さん・・・なんで、俺を残して逝ったんだよ・・・」
  28. 29 : : 2020/02/03(月) 05:23:11
    「やはり美味いな、この世界の空気は」


    「人間どもに封印されてから、永い事800年。我ら魔族はこの地に復活したようだ」


    「既に人間どもは我らの存在に脅えている状況だ。今のうちに攻め入ってこの世界をモノにするべきだ」


    「待て。今の俺達は復活したばかり。魔力もロクに無い。それに、いくら平和ボケしているヤツらだからとて甘く見るな。人間だが、俺達を封印したヤツらだ」


    「ふーん。私らの統率者代理のアンタがそんな臆病風吹かせるなんてね。そんなだったら、この“堕天の王たるルシファー”にその座を譲った方がいいんじゃないの、“キュクロ”?」


    キュクロ「俺はもう代理じゃない。正当な魔族の統率者だ。魔王直々に仰せつかった役目だ。お前にこの座を渡す気はねぇ」


    ルシファー「あっそ、なら好きにしたら」


    「キュクロ、貴方の言う通り私達は魔力が底をついてる。どうするの?」


    キュクロ「シャルル・・・そうだな。今は魔力を全盛期の頃にまで戻さなければならない。無闇に攻撃を仕掛けるのは野暮ってもんだ」


    シャルル「だそうよ。分かった?“レヴィアタン”」


    レヴィアタン「まぁ、そういう事なら素直に従うさ。そうよね、“マモン”」


    マモン「然り、今の我らは皮肉にも全盛期より遥かに弱い。ならば、英気を養い。時が来るのを待つべきだ」


    「えぇ〜。魔力戻るまでここに居なきゃいけないのー?せっかく人間の男共から精を搾り取れると思ったのに」


    シャルル「“アズモデウス”・・・貴方は変わらないようだけど、今は耐えて」


    アズモデウス「はぁい」


    「魔力が戻るには時間が要るか・・・なら、俺は本でも読んで待ってるぜ」


    シャルル「“ベルゼブブ”は昔から勤勉ね」


    キュクロ「それがアイツのいい所でもある。“サタン”、“ベルフェゴール”、今の聞いてたな?」


    サタン「あぁ?分かってら、聞かれんでもな」


    ベルフェゴール「そういうのは勝手にやってちょうだいな。私は眠いから少し寝るわ」


    キュクロ「なら良いが・・・絶対に見つけ出すぞ。魔王の転生者というヤツを」


    シャルル「キュクロ・・・様が抜けてるよ」


    キュクロ「未だに慣れんな・・・」



    マーレ公国 王宮


    エレン「ん?今の感覚は・・・何だ?いや、気のせいか」


    「エレン様、ジーク大公様がお呼びでございます」


    エレン「要件は・・・」


    「拝謁の間にて仰るとの事です」


    エレン「ったく・・・面倒事じゃなければいいが」
  29. 30 : : 2020/02/03(月) 05:43:28
    拝謁の間


    エレン「何だよ・・・また面倒事か?」


    レイナ「エレン様、そう言わずに」


    イラつきを隠せないエレンの傍らを歩くレイナはオロオロとしながら必死に落ち着かせようと頑張っている。しかし、効果はなさそうだ。


    ジーク「お、来たな。2人とも、実は──」
    エレン「断る」


    ジーク「まだ何も言ってないだろう?」


    顔に手を当てて困った様子のジークにエレンは更にたたみ掛けていく。


    エレン「だいたいお前の頼み事ってのは面倒事が多いんだよ」


    レイナ「わ、私はそう思いませんよ!貴重な経験になると思っています!」


    エレン「レイナも聖女だからっていい事ばかり言ってたら身が持たねぇぞ?たまには愚痴も吐かねぇと」


    レイナ「わ、私は・・・愚痴なんて、そんなはしたない真似出来ませんよ」


    ジーク「レイナちゃんは可愛いね〜。うちのい──おうっ!?」


    エレン「うちの・・・・・・何だって?」


    気付けば首に宛てがわれている紅い刃・・・そして眼の前には殺意丸出しのギラついた眼をする異母弟の顔。いくらブラコンのジークとは言え、この状況には身震いするほかない。


    ジーク「な、何でもない。何でもないさ」


    エレン「・・・・・・・・・で?要件は」


    ジーク「あー。そうだったそうだった。この間、エルディアから使者が来てな。うちから2人、強者を寄越して欲しいってよ」


    レイナ「もしかして、その2人って。私達ですか?」


    エレン「はぁ?冗談じゃねぇ・・・兵士なんかと仲良しこよしなんてしたくもねぇよ、他当たれ」


    ジーク「報酬は刃渡り8cmの投擲ナイフ」


    エレン「レイナ、直ぐに出る準備しろ。ナイフ貰って帰るぞ」


    レイナ「えぇ!?さっきまで行きたくないって言ってたのに!?」


    エレン「そんな事言ってねぇ。早くしろ」


    レイナ「待ってください!!まだ私身体清めてないんですよー!」


    ズカズカとレイナを引っ張ってその場を出ていったエレンを見送るジークは微かに焦りを浮かべた。


    ジーク「・・・あんな嬉しそうな雰囲気出して。嘘ってバレたらどうしようかな。そうだ、鍛冶屋に頼んで作ってもらおうかな。うん、そうしよう」
  30. 31 : : 2020/02/05(水) 06:19:34
    エルディア王国 王都ミットラス


    「フリーダ皇女、マーレから来たとされる2人を案内致しました」


    フリーダ「分かった、通して」



    「へぇ、相変わらず豪華だな。国民のヤツらは貧しい暮らしをしてるってのに。レイナ、余程エルディアの連中は国民がどうなってもいいってご算段らしい」


    フリーダ「────うそ」


    レイナ「ダメですよ、そんな言い方したら。この国の皇女様に失礼ですよ」


    フリーダ「なんで、どうして・・・・・・貴方がいるの?エレン」


    エレン「こうして会うのは何年ぶりだ?“皇女様”?」


    レイナ「え?お知り合いですか?」


    エレン「まぁな・・・知り合いってもたった1年だけどな」


    こんな形で再開したくなかった・・・。
    なんで、よりもよって──


    フリーダ「どうして、貴方がマーレ側に居るの?」


    エレン「随分悲しそうな表情(かお)だな、フリーダ。そんなに俺がマーレの人間なのが不服かよ」


    あの時、エルヴィンから話を聞いていた時から予感はしていた。けど、外れていて欲しかった。


    何故なら、あの時貴方は・・・・・・。


    フリーダ「必ずこちら側の陣営に入るって、言ったはずでしょう?」


    エレン「お前らレイスが出した条件とマーレの大公が出した条件と、どちらが利益を得られるものなのか考えた結果だ。マーレの大公は俺を引き入れると言った時、名前のない村・・・俺の故郷の連中を国で保護すると条件に出した。それを受け入れた。それだけの話だ」


    フリーダ「それじゃぁ、最後のサイクロプスがいた場所に現れたのも・・・貴方だと言うの?」


    エレン「あぁ、目的は。そうだな、魔石の回収とでも言おうか。魔石がどんな物なのか、知らないお前では無いだろ?」


    レイナ「魔石・・・サイクロプスの“紅眼”には、魔力の質を上昇させるといった効果が期待されています。残念ながら、その時は粉々にされて回収は不可能でしたが」


    エレン「討伐に向かわせる人間を間違えたな。あのいかにも根暗っぽい奴の拳の一撃で木っ端微塵に砕けた。もう少し魔石の事に詳しい奴に行かせた方が良かったな」


    フリーダ「今は魔族の存在で停戦関係にある。奴らとの決着が着いたとして、その時貴方はエルディアの、私の敵になるの?」


    エレン「今の俺は公国において王族の者だと知れ渡っている。そんなのが反旗を翻してみろ。大公、そしてコイツの信頼を裏切る事になる」


    レイナ「ちょっと、頭撫でないで下さい。恥ずかしいです」


    フリーダ「そう・・・・・・悲しいけど、そうも言ってられないわね。一先ずこの話は置いておく。今は大切な事があるの」


    エレン「そうだな、ちょうど俺も聞きたかった所だ。何で俺達マーレの人間をこっちに呼んだ?」


    レイナ「も、もしかして、見世物にするんですか?」


    フリーダ「そんな事しない。2人には協力して欲しいの」


    エレン「・・・・・・」


    レイナ「協力・・・ですか?」


    黙り込むエレン、そして隣で首傾げる名前の知らない少女にフリーダは事の発端を話し始める
  31. 32 : : 2020/02/05(水) 06:49:49
    エレン「へぇ?ようは、低級貴族を崇拝する奴らに拉致られて行方不明の女子供を協力して救って欲しいと」


    フリーダ「えぇ、本来こっちの事件はこっちで解決しなきゃならないのだけれど、中々そうもいかない状況になって来たから」


    レイナ「分かりました、是非ご協力させてください」


    エレン「おい、俺はまだ」


    レイナ「報酬、大公様より頂きたいんですよね?」


    エレン「─ッ。ったく・・・で?目星はついてんのか?」


    レイナ「どんな情報でも構いません。この事件について知っている事は全て教えて下さい。必ず見つけ出します!」


    フリーダ「拉致された人達が居るのはこのミットラスより外側、シーナ市内の何処かにある。少なくとも兵士からはそう聞かされてる。それから、最近頻繁に大通りを馬車が走るようになったのも国民から聞いてるわ」


    エレン「なら簡単だろ。何で尾行しない?擬態する魔術もあるだろ、魔導兵士ってのはそれが出来ない程技術が無いのか?」


    フリーダ「彼らを悪く言わないでちょうだい。彼らも彼らなりに全力を尽くして捜査に当たっている。でも、何の痕跡も見当たらないの」


    レイナ「馬車が通るんですから、痕跡の1つも簡単に見つかりそうなんですが」


    フリーダ「それも分からない。奴らが隠蔽しているのかどうか」


    エレン「とにかく、情報は粗方聞いた。あとは探しゃいいんだろ。行くぞ、レイナ」


    レイナ「はい!」


    そうして、エレン達はすぐさまこの場を離れていった。


    フリーダ「レイナ・・・確か。女神に最も近しいとも言われる聖女と謳われた人の名前もレイナと伝記に記されてあった気がするけど・・・もしかして!あの子が!?」


    シーナ市 ストへス区内大通り


    ガラガラと車輪を回しながら走る馬車の内部。
    そこには、3人組の男が1人の女と子供を抑えつけていた。


    「へへっ、今日も上手くいったな。これで98人」


    「あと2人を連れ込めば“儀式”が出来る」


    「あぁ、大量の金も手に入る!大万歳だ!」


    大通りを通る誰もが、その馬車を止めることなく、馬車はただその場から逃げるように前進し続けた。


    エレン「あの馬車か」


    レイナ「はい、内部から2人の母親と娘さんらしき人の気配を感じました。あの馬車の行き着く場所に、拉致された人達が監禁されている場所があります!」


    エレン「妙な事も言ってたな・・・“儀式”がどうのって。本来なら、お前の気持ちも汲み取って直ぐに後を追うべきなんだろうけどな」


    レイナ「何か、考えがあるんですか?」


    先程から思考顔のエレンに首を傾げるレイナ、その疑問にエレンは静かに答える。


    エレン「アイツらの言ってる事が本当なら、あと2人。つまり、明日の今頃もう一度この場所をアレが通る」


    レイナ「つまり、明日この場所を通る馬車を尾行するんですか?」


    エレン「あぁ、そういうことだ」


    レイナ「馬車の特徴は覚えたので、そうしましょう。焦ってはいけませんからね」


    エレン「お前も冷静さ身に付いてきたみたいだな。最初の頃は何でもかんでも突っ込んでったもんな」


    2年前、初めてエレンがジークから渡された任務にレイナが付いてきた時の事を思い語るエレンの胸元にポカポカと拳をぶつけるレイナな顔を真っ赤にして反論し始める。


    レイナ「あ、あれは!聖女として当然の事をしたまでです!別に冷静さを欠いていたわけじゃないんですからぁ!」


    エレン「そういう事にしといてやるよ、ほら。明日の為に準備を始めるぞ」


    チラリとこちらを見ては鼻で笑ってみせるエレンの後を、レイナは叫びながら追いかけるように走った。


    レイナ「もうーッ!本当にそういう事なんですってばーーーッ!」
  32. 33 : : 2020/02/05(水) 07:14:41
    フリーダ「えぇ!?馬車を見つけたのに放置した!?」


    エレン「あぁ。確かめたい事もあるしな・・・それに、下手に動いて奴らに勘付かれたら終わりだ」


    レイナ「はい、ですので。明日同じ時間帯に再びあの馬車を見つけ次第、その後を追うように準備をしようかなと」


    エレン「そういうことだ」


    フリーダ「準備?」


    レイナ「はい。私達2人がわざと馬車の前を通り捕まります。所謂潜入捜査。と言うやつですね」


    エレン「意味分かってないで言葉使うのいい加減やめろ、いつになったら学習するんだお前は」


    レイナ「仕方ないじゃないですか!長い間引き篭ってたんですから!」


    フリーダ「ち、ちょっと待って!わざと捕まるって、誰が!?」


    レイナ「私達です、先程申し上げたんですが。聞きそびれちゃいました?」


    フリーダ「聞き間違いじゃないの?だって、奴らが拉致しているのは大人の女性と女の子よ!?どう見ても無理がある!女装でも絶対バレる!」


    エレン「誰も女装なんてするとか言ってねぇだろうが。最後まで話を聞け」


    レイナ「元はと言えばエレン様が話の腰折ったんですけどね」


    エレン「まぁ任せろ。バレる事はねぇよ、少なくとも奴らのねぐらに着いてからはバレると思うけどな」


    レイナ「大丈夫です!私たちを信じて下さい!」


    そんなこんなで、彼らはフリーダを残して立ち去ってしまった。


    フリーダ「着いてから?どういう事?今度ヒストリアに絶対バレない女装とか教えて貰おうかな、知ってるといいんだけど」


    その日の夜


    レイナ「さぁ、エレン様。始めますよ?ふひひ」


    エレン「もう、好きにしてくれ」


    レイナ「ではでは」


    半分涎をジュルジュルとしながらレイナは杖を翳して、声には出さずに魔を唱える。


    エレン「──ッ!?ぐっ、ああっ!!」


    レイナ「耐えて下さい!」


    エレン「ぐううううっ!!!!」


    声を上げながら苦悶の表情を浮かべ、悶え苦しむエレンを次第に光が包み始める。

    レイナ「さぁ、さぁ!お遊戯のお時間ですよ!エレン様!」


    その様子を見るレイナはダラダラと涎を垂らし、聖女という事が信じられない表情でひたひたと近付く。


    エレン「ぐっ、からだ・・・あつっ!」


    そして、光が消え掛けたと同時にレイナはベッドの上で苦しむエレンへとダイブする。


    レイナ「可愛いエレン様、このレイナが美味しくいただきます!!」


    「来るな変態!!!」


    同時にあげられる謎の甲高い声
    そして──。



    「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
  33. 34 : : 2020/02/05(水) 07:37:41
    叫びが部屋中に響いてから凡そ2時間。


    レイナ「ふぅ。ご馳走様でした」


    そこには、ツヤツヤと輝きのオーラが増したレイナと


    「あっ・・・・・・ぁぁ、っ」


    身体をビクビクと震わせながら、横たわる少女の姿があった。


    レイナ「さぁ。“エレナ”様、服を着てください。誰かが着たら誤解されてしまいます」



    エレナ「お前が脱がしたんだろ!?どうしてくれんだ!身体中びちゃびちゃ!」


    レイナ「そ、それは。エレナ様が可愛く啼くものですから・・・つい昂ってしまいました」


    エレナ「それもこれも全部お前のせ──」


    フリーダ「大丈夫!?悲鳴が聞こえたけど、誰か入って来たの!?」


    エレナ「──いだっての!!!」


    レイナ「ほら、言ったじゃないですか。誰か来ちゃいますって」


    フリーダ「だ、誰!?その女の子!」


    エレナ「か、勝手に入るな!!そしてマジマジと身体見るんじゃねぇっ!!」


    顔を赤くして枕を投げつける少女を横にレイナは大きなタオルケットを被せる。


    レイナ「申しわけありません、今はこれで」


    エレナ「あとで、何か奢れよ?」


    レイナ「っ。はい、何なりと」


    枕を投げつけられたフリーダは再度、疑問をぶつける。


    フリーダ「ね、ねぇ!?その女の子誰!?」


    エレナ「あのな、まずは落ち着け。って寄るな!」


    フリーダ「へぶっ!?」


    今度は魔術で生成されたクッションを投げつけられたフリーダは初見殺しだった為に顔に直撃される。


    エレナ「ったく、どいつもこいつも・・・俺の身体見る度に発情すんじゃねぇっての」


    レイナ「エレナ様?あまり汚い口調はメッ!ですよ?」


    エレナ「うるさい」


    可愛く注意してみせたレイナを軽く一蹴した少女は、事前に用意された服を身に着ける。


    レイナ「どうして、この姿になるとそんなに反抗的になるんでしょう。神よ、教えて下さい」


    エレナ「それはお前が襲ってくるからだろ。何回も何回も・・・・・・」


    顔を赤くしてごにょごにょと言い淀む少女の耳元でレイナは囁いた。


    レイナ「え?小さくてよく聞こえませんけど、可愛かったですよ?」


    エレナ「その記憶消し飛ばしてやろうか!?」


    レイナ「ダメですよ!!これは大事な大事なレイナフォルダに保存するんですから!」


    エレナ「誰だこんなロリコンレズを聖女って言い出したのは!?」


    レイナ「まぁまぁ、ブラの付け方も私が教えてあげますよ?」


    エレナ「結構だ!!これ何回目だと思ってんだ!?」
  34. 35 : : 2020/02/06(木) 04:46:17
    フリーダ「つまり、貴方が性転換?の魔術を使ってエレンを女の子にしたのね。確かに、これならバレないかもしれないけど」


    エレン「おい、胸触んな」


    フリーダ「エレン、マーレなんて放っておいて私のお嫁に来て!じゃないと私死んじゃう病気に掛かってるの!」


    エレン「誰が行くかよ。そんな事より胸から手ぇ退けろ」


    フリーダ「こんな柔らかいおっぱい初めて触ったかも!この触り心地癖になるなぁ」


    レイナ「そうでしょうそうでしょう?」


    エレン「ふ、2人して揉むんじゃねぇ!」


    レイナ「そんな怒らないでください。神がお怒りになってしまいますよ?」


    エレン「なんで俺の怒りが神の怒りと連動してんだ。意味分からん」



    フリーダ「まぁ、とにかく明日。というかもう今日だけど、大丈夫なんだよね?」


    エレン「今更かよ。俺を誰だと思ってんだ」


    フリーダ「か弱い女の子・・・」
    レイナ「私の愛する双子の妹・・・」


    エレン「女扱いすんじゃねぇ!」


    この2人をまともに相手をしていたら疲れると判断するエレンは素早く布団に潜り込んで寝る体勢に入った。

    すると。


    レイナ「そういうわけなので、私たちのことは心配しないでください。大丈夫です、エレン様が居るんですから」


    フリーダ「貴方が言うなら信じるけど、呉々も無茶しない事!いい?それじゃ、おやすみ」


    レイナ「はい、おやすみなさい」


    バタン。と扉が閉まると同時にエレンは身体を起こす。


    エレン「行ったか?」


    レイナ「はい。事実にお戻りになりました」


    エレン「よし。決行は、今日の11時30分。その時間帯に止まっている馬車の前を通る」


    レイナ「そして、女の子らしく抵抗して呆気なく捕まり連行。目的地に着いたら戦闘開始ですね」


    エレン「あぁ。奴らの言う“儀式”ってのが何なのか、知っておかなきゃならねぇ。そんな気がする」


    レイナ「そうですね。女性や女の子のみを捕まえて行う“儀式”・・・必ず食い止めましょう!」
  35. 36 : : 2020/02/06(木) 05:14:44
    時刻11時30分

    レイナ「す、すみません。ローゼ市内まで、乗せて頂けませんでしょうか」


    「ローゼまでだな?よし、乗っていきな」


    レイナ「良かったね、エレナ」


    エレナ「うん」


    2人は導かれるままに馬車へと乗り込む。すると


    「へへっ、これで100人目!」


    突如背後から意識を刈り取られ、2人は3人の男に連れ去られる。


    「これで100人目だな。しかし、よく見ろよ。今まで拉致った女共より上玉じゃねぇか?」


    エレナ「──ッ!」


    「生意気なガキだな。でも、俺はそういうの好きだぜ。生意気なガキが自分から求めてくる姿を想像するだけで興奮してくるぜ!」


    「こっちの女は・・・へぇ?エロい体付きしてやがる。どの女よりも美味そうだな」


    レイナ「ひっ──や、やめてッ」


    「そうやって抵抗してられるのも今だけだ。これから向かう先は、そんな事考えられなくなる程気持ちよくなれる場所さ」


    気持ち悪い笑みを浮かべ、笑い出す男共は、これから起こる事など知りもせず、ただ己が欲望のままに目的地へと2人を連れ去っていく。

    馬車に乗り込んでから凡そ一刻程、ガタンっ。という音がすると、男たちは2人を外へ出るように促した、喉元にナイフを突き付けるのも忘れずに。


    「へへっ、これから気持ちいい事沢山しような嬢ちゃん。俺のテク見せてやるぜ」


    エレナ「お前のテクとか見たくもねぇよ。さっさと死ね」


    「あ───れ?」


    男はギギギッと視線を下に降ろす、その眼に映る光景。それは



    「ギィヤァァァァァァァァッ!!!?!?!」


    男の象徴とも言えた“ソレ”が、非情にも己から斬り離されていたモノだった。
    神経を弄られている様な痛みに悶え苦しみ絶叫し、挙句には失神。いや、ショック死。というのが正解であろう。


    「ちょ、ちょっと待て!その紅い刀!」


    エレナ「光栄に思えよ、下郎?俺の愛刀の錆になれるんだからよ」


    「ま、まさか───ッ!!!」


    エレナ「───同じ命を落とすにしても、傷は浅いまま死にたいだろ?」


    その後・・・。


    レイナ「“黒い孤狼”、“絶望を齎す紅い死神”その異名を持つこの人に眼を付けられた時点で、貴方方に未来はありません。このまま地獄にて罪を償っていただきます」


    エレナ「お前らに希望も未来も無い。あるのは、ただ絶望だけだ。さっさと行くぞ、早いとこコイツらの言う“儀式”ってのを止める」


    レイナ「はい。相変わらず斬れ味は抜群のようですね」


    エレナ「別に、俺は斬りたい奴を斬ってきただけだ」
  36. 37 : : 2020/02/06(木) 11:17:51
    エレナ「っていうか、さっきの何だよ?黒い・・・なんだっけ」


    レイナ「あー。最近、巷のゴロツキにはそう呼ばれてるみたいですよ。エレン様のこと」


    エレナ「はぁ?」


    レイナ「友達が居ない、居るのは1人の女を侍らせる孤独な男。狼を思わせる佇まい。そこから“黒い孤狼”なんて異名がついたようです。もう1つの方はよく分かりません」


    エレナ「えっと、“絶望を齎す紅い死神”?って言ったか?」


    レイナ「そうですね、この異名がついたのは少し前。あの日、マーレで今回と同じような時が起きた時ですね」



    エレナ「ふーん。まぁ、俺はそういうのどうでもいいけどな。親父とお袋、桜の分まで生きるだけだ」


    レイナ「はい!私もずっとお供します!」


    エレナ「さて、ここが奴らの根城か。貴族を名乗るだけあって割とデカイな」


    レイナ「そうですね。こんな大きい屋敷の中に拉致された人達が居るんでしょうか」


    エレナ「擬態しながら探すしかねぇな」


    レイナ「そうですね」


    自らを透化する事で、周りからの視認から逃れる魔術を自分達に施した2人はゆっくりと音を立てずに屋敷の中へと侵入する。


    エレナ「見たところ何処にも隠し部屋とかそういったのはねぇみたいだな」


    レイナ「あの、聞こえませんか?」


    エレナ「は?何も聞こえねぇけ──」



    ───だれか、たすけてッ・・・!



    エレナ「!!!!!」


    レイナ「エレン様!」


    エレナ「急ぐぞ、事は一刻を争う!」


    聞こえたのは少女。だいたい10もいかない子供の助けを乞う声だった。それを耳にしたレイナもエレンも、足音を消しながら颯爽と声元へ駆け付ける。


    エレナ「・・・・・・こりゃ、随分悪趣味。いや、それじゃ済まされねぇな」


    レイナ「酷いです、彼女たちは何もしていない。無実な人達です。どうしてこんな仕打ちを受けなければならないんですか・・・!」


    彼らが眼にしたのは、半径5m程の大広間に四肢を鎖で繋がれて拘束され、涙を流しながら助けを乞う拉致された人達の姿。


    レイナ「許せませんッ!」


    エレナ「・・・・・・・・・」


    無意識に右手に力が入る・・・怒りが込み上げてくる。こんなものを、人は憤怒というのだろうな。


    エレナ「クソ豚が・・・・・・」


    レイナ「あの、透化を解いたら!」


    エレナ「こんなもの見せられて、平然としてられる奴じゃねぇよ。さっさとこっから出してやるぞ・・・・・・」


    レイナ「エレン、様?」


    「あの、貴方は・・・」


    エレナ「必ずこんな場所から出してやるから、もう少し待っててくれ。絶対だ」


    「──ッ!はい!」


    エレナ「行くぞ、レイナ。時間が惜しい。この怒り、長く抑えられるもんじゃねぇ」


    レイナ「は、はいっ!」


    レイナが身を震わす程溢れる彼の魔力。それはとても紅く、燃え上がるようなモノが体現されているようだった。

    呆気に取られていたレイナはスタスタと先を歩き始めたエレンの後を追う。
  37. 38 : : 2020/02/06(木) 11:48:12
    レイナ「あ、あの、エレン、様・・・1つ、聞いてもいいですか?」


    エレナ「何だ」


    レイナ「先程、あの場から離れた時、よく聞こえませんけど、言ってましたよね。兵士がどうとかと・・・答えたくないのなら、それでも構いません。でも、教えてくれませんか?」


    エレナ「・・・・・・」


    レイナ「どうしてそこまで、兵士を毛嫌い。いいえ、憎んでいるのかを」


    エレナ「そうだな、それについてはこれが終わった後、男に戻ってから話す。それでもいいか?」


    レイナ「は、はい!屋敷の主の居場所はこの先にある扉の奥です!」


    エレナ「すぐに終わらせてやる」


    走り出す2人、そして扉を視認するとエレンは妖刀の霊体化を解き、抜刀。


    扉が呆気なく斬り壊されると同時に煙も舞う。


    「な、何事だっ!?貴様ら何者だ!!」


    エレナ「これから死ぬ相手に名乗る必要はねぇだろ?」


    「この私をエルディア王国の貴族と知っての愚弄か!?」


    エレナ「知らねぇよんなこと。死ぬ前に話してもらおうか、テメェらの言う“儀式”ってのを」


    「いいだろう。聞いて恐れよ、私の大望を!」


    「私の掲げる儀式とは、最上級魔獣であるベヒーモス。その召喚を行うモノだ!」


    レイナ「ベヒーモス!?」


    「新鮮で若い女子供の血肉を魔界へと捧げ、ベヒーモスをこの世に召喚する!そして、このエルディアの王族を抹殺し、この私がこの国の王となるのだ!」


    エレナ「・・・・・・・・・」


    「そして、神は私に微笑んだ。こうして私の下に最後の2人の女が眼の前に居るのだ!この国は私のモノも同然だ!!どうだ!?これを聞いて恐れたか!?絶対したか!?」


    エレナ「で?話はそれだけか?」


    「なっ──!?」


    エレナ「100人の女子供の血肉を捧げる事でベヒーモスを召喚する。まともに戦闘経験の無い王族の護衛は奴の餌だ。よく考えついたもんだな。だが、それがどうした?」


    エレナ「あくまでも貴族が。ましてやエルディアの人間が王族へクーデターか?そりゃおめでたい事だ。奴らに歯向かうその度胸は認めてやる。けどよ、それ以上に俺は我慢ならねぇんだ」


    「よ、寄るなっ・・・高潔たる私に近寄るでないわ!」


    エレナ「無実の人間。それも、幸福にならねばならない女や未来ある子供・・・それを贄に醜いベヒーモスを喚ぶたぁよ」


    ゆっくり、1歩、2歩、と着実に眼の前の男を追い詰めていくエレンとは反対に、貴族の男は彼から溢れ出す殺気、魔力、オーラに恐怖し、ジリジリと後退していく。


    壁に追い込んだエレンは妖刀を首スレスレに壁へ突き刺した。


    「ひぃぃっ!?」


    エレナ「お前、命をなんだと思ってんだ?この世にたった一つ、尊き命をなんだと思ってんだ?」


    「ま、待て!金ならいくらでもくれてやるっ!女子供も解放してやるっ!だから命だけはっ!!」


    エレナ「・・・・・・・・・今更命乞いかよ」


    刹那──。


    ゴトりと男の首は部屋の地に落ちる。
    その様子を見ていたレイナも困惑していた。


    レイナ「・・・・・・・・・」


    妖刀は壁に刺さったまま。なのに、どうして首が落ちたのか。どう考えも理解が出来ない現象。


    今まで傍らで彼も過ごしてきた自身も、紅く燃え上がる魔力を垂れ流し、黒い殺気と雰囲気が溢れ出す彼の姿・・・・・・まるで死神と同じような雰囲気を出すエレンの姿に全身は震える。

    ここまで激情な彼は見た事が無い。何がそこまで彼を憤怒、憎悪に繋げているのか知りもしない彼女は、腰が抜けたようにヘタリとその場に座り込むばかりであった。
  38. 39 : : 2020/02/06(木) 12:26:05
    「ありがとうございましたっ!!この御恩、忘れません!」


    エレン「気にすんな。俺は斬りたい奴を斬っただけだ」


    レイナ「・・・・・・・・・」


    監禁されていた女性らを解放し、安堵の表情を浮かべながら感謝の涙を流しながら走り去っていくのを見送ると、彼は静かに口を開く。


    エレン「・・・・・・“絶望を齎す紅い死神”案外間違いでもないのかもな」


    レイナ「エレン様?」


    エレン「答えてなかったな。さっきの質問」


    レイナ「べ、別に私は──」


    エレン「いや、話させてくれ。いつも隣に居てくれたお前だからこそ、言える話だ」


    レイナ「・・・・・・」


    項垂れるように壁を背に座り込むエレンは、顔を落として語る。


    エレン「俺たちは・・・名前のない村は、元々居場所の無い奴らが集まって出来た村なんだ」


    エレン「強盗に襲われて家族を失った子供、夫婦の仲が悪くて破局した男や女、親父やお袋が村の外で助けた老人。そうして俺たちの村は賑やかになった」


    エレン「まだ産まれて間もなかった俺は、最初こそ余所者だと言って毛嫌いしてたけど、協力する事の大切さ、相手を思いやる心、それらを村の連中や親父達に教わった。それ以降、俺は親父よりも強く、お袋よりも優しく暖かい人間になろうと決めた」


    レイナ「・・・・・・・・・」


    エレン「本格的に稽古を始めた時からのキツい思いだってあった。けど、それも全てなりたい自分になる為。そう言い聞かせて耐えてきた。親父からは1本も取れなかったけど、剣の技も1人前になったって褒めてくれたんだ。お袋も、順調に魔術を習得していく俺の頭を撫でてくれたりした」


    エレン「そうして俺は、桜と出会った」


    エレン「アイツ、突然現れてきたから不審に思った。コイツは余所者なのか、違うのか。けど、桜を見た親父達は俺の世話をするように言ってきた」


    レイナ「その時の生活は、楽しかったんですか?」


    エレン「あぁ。これ以上に無い幸せだった────でも」


    それまで軽く微笑んだ彼だったが、一瞬で表情を暗くして俯いた。


    エレン「いつも通りの生活をしてたんだ、日課の勉強もして、昼飯を食ってそんないつも通りの生活をしてたのに・・・」


    エレン「食卓に行くと、眼に入ったのは・・・血を流しながら息を絶った親父とお袋の倒れてる姿」


    レイナ「───ッ」


    エレン「今でも覚えてるさ・・・・・・紅い血に塗れた身体、冷えきった体温、光を失った瞳」


    エレン「俺は現実から逃げた。親父たちが死ぬわけが無い。あんだけ強かった親父もお袋も、死ぬわけない。現実を受け入れたくなかった」


    エレン「けどよ、身体を埋めてやった時に受け入れちまった。2人は死んだ、もう元には戻らない」


    レイナ「あの幸せな生活も、戻らないと?」


    エレン「そうだ。だから、俺はもっと強くなる為に桜と修行をした。死なない為に、親父達の分も生きる為に」


    レイナ「覚えています。あの時のエレン様は非常に苛烈な性格をしていたのを今でも覚えています」


    エレン「・・・たまに思う事があるんだよ。親父たち無しで生きていけるのかって・・・矛盾してるよな。ここまで1人で生きてきた俺がこんなの考えるって」


    まるで自分を嘲笑うかのように笑みを浮かべる彼の様子に、レイナは胸が苦しんだ。

    他の人とは圧倒的に抱える闇の深さが違う。
    並大抵の人が共に背負えるモノでは無いと。


    レイナ「そんな事──ッ!?」


    エレン「なぁ、俺・・・・・・ちゃんとやっていけるかな?」


    涙出頬を濡らし、こちらを見つめる彼の表情。

    まるで、助けを乞う様な・・・。


    ───誰か、孤独な自分を、闇の中に居る自分を見つけてくれ。誰か、助けてくれ。


    そう言っているようにも見えた。


    エレン「悪い・・・見苦しいとこ見せたな。さっさと戻ろうぜ」


    レイナ「──ッ。ま、待って!」
  39. 40 : : 2020/02/06(木) 12:51:43
    エレン「?」


    レイナ「何で、そうやって自分を隠そうとするんですか?ずっと一緒に居たんです。貴方の気持ちが分からない私ではありません。どうして、そんな風に自分を隠して、大丈夫そうに振る舞うんですか!?」


    エレン「い、いや。俺は別に」


    レイナ「じゃあ、どうして・・・・・・そうやって悲しい表情(かお)で微笑むんですか?」


    エレン「・・・・・・・・・」


    レイナ「私は、貴方のような過去を持って居ないので、多くの事は共有出来ません。ですが、一つだけは言えます。貴方は、絶対に御両親と桜さんの分で生きていけます!この私、レイナが保証します!」


    エレン「そっか・・・前に1回会ったことがあるからかな。お前には何もかもお見通しなんだな」


    レイナ「私はあなたに多くは望みません!ただ、この先ずっと、平和に生きていてくれさえすれば!私は!」


    ポタッ、ポタッ、と涙が落ちる。それと同時に雨が降り出した。

    瞬く間に全身が濡れていく2人。


    エレン「そうだな、そうだよな。こんなとこでへこたれてる場合じゃねぇよな」


    レイナ「!」


    エレン「悪かった・・・・・・従者であるお前に、そんな想いさせてたなんてな。主失格だ・・・悪かった」


    レイナ「いいんです。私は──!」


    抱き止められる自分の身体。

    しかし、内心罪悪感にその心は覆われていた。


    エルディア王国皇女 フリーダ・レイス
    彼女には会った時から、エレンに気が向いていたのを気付いていた。
    だからこそ、自分なんかがこんな事されていてもいいのだろうかと。


    レイナ「あ、あの・・・私」


    エレン「お前の言いたい事は分かってるさ。必ずフリーダ(アイツ)と話をする」


    レイナ「・・・・・・・・・」


    エレン「ほら、さっさと戻るぞレイナ。報酬が逃げちまう」


    もう、あの頃抱いた初の恋心は今この場で捨てる。今から抱くのは尊敬の愛。敬愛する心だ。

    ──皇女様、エレン様をお願いします。このままでは、この人は自分を壊してしまう。そうならないうちに・・・どうか。


    レイナ「はいっ!!!」





    ……To be continued
  40. 41 : : 2020/02/06(木) 12:55:03
    うーん。なんかエレン×レイナになってるような。しかし、ここからちゃんとエレフリに持っていきます。

    続きのURLは後ほど貼ります。

    もうひとつの方も、進めていくのでよろしくお願いしますm(_ _)m
  41. 42 : : 2020/02/06(木) 13:05:42
    http://www.ssnote.net/archives/83672
    『黒い髪の女神は孤独な男に恋をする〜第2話 最強と最凶〜』
    こちら続編となります

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著者情報
utiha_sasuke

セシル

@utiha_sasuke

この作品はシリーズ作品です

黒い髪の女神は孤独な男に恋をする シリーズ

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