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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

東方辿夢願 ~妖~

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  1. 1 : : 2017/07/07(金) 14:30:00
    http://www.ssnote.net/archives/54291
    前作です。注意書はシリーズの最初の作品にあります。

    というかここから読んでも何がなんだかわからないと思うので、この作品を読む場合は軽く前作品を読んでもらえると嬉しいです。全部合わせてもせいぜい350弱レスとかそんぐらいなので。
  2. 2 : : 2017/07/08(土) 21:13:30
    辿「……え。」


    紫「あら、どうしたのかしら?」


    ……ただでさえ混乱しているのに、それを更に乱す妖怪の登場。もう正直パニックだ。


    辿「えーっと……。何か用?」

    あまりにも混乱しているようで、すっとんきょうな返事をしてしまった。


    紫「ええ、貴女にまた幻想郷に来てもらいたくて。」

    辿「……いや、でも私死んじゃったし……。」 


    死んだならなんで今ここにいるんだって話ではあるんだけど。触ったら冷たいし

    もしかして幽霊にでもなったのか……? 幻想郷での経験があるからそれも否定できない。


    紫「……確かに、後ろにあなたの亡骸はあるわね。でも貴女が死んでいるとは思えないのよ。」

    辿「……幽霊という選択肢。」

    紫「さっき貴女、自分の死体を触ってたじゃない。幻想郷でもないのに幽霊が実体があるなんて、まず無いわ。」


    ……そうなのか。
  3. 3 : : 2017/07/08(土) 21:13:40
    紫「……正直その辺りは私にも解らないわ。普通人間が死んだらその後は幽霊になるか、極楽浄土や地獄に行くか……。」

    紫「死んだ人間が実体を持って復活するのは、外の世界ではまず有り得ないことよ。」


    ……一体なんなんだよ。



    紫「……で、どうするのかしら?」

    辿「なにが……?」

    紫「私のキマグレ……というか暇潰しに付き合ってくれないかしら?」


    ……暇潰し、ねぇ。


    辿「……正直私はあんたの事を信用してないわ。何の説明もなく幻想郷に連れていって、そのあと何の説明もなく消えた。そんなあんたの暇潰しに付き合うと思うの?」

    仮にも妖怪だから反論したら危険なのだが、一度死んだせいか、不思議と恐れはなかった。



    紫「まあそうよね。……そう言われても付き合ってもらうけど。」

    その瞬間スキマがぐばぁと開き、紫や私もろとも呑み込んだ。


    ……正直、また幻想郷に行けるのかとワクワクしていた。

  4. 4 : : 2017/07/08(土) 22:26:55
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――


    辿「……ここは?」
     

    スキマから出てきた先は、見覚えの無い廃屋だった。木造で蜘蛛の巣が張っている。

    ……よくよく考えなくても、こいつが幻想郷に連れてくるとは限らないのに何を期待していたのだろうか私は。

    ……ん、いや。ここは幻想郷か。幻想郷だな。


    紫「……あの場にいて誰かに見られたら不味いもの。だから少し落ち着ける場所にね。」

    辿「……マヨヒガ、ねぇ。」

    紫「あら、よく解ったわね。貴女来たことあるのかしら?」

    辿「一切無い。ただ、何かわかる。」

    紫「……。」


    不思議と解る。生前から妙に勘が当たる節はあったが、今のは勘とかではなく完全な確信があった。何故かは本当にわからないが。


    紫「……どうやらようやく目覚めたようね……?」

    辿「は?」


    なんだいきなり。中二病か?

  5. 5 : : 2017/07/19(水) 09:51:57
    紫「貴女はここに来て、沢山の能力を持っている妖怪や人間たちに会ったでしょ?」


    あぁ、あったな。確か。魔法使えたり時間止めたり場所と場所繋いだり。


    紫「……それが貴女にも目覚めたってだけよ。」

    辿「いやいや、まさかそんな妖怪じみた事、私の身に起こるわけない。」

    紫「ええ、実際貴女は私の事を信用してないし信じなくても構わないわ。」


    よーくわかってるな。


    紫「でも、それは事実よ。貴女が幻想郷で過ごしていくうちに解るわ。」


    ……ん?


    辿「あれ、私これから幻想郷で過ごすの?」

    紫「死んだ人間が外の世界で生きていけるとでも?」

    辿「いや、死んだらそのまま成仏とか……。」

    紫「幽霊でもないし悟りも開いてない奴が成仏できるわけないでしょう?」


    ……それはそうなんだが、マジで私は今どうなっているんだ。

  6. 6 : : 2017/07/19(水) 10:01:09
    紫「……貴女が実体をもって生きているのは明らかにおかしい。だから、とりあえず幻想郷で過ごしてもらった方が吉だわ。」

    辿「……そうか。」



    ……ふと紀伊を思い出した。


    辿「……いや、まさかな。」

    紫「……?」


    辿「で、どうするんだ? こういうボロっちいところでの暮らしにも一応慣れているが、私はここで暮らすのか?」

    紫「いや、申し訳ないけどここには手のかかる奴が2匹ほどいるからねぇ。」


    この2匹というのは……式神か。二体の式神がいるのに更に私を養うのは大妖怪とて厳しいらしい。

    というか式神という単語が突然頭に入ってきたことに驚きだ。本当にこれはただの勘ではないのかもしれない。


    辿「……じゃあさ。博麗神社に連れていってよ。霊夢ならあんたよりは信用できる。」

    紫「……勧めないわ。」

    辿「は?」

    紫「彼女は妖怪というか、幻想郷を脅かす異分子を許さないもの。一度死んだ上に、能力も手に入れた貴女を前の小さい存在と思えるほど霊夢は頭悪くないと思うわ。」


    ……そんなに私の存在ってのは異質なものなのだろうか。
  7. 7 : : 2017/07/23(日) 14:33:51
    紫「……というか……。」


    辿「……?」


    私の顔をじっくりと覗くように見る。口元に手を添えて何か考えるように黒目を下に向けたりする。


    紫「……。」

    辿「何だよ……?」


    紫「……なんでもないわ。」


    すっと姿勢を正し、私に背を向ける。そしてまた首をかしげたりと悩んでいるような仕草をする。


    辿「……。」


    ……。

    …………いったい私は何者なのか。なぜ生きているのか。

    紫の仕草を見ているうちに、晴れないその疑問を解きたくなってきた。



    辿「……なぁ。」

  8. 8 : : 2017/07/23(日) 14:45:14
    紫「あら、何かしら?」

    振り返り、私の顔を見ている。


    辿「いや、私自身はそんなことはないって考えてるけど。……もしそうなら『私の能力』ってどんなのなのさ。」

    確かにここ最近勘が鋭いが、勘が鋭いなんて能力ではないだろう。


    紫「断言はできないけど……。さっきここがマヨヒガという事を当てたからね。自分の位置を把握する能力とも思ったのだけれど……。」


    そこで言葉を止めると、ずいっと私の顔に頭を近づけて、目を見る……というか凝視して改めて言葉を続けた。


    紫「……最初に見つけた時の貴女に感じたモノだとか、今の貴女だとかを見ると、どうにもその程度の能力とは思えないのよ。」

    辿「まあ確かに場所以外にも色々な勘がここ最近当たってたからな。」

    紫「例えば?」


    辿「……本当に大したことはないんだよ。ご近所さんの年齢とか、近くの町で事故が起こってるとか、この総理大臣は政治資金を横領している、とか。」

    紫「大したことないって言葉の意味分かってるかしら?」

    辿「当ててる事象が大したことあっても数日後にはそれが明るみに出てたし。『うっわよく当たるなぁ。』って程度だったかな。」


    って、思い返してみると確かに気持ち悪いな。なんでそんなことわかってるんだ私。

  9. 9 : : 2017/07/23(日) 15:18:09
    紫「……ちなみに私の名前は解る?」

    辿「八雲紫……だろ。」


    なんだ唐突に。


    紫「博麗神社の巫女の名前は?」

    辿「博麗霊夢。」

    紫「守矢神社の巫女の名前は?」

    辿「東風谷早苗……。」

    紫「……この幻想郷の閻魔の名前は?」

    辿「四季映姫ヤマザナドゥ……。え、まさか合ってる?」


    閻魔とか守矢神社とか一切知らないんだけど。ただ頭にすっと情報が……。


    紫「……一言一句間違ってないわ。ただの勘でそんな綺麗に答えられるとは流石に思えないわね。」

    辿「実際私もそう思ってるからな。マジで人外か私は……。」

    紫「私の今の感情は解る?」


    辿「えっ…………うーん……驚愕。」


    紫「残念ながらもうそれは無いわ。答えは期待。感情は解らないみたいね。線引きが難しいところだけど……。」


    いや、そもそも今何を期待してるんだこのババアは。


  10. 10 : : 2017/07/23(日) 15:26:10
    紫「まあ貴女の能力はそんなものよ多分。感情以外なら割りと何でもわかるんじゃないかしら?」

    辿「……じゃああんたが○歳ってのも正しいか?」


    返答はないが、そう言ったとたん露骨に下唇を噛んだから多分当たりだろうな。

    ……結構年食ってんなぁ。


    辿「あー……でも結構とんでもない能力なんじゃないか、これ。だって今頭痛いもん。」

    紫「まあ……大したことないのには宝の持ち腐れね。頭痛くなるってことは乱用はできないってことじゃないかしら……。」


    生きてたときに頭痛くなってたのは、そういう情報を頭に無条件で入れていたのかもしれないな。


    辿「……情報を司る程度の能力、とかどうだろうか。」

    紫「もしかして貴女、中二病なの?」

    辿「ちゃうし。」


    ただゲーム作ってたからそういう痛いネーミングが思い付くんだよ……。


    紫「……まあ能力は自己申告だもの。どう名乗ろうといいんじゃないかしら。」

    辿「よっしゃ!」


    ちょっとカッコよくて嬉しくなるからやっぱり中二病なのかな。ええい、そういうの発病してるとかも解らないのかこの能力……は…………

  11. 11 : : 2017/07/23(日) 15:56:53
    辿「…………。」


    紫「……どうしたのかしら。唐突に青ざめて。」


    ……いや、まさか本当に。


    辿「紫、あんた私が見えてるよな。」

    紫「ええ。」


    辿「……私はどうなっている?」

    紫「質問の意図が掴めないわ。はっきりと聞きたいことを言いなさい。」


    ……。


    辿「今、私は……人間に見えるか?」

    紫「……人の形はしてるわ。」

    辿「そういうのじゃない……。私の……私の顔は…………?」


    紫は深いため息を吐き、冷たい目で私の顔をしっかりと見て言い放った。


    紫「……黒目にはヒビか入って、耳は尖っている。口には牙が生えているし、とても人間には見えないわね。」


    辿「そうか……。」



    この間は魔人だとか言っていたが、頭の中にふと入ってきた情報は、私を人間とは認定してくれなかった。


    辿「…………人妖……かぁ。」

  12. 12 : : 2017/07/23(日) 16:24:46
    紫「……そうね。ここまでえげつない変化がある人妖は初めて見たけど……。」

    そんなにか。


    紫「……まあそういうこともあるから霊夢には会わせられないわ。」

    辿「仕方ねえな、こうなっちゃ。」


    ……正直実感はないんだよな。目は普通に見えてるし歯も普通に噛み合うし。耳は……触ったら普通に尖ってたけど。


    辿「…………こうなってちゃ流石に外の世界にも居られないな。」

    紫「ええそうね。何か怨まれたり瘴気を体内に蓄積したりしたかしら?」

    辿「どっちも思い当たる節がありすぎる。」


    ……結果的に紀伊に言われた通りになってしまった。


    辿「……はぁ。」

    紫「……そんなに落ち込んでもしょうがないわよ。」


    辿「そうなんだが……、自分が人間じゃなくなるって相当な恐怖なんだぞお前…………。」


    いや、恐怖というか……喪失感? 少なくともいい気分ではないな。

  13. 13 : : 2017/07/27(木) 20:30:29
    辿「あ、じゃあさ。」


    霊夢以外に会えばまだ平気なのでは。少なくとも私と同じようなのもいるし。


    紫「何かしら?」

    辿「人里に連れてってもらえるか?」

    紫「……構いはしないけど、見た目が普通に人外なんだから確りとそれ意識して行動しなさいよ?」

    辿「あーそれは平気。人里の外れだし。」


    そう、とりあえず紀伊に会おう。私が知っている中で人妖なのは彼女一人だ。



    紫「……解ったわ。」


    紫はそう呟くとすうっと隙間を出現させた。何回も見ているせいかもはやあまり驚かなくなってしまっている自分が少し嫌だ。



    辿「……今度、ちゃんと私を連れてきた理由を納得するように教えてよ?」

    紫にそれだけ伝え、用意されたスキマに飛び込んだ。

  14. 14 : : 2017/07/27(木) 20:48:56
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――


    辿「いっつつつ……。えっとここは?」


    出口の隙間が空中だったようで思いっきり地面に激突した。

    起き上がって周りを見てみるが文衛神社はない。まあ人里の外れとしか言わなかったから仕方ないか。


    辿「えっと、文衛神社は……こっちか。」

    辿「あっ、便利。この能力便利。道に迷わない。」


    思わず声に漏れてしまったが、本当に手に取るように解る。なんか全能にでもなった気分だ。

    ……なんて思い上がらないでおこう。流石に私よりすごい奴は幻想郷にはたくさん居るだろうし。


    辿「……っと……。」

    とりあえず周りを気にしながら進む。私は人外になってしまったようだから、人目は避けたい。

    というか紫にもあまり見られないほうがいい的なこと言われたしな。

    あ、いやそれとも人外ってことを意識してむしろ堂々と? いや、ないか。


    ……彼是考えても仕方ないんだろうけど。こんなこと想定してないから彼是そりゃ考えてしまうよな。
  15. 15 : : 2017/07/27(木) 21:06:33
    というか私が死んだってことは流石に事実だよな。私の死体あったし。

    でもって、今の私は人間でも幽霊でもなく人妖。人間から進化か昇華か退化か知らないけど、もともとは人間なんだよね。

    まあ後天的にしか人妖にならないっていう仮定の時点で間違ってるのかもしれないけど。でも私が人妖が後天的にしかならないって考えてるってことはそうなんじゃないか。


    ……


    いや、マジでこの能力信用しちゃってるけどそうじゃない可能性もあるよ酔うな自分に。


    ……まあそれはおいといて。やっぱり生き返ったのが謎だよな。特に私の死体があるってところが。

    いったいなぜ、人妖になるときは分裂でもすんのか?

    ……分裂はねえな流石に。純粋にそれは気持ち悪いわ。


    瘴気の溜めすぎだとか恨まれすぎとかで何か突然変異でも起こしたのかなぁ。

    …………あー、こういうことに限ってなんの情報も頭の中に流れてこないな。自分の頭で考えろってか?



    辿「……あ、ついた。」


    とか言ってたら文衛神社に着いた。こうなってくると本当に私の能力はあるんだろうなって思える。

  16. 16 : : 2017/07/27(木) 21:54:39
    相変わらず中は暗い。私がいたときはある程度処理していた蜘蛛の巣とかもすっかり広がっている。


    ……というか。


    辿「前はこんな暗いところで、こんなに目見えなかったよなぁ……?」 


    少なくとも生前というべきか人間の時にいうべきか、その頃はここまでくっきりはっきりとは見えてなかったはず。

    なんで目にヒビはいってんのに寧ろ視力上がってるんだ。


    見た感じ辺りに紀伊はいない。っていうことは奥の方か。特に奥何もないのにいつも何やってんのかね。

    自慰とかかな。


    ……いかんいかん何考えるんだ。


    まあとにかく奥に紀伊は居るだろう。外出しなさそうだし。あとこの能力によっても奥にいることになっている。


    変な考えは払拭して、紀伊のいるはずの奥の部屋へ進んだ。
  17. 17 : : 2017/07/31(月) 22:24:01
    ……さてついた。ここに紀伊は居るはずだが……。


    ?「……おや、こんなところに来るなんてどうしたのかねぇ……?」

    辿「あー、そういう風に格好つけるのいいから降りてきなよ紀伊。」

    ?「へえ? わ、わかった。」


    ……まあ居るよな。相変わらず天井近くにいたようで声をかけるとふわふわと降りてきた。

    あ、というか私も空を飛べるのかな。あとで試してみるかな。



    紀伊「……っと。声からしてそうだと思ったけどねぇ……。戻ってきたのかい、辿。」

    辿「まあな。色々な事情で幻想郷でまた暮らすことになった。」


    紀伊「……。」

    紀伊「……その顔からして、そっか。なっちゃったみたいだねぇ……。」


    じっと私の顔を見つめてそう言った。どうやら本当に人目見れば人外だと解るような見た目なんだな。

    紫を信用してないと言えば信用してないが、やはり知っているやつにもその態度が現れると心に厳しいものがある。

  18. 18 : : 2017/09/20(水) 20:27:32
    紀伊「……魔人ねえ。」

    辿「あ、すまん。どうやら人が妖怪になるのは人妖で良いみたいだ。」

    紀伊「……それはそれとして。辿、気分はどうかい?」


    気分って……。


    辿「混乱して正常な思考になってないのかもしれない、けど、案外冷静ではあるよ。」

    紀伊「……そうだねぇ。一応忠告はしてあったし、ちょっとした覚悟はあったのかねぇ。」


    額に手を乗せて、少し考えている様子の紀伊。何を考えているのかは分からないのが少しもどかしい。


    紀伊「……とりあえずは人妖になってしまった経緯だとか、またここに来た理由とか。その辺りを教えてくれないかねぇ。」

    辿「……お安いご用さ。」


    私の知る唯一の人妖だ。話してみれば少しは自分がどうするべきか、とかも分かるかもしれない。


  19. 19 : : 2017/09/20(水) 20:36:09
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――


    紀伊「なかなかに奇怪だねぇ。死んだのに生きてるってのは、本当奇怪だねぇ。」


    目を見開かせて腰を揺らしながら私の顔を見る。不思議がってはいるが前の私みたいが紀伊に向けてたように気味悪がっている様子ではない。



    辿「……紀伊が人妖になったときはこんなんじゃなかったのか?」

    紀伊「少なくとも死体が残ってる、なんてことはなかったねぇ。ひょっとしたら私も一回死んだのかもしれないのだけどねぇ?」


    辿「……ん?」

    紀伊「いや、なに。ちょっとばかし平屋を屋根づたいに走っていた時に転んじまってねぇ。その時からなのさ。私の死体は無かったけど。」


    ……っということは本当に私は人妖でもなかなかにヘンテコなんだな。どういうこった。


    辿「うーん、他に人妖っていないかなぁ。もう少し情報がほしい。」

    紀伊「……後天的に人間から人外になった奴なら一人ほど知ってるけどねぇ。」


    えっ?

  20. 20 : : 2017/09/20(水) 20:48:46
    ?「…………いや、来たらなんかいるし…………入るタイミング逃してたわ……。」


    ……あー! いたなこんなのも。


    紀伊「まあ戦った仲だし、解るよねぇ。厳密には人妖ではないだろうけど、元人間だからたまに話したりしてるのさ。」


    辿「なんだっけお前。影刃だっけ。」


    影刃「……うん。」


    戦いの時はまあまあピチッとしたスーツを着ていたが、今目の前にいるのは完全にパジャマでだるそうだ。

    まあスーツ着てたときもダルそうだったが。


    紀伊「ライラに人間から使い魔にされて、だ。もちろん境遇は違うけど似たようなものじゃないかね。」

    影刃「……正直まったく話聞いてなかったから、なんかあるならもう一回話してほしいんだけど…………。」


    あくびをして眠そうな目で私を見ながら、低い声で私に言った。

    とてつもなく眠そうで申し訳ないが、人の意見が欲しいのも事実だ。ここは影刃の話も聞いてみよう。


  21. 21 : : 2017/09/26(火) 00:28:34
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――


    影刃「……悪いけどさっぱりね……。とりあえず表沙汰にならないように……、こことかで身を潜めてる方が得策だと思うけど…………。」


    うーん、やっぱりわからないもんだな。


    辿「霊夢に聞くのはどうだろうか?」

    紀伊「やめときなやめときな。どうなるかわかったもんじゃないしねぇ。」


    ……。

    やっぱり霊夢は人外というか、そういうのは目の敵にしてるのだろうか。


    紀伊「あと、ここもたまに霊夢が私の様子を見に来る。ここで匿うのは得策じゃないねぇ。」

    影刃「……どうするのさ。」


    正直ここ以外に宛がない。ここじゃないとなると真面目に博麗神社ぐらいしか思い付かない。

  22. 22 : : 2017/09/26(火) 00:49:08
    紀伊「確か辿は永遠亭に行ったことあったよね?」


    永遠亭……? えっと…………。



    影刃「……診療所、みたいなところね……。」

    辿「……あー。あの時か。」



    フランの弾幕が当たって腕を怪我したとき行った所か。あのたゆんたゆんの医者がいたところ。


    紀伊「……私も実際に会ったことはないんだけど…………。そこの竹林にどうやら『死なない人間』がいるらしいのさ。」

    辿「…………ほう?」


    なかなかに興味深いな。


    紀伊「風の噂に聞いただけだからあまり信憑性はないけどさ。」

    影刃「……その人が匿ってくれるの……?」 

    紀伊「いや、そういう訳じゃないけど……、まあ選択肢にはなるかと思ってさ。匿うのは…………どこも無理そうなら私が頑張るさ。」


    ……死なない人間、か。その人も人妖だったりするのだろうか。


    辿「ありがとう、まあとりあえず明日行くよ。今日の所は……ここに匿わせてもらっていい?」

    紀伊「ん。」

    影刃「……目的ができたならよかったわ……、私なにもしてないけど。」


    とりあえずは明日になるまで待とう。


    人ではない体になったりと色々とあったせいか、幻想郷にはじめて来たときのようにグッスリと眠れた。

  23. 23 : : 2017/09/26(火) 00:55:47
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――


    …………朝、なんだろう。

    いまいちこの社は暗くて時間が解りづらい。それは人妖になっても割りと同じなんだな。


    紀伊「ああ、起きたかい。朝御飯できてるよ。」


    頭にバンダナを巻いた紀伊が野菜炒めを持ちながら台所っぽいところから出てきた。

    ……見た感じはただの良妻だな。



    紀伊「…………今日、竹林に行くときに注意してほしいのは人に見られない事。それだけは守って。」



    じっと私の顔を見つめる。そんなに顔立ち変わっているのだろうか。


    辿「おう。……でもさ。あの竹林結構広かったぞ? そんな簡単に見つけられるかなぁ。」

    紀伊「まあそう簡単には見つからないと思うさ。でも辿もそう簡単に死なないからねぇ。」


    本当に簡単に死なないのかな。いまいちそこはわからないが。


    紀伊「……本当にいるのかも怪しいさ。もし居なさそうなら、すぐ戻ってきて考え直そうか。」


    そういうと私を見て微笑んだ。なんとなくここにもどってきていいと思えて、少し安心した。



    それにしても竹林の死なない人間か。この能力使えば居るかも解るのかな。
  24. 24 : : 2017/09/27(水) 18:45:44
    野菜炒めをたいらげて、服をしっかりと整える。

    よく考えたら着替えは何一つとして持ってきてないから、このままこの服で生活しなきゃいけないのだろうか。せめて洗濯したいところだ。



    辿「……んじゃ、行ってくるわ。」

    紀伊「……本当に気を付けるんだよ。 酷かもしれないけど、人間に化けてないその姿を普通の人間に見られたら……。」


    そこで口を止めるなよ気になるだろ。

    うーん……、恐がられたりするのかな。もしそうならどんだけ酷い顔をしてるんだ私は。


    辿「まあとにかく注意は怠らねえよ。実際に人に見られたくないのは私自身も同じだ。」

    紀伊「それならいいんだけどさ。」



    改めて服を整えて出る準備をする。埃っぽいから油断してると直ぐに汚れてしまうようだ。



    辿「……行ってきます。」

    まるで家みたいに言ってしまったが、間違いではないよな。


    紀伊「はいよ、いってらっしゃい。」


    ……紀伊の返事を聞き、私は神社の外に出た。

  25. 25 : : 2017/09/27(水) 19:03:24
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――


    外に出た。能力によるとどうやら私は飛べるようなのだが、飛べる自信はないし飛べば目立つから地道に歩くことにする。

    そもそも飛べるとなると本当に人外だなぁ。ちょっと試してみたい気もする。


    ……まあそれはしないが。



    さっき服を整えてて気が付いたが、私の死体は服はしっかりと着ていたはずだ。だってわざわざ全裸になって首なんて吊らない。

    だが、私も服も着ている。もしもまともに転生したのであれば。いやまともに転生ってのも訳がわからない話だけど、そうなら生き返った私は全裸なのではないだろうか。

    そうじゃないなら服も元々の私から受け継いで、死んでいる私が全裸だったりするのではないか。
     

    要するに身に付けるものごと私は生き返ったってことだ。

    それが何を意味しているのかなんて、せいぜいゲームを作るくらいの頭しかない私にはさっぱりわからないが。


    ……もしここで死んでも生き返るなら、の話だけど服とか永久に生み出せるのでは。死んで生まれた服を売る商売とかできないかなぁ。


    ……いや、それは問題だろ。いくら幻想郷だろうと死者から生まれた服を売り捌くのは問題だろう。うん。

  26. 26 : : 2017/09/27(水) 19:19:35
    でもこのままここで生きていくのであれば商売だとかしていくのも手かもしれないな。

    というか紀伊はどうやって生きてるんだ。あの野菜炒めを作る材料とか作ってるのか? 少なくとも商売してるようには見えないが。


    ……いや、まず酷い顔らしいこの姿を何とかしないといけないか。ネックウォーマーを口許まで持っていけば……目も異常があるらしいから意味ないな。


    うーん? 困ったな。ここで生きていける気がしないぞ。


    もしも種族的に食事を必要としてなくても、スマホがないこの世界では食事も娯楽として貴重だ。

    他には……今までに会った、リグルだとかレミリアだとかいう妖怪たちにも見つからない方がいいのかな。

    妖怪ならまだ私のことビビらないだろうし。紀伊と、あの暗そうな奴としか話せないのは正直嫌だなぁ。



    辿「……っと。こっちか。」


    正直竹林までの道は殆ど覚えてない。完全に能力頼りだ。

    もはや能力を完全に信用してしまっているが、ひょっとしたら妙な落とし穴があるかもしれない。

    いまのところのデメリットは多用すると頭が痛くなるくらいだ。実際今も軽く痛みを感じるが、まあ十分耐えられる痛みだ。



    辿「っと、人里を抜けそうだな。竹林までは大した距離じゃないようだし……。」


    人目も恐らく平気だろう。少しの間ならちょっと試してみるか。


  27. 27 : : 2017/09/27(水) 19:25:27
    辿「うおおお!!!」


    ヤバイ、これは病み付きになる。やべえ。



    辿「私、空飛んでるよ! うわぁあぁ!!!」


    想定以上の爽快感。人間の時には味わえないだろう。

    というか空飛べるってことは本当に人外確定かぁ。まあいい加減受け入れるしかないかぁ。


    そして歩きより断然早い。ちんたら歩くのが少しもったいなく感じるレベルには早いし心地いい。


    辿「うわぁぁぁ!」

    まるで純粋な子供みたいにはしゃいでしまっているのが少し恥ずかしいが、それを吹き飛ばす程度には本当に気持ちいい。死んでよかった。それは違うか。



    辿「ってもうか! 早いな!」


    なーんて満喫していたら竹林にさっさと到達してしまった。少し残念だが、あのまま飛んでても誰かに見つかるかもしれないしまあ仕方ない。


    本来の目的である死なない人間を捜すとしよう。



  28. 28 : : 2017/09/27(水) 19:36:29
    さて、上から見た感じだと竹が鬱蒼としててまったく見えなかった。歩きでも油断してたら直ぐに迷ってしまいそうだ。



    辿「っ……と。」


    地面に足をつけてみると本当に竹が林どころかジャングルかよって思うほどに生えてる。この中に本当にいるのかな。能力を使って確かめてみるか。


    …………。



    頭痛い…………。



    …………。




    あ、頭が…………。ダメだ。竹林全体の情報を受け取ろうとしたらこの竹が樹齢何年だとか、余りにも必要のない情報が頭の中に無数に入ってきてとても能力を便りに捜せる状況じゃない。


    恐らくこれ以上情報を受け取ってたら私の容量メモリが足りなくて処理落ちしてしまったりするのだろうか。死ぬのかはわからないが、どうにしろ死ぬほど頭痛くなる。


    こういう情報量が多い所で能力を使うのは私の負担でしかない。頑張ってセーブしよう。



    辿「じゃあ、捜すか……。」


    正直面倒だか竹林の中にしらみ潰しに捜すしかないな。

  29. 29 : : 2017/09/27(水) 19:41:21
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――



    満身創痍。


    何より捜すのも辛いが、情報量をセーブしたくても仕切れないらしく常に竹の情報が頭の中に流れてくる。



    ……あれ、なんか……。




    辿「…………。」



    ドサッ、という音がした。自分の体に衝撃が走った。どうやら私は倒れたようだ。


    こうなったらスマホとかなら冷却とかして電源を切って放置…………電源を切る…………か。


    ……。



















    ?「……? なんだ、人が倒れてる!?」


  30. 30 : : 2017/09/27(水) 19:51:53
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――


    辿「……ん…………?」



    目が覚めた。頭痛もしない。感覚もある。死んではない。

    でも、私が倒れた時の景色とは違う。竹が青々と繁っている場所で倒れていたが、今いるところは……なんかお婆ちゃんの家みたいな景色だ。



    ?「……あーよかった! 目が覚めたみたいだ!」

    ?「あら……じゃあ私が来た意味無かったかしら?」



    部屋の向こうの方から物音と共に二人の女性の声が聞こえた。体を起こしてその姿を確認する。



    辿「……ん? あー!」


    ?「へ?」

    ?「…………あら、随分と変わっちゃったわね貴女。」


    私はこの人を知ってる。このドギツいカラーセンスの服は流石に忘れない。


    辿「永琳先生!」


    永琳「……本当に変わっちゃったわね。辿、だったかしら?」

    ?「え? は?」



    永琳さんだ。隣にいる白髪の人は存じ上げないが、知ってる人が目の前に現れただけで正直かなり安心した。


  31. 31 : : 2017/09/27(水) 20:05:51
    永琳「……ここにいる妹紅ってのが貴女が倒れてるのを見つけて私を連れてきたのよ。」


    辿「もこう?」

    妹紅「心臓も止まってたし、本気で死んでるのかと思ったよ。」


    心臓止まってたのか。ってことは、私の電源が切られると仮死状態にでもなるのかな。まあこの辺りはもう少し自分で考えてみよう。



    永琳「まあ生きてるのならいいのだけれど……、それよりも。貴女、前会ったときはただの人間だったわよね? それも外の世界の。」

    妹紅「え? なにそれ。」

    永琳「後で話すわ。でも今いる貴女はとても人間とは言えないわね? 何があったの?」


    ……この人、どれ程生きてきたのかは解らない。能力もまだ機能してないから調べることもできないが、その顔で見つめられると見透かされてるようで少し恐い。


    辿「妹紅さんには悪いけど、長い話になるけどいいですか?」


    永琳「私は一向に構わないわ。」

    妹紅「できればその、前に永琳と会ったことのある件も交えて教えてくれると嬉しいかな。」


    辿「なら……いっそ全部話しますか。まず紫に拐われたところから……」



    そうして本当に長い話だが、今までの顛末とこの竹林に来た理由を二人に話した。


  32. 32 : : 2017/09/27(水) 20:31:03
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――

    永琳「なるほど。長い間生きてるけどなかなかに奇怪な生き方してるわね。」

    妹紅「その、そんな短い生なのに辛い思いして、大変だったな?」



    ……殆ど私の人生も洗いざらい吐いてしまったが、まあこの人たちは最低限のデリカシーはあるように感じた。別にこの事を他言しようとかは無いだろう。



    辿「で、この竹林にいるらしい死なない人間を捜してるんですけど……。」


    妹紅「んまあそれは私だろうね。種族上は人間だけど。」


    辿「えっ。」

    永琳「ちょっとした薬を飲んでね、種族上は人間なんだけれど、死なないのよ。」


    辿「っていうことは、私が捜してたのは……妹紅さん?」


    妹紅「さっきもいったけど、だと思うよ?」



    §藤原妹紅(燃ゆる人の子のフェニックス) (ふじわらのもこう)§
  33. 33 : : 2017/10/03(火) 00:42:27
    なんてこった、一回意識失ったとはいえ案外さっさと見つかった。もっと長期戦になるかと思っていたのだが。


    妹紅「うーん、でね。結論から言うと辿のそういう死に方はまあまあ長く生きてる私も知らないね。」

    永琳「…………まあ私もよくわからないわ。全知全能でも何でもないもの。」


    辿「んじゃあ、ここで匿ったりはできませんか?」

    紀伊の神社で世話になっても私は構わないのだが、霊夢が偵察に来るのが不安だ。


    妹紅「……それはそもそも辿自身にとって難しい問題だろう? 今は能力がセーブされてるかもしれないが、ここは倒れる原因になった竹林の中だよ?」

    辿「あー、そっか…………。」


    と、なるとやっぱり文衛神社が一番楽なのかもしれないな。


    永琳「……これから、どうするつもりかしら?」

    辿「とりあえずさっき話した紀伊って奴のところに戻る。振り出しに戻ったって報告しないとな。」


    ……こうも私の死について糸口が掴めないとなると、気にしない方が吉なのかもしれないな。

  34. 34 : : 2017/10/03(火) 06:52:35
    妹紅「……それなら私が送っていくよ。また倒れられても困るし、ここは案内がないと迷いやすいしね。」


    妹紅さんは、あぐらの状態からよっこらしょ、と声を出しながらその場に立ち上がり、私の顔を見た。


    永琳「……まあそうね。霊夢を避けてるなら一人よりも二人の方がいいと思うわ。」

    辿「永琳先生は来てくれないんですか?」

    永琳「さすがに一患者を外に送り届けられるほど私は暇じゃないし優しくないわ。」


    ああそっか。私が倒れてたから連れてこられただけだもんな。しかも来てみたら私元気だし。


    永琳「まあでも、そうね。精神的に不安定になることがあれば呼びなさい。そういう薬なら処方してあげるわ。」

    辿「……ありがとう。」


    ……どうやら少しずつ直ってきたようだ。竹の情報が徐々に頭に入ってくる。



    辿「……能力が回復してきた。また倒れる前に帰らせてもらうよ。」

    妹紅「ん、そうか。じゃあ行くぞ。」



    妹紅さんが私の手を引いて起こしてくれた。

    その手には無数の傷痕が沢山あった。途方もない時間を生きてきたからだろうか、正直想像はできてないが…………。

    自分が、こんなリストバンドとかで傷を隠している事が少し情けなく思った。

    永い時間を生きてきただけで、同じ人間なのに。……もう私は人間ではないけれど。



    …………こういう風にずっと元気に私は生きていけるのだろうか。
  35. 35 : : 2017/10/03(火) 16:33:18
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――


    魔理沙「おーい霊夢ー!」

    魔理沙「ってあれ、居ないのか?」


    萃香「ちょっと里の方まで降りてるよ。そろそろ帰ってくるけどね。」


    魔理沙「うーん、そうか。」

    萃香「どうしたんだい? 何か急用でもあったのか?」

    魔理沙「いや、単純にな。さっき迷いの竹林の方に見掛けない妖怪が飛んでたんだ。遠巻きだったから顔とかはちゃんと見てないんだが……。」


    霊夢「へえ、新しい妖怪でも生まれたのかしらね。」

    魔理沙「お、霊夢帰ってきたか。気にならないか? 楽しそうじゃないか?」

    霊夢「……楽しそうとは思わないけど……、何か変な野心でも持っていたら困るわ。ちょっと様子でも見に行こうかしら?」

    魔理沙「霊夢ならそういうと思ったぜ! 未確認飛行妖怪を探しにいくぞー!」

    霊夢「はいはい……。」

  36. 36 : : 2017/10/03(火) 16:51:25
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――


    妹紅「それにしても、竹がダメなら道の石とか、下手したら空気とかもアウトな気もするけど。」

    辿「質量や情報量が少ないものはシャットアウトできるのかな?」

    辿「あ、いや。いつもは能力を使わないのに竹林に来るのに結構酷使したり飛び慣れてないのに飛んでみたりしたから、自分で言うことが聞かなかったのかもしれない。」


    実際今は竹の情報はシャットアウトできてるし。


    妹紅「なかなか使いどころが難しそうな能力だな。まあここには使い道のないような能力を持ってる奴も幾らか居るが……」

    辿「へえ……。」

    妹紅「……。」

    辿「……。」


    妹紅「ご、ごめんな? 普段は慣れ親しんだ奴くらいとしか話さないから話題が思い付かないんだ。」

    辿「い、いえ! こっちこそ全然話さなくて!」


    ……なんというか、色々と考え事をしてしまって言葉が思うように出てこない。


    辿「あ、そうだ。ちなみに妹紅さんは霊夢のことをどう思ってるんですか?」

    妹紅「へ? どうって……あぁ。妖怪に対する扱いとかその辺りの話?」

    辿「ええ、さっき話した紀伊とか……快く思われてないみたいなんで。」


    妹紅さんは顎に手を持っていき、上を見たり下を見たり。恐らく考えているんだろうが。

  37. 37 : : 2017/10/03(火) 23:41:33
    妹紅「本当は優しい奴なんだよ。妖怪も実はそこまで嫌ってるわけではないんだ。」 


    正直、意外な返答だった。


    妹紅「……確かに最近の霊夢はキツいよ。でもそれはこの幻想郷を守らなきゃいけない、っていう責任が強いから。それに必死になって余裕がなくなってる。」

    辿「……。」


    妹紅「要するに不器用。あの若さじゃ仕方ないね。」

    辿「……でもやっぱり。なにもしてないのに危険だと判断されるのはな。」


    妹紅「……実際に紀伊ってのに会ったことないから私は危険じゃないとも言い切れないけどね……」

    辿「…………。」



    でもやっぱり、怪しいからとか力を持ってるからとかって理由で紀伊が目の敵にされてるのは、なんというか可哀想じゃないか。




    ?「……あら? ご無沙汰ね。」


    突如声が聞こえた。上からだ。



    辿「……!」


    ここに来て見つかってしまったのか……!




    霊夢「随分と酷い顔になったわね。辿?」

  38. 38 : : 2017/10/16(月) 21:05:52
    妹紅「……マジか。」

    妹紅も思わず声を漏らし、腰を低くして身構える。


    霊夢「……何も取って食いやしないわ。妖怪じゃあるまいし。」


    霊夢は静かにゆっくりと降りてきて地面に脚をついた。

    霊夢「……。」


    軽い笑みを浮かべ、静かに一歩ずつ私の前に近付いてくる。ただの人間とは思えない、なにか猛獣が近付いてくるような緊張を感じた。



    一歩。もう一歩進めばぶつかる位置まで寄ってきて、その微笑は変えずに静かに言ってきた。



    霊夢「……今、私は貴女に何が起きて人外の身に堕ちたかは解らない。とりあえず少し話は聞かせてもらうけど……。」



    「……私が手に掛けなければならないようなことはしないでね。」



    微笑はその時には消えていた。
  39. 39 : : 2017/10/16(月) 21:47:47
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――



    文衛神社。

    霊夢に連れてこられる形で来たのは博麗神社ではなくここだった。



    霊夢「……とにかく経緯を教えてくれるかしら。」

    辿「……っ……。」


    仮にも私と同じぐらいかそれよりも若い女性なのに、鬼かと思うほどに圧倒される。思わず声が詰まるほどに。



    妹紅「……ま、まあ。そんなに邪険に扱う必要もないんじゃないかな?」


    辿「……いや、フォローはいいよ。今のところ危険視されてるのは私もよーくわかるからな。」


    霊夢「そうよ。だから、それの甲乙を付けるためにも早く言ってくれると助かるわ。」


    ……正直なんとか危険視を逃れようと適当に取り繕うようにしたら、感付かれてその方が危ないな。


    ……紀伊や妹紅にした通りの説明をそのまま霊夢にも話した。

  40. 40 : : 2017/10/16(月) 22:00:54
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――



    霊夢「……なるほどね。」

    辿「……包み隠さず話したぞ。一応やましい気持ちがないのは伝わったと思うが。」


    霊夢「……。」


    私の事を睨む。いや、多分睨んでるつもりはないのだろうけど、目付きが怖すぎる。



    霊夢「……そうね。まあ貴女がやましい気持ちが今はないのが解ったわ。」


    ……今は、か。


    霊夢「申し訳ないわね。どんなに貴女の心が清くても、突然強大な力を手に入れた者は何をしでかすか解らない。
    勿論、今はその気はなくても。見極めるにはもう少し貴女の事を見定めさせてもらうわ。」


    辿「……まあ、解ったよ。」


    とりあえずは要監視人物、みたいなところか。まだよかった。



    霊夢「……それに。」


    辿「……?」


    私の顔を見て今度は悩むように手元を口に持っていく。



    霊夢「……いえ、なんでもないわ。」


    そういうの、一番気になるから言えよ。と言いたかったとこだが、下手な言動は今は少し避けたく思う。

  41. 41 : : 2017/10/16(月) 22:21:03
    霊夢「……辿。」


    辿「ん?」



    さっきまでとは変わって、少し柔らかめの声で呼び掛けてきた。


    霊夢「……キツいことは言ったけど、人妖になる前の下品で元気そうな貴女も私は知ってる。」

    下品は余計だ。


    霊夢「今は色々と混乱してると思うけど、危険視する必要がない、前のような辿であることを私は願ってるわ。」


    辿「……おう。」



    妹紅「……なんだかんだ居座ってたけど、とりあえずは平気そうだな。私は戻るよ。」


    霊夢「私も帰るわ。たまに二人の様子見に来るわ。」


    辿「おう。」

    紀伊「はいよ。」



    ……そういって二人は神社から去っていった。






    ……強大な力を手に入れた者は、本当に何をしでかすか解らないものだ。それをこの時の私にはまだ理解できなかった。

  42. 42 : : 2017/10/16(月) 22:25:35
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――



    霊夢「……。」

    妹紅「そういえば霊夢。さっき辿に何を言おうとしてたのさ?」


    霊夢「……ちゃんと調べてないからよく解らないけどね。」

    妹紅「……?」


    霊夢「…………辿、誰かに呪われてるわ。」


    妹紅「……ほう? ……話に出てきた湯島って奴か?」

    霊夢「いや、それとはまた別の……呪いというか暗示というか。」


    霊夢「ちゃんと調べてないことをわざわざ辿に伝えることもどうかと思うしね。次とかに様子見に行ったときに調べてみるわ。」

    妹紅「……そうか。」

    霊夢「……。」


  43. 43 : : 2017/10/20(金) 22:02:34
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――




    「……ちくしょう。」



    迂闊だった。今只でさえ精神的に参っているんだ。もっと確りと見張っておくべきだった。



    「……くっそ、何処にいるんだ!」




    辿が死んでから数日。一番身近だった存在が消えた感情を体験したことない俺は、その感情を甘く見ていたのかもしれない。


    居なくなってしまったのだ。





    蓮「っそ…………。あいつ……!」




    …………辿の妹である届菜が。

  44. 44 : : 2017/10/20(金) 22:31:11
    届菜が居なくなったのは昨日から。辿が死んでからというもの、あいつは自分も死んでしまったかのように無気力な様子だった。


    辿の母親が用を足していた数分。その隙に届菜は居なくなってしまったそうだ。



    今は辿の家族と分担して捜しているが、心当たりのあるところは全て捜した。あとは手当たり次第に捜しているが、行動範囲を絞れないため
    自分含む数人ではどうにも捜しきれない。



    蓮「……こうなったら。」



    本来は外の世界に来ることも善い事ではないし、これも恐らくダメなんだろうが、それでも少しでも人手や力が欲しい。



    ……母さんに少し頼んでみよう。


  45. 45 : : 2017/10/20(金) 22:44:00
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――


    ライラ「無理。」

    蓮「……だよな。」



    ……はるばるこんなところにまで戻ってきて、本当にこれだけで終わってしまう。

    逆らおうにも俺は使い魔。体が言うことを聞かない。少しだけ影刃姉さんが羨ましく思う。



    龍虎は母さんにただただ従順だから期待できないし、唯一期待できる影刃姉さんは肝心なときにいない。いつも寝てるだけの癖に。


    母さんは俺を冷たい顔で見つめ続けるだけで、決して意思が変わることが無いように見える。



    蓮「……無駄足だったな。」



    自分の意思を押し通せない苦しさ、影刃姉さんの気持ちが数百年ほど生きてきてようやく少し分かった気もする。


    ささやかな反抗で少し睨もうとして、俺は外の世界に戻った。


  46. 46 : : 2017/10/20(金) 22:57:09
    蓮「……ちっ……。」


    親に対する反抗はこれが初めてだ。今まではその気が無かったが。

    そう考えると思いの外辿や届菜は俺の中で大きい存在のようだ。せいぜい十数年の付き合いだと言うのに。



    蓮「あとは……。」



    …………。



    湯島にはもう辿の親が聞いてあるが、あのあいつの事だ。変にのらりくらり嘘でかわしてたのかもしれない。


    というか届菜が行方知れずになったというのになかなか姿を見せないどころかその辿の親以降は完全見ていない。

    が、届菜以上に繋がりがない人間だ。どこにいるかなんて本当に思い付かない。家も連絡先も知らない。ゆえに湯島の存在を一回置いておいて届菜を捜していた。


    だから、湯島を捜すというのも難しい話ではあるのだが…………ん?



    蓮「……いや、よく考えれば。」



    蓮「…………あの人に聞けば解る……!」

  47. 47 : : 2017/10/20(金) 23:04:47
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――

    高校。辿の死以降は届菜の世話などで一度も来ていなかったが……。




    蓮「先生! 湯島先生!」



    ……湯島の伯父にあたる教師がこの学校には居た。基本的に関わらない先生だから今の今まで忘れてしまっていたが……。



    湯島「ん? どうした?」


    よかった。居た。



    蓮「簡潔に用件だけ言います! 甥の湯島……雅也って今どこにいるかわかりますか!?」


    湯島「雅也? いや、俺は知らないが……、父親に電話掛けてみるか?」

    蓮「お願いします!!」


    湯島「……! 待ってろ。今すぐ掛ける。」



    どうやらただ事ではない気配を察知してくれたらしく、急いでスマートフォンを取り出して電話を掛ける。

  48. 48 : : 2017/10/20(金) 23:12:10
    湯島「……おお、元気か。イヤなに、お前の息子なんだが……。」


    蓮「……。」


    湯島「うん、……蓮。なんで雅也を捜してるんだって。」

    蓮「雅也くんの交際相手が行方不明で、それを知っていればと!!!」


    湯島「……だそうだ! で、雅也は!?」



    頼む、湯島さえ見つかれば問い質すなんて簡単だ。だから早く……!



    湯島「……駅前のゲーセンにいるらしい。急いで行けよ!!」


    蓮「……はい!!」



    よし、これで足取りは掴めた。見つければ後は吐かせるだけだ。反抗するようなら……


    ……人道には反するような手を使ってでも。


  49. 49 : : 2017/10/21(土) 06:47:53
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――
      

    ゲーセンは耳が痛くなるからそんなに好きではない。


    辿に誘われてもこればっかしは付き合い悪くしていた程度には苦手だったが最早そんなことはどうでもいい。


    戻ってこない奴との思い出を思い返すよりも、戻ってくるかもしれない奴を一刻も早く見つけ出すことにしよう。



    蓮「あいつ、どのコーナーにいるんだ……?」


    こればっかしはしらみ潰しで捜すしかないようだ。



    これで居ないっていうオチだけは本当に勘弁だ。見つかってくれよ……?


  50. 50 : : 2017/10/22(日) 13:51:28
    ……。



    蓮「……ここにはいない、じゃあ次はレースゲームに……。」



    大した都会でもないのに無意味に広いなこのゲーセンは。
     
    ゲーセンを否定するわけではないが、この色んな音が乱雑と交ざった音はやはり好きになれない。



    蓮「……ったく、よりによってこんな所に来やがって…………。」


    その分イライラする。見つけた瞬間ぶん殴るとかそんなことしないようにしなければいいが…………。



    蓮「…………あ。」


    間抜けな声を出してしまった。物凄くあっさりとそこに居たもんだから。
     

    見つけたとなれば、あとは簡単だ。冷静に、かつ迅速に届菜について聞かなければ。





    蓮「……悪いな辿。ひょっとしたら野蛮なことしちまうかもしれん。」
  51. 51 : : 2017/10/24(火) 18:11:08
    湯島「……。」


    湯島はこっちには気付いてない。ゲームに集中してるようだが、そんなことはどうでもいい。



    蓮「よう、湯島。」

    湯島「……お?」



    ゲームの画面から、俺の顔へと目を動かす。


    湯島「おー……久しぶりだな、沼咲。」


    蓮「……久々で難だが、話したいことがあるんだ。」

    そういうと湯島は少し眉間にシワを寄せた。そして少し間を空けて呟くように言った。


    湯島「……とりあえずこれだけ終わらすからそれだけ待っててくれ。」


    そういうとゲーム画面に目を戻した。

    俺の顔を見た瞬間逃げ出すとか、一応そういう想定もしていたが。どうやら乱暴せず普通に聞き出せるかもしれない。

  52. 52 : : 2017/10/24(火) 18:22:56
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――


    蓮「……悪いな。ゲーセンだと雑音がうるせえ。」


    湯島のゲームが終わったあと、近くの公園に場所を移した。



    湯島「……話ってなんだよ。」


    蓮「お前、届菜の彼氏なんだろ? 届菜が行方不明になって、何か知らないのか?」


    湯島「……お前、あいつらとまだ関わりあったのか。」

    蓮「ああ。でもそんなことはどうでもいいだろ。何か知らないか?」


    湯島「知らねえよ。知ってたらもう見つかってるだろ。」

    湯島「俺だって心配してるさ。辿だって死んじまったのに、あいつまで居なくなっちまって。」


    ……



    蓮「………心配するならゲーセンなんか来ないで捜してろよ。昨日だぞ。昨日居なくなったのに今日のうのうとゲーセンなんて普通来るか?」

    湯島「普通に来るだろ……?」


    蓮「……俺にはヒトの気持ちなんてわからねえよ。だが、俺は好きな奴が居なくなってるなら死に物狂いで捜すぞ。少なくともゲーセンに遊びに来ることはねえ。」


    湯島「……はは、俺をなんでそんなに疑うんだか? 俺が何したって言うんだ?」


    口許をニヤニヤさせながら俺に向かって言う。流石にそろそろイライラしてきた。


  53. 53 : : 2017/10/24(火) 18:36:09
    蓮「辿から聞いた。」


    そういうと湯島は少しビクッと体を反応させる。


    蓮「辿が死ぬ少し前に。あの事件の犯人が誰だか聞いた。」


    湯島「……へえ。ふっ……」


    蓮「……湯島がやったんだろう? それを知ってるから、俺は届菜のこの件も疑ってるんだよ。」


    湯島「……そうだな。なるほどなるほど。あいつも死ぬ前にはどっかおかしくなってたからそんな妄言吐いてるんだな。ふっははは。」

     


    ……こいつ……。



    蓮「……ああ、ごめんな辿。」


    湯島「……? どうしたんだよいきなり。」



    蓮「……この際お前が犯人かどうかなんてどうでもいい。ただお前の態度が気に入らない……。届菜が行方不明になってるってのによ…………なぁ?」



    ……ひっそりと偲ばせていた鉤爪をおもむろに取り出す。

    湯島「お前……何を?」


    蓮「……ヘラヘラと笑ってんじゃねえよ。」




    ……ぐちゅ、と不快な音が響いた。自分の手には肉を刺す感触が残っていた。






    お前から最後に聞いた"お願い"、守れなくて悪いな。

  54. 54 : : 2017/11/06(月) 13:45:10
    ――――――――――
    ――――――――
    ――――


    魔法の森。リグルに捕まった時に暫く過ごしていたが、その時とはまた別の用事で足を運んでいた。



    魔理沙「いやーそれにしても驚いたぜ! まさか辿が人を逸脱するなんてなぁ!」


    前と変わらない態度で私のことを扱ってくれる魔理沙に先導され、足場の悪い道を進んでいく。


    辿「……」

    魔理沙「……なんだなんだ? 私の知ってる辿はそんなに暗くないぞ? なんというかもっと下品だったぜ?」


    なぜ霊夢も魔理沙も、私のことを下品という印象を持っているのだろうか。



    魔理沙「っと! 着いたぜ。」


    ……立ち止まり、魔理沙が指差した先を見ると、こじんまりとした一軒家があった。

    その建物の玄関の扉の上には、大きく『香霖堂』と書かれていた。



    辿「……なんか、へっぽこな店構えだな。」

    魔理沙「そうだろう? 実は中もへっぽこなんだぜ。」


    魔理沙は手招きをして私を呼ぶ。何やらにやにやしていて嫌な予感がするが、とりあえず私は魔理沙に従うことにした。

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11212122212

木星

@11212122212

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