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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

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最強喰種の異世界あんしん生活

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  1. 1 : : 2017/02/15(水) 13:50:53
    この作品は僕の前作「黒の喰種」の番外続編です。
    前作を見なくても大体の内容が分かるように作るのでお願いします。
  2. 2 : : 2017/02/15(水) 13:52:20
    この物語の主人公は前作同様
    「四宮御幸」というオリジナルの喰種です。
    高いRc値や再生力、更に様々な赫子を持っていることが特徴です。
  3. 3 : : 2017/02/15(水) 14:01:34
    気が付くと、私は見慣れない風景にいた。
    中世ヨーロッパ風の建築、そして何より…
    「何…これ」
    驚いたのはそこにいた人々の姿。
    普通の人間もいたものの、その中に動物のような姿をした者やドラゴンの様な姿をしたものまで多種多様な人々が行き交っていた。
    「喰種…じゃない、匂いで分かる。」
    見たことも聞いたこともないそれらの存在を呑み込むには1つしか思いつかなかった。
    「異世界召喚って…やつ?」
    『喰種』、四宮御幸の異世界生活が始まった。
  4. 4 : : 2017/02/15(水) 14:26:43
    戸惑いながらも私は散策を始めた。
    それで早速気が付いたことがある。
    「言葉は…同じなのね。」
    聞こえてきた人々の声は、意外にも普通に日本語だった。文字は違うようだが。
    「言葉が通じるなら…何とかなりそう」
    少し落ち着いた御幸は、そこで周囲からの奇異な眼差しに気がついた。
    人間は他にもいるはずだけど…まさか私が喰種だとばれている!?
    思いかけた御幸だったがすぐに別のことに気がついた。
    「服装か…」
    元の世界で24区にいた私は、周りとの『お洒落さ』の格差に苦労をしたものだが、折角身につけた感性もここでは通用しないのか…
    「はぁ…」
    更にこの世界には20区に越してきた時より不味いことがある。
    「お金…違うよね。」
    私が今持っているのは現金21111円と通帳、あんていくのみんなと契約しに行った携帯。
    後は手鏡とかハンカチとかティッシュとか絆創膏とか…
    「どれもここじゃ役に立ちそうにない…」
    そんなことを考えていたが私は一番大事なことを思い出した。
    これが…『異世界』なら私は私の居場所へ帰る手段を探さなければいけない。
    昔の私ならここに来たこと、むしろ喜んだかもしれない。
    でも、今の私には『帰る場所』が、『あんていく』がある。
    私は気を改めて、この世界の警察のような役割を持っていることを探すことにした。
  5. 5 : : 2017/02/16(木) 11:05:17
    ふと私はある2人の男女に目がいった。
    片方はロングの銀髪の女性、
    男性の方は…
    「…そこのジャージの人ー待って!」
    私は人目をはばからずに彼らを呼び止めた。
    振り返る2人。
    向けられた私の目線で、その声が自分達に向けられたものだと分かったようだ。
    「…スバル、あの女性は知り合い?」
    スバル、というのか。
    やはり可能性が高い。
    知り合い、という言葉に私は閃いた。
    「スバルくん…だよね?」
    見ず知らずの、でもきっと同じ世界から来た彼に私は話しかけた。
    私の姿に目をみひらく彼。
    「あぁ俺の知り合いだ。エミリアたん、少しここで待っててくれるか?」
    「分かっわ、ここで待っていればいいのね。」
    私は誰もいない路地裏の方へ彼と向かった。
    「あなた…向こうから来たの?」
    「ちょっと答えられない事情が…」
    私との歳の差に気がついたのか彼は敬語で話しかける。
    「あなたはここに来たばかりですか?」
    「え、えぇ…」
    「その…話をすると、信じられないと思うんですが…呪、」
    「ぐっ!!」
    突然苦しみ出す彼。
    「大丈夫ですか!?」
    落ち着きを取り戻した彼が言った。
    「こういう説明もダメなのか…」
    「もう平気…なの?」
    「えぇ、もう平気ですよ。」
    「何度か経験してますから、慣れっこです。」
    「そう…」
    「折角逢えたのにお話出来ないなんて残念ね。」
    「あなたは人に話しても平気見たいですね?」
    「そういえばそうね」
    「まぁこの代償に、ここに来たときある…おっと、まぁ少し変わったことが出来るようになったんです。今までそれで色々乗越えて来ました。」
    彼は言った。
    「ねぇ、こんなことを聞くのは変だけど…その痛みって、死に至るようなものなのかしら?」
    彼は答える。
    「俺自身は死にはしませんよ。それに…」
    言いかけて彼は口を止めた。
    「ただ俺以外への安全は…保障出来ません。」
    私は投げかけた。
    「それは…話した相手に影響があるってこと?」
    私が訊ねて、しばらく彼は黙っていたがその後口を開いた
    「…はい。」
    「そうなのね!」
    戸惑いの表情を見せる彼。
    「…な、なんで嬉しそうなんです?」
    「それ、悪いんだけど試してみてくれないかしら。」
    「でも…それで!」
    言いかけた彼の言葉を遮って私は言った。
    「私、心臓を握られてもなんともないわ。
    何なら握りつぶされたって平気。」
    私の喰種の力がそのままであることの確認はすませている。
    さっきの彼の話しよう、例え人間なら死に至るとしても私なら…
    「…え?」
    彼は驚きに閉ざし気味だった口をポカーンと開けていた。
  6. 6 : : 2017/02/16(木) 11:22:29
    「本当にいいんですね。」
    「えぇ。」
    私と彼は実験のようにそれらを試していた。
    「俺は異世界から…」
    ふと2人の間に邪悪な気配を感じた。
    「これが…?」
    何も見えない黒い空間が見えた気がした、その刹那。
    「うっ!」
    胸に激痛が走る。
    「本当に大丈夫だったんですか!?御幸さん!」
    本当に心臓が握り潰されるとは。
    だが私の再生力は喰種の中でもトップクラスだった。
    吹き出した血を拭きながら言った。
    「えぇ…大丈夫よ。」
    「良かった…でも…」
    「なんでですか?」
    私はドキッとした。
    だが言い訳はこうし出す前に考えていた。
    「私もね、この世界に来たときに力を得たみたいなの。」
    息を呑んで聞く彼。
    「私、不死身になったみたいなの。」
    驚きの表情を全面に見せる彼だった。
    「不死身…ですか」
    少し笑いながら
    「それは羨ましいですね、なんせ俺の能力は死なないと…」
    「うっ!」
    2回目の衝動が私の胸に走る。
    回復させながら彼に話を続けて貰った。
    それで、彼の能力とこれまでのことが大体分かった。
    「辛かったでしょう…」
    「辛くなかった、と言ったら嘘になりますね。
    でも…」
    「俺にはエミリアとレムがいますから。」
    「彼女を見て、彼女に見られているうちは平気です。」
    「大切な人達なのね…」
    話していた彼の目には少しの涙が浮かばれていた。
    「…ありがとう、ございます…初めて…話せる人が…」
    今まで、その『呪い』によって誰にも事情を話せなかった彼だ。
    その辛さは半端なものでは無かったはず。
    「私でよければ力になるわ。」
    「ありがとうございます…」
    彼は泣きながら感謝の言葉を続けていた。
    私は、彼と共にこの世界を歩むことを決めていた。
    その日は両者にとって激動の1日だった。
    彼らは待たせていた少女の元へ走っていった。
  7. 7 : : 2017/02/16(木) 11:28:56
    「ふーん、つまりその人はスバルの地元の時からの友達だったのね?それでここで偶然再会したんだ。」
    「あぁ、そんな感じだ。」
    彼はエミリアという女性にそう説明していた。
    年下かと思っていたが彼女はなんと107歳だそうだ。
    この世界には色々驚かされることが溢れている。
    「それで、お願いあるんだが…」
    「なぁに?スバル。」
  8. 8 : : 2017/02/16(木) 11:31:51
    筆者です。
    この世界では白鯨戦後、レムとクルシュは暴食担当から逃げることに成功しています。
    他にも色々オリジナル設定勝手に出していくので苦手な方はご遠慮ください。
  9. 9 : : 2017/02/16(木) 16:41:56
    私は彼の願いと彼女の受諾と、それに私自身の賛同で『ロズワール邸』に来ていた。
    亭主のロズワールさんは、ウタさんとは別のベクトルで強烈な見た目をしている人だった。
    それに…
    「この屋敷には空き部屋がいっぱいあるからねーぇ、活用出来るのは嬉しいことだーぁよ。」
    この話し方…
    そこへメイドと思しき2人が出てきた。
    青髪の子が口を開いた。
    「スバルくん…その女性は…?」
    不安な視線を彼に向けられた。
    何か勘違いされていないだろうか…
    「この人はスバルの昔からのお友達の人よ。」
    エミリアちゃんが切り出した。
    「ご友人…」
    「そうだよレム、何か勘違いしてないか?」
    「大丈夫です、すみません。」
    ほっとした。早速修羅場になるのは避けたい。
    話掛けてきた彼女…レムちゃん。
    「あの、お2人は昔ご友人としてどんなことをされていたんですか?」
    「ー!!」
    驚愕の表情を見せてしまった私達をレムちゃんが怪しんだ。
    「あの…出来れば2人別々にお聞きしたいのですが。」
    ぐいぐいくるなレムちゃん。
    結局、私は修羅場を回避することは出来なかった。
  10. 10 : : 2017/02/16(木) 17:40:45
    断ったら怪しまれる、と言うより誤解を生む。
    私達は目と目で会話をする。
    勿論上手く行かないが最大の目的は達成出来た。
    「じゃあ俺から行くよ、レム。」
    そう、私は五感が鋭い方だ。
    どういった質問が来るかは別にして質問の内容が同じなら答えが食い違うことはない。
    別の部屋に移動する2人、私は耳を澄ませた。
    「スバルくん、いくつか質問をさせて貰います。」
    「おう。」
    「まず…彼女の名前は?」
    「ミユキ、四宮御幸さんだ。」
    「…ミユキさんのことを出来るだけ教えてください。」
    「えーっと…まず、誕生日は4月の17日だったな。」
    「はい。」
    仕方ないけど全然違う…
    「趣味は…読書。」
    「はい。」
    まぁ…読書は好きだ。
    「裁縫が…得意だった。」
    「はい。」
    裁縫は…地下で自分の服を直したりしていたから出来なくはない。
    「好きな食べ物は…ピーマルだな。」
    「ありがとうございました。」
    ピーマル?言葉が違うのだろう。
    まぁこれは当たらないのも仕方がない、私の好きな食べ物は…人肉だから。
    「じゃあもう一ついいですか?」
    「おう。」
    息を飲んで聞いた、スバルくんも息を飲んだ。「ミユキさんとの一番の思い出はなんですか?」
    意外にもスバルくんは迷わずに答えた。
    「…昔、俺が悩んでた時に相談に乗ってくれたことがあるんだ。その時誰にも言えなかったことで…凄く嬉しかったんだ。」
    「そんなことが…
    ありがとうございました。」
    「うん。」
    スバルくんが出てきた。
    その後私が呼ばれてレムちゃんと一緒に別室に入った。
    「いくつか質問をさせて頂きます。」
    「えぇ。」
    ふと思ったことがある。
    さっきの質問で彼と私が友達か恋人か、どうやって理解するのか疑問に思った。
    「まず…あなたのお名前は。」
    「四宮御幸よ。好きなように呼んでくれて構わないわ。」
    「じゃあ…ミユキさん。ミユキさんの誕生日は…」
    「4月…18日よ。」
    私は順調に会話を進めていった。
    「では最後に…スバルくんとの付き合いで一番印象に残っていることはなんですか?」
    私は答えた。
    「スバルくん…昔から1人で抱え込むことが多くてね。
    でもそんな彼がある日私に相談してくれたことがあったの。
    それが…印象に残っているかしらね。」
    「…」
    彼女は少しの間黙っていた。
    その後彼女は口を開く。
    「ありがとうございました、私あなたを誤解していたみたいです。
    謝らなければならないことがあります。」
    「どうしたの?」
    私は尋ねる。
    「エミリア様は…次のこの国の王候補なんです。それで…」
    「うん。」
    私は聞き続ける。
    「スバルくんは…今大変な状況にいます。
    スバルくんと関わる人々の中には危険な奴らもいて…レムは昔からの友達だと言う割にスバルくんのあなたへの態度がぎこちないように見えて…ミユキさんのことをもしかしてスバルくんの何か弱みを握ってエミリア様に近寄る不審な輩ではないかと考えてしまって…
    飛躍しすぎた勝手な考えと行動をしてしまいました、すみませんでした。」
    なるほど、それでレムちゃんは…
    私も勘違いしてました、ごめんね。
    「大丈夫よ、えっと…なんて呼べばいいかしら。」
    「レムのことは…お好きに読んでいただいて構いませんよ。」
    「…スバルくんとミユキさんはいいご友人なんですね。
    これからもスバルくんをよろしくお願いします。」
    「うん。」
    こうして私とレムちゃんは関係を深めることが出来たのだった。
  11. 11 : : 2017/02/16(木) 17:46:34
    いつものロズワール邸に新しいメンバーが加わった。
    「私…ここに来たばかりで文字が分からなくて…良かったら誰か教えてくれないかしら。」
    「俺が教えますよ。」
    スバルくんが言った。
    「俺も覚えたばっかりなんですけどね。
    簡単なものなら教えられます。」
    「ありがとう、お世話になるわ。」
    私はスバルくんと『イ文字』を勉強した。
  12. 12 : : 2017/02/16(木) 17:58:12
    勉強をしながら私達は色々な話をした。
    …私の演技力と再生力のせいかスバルくんはすっかり忘れていたようだが、私は彼との会話の中、これまでで合計2319回心臓を握りつぶされている。
    喰種である私だが、まさか心臓を握りつぶされるのが日課になるとは思いもしなかった。

    …それと、あの日からレムちゃんが私の為に頻繁にピーマル料理を作ってくれる。
    共喰いが多かったので『慣れていた』が、彼女の好意の手料理を美味しく頂けないのは申し訳なく思った。
  13. 13 : : 2017/02/16(木) 18:19:09
    こっちの世界での暮らしにも慣れてきたある日、私は王国市街までお使いを頼まれた。
    実はレムちゃんは白鯨という化物との戦闘と、大罪司教からの逃亡で体を弱らせていたのだ。
    私はレムちゃんの変わりに色々なことを手伝っていた。
    これもそのうちの一つだ。
    私はロズワール邸を後にして市街へ。
    …今の私には問題がある。
    それはここ一ヶ月以上『喰種の食事』をしていないということだ。
    喰べるほど悪い人間が現れないのだ。
    「魔女教でも出てきてくれないかしら…」
    そんなことを考えながら街へ足を進める御幸であった。
  14. 14 : : 2017/02/16(木) 18:49:50
    食料などを買って帰った帰り道。
    私は魔女教との遭遇を期待し、普段通らない道を通っていた。
    足音が聞こえる。
    「あらぁ?誰かしら」
    明らかに男、むしろ大男が私に話かけてきた。「あなたこそ、誰なの?」
    大男は答えた
    「私は大罪司教『暴食』担当…」
    『大罪司教』という言葉に私は反応した。
    だってそれは…
    「あなたが大罪司教…?魔女教の?」
    「そうよ、私はルイ・アネb…」
    私は割って言った。
    「なら…頂くわ。いただきます」
    「いただきます?暴食担当のアタシに向かって…」
    ゴウッ!!!
    私は羽赫を展開させた。
    「何よその羽…それに…その目!?」
    「まだ『ここの』だれにも言ってないけど…教えてあげる。赫子と赫眼よ。」
    「カグネとカクガン?」
    「なんだか知らないけどっ…」
    ゴルパッ!!!
    発射した羽赫が男の体を貫いた。
    「何っ…コレ…」
    ロズワール邸のみんなに、特にスバルくんとレムちゃんに厄介だ、危険だと言われていた『大罪司教』しかし…
    なんだか意外とあっさり死んでしまったようだ。
    「まぁ人間だものね…そういえば折角の魔女教、生け捕りにすれば貴重な情報源になったかもしれないわね。」
    …が。
    「まぁいいよねっ!いただきます♪」
    久しぶりの食事を前にした私にはそんなことはどうでも良かった。
  15. 15 : : 2017/02/16(木) 19:04:14
    期待
  16. 16 : : 2017/02/16(木) 20:48:39
    期待ありがとうございます!
  17. 17 : : 2017/02/16(木) 20:49:01
    22時頃更新予定です
  18. 18 : : 2017/02/16(木) 22:24:17
    食事を済ませた私の体調は快活で、私は弾むような気分で帰路についた。
    「お帰りなさいませ。」
    屋敷に帰った私をレムちゃんとラムちゃんが出迎えてくれる。
    「帰ったんですね、御幸さん」
    スバルくんも出てきた。
    「ありがとねーぇミユキちゃん。」
    「どういたしまして。」
    言葉のキャッチボールを交わす私達、そこに。
    「道中、何もありませんでした?」
    スバルくんが言った。
    何も無かった…訳では無い。
    むしろ国際的なくらい大事なのかもしれない。
    1分にも満たない出来事だったが…
    むしろあれは彼に何かあったと言うべきじゃなかろうか。
    そういえば彼は厳つい見た目をしていたオカマだったけど、味はなかなかで、美味しく頂きました。
    喰種にもオカマがいたがまさか大罪司教にも…
    はっ。
    「…………えぇ、何もなかったわよ。」
    「なんか間が空いたような…」
    ぼーっとしていた私に当たり前の言葉がかけられた。
    「仮になんかあっても大丈夫、私は不死身なんだから!」
    切り返す私。
    「そうですよね!」
    「えぇ。」
    納得しあう2人、だが…
    「えっ!?」
    「ミユキさん不死身なの!!?」
    「そうなのかーぁい?」
    「「そうなんですか!!?」」
    ピュアかこの人達、
    普通比喩表現だと考えるだろう。
    まぁ、私の場合は実際ほぼ不死身な訳だが。
    「みんな、比喩だよ、比喩。
    昔から御幸さん、
    やれ崖から落ちたーだの、
    やれ魔獣に襲われたーだの、
    色々あったのに大した怪我もなく帰って来てさ。」
    スバルくんも慣れてきたな。
    「なんだか…スバルくんみたいですね。」
    レムちゃんが言った。
    …そうか、『死に戻り』をする彼は、周りから見ればどんな状況にあっても死なないように見えて来たのか。
    「俺も不死身だからな!」
    笑い合う一同。
    私は彼の冗談混じりのその言葉に別の意味を捉えていた。
    周りからは『不死身』に見える彼。
    どんな窮地も乗越えて生きるように見える彼の裏には幾多の自身の死が、他人の死が、積み重ねられている筈だ。
    いつ何があるかもわからない状況で、いつ死ぬかも分からない状況で、その言葉は『何度死んでも成功するまで諦めない』という意味に変わる。
    私は彼を美しいと思った。
    「…そういえば買い出しのリンガ、1個おまけを貰えたんですよ。」
    私はあえて話題を変えた。
    「レムはそのリンガで新作メニューを考えたいです。」
    平和なロズワール邸、だが、それはスバルくんの数え切れない程の『死』が作ったものだ。
    彼がみんなを守るというのなら、私がスバルくんを守る。
    新たな決意を胸にしてロズワール邸での仕事を始めた。

    …その頃邪悪な波がスバル達を、御幸達を襲おうとしていた。
  19. 19 : : 2017/02/17(金) 13:16:21
    「アルネブが行方不明…?」
    とある日の魔女教では、
    御幸によって『喰われた』ルイ・アルネブの話がされていた。
    「あのオカマが…まさか死んだー?キャハハハハ!」
    「大罪司教であるアイツがそう簡単に死ぬとは考えにくいけどなぁ」
    「でも何かがあったのは確実だよね、現にここにいないんだからさッ!」
    「いずれにせよ警戒する必要があるね。」

    同じ日のロズワール邸…
    「ミユキさん、記憶力すごいんですね。
    まさかイ文字の後にすぐにロ文字まで…」
    「そんなことないわ。」

    レムちゃんの体調はすっかり回復していて、
    私達は勉強の時間を増やすことが出来ていた。
    …そういえば最近私は、スバルくんが向こうの世界や死に戻りに関する話をしても心臓を握りつぶされなくなった。
    私は体内にも赫子を伸ばせる。
    試しに甲赫で心臓をコーティングしてみたのだ。
    最初はそれでも心臓を握り潰そうと黒い手が伸びて来たのだが私の心臓を握り潰すこと叶わず、それでどうやら諦めてしまったようだ。

    それ以外、あれからは特に何も起きていない。
    あの日以降魔女教と遭遇することもないし、
    それで必然的に私は食事をしていないのだが、
    あの大男は食べごたえがあったので飢えているということもない。
    今日はスバルくんの知り合いと顔を合わせに、スバルくんと街へ出る予定だ。
    ガチャッ
    そこへレムちゃんが入ってきた。
    「今日はお出かけなさるんですか?」
    スバルくんは答える
    「おう!俺の知り合いを紹介したくてな。」
    「そうでしたか…」
    「…あの、今日は午前の仕事も終えました。
    ロズワール様は姉様とご友人の所へ出向かれています。」
    「私と…エミリア様もご一緒していいですか!」
    レムちゃんはなんだかすこし必死な感じで言い切った。
    扉の後からエミリアちゃんも出てきた。
    ふと、最近エミリアちゃんやレムちゃんの、
    スバルくんとの時間を減らしていることに気づいた。
    2人に、スバルくんに悪いことをしてしまったわね…
    「むしろ大歓迎よ、一緒に行きましょ?」
    「多い方がいいからな!」
    嬉しそうな2人。
    なんだか妹がいたらこんな感じなのかな、なんて勝手に考えていた私だった。
    …実際はエミリアちゃんは私より、82歳も年上なのだが…

    私達は街へ、スバルくんの知り合い巡りに出かけた。
  20. 20 : : 2017/02/19(日) 23:10:58
    最初に向かったのは『ラインハルト・ヴァン・アストレア』と言う名前も名前な『剣聖』の家系のスバルくんの友人の元だ。
    スバルくん曰く「めちゃくちゃ強いけど肝心な時いやがらない」らしくなんだか今回も嫌な予感がする…
    「ラインハルト様は現在いらっしゃいません。」
    やっぱりか…
    仕方がないので次に『クルシュさん1行』の所へ。
    …クルシュさんと言えばあの、レムちゃんと共に『暴食担当』に襲われた彼女だ。
    『暴食担当』なら私が以前対峙し、文字通り『喰べて』しまった訳だがあのオカマに聞いていたような力があるとも思えない、別人物だと考えることにしていた。
    「こんにちは、クルシュさん」
    「久しいな、おや、卿の隣のその女性は?」
    「ミユキです、よろしくお願いします。」
    「こちらこそ、ところで卿の隣にはいつも女性がいる気がするな…この果報者め」
    「彼女とはそんなんじゃないですよ。」
    「彼女とは?やはり君は果報者だな。」
    冗談を言う2人、そこで。
    「あの、聞きたいことがあるのだけどいいかしら?」
    「なんでもどうぞ」
    「『暴食担当』のことで話したいことが…」
    いつまでも誤魔化し切れる訳もないので、
    彼女の『風見の加護』に気を付けながら私は、私の会った『暴食担当』との話をした。
    「…驚いたな、まさか貴女が『魔女教』を単独で撃破するほどのやり手だったとは」
    「運が良かっただけですよ。」
    隠す所を上手く隠して話を続けた。
    「ただ…確かに私が出会った『暴食担当』とは別人物と考えるのが妥当だろうな、あれオカマには見えなかった。」
    「見た目の話しか出来なくてごめんなさいね。」
    その後聞いた話は大体がレムちゃんから聞いたものと同じだった。
    奴は名前を正確な名前を確認した相手の自身の記憶や他人からの記憶、もしくは両方を奪える能力らしい。
    クルシュさん達は「食べる」対象とされなかったようで逃げられたようだが厄介な能力であることに変わりはないだろう。
    「…今日はありがとうございました。」
    「また会うのを楽しみにしている」
    私達はクルシュさん達と別れてユリウス君やフェルトちゃんの所など、1通り回ったあと帰路につこうとしていた。
    「こうして見ると、スバルにはたくさんの友達がいるのね」
    「流石スバルくんです。」
    確かにスバルくんは色々な人と繋がりを持っている。
    様々な状況下で様々な人と様々な関係を持って来たからこそだろう。
    色々な話をしていた私達の所へ望まぬ来客が訪れた。
    「ナツキスバル、お前がアルネブをやったのか?」
  21. 21 : : 2017/02/20(月) 00:05:16
    長い茶髪にボロ切れを纏った小柄な少年。
    こいつは…
    彼らの前で赫子を出すのは気が引けるがこの際仕方がない。
    「オマエはっ!」
    「あなたは…!」
    「やぁナツキスバル、隣のお前も見た顔だな、あのエミリアまでいるじゃないか…んん?お前の『名前』はノーマークだね、名前はなんて…」
    私は1片の容赦もなく彼の体を貫いた。
    「奪った相手の魔法も使えると聞いたけど…これも治せるのかしら?」
    ズシャッ…ズガガッ!!
    私は鱗赫で彼の体を微塵に切り刻んだ。
    スバルくんと友好関係を持つクルシュさんや…レムちゃんを傷付けようとしたのは許せない。
    私は原型を止めなくなるまでそれを続けたあとに言った。
    「私の名前は四宮御幸よ。奪えるものなら奪ってみなさい。」
    後でスバルくん達は呆気にとられたような顔をしている。
    「…あ…ごめんなさい、本当は色々聞き出したりする方が良かったんでしょうけど構ってられなかったわ。」
    沈黙が続いたがスバルくんが切り出した。
    「いやいや、ありがとうございます、助けられました。」
    レムちゃんが言った。
    「…逃げていた私達をかばって名前や記憶を奪われた人達はこれで元に戻ったんでしょうか?」
    「あー…そうだな、確かに殺しちまったあとじゃ聞き出せないし戻ってることを祈るばかりだな。」
    「そうね。」
    「もし戻らなかったら私…」
    責任を感じて黙っていた私をスバルくんがフォローしてくれた。
    「いいんですよ御幸さん、というか本当、ありがとうございます。名前が知れてた俺達は危なかった訳だし…なんていうか…
    強いんですね、さっきのはどんな魔法なんですか?」
    「今のは魔法と言うより加護…いや、強いて言うならあの『見えざる手』みたいなものかしら?」
    なんと言えばいいのか分からなかったがこの世界もビックリ人間みたいな人達が多かったので思っていたより気にかけられなかった。
    「目もすごいことになってましたね、なんか御幸さんすげーパワフルだなぁ…」
    女の子に対してそれはどうなのかと思いながら私は言った。
    「あの、スバルくん達はこのことを報告してくれないかしら?ここは街からそこまで離れてないし…見つかったら大変そうだから私は『これ』を片付けて置くわ。」
    「やっぱりパワフルですね、分かりました。
    俺達はこのことを報告しに行きます。」
    スバルくんが見えなくなったあと、私は急いで『それ』を平らげた。
    あまり肉が付いていなかったので、以前のオカマの方が美味しかった。
    食事を終えた私はあえて大きく穴を掘って、残った骨だけを埋めた。
    しばらくしてスバルくん達が帰ってきた。
    「報告済みましたよ御幸さん、それで…」
    心臓のテンポが早くなる。
    やはり話を聞き出さずに殺してしまったのは不味かっただろうか…
    「大罪司教をまたも討伐したということで後日感謝の意を示したいから会いたいと言ってました。」
    「えっ?」
    意外にもお咎めはなかった。
    「今日は本当にありがとうございます。レムの憎い魔女教がまた1人減りました。」
    その後も3人に、特にスバルくんとレムちゃんから感謝と賞賛の言葉を貰いながら屋敷に帰った私達。
    まだロズワールさんは帰ってきていないようだった。
    「さてと、すっかり遅くなってしまったので夜御飯の支度をしなくてはなりませんね。」
    「私も手伝うわ」
    「ありがとうございますミユキさん。」
    「おぉ!だったら俺も手伝うぜ、レム。」
    「私も!」
    「スバルくんにエミリア様まで…賑やかになりそうですね。」
    私達は協力して料理を作っていく。
    みんな楽しそうで、さっきのことなど気にも止めていないような感じだった。
    私があっさり倒してしまったからだろうか…
    そうこうして、
    完成した料理を卓上に並べた私達。
    声を合わせて言った。
    「いただきます!」


    …こういう時は、人間でありたかったと強く思う私だった。
  22. 22 : : 2017/02/20(月) 11:41:52
    …普段なら、1人の女性として嘔吐するのもアレなので胃袋を取り出し焼却する私だが、
    折角作って貰った料理なので最近は消化までしている。

    今回も勿論そうした訳だが…

    「き、気持ち悪い…」

    おかげで体調は絶不調、これでは個々に赫子なら出せても赫者にはなれないな…

    「体調が悪そうだったから見に来たんだけど…大丈夫?ミユキ」

    エミリアちゃんが入ってきた。

    「えぇ、まぁ平気よ…」
    「でも顔色がよくないわ、休んでいて。」
    「ごめんなさい…」
    「ううん、何かあったら呼んでね。」

    エミリアちゃんが出ていき、私は部屋で休んでいた。

    いっそ赫子で悪い部分を焼き払ってしまおうかとも考えたが赫包を取っておくためにもやめておいた。

    「この生活じゃ…治らないものね…」

    私の最大の悩みの種は、意外にも中から来るものだった。
  23. 23 : : 2017/02/20(月) 17:05:32
    この生活も三ヶ月続いている。

    体調も限界なので私はある打開策を考えていた。
    胃や腸を無くして赫子で食べ物の道を作る、赫子の中に食べ物を溜めておいて後は…

    …大体こんな感じ、上手くいくといいのだが。

    ガチャッ。
    今日は双子のメイドがお出迎え。

    「おはようございます、ミユキさん。
    朝食の準備が整いました。」
    「ありがとう、すぐに行くわ。」

    果たして上手く行くのかしら…?
  24. 24 : : 2017/02/20(月) 17:33:54
    「「いただきます」」

    いつも通り朝食を始める。

    ゴクンッ、ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”…

    結果はすぐに分かるものでもないので食事を続けた。

    きらびやかな見た目でみんなの反応も良さげ、
    きっと『本来は』美味しい料理なのだろう。

    「「ごちそうさまでした」」

    食事や歯磨き等を終え、私は部屋で体調の変化がないか待つ。

    軽作業や勉強、読書をしながら時間を過ごしていった。

    そして数時間がたった頃…

    「なんともない!成功だわ!」

    食べ物を赫子に通す作戦は成功。

    みんなの料理を美味しく頂けない上体調を崩して迷惑を掛けていたのはあまりに申し訳なかったので私は歓喜する。

    「これで赫者にもなれるわね、大罪司教とも戦える…」

    私は自身の回復した体調を試す為に赫子を発現させる。

    「うんうん、調子いい!」

    次は…量を増やして身に纏う。

    ゴアッ!!バキバキバキ…

    「うん、いい感…」


    ガチャッ。

    「御幸さーん、体調は大丈夫で…」

    「「えっ!?」」

    まだ恐ろしくて振り返れないがこの声は…
    スバルくん。
    夢中になって人の気配にも気づかなかったなんて…

    「う、うわぁ!!」

    おののくスバルくん、
    ごめんね…

    「大丈夫、大丈夫だから!」

    自分の声を聞いて思い出した。この形態になると顔にも赫子を覆うので声が完全に変わるのだ。

    「私!私御幸よ、驚かせてごめんなさい…」

    しばらくしてスバルくんが反応した。

    「み、御幸さん…?」

    「そうよ、今戻るから…」

    「あー…ビビったぜ…」

    「ごめんね…」

    「いや、勝手に驚いただけなんで平気です。
    それにしても…すごい魔法ですね、なんかもう魔人みたいな…新手の魔女教かと思いました。」

    「ま、魔女教ね…」

    そう言われるのも無理はない。
    赫者の私は全身漆黒で身長は2m強、両目の赫眼に角だの翼だの尻尾だの…おおよその人が思い浮かべるような『悪魔』の姿をしている。

    「驚かせたわよね、体調が回復したから久々に試してみようかと思って…」

    「た、試す…まぁ別にいいんですけど…」

    その後しばらく沈黙が続いた。
    スバルくんとしても女性の部屋に入ってみたら着替えをしていた、なんて状況だったらお約束もお約束、もしかしたら喜んでいたかもしれない。
    だが、体調を崩した女性の部屋に入ってみたら悪魔が立っていた、なんてことになったらどうしていいか分からないだろう。


    2人の間にはその後もしばらく沈黙が続いた。
  25. 25 : : 2017/02/23(木) 21:53:29
    例の体調管理方で調子を取り戻した私。
    あの後も様々なことがあった。
    生活中で、出掛け先で、エミリアちゃんのピュアさに触れたり
    ロム爺さんがレムちゃんの弟、なんて異世界ジョークに驚かされたり…

    『暴食担当』を名乗るもう一人も倒したり、
    それで魔女教に目をつけられたり、たり…

    「困ったわね…」

    現在私はとある森にいる。
    理由は…

    「待ってよ、逃げないで。僕は君が気に入ったんだ。ほら、僕は自己紹介した。だから君が概要を説明するのは当然じゃないかな?」

    追ってくる白髪の男。
    ちょうど金木くんのような若白髪で体系は平凡な…
    無敵の。

    「なんで攻撃が効かないのよ…!」

    私の攻撃をもろともしない、攻撃力不足と言うよりは…
    完全に無効化されている。
    辺りの汚れすら寄せ付けない。

    「一方通行かなにかなの?あなた」

    それに一聞正論にも思える言葉の羅列をぶつけてくるのがなんとも…

    「効かないって?僕は完成されているからね。」
    「そう!私もあなたの攻撃なんか効いてないんだから!」
    ヤケクソになって応答する。

    こんな経験は生まれて初めてだ。
    それに…

    「取り巻きの女!やりづらいわね…」

    レグルスと名乗る男の取り巻きの多さ。
    今目の前にいる者以外に…
    40人以上。

    得体の知れない『それ』に恐怖に近いものを覚える私だった。
  26. 26 : : 2017/02/23(木) 22:33:30
    取り巻き達…全員が悪人には思えない…
    つまり『やりづらい』

    「どうしよ…ラインハルトくんでも来てくれないかしら…」

    私は逃げながら考える。

    「何故女がいる必要がある?…!!」
    「…でも『私』には殺せない!!」

    だったら、私に制御『出来ない』力を…
    使う。

    「フフ、フフフフフフフフ!!!」
    バキバキバキ!!!!

    「!?どうしたのかな、何の魔法かなそれは。」

    「テ…」

    「て?」

    ドカァッ!!!
    爆音と共に辺り1面が地面ごと砕かれた。

    「テめエ。ウるさイからダマッテナアああ!!!」

    『黒』の赫子に身を包んだ御幸が現れた。

    「らアアアアアアアアアア!!!」

    爆風を伴った一撃で周りの木が根こそぎ倒れる。
    しかし

    「コレでトオラナイのねぇええ」

    「拍子抜けだなぁ。僕にそんなものは効かないよ。」

    「効ヵなィ?ケタケタケタケタ」

    「なにが面白いのかな。」

    「やっパリ、ヤッぱりそうカ
    …ねエ…そノ女ドモ、なンでいるノかなああああああ!!!!???」

    「!!!」

    「ムテキノカラクリィ。」

    おぞましい笑顔に顔を包んだ『黒』、
    突如赫子を大きく展開させる。

    「ココらイッタイ吹き飛バス、女、モネ?
    ヒゃはははははハハハハハハ!」

    御幸は通常Rc値を抑えた状態で赫者となる…が、
    今回配慮なしに変身を行った。
    完全な赫者となった御幸にいつもの面影はなくなる。
    そこにいたのは黒い悪魔。

    ゴアッ!!!!

    更なる爆音と共にあたり一面が、
    更地になった。

    「女、全員、こ、ろ、し、た、よ?」

    一瞬沈黙したレグルス。
    だが少し遅れた後に返答をした。

    「やって…くれたな!このレグルスを怒らせた訳だ!」

    御幸は無遠慮に攻撃を仕掛ける、だがそれは通らない。

    「コレでもトオラナイ?」

    「ボクは完成されてるからねええ!」

    「完成?
    ナンカ…アナタ苦しソウねエ??」

    「何っ…」

    「私が攻撃シタトキ、アナタの心臓ノオト、
    聞コエテナイ。」

    驚きに目を見開くレグルス

    「『人間』ガ、心臓トメテ何秒持つノかしらねエエエエエエエエエ!!!!」

    「ギャハハハハハハハハハハハハハ!!!」

    嵐のような攻撃を繰り返す御幸。

    「何故だ!何故だ!」

    「…?何を疑問二思ってルの?
    サッキから…私ノ中の心臓ナら、
    ツブシテルケド。」

    「!!!!」

    更に攻撃を加える御幸、そして…

    ドシャッ!!!

    何かが飛び散った音がした。

    「時間切レぇ!ウフフフフフフフフフ!!」

    更地になった森には『黒』だけが立っていた。
  27. 27 : : 2017/02/23(木) 22:45:26
    気がつくと私は更地に立っていた。
    私だけが、立っていた。

    「終わっ…たの?」

    「私は…」

    私はきっと、罪のない人も殺した。
    利用されていたであろう人達を。
    自分には背負いきれないから、
    自分ではない人格で。

    「ごめんなさい…」

    私は『私』が壊した『物』を見て回した。
    更地の先の、そこには…

    なにが起こったのか分からない表情で死んでいる人々がいた。

    「ごめん…ね、ごめん…なさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」

    私は死体の元へ泣き崩れた。
    もっと模索すれば、道はきっとあったのに。
    私は『自分』の恐怖から逃れるために、
    この人達を、捨てたんだ。

    「ごめんなさい…」

    暮れた日、何もなくなったそこには私だけがいた。
    私だけが…
  28. 28 : : 2017/02/24(金) 07:40:18
    昨日これを書いてた記憶がないです…(笑)
  29. 29 : : 2017/02/24(金) 10:15:04
    「…魔女教大罪司教『強欲担当』、討伐したわ。」
    「化物ですね!?」
    「…化物…か。」

    『化物』
    私にはお似合いの言葉だ。
    人間の皮を被って人を殺す、人を喰らう。

    「ふふ、そうかもね。」
    「ほんとすごいですよ!この勢いならエミリアを狙う奴らだって…」

    そうか、私の行動で救われる人もいるのか…
    …でも、私の行動は罪も伴っている。
    どんな言い訳をしても、私は人を殺して来たんだ。

    急に、帰りたい想いが強まった。
    帰るところが、拠り所が欲しくなった。
    でもそれを叶える方法は見つからない、
    それなら…

    「ねぇスバルくん。」
    「なんです?」
    「…『御幸』って、それかスバルくんのセンスであだ名でも付けて、呼んで。
    それと…敬語禁止。」

    スバルくんは拍子の抜けたような顔だ。

    「いい…ですけど、どうしたんですか?」
    「また敬語」

    「あっ…ごめん」
    「結構スバルくんって誰に対してもタメ口じゃない?身近な人なら年上年下関係なく。
    私も、ここであなたと暮らす仲間、友達でありたい。」
    「…壁のように感じてたなら、ごめんな。
    なんっつーか、『向こう』の人相手っていうと逆に…
    確か遠慮というか、あったかもしれねえ。」
    「なら、これからはよろしくね。」
    「…あぁ。
    こっちこそ。
    えーと…」

    スバルくんは間をあけた。
    その理由は直ぐに分かった。

    「み、ミッキー!」

    なんだかそのあだ名に私は笑ってしまった。

    言い出したスバルくんも笑っていた。
  30. 30 : : 2017/02/25(土) 22:13:45
    魔刻結晶が黄色に輝く頃。
    ロズワール邸の庭にて…

    「こうして星座の話が出来る相手がいるのはいいよなぁ。」
    「私も星が好きで調べたりしてたのよ。
    スバルくんの『昴』がプレアデス星団の『昴』だったなんてね。」
    「この名前は結構気に入っててさ、そこだけは親グッジョブって感じかな。」
    「そこだけって、スバルくんは…ふふっ」

    そこでスバルとミユキが話していた。

    「この辺りは『あっち』と違ってよく星が見えるから…」
    「あら?スバルくんは目はよくないの?」
    「そんなことはないと思うけど…ミッキーは結構いいのか?」
    「まぁ…結構いいほうよ。
    昼間に八等星が見えるくらいにはね。」
    「望遠鏡か!?人間じゃねぇ…」
    「人間じゃなかったりして。」
    「妙に説得力あるな…」

    その日の二人は平和だった。
  31. 31 : : 2017/02/28(火) 23:49:00
    期待です〜!
  32. 32 : : 2017/03/03(金) 20:27:12
    期待ありがとうございます!
    僕もあなたの作品を読ませて頂いてます。
  33. 33 : : 2017/03/03(金) 20:49:31
    まじか。
    俺の作品読んだら駄作になっちゃいますよw
  34. 34 : : 2017/03/03(金) 20:52:24
    魔女教大罪司教の数ももう半分もいない。

    私達は、大掛かりな『魔女教』討伐の作戦会議をしていた。

    「それで、君が大罪司教を1人で3人も倒したっていう…」
    「ミユキです。よろしくお願いします。」

    「あぁ。
    君の活躍は素晴らしいよ。
    スバルくん達が倒した『怠惰担当』、今回ミユキくんが倒した『強欲担当』は、どちらも魔女教の名前を大きくした2人なんだよ。」
    「そうだったんですか…」

    「これでその2つの因子は無くなったわけだ。
    そこで…」

    「現在生き残っているであろう大罪司教は、
    憤怒、色欲、傲慢、そして暴食のもう一人だ。」

    「これを1度に叩いてしまおうと思う。」

    進む会議、だが当然質問は出てくる。

    「…一体、どうやって?奴らの足取りだって掴めていないのでは…」

    「…今回の作戦は、他国とも手を組んだ巨大なものだ。
    ラインハルトも参加する。
    そして…」

    その場の者が耳を澄ませて聞いた。
    「君だ。
    ミユキくん。
    なんでも君は昼間に満点の星空が見える目に、王都中心街から盗品蔵まで聞こえる耳を、
    獣族を遥かに超える鼻まで持ってるいると聞いている。」

    驚いた、話は渡っていたのか。

    「ええ、まぁ、一応は…」

    「自信を持つといい。
    そこまで強力な加護は聞いたことがないからね。」

    …加護ではないのだが。
    そんなことはどうでもいいわね…

    「私に出来ることならなんでもさせて頂きます。」

    「頼もしいよ。
    それで…」

    議長は話を続けた。
    おおまかな作戦はこうだ。

    基本はラインハルトくん、スバルくん、私を中心とした少数で動く。
    以前魔女教が出没した場所を中心に回って私がその周りの動きを見て、聞いて、嗅いで。
    それで発見出来た魔女教を隠れていた大隊とともに討伐する。
    …という単純なものだ。

    私も連戦で休みたい気もするがここにいる人達の助けだ、仕方ないと考えよう。

    …ラインハルトくんがいるのだから大勢必要ないような気もするが相手は『魔女教』。
    魔女…七つの大罪の名を背負う彼女達。
    それらを食べたとされる『嫉妬の魔女』。

    …繋がりがないとは言えない。
    その場合もしものことがあっては情報がまわらない。
    …まぁ、妥当な判断だろう。

    「…以上で作戦の説明を終了する。
    なにか質問等あるかな?」

    誰も反応を示さなかった。

    「では、これで本会議を解散する。
    ご苦労だった。」


    別れる私達。

    …決行は3日後の夜中からだ。

    それまでに喰べておかないといけない。
  35. 35 : : 2017/03/03(金) 21:12:14
    実は今回の作戦、下見に単独で回るのも私だ。

    対処能力と私の飛行能力、認められているのは嬉しいのだがあまりに私の仕事量が多すぎないか?

    「仕方ないわね…」

    私が巡回速度、時速1500km程で飛んでいられるのは連続15時間。

    多いと思うかもしれないが人目もあり、なかなか食料が手に入らないこの状況。

    これ以外にもRcは使うわけだから補給がないと想定した場合多くはない。

    「うぅ…どっかに死体でもないかしらねぇ…」

    レグルス戦で派手に森ごと吹き飛ばしたりするから…

    やはりこの世界の大きな課題は食料だ。

    いっそ『吸血鬼』だったとでも名乗って食料を貰う方向にシフトしようかしら?
    この国には貢献してきたし出来なくもなさそうな気がしてきた。

    「見回り終わらせたら考えてみましょ。」

    「魔獣しかいないしねぇ…」

    今回の下見は地形のおおまかな把握。
    私は見たものを映像として振り返られるだけの記憶力を持っているから…

    帰ってからの地図作り…

    「やっぱり私の作業多すぎ!
    絶対作戦終わったら食料貰うわ。」

    その後1時間ほどかけて見渡し終えた私は王都に帰還した。

    「おかえりなさいませ。
    ご無事で何よりです。」

    出迎えた若い執事のような人が言った。

    「ただの下見ですから…」
    「しかし…この物騒な時期ですので…」

    …もう。

    「大丈夫です!それで不安になられるようじゃ、この作戦務まりませんよ、私。」

    そうして笑いかけた。

    「そうですな。」

    彼も笑っていた。
    そんな彼はなんだか…





    とっても美味しそうに見えた。

    …だめだよね。
  36. 36 : : 2017/03/03(金) 21:29:24
    >>33
    そんなことないですって。
    楽しませて頂いてますよ?
  37. 37 : : 2017/03/06(月) 00:02:23
    空腹を堪えながらに魔女教との戦闘を始めるのは…
    危ないかな?

    「また奴らを食べてしまえばいいのよね。」

    そうだ、周りの目など関係なく食べてしまえばいい。
    私は赫子でも捕食が可能だ。
    倒してる感じに上手くやればきっと気づかれないだろう。

    「そうよねそれそれ。」

    「…よしっ!」

    これから起きることは対峙ではない、私の一方的な、『狩り』だ。

    「人間の限界を思い知らせてあげるわ…フフフ」

    闇夜に1人、不気味な笑みを浮かべるSSSレート『黒』がいた。
  38. 38 : : 2017/03/06(月) 00:08:10
    いましたね。黒。
    期待✌︎('ω')✌︎
  39. 39 : : 2017/03/08(水) 13:01:47
    「本日!ここに魔女教討伐隊が集結した!」

    団長が言った。
    その後私は前に出る。

    大きく息を吸いこみ…

    「長き魔女教との因縁に、終止符が打たれる時が来ました!
    めいいっぱいやらせて頂くので、みなさんもサポートお願いします!

    …勝ちましょう!!」

    言い切って息を吐いた。

    「オォーッ!!」

    色々長く考えていたのにいざ言おうと思ったら吹っ飛んでしまった。
    でも士気は上がったようなので結果オーライかな。

    「…では手筈通りに計画を進める!
    サポートに回った者達は出過ぎて勘づかれないようにな!」

    …こうして見ると凄い人数だ。
    この人達が私のサポートだと言うんだから、信頼されたものだ。

    単独での魔女教撃破数No.1。

    それ故のことでもあるだろうがやはり大きいのは『スバルくんの旧友』ということだろう。

    私より前にこの世界に来て、過酷な運命と戦いながら地道に功績を挙げてきた。

    私がここで成功すれば更なる彼への信頼も集まるはず。

    …勝つ。
  40. 40 : : 2017/03/08(水) 13:04:39
    >>38
    ご期待ありがとうございます!
    読み続けて頂いて嬉しいです。
  41. 41 : : 2017/03/08(水) 13:07:22
    これはこの世界の人達の因縁に終止符を打つ戦いだ。

    …最初こそただ倒せばそれでいいと思っていた。

    でもこの戦いは、『黒』としてではなく、
    『四宮御幸』として戦うべきなのかもしれない。

    1人ではなくみんなで、1人の『人間』として戦うべきなのかもしれない。
  42. 42 : : 2017/03/08(水) 14:20:38
    魔女教討伐。
    『魔女教』という歯止めが無くなれば、
    あるいは『嫉妬の魔女』にも手が届く。

    奴を潰せば、スバルくんの戦う理由、
    『エミリアちゃん』が受けてきた冷たい仕打ちも…

    この戦いで変わるかもしれない。
    それだけ大きなことが起きようとしている。

    「ミッキー、大丈夫か?」

    ふと、スバルくんが話しかけてきた。

    「えぇ、勿論よ。
    …まだ反応はないみたい。」

    「そうか。
    ずっと五感フル活用ってのも疲れるよな…
    頑張れよ。」

    「ええ。」

    魔女の愛で魔女教を引き寄せるスバルくん、
    基本死なない感知型の私に、最強無敗のラインハルトくん。
    そしてバックにはたくさんの人達がいる。

    しかしあらわれない。
    感づかれているのか…?
    向こうに私以上の感知型がいるのかしら。

    「出発して2時間が経っているのに…
    あらわれないわね。
    足音も匂いもないわ。
    あるのはバックの人達と王都の方からだけで…」

    「まだ王都の音聞こえてんの!?
    すげーな!」

    !!

    気が付いたことが…ある。

    私達は主力を全てこちらに回して討伐に出かけている。

    王都に残っているのは通常の見張り程度。

    こっちに感知型がいると分かっていて、
    私の逆方向、
    つまり王都の更に向こうから来ていたとしたら…!

    「引き返して!敵は王都にいる!!」
  43. 43 : : 2017/03/08(水) 15:03:18
    盲点だった…
    比喩の意味でも本来の意味でも。

    「どういうことだ!?」
    「敵は…魔女教は私達のもっと、王都より後ろから来ていたんです。
    私に感知されないように。」
    「そんな…」

    動揺する一同。
    しかしそんな暇もない。

    「…私!先に行きますね!!みなさんも後から着いてきてください!!」

    私は羽赫を広げた。

    そこに話しかけてくる声があった。

    「王都にはエミリアもいる!
    …先に行くならよろしく頼む。」

    「任せて。」

    私達は互いに了承して、
    そして私は飛び立った。

    「間に合って…!」

    王都に近づくに連れそこの音も鮮明になっていく。
    悲鳴が聞こえる。
    物が破壊される音も聞こえた。

    「やっぱり…ね。」

    しかしその数が多すぎる。
    ルグニカの他の反乱因子と徒党を組んだのかしら?

    その時音が聞こえた。
    私に近づいてくる音が、急に。

    「魔法か!」

    あれは…アルヒューマ?
    それにしても…
    「何この量!?こんなの…」
    避けきれない!

    近づく程に当たりやすくなる、でも引いてる場合ではない。

    私の体は四方からのアルヒューマに包まれた。
    そのまま氷の塊となり王都に落下した。
  44. 44 : : 2017/03/09(木) 07:40:16
    バリィン!

    地上に降りた私はその氷を砕き真っ直ぐに敵に向かった。

    「何っ!?生きて…うわあああ!!」


    「エミリアちゃん…」

    立ち止まって耳を澄ませる。

    「…逃げて、逃げてください!みなさん逃げてください!!」

    エミリアちゃん?
    おおよそ4500m!

    敵を掃討しながらその場所へ向かった。

    「はぁああああああああ!!!」
  45. 45 : : 2017/03/09(木) 10:42:05
    「パック!援護をお願い!」

    単独でも魔法を使えるようになっていたエミリア。
    その威力は膨大なマナ量に比例して高い。
    だがまだまだ未熟だった。

    「とても1人じゃ…」

    「リア、何かが高速でこっちに近づいてくる!」
    「えっ?」

    「…あれは…」
    「ミユキ!」

    「待たせたわね。」

    はっとしたような顔で口を開くエミリア。

    「あのね、これは敵の罠で、ミユキたちが討伐に出かけている隙に…」
    「大丈夫、分かってるわ。」

    「そう…えっと、他の人達は?」
    「後から来るわ…と言っても30分はかかるかしら。」
    「そんな…!」
    「それも大丈夫、こんなヤツら私にかかればイチコロよ。」
    「ふふっ、ここにスバルがいたら
    『イチコロって、今日日聞かねぇな』(声真似)
    って言いそうね。」
    「はは、それもそうね。
    …そう、私スバルくんに頼まれたのよ、エミリアちゃんを頼む、って。」
    「…また、スバルが…」
    「彼も一途よね、まぁスバルくんたちがくるまで…
    持ちこたえましょう。」
    「うん。」

    そして2人は防衛を始めた。
  46. 46 : : 2017/03/12(日) 19:20:09
    盛り上がってきましたね!
    期待です!
  47. 47 : : 2017/03/14(火) 10:35:19
    ありがとうございます、
    励みにさせていただきます!
  48. 48 : : 2017/03/14(火) 10:45:31
    戦いが始まって驚いたのはエミリアちゃんの魔法の出力。

    「威力は高いしバリアも強い…」

    スタミナ切れ、いや、マナ切れの心配も無さそうだ。
    寄せ集めのこの敵相手なら問題ないわね。

    こっちには喰種がいないから
    SSSレート『黒』
    というレッテルはない訳で、
    それによる脅しが通用しない。

    だが…

    「コイツが大罪司教を半分ぶっ殺したっていう…」

    そんな声も聞こえる。
    どの世界にいっても私のイメージは物騒だ。

    「上空から見てたよりも数が多いわね…どこに隠れてたのかしら?」

    増援が次々来ているのも問題だ。
    私とエミリアちゃん以外はほぼ戦力外だし。

    「あと…10分くらいね。」
    「頑張りましょ、ミユキ。」

    ふと声をかけられた。

    「…ええ!」
  49. 49 : : 2017/03/14(火) 12:01:53
    ふと、幾多の魔女教徒の中にただならぬ気配を感じた。

    「!!?
    エミリアちゃん!
    後ろに引いて!!」

    後ろに振り返ったエミリアちゃんのバリアを無視するように手を伸ばし、
    その手がエミリアちゃんの身体に触れた、
    瞬間。

    「うっ…」

    ドサッ

    エミリアちゃんは力なく崩れ落ちた。

    「エミリアちゃん!」

    呼吸音がする…それに『終焉の獣』が出てこない、生きてはいるけど!

    「お前!エミリアちゃんに何をした!!」

    赫子を伸ばして魔女教徒を吹き飛ばしたーが、
    その中に平然と立っている奴が1人。

    「流石は『エミリア』か、1回でマナを吸いきれないなんて初めてだ。」

    フードを取った男が言った。

    作品のように整った顔に
    薄く虹がかった透き通った白い髪、
    宇宙の様な瞳。

    悪魔よりも…『神』を連想させた。

    「で、君は『ミユキ』…かな?
    今の攻撃、聞いていたほどでもないな。」

    「何を…」

    確かに、私の攻撃を受けて全くの無傷。
    レグルスの時と違って当たった感覚はあった。

    それに…エミリアちゃんのマナを吸収して、
    先の異様な気配が強まった気がした。

    「あなた…どんなマナ量してるのよ。」

    「ははは、それほどでもないさ。
    ただ…」

    「…ただ?」

    「僕の持つ加護『魔力の加護』。
    僕に触れたマナは引き寄せられて僕の物になる。
    僕はマナに愛されているからね。」

    「そう、それなら私は問題ないわね。」

    「?」

    訳が分からない、という顔をしている。
    私の力に…マナは関係ない。

    バキバキバキ…

    「私の全力、見せてあげる!!」
  50. 50 : : 2017/03/14(火) 12:14:02
    「ラァアアアアア!!!」

    羽赫を放出して突進、腕の甲赫のブレードを突き刺す…

    「!?」

    しかし、その攻撃は彼のバリアに容易に弾かれた。

    「かった…!!」

    続く連撃、しかしそれらは彼に届かない。

    「化物…」

    「君に言われたくないなぁ、万人から見て、君の方がよっぽど化物だ。」

    羽赫、甲赫、鱗赫、尾赫。
    全ての攻撃が何の意味もなさない。

    「もう、いいよ。」

    その言葉に目を見開いた。

    「終わりにしよう…」

    かかげた手のひらに何かが作られていく。
    超高密度のマナの塊。

    「これがはじけたら…どうなるか分かるよね?」
    「やめっ…」

    その時。

    「遅くなった!ミッキー!!」

    「スバルくん!?来ちゃダメ!!」

    「なん…そいつは…!?」




    「もう、いいかな。」
  51. 51 : : 2017/03/14(火) 12:39:39
    黒い闇に沈むような…
    何度も感じた…この…





    「!!!」

    目が覚める。
    ここは出発前の王都。

    横にはスバルくんがいる。

    「これ…は…」

    「「死に戻り…した?」」

    2人の声が重なった。

    「えっ、ミッキーまで…
    記憶があるのか?」

    「え、ええ…そうみたいね。」

    そこに声がかけられる。
    「では今回の作戦の中心、ミユキに出発前の一言を…」

    スバルくんの顔を見た。
    無言で彼は頷く。

    「待ってください!」
    この作戦が漏れている可能性が高いです!」

    ざわめく一同。
    それを気にせずに続ける。

    「私達が向かおうとしている反対側から、
    足音がします、それもかなりの数です…!
    この作戦が漏れていたとしたらこれは…」

    音なんてこの距離では聞こえない、
    口から出任せだが…

    「我々が留守の間に?」
    団長は言った。

    沈黙が流れた。

    それをスバルくんが切り出す。

    「今回の作戦!防衛戦にするべきだと考える!」

    「しかし… 」

    「悩んでいる場合ではありません!
    早急に守りを固める準備を!!」

    更なる沈黙が流れた。
    当然だ。
    こんな突拍子もない話をしても混乱するだけ…

    「彼女の言っていることに嘘の気配はない!」
    「僕も同意します。」

    クルシュさんに…ラインハルトくん!?
    彼らはそれぞれ嘘を見抜く加護、相手の考えていることが何となくわかる加護を持っていると聞く。

    私の言ったことは…

    2人が近づいてくる。

    「元より貴女のことは信頼しているつもりだ、ミユキ。
    何か特別な理由があるのだろう、
    あとで話してくれると助かる。」
    「ええ。」

    助けられた、とここまで感じたのは生まれて初めてかもしれない。

    「彼女の言う通り、防衛戦に移りましょう。」

    ラインハルトくんが言った。

    やはり彼の力は大きいようで、ざわついていただけの人々も歓声をあげるように賛同し始める。

    「ここからね。」
    「あぁ、ここからだ。」
    向き合う2人。


    魔女教との決戦が始まる…
  52. 52 : : 2017/03/14(火) 13:08:28
    スバルくんには全てを話した。

    「マナを吸収…」
    「エミリアちゃんを任されたのに…ごめんなさい。」
    「いいんだ、恨むべきは魔女教、なんも変わらねぇ。」
    「…」

    「…そんな顔すんなって!」
    「でも…私の攻撃も通らなかったわ…
    少なくとも火力が倍は必要よ、それに、魔法以外の…」

    「そういうことならご安心ください。」

    「「うわぁ!!」」

    驚きながらに後ろを振り返る2人。
    私の背後を取るとは流石ラインハルトくん…
    じゃなくて!

    話を聞かれた…

    「い、いつからいたの…?」
    「マナを吸収する、辺りからですよ。」

    ほっとして胸をなで下ろす2人。

    「それで、安心して…って言うのは?」

    「僕も魔法なんて使えません、身体が全く受け付けないんです。」

    「「えぇ!?」」

    今日はスバルくんとよく重なる…
    それにして驚きだ、あのラインハルトくんが…

    「僕の取り柄なんて加護の多さ…くらいですよ。
    逆に言えばだからこそ、です。」

    言い切って1度口を閉じ、また開いた。

    「しかし貴女を苦戦させる相手がいたんですか…」

    いつ会った、なんて聞かれたら困ってしまう。

    「いつ会った、なんて聞きません。
    どんな容貌でしたか?マナを吸収する以外の能力は?」

    見透かされたようで恐ろしい。

    「マナを吸収する…以外にはバリアを使ったり、あと…
    あと、この王都を吹き飛ばしても余るほどの威力の魔法を使うわ。」

    「それほどの…」

    私はあの時生きていた、
    スバルくんの死とともに死に戻りするまでの間、明瞭な意識があった。
    辺りは見渡す限りに何も無かった。
    ただ、一面の火が…

    「僕とミユキさんで倒しましょう、人数を増やしてはいけない。」

    そこへスバルくんが反論する。

    「俺も行くぜ。
    お前ら、そいつがどこに紛れてんのか分からねぇだろ。
    俺には魔女の気配というか…何となくわかる。」

    確かに、私が気配に気づいたのは彼が力を出す直前だった。

    「危険よ?」

    「分かってる。」

    間髪入れずにスバルくんは言った。

    そこにレムちゃんが続ける。

    「スバルが行くのなら…レムも行きます。」
    「レムが行くなら私も行くわ。」

    ラムちゃんも言う。

    「お前ら…ほんとにいいのかよ?」

    「当たり前です。レムとスバルくんは一心同体です。」


    「ありがとう、しかし問題は…」
    ラインハルトくんが言った。

    「あちらが来てくれるか、ね。」

    「そうだな、マナの多い奴を狙うんじゃ…」


    「私が囮になるわ!」
    振り返った先にはエミリアちゃんがいた。

    「囮?エミリア、そんなのだめだ。
    危なすぎる!」
    「スバル、もし私が参加しないで作戦が失敗しちゃったら、みんなが死んじゃうのよ?」
    「でも…」

    「それに…
    私はみんなを信じてるわ。」

    スバルくんは見開いた表情で固まっていた。

    しばらくして言った。

    「気を付けろよ。
    俺も絶対、君を守る。」

    「…うん!」

    私達も微笑みかけて頷く。

    5人で、エミリアちゃんを守る。
    6人で、世界を守る。
  53. 53 : : 2017/03/14(火) 16:25:35
    広場の中央、困惑しているようにして辺りを見渡すエミリアがいた。

    その時足音がした。

    「君が…エミリ…」

    ドカァッ!

    突如上空から落下してきた黒い物体がそれを吹き飛ばした。

    「なんだ…?」


    「…させないわよ。」

    「へぇ、完全な死角からの攻撃…少し痛かったよ。」

    …前回の最初の攻撃。
    バリアを張っていないのに効かなかったと思っていたが違う。
    バリアを身体に張っていたのだ。

    「君が噂のミユ…」

    「うるッ…さい!」

    更に攻撃を加える、がやはり火力不足か。

    私の『ビルも吹き飛ばす一撃』が通用しないとは…

    だが、今回は事情が違う。

    「!?…なんだ?この光っ?」

    「気づいたみたいね。
    でも、
    あなた動きは私より遅いし、もう手遅れよ。」

    「君が速くたって…
    !?エミリアがいない?」

    「私が落下してきた時の爆風に紛れて避難済みよ。」

    バリアを厚く展開する彼。

    「さぁ!ラインハルトくん!!」

    私は羽赫で飛び上がる。
    その後からラインハルトくんの一撃。

    上空からそれを見る。

    これは究極の『ただの打撃』
    光と爆風で何も見えない…が
    それも収まっていく。

    正確な一撃だ。
    半径10mほどだけ、深くえぐれている。

    この私が…奥がよく見えないほどに深い。

    「ラインハルトくん!」

    その場所に降り立つ。

    「上手くいきましたか。」
    「えぇ。」
    「感知以外俺の役目なしだな。」
    「安全に終わってなによりです。」

    ドクンッ

    「!?」
    「誰…?」

    「え?」
    ミユキを見返す一同。

    「そんな…嘘よ…」

    冷や汗を垂らす。
    全員の目線が穴に向いた。

    静かに…マナで浮かんで。

    「今のは、普通に痛かったな。」
  54. 54 : : 2017/03/14(火) 17:05:20
    「そんな…ラインハルトくんの一撃で?」
    「マジかよ…」

    ラインハルトくんが言った。
    「みんなは下がって!僕は基本死なない。
    必ず倒す。」
    「私も基本死なないわ、アイツの一撃でもね。
    私も残る、お願い、みんなは引いて。」

    「…折角集まったのに、役に立てそうにねぇ。
    すまん…」

    「さぁ!早く!」

    走っていく背中を見守りながらに背後の警戒を忘れない。
    その背中が見えなくなったあとで振り返る。

    「アナタ本当に化物ね。」
    「君に言われたくないなぁ。」
    「万人から見て、君の方がよっぽど化物だ…って?」
    「よく分かったね。」

    「…ラインハルトくん、コイツがマナ切れするまで攻撃しましょ。」
    「えぇ。」

    「こっちが防御しかできないと思ってるのかな…?」

    そう言って掲げた手を…叩き落とす。

    「っ…!」

    「させないわよ?折角ラインハルトくんが計算して被害を収めたのに辺りを更地になんてね。」

    「どうなるかも分かってるんだね…
    でも!」

    ノーモーションで光の矢を作り私達に向けて飛ばす。

    「こんなものっ!」

    見切って全て避ける私。
    だがその隣のラインハルトくんはただ立っているのに矢がそれていく。

    「反則…」

    「やるね!次は!」

    そう言って彼は足踏みをした。

    ふと、地面から多量の光。

    その不意打ちに吹き飛ばされる。

    足が無くなったが一瞬で再生させ、着地する。

    「はっ、次は何かしら?」

    注意を引きつける。

    彼の背後には…

    「はっ!!」

    「ぐぁっ!」

    ラインハルトくん。

    「不意打ち返しかい?やるねー…」

    私も駆け寄り攻撃を仕掛けていく。
    その時。

    「ここだ。」

    彼から発せられた魔力が爆弾のように広がり…

    「きゃあぁッ!」

    またも吹き飛ばされる。
    しかもゼロ距離で。

    「う…あぁ…」

    「ミユキさん!」

    「おや、今度は再生しないみたいだね?」

    「くっ…」

    『栄養不足』
    あるいは『スタミナ切れ』
    つまりはRc細胞が切れた。

    食事してなかったから…消耗してたか。

    「立ち上がれもしないのかい?」

    「ミユキさん…」

    駆け寄るラインハルトくん。
    もう…あれしかない。

    「ラインハルトくん…」

    「なんです?」

    「喰べて…いいかしら?」

    「えっ…こんな時に何言ってるんです!?」

    「…えっ?」

    数秒考える。

    「いや!そうじゃないの!本当の意味の『喰べる』なのよ!!」

    「可能でしょうか…僕は生まれてから怪我したことがない…
    多分加護のおかげです。」

    「えぇっ!!じゃあ喰べられない!?どうしよ…」

    諦めかけたその時、視界にある者が見えた。
    他の魔女教徒の…死体。

    「ねえ!あれ!取ってきて!!」
    「ええ!?」

    「…?なにを話してるのかな?」

    走り出したラインハルトくん。
    身構えた男をそっちのけで死体に向かって行く。
    そして…それを正確なコントロールで投げた。

    「これでいいでしょうか?」

    「OKよ!」

    死体に喰らいつく。
    なかなかの上物じゃないか。

    モシャモシャモシャ…
    ゴクンッ

    ラインハルトくんが引いた目でこっちを見ている気がするが…

    「完全復活よ!」

    どうも調子が悪いと思った。
    食事してないんだもの。

    バキッ!バキバキビキ…

    「キャハハハハハハハハ!!!」

    ラインハルトくんは口を開けていた。

    一瞬で間合いを詰める。

    「早っ…」

    引いた彼の足を掴む。

    「ヒャハ!」

    そして地面に叩きつける。
    何度も何度も何度も何度も

    「アナタのマナ切れとワタシの細胞切れェ
    ドッチが早いかしらああああ?」

    手の平を見せつけるようにしてマナを打ち込んでくる。

    「ナニソレ!豆鉄砲??」

    「!!」

    「知ってル?強い光もブラックホールに吸い込まれて消えるのよおお!!!」

    「!!?」

    「アナタは光!
    私ハ『黒』!!」

    「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!
    呑み込んであげルウウウウウ!!」

    もはやラインハルトは唖然としていた。

    しばらくして、叩きつけられていた男が人形のように無抵抗になった。
    するとミユキはそれを文字通り呑み込んでしまった。

    バキッ!ボキッ!グチャグチャグチャ…

    ゴクンッ!
  55. 55 : : 2017/03/14(火) 17:14:31
    血塗れのミユキが立っていた。

    「あの…ミユキさん?」
    「…」
    「大丈夫ですか?」
    「…」
    「えっ…」
    「…あ、あ…」
    「なんです?」
    「い…」
    「はい。」
    「い、いわ…」
    「岩?」
    「言わないで!!!」

    振り向いたミユキの顔は色々なものでぐしゃぐしゃになっていた。

    「人喰いだったことをですか?
    言うつもりはありませんが…」
    「あ、ありがと…」
    「それにしても…
    人を食べてマナを回復するなんて凄いですね。」
    「えっ?」
    「あの窮地とはいえなかなかその決断には至れませんよ、死体に残っていたマナの量まで見極めた。」
    「え、えぇ…」
    「報告に行きましょうか、みんなが待ってます。」
    「う、うん。」

    ナイス勘違いと思いたいところだが、なんだか分かってて言っているような気がした。
  56. 56 : : 2017/03/15(水) 23:06:18
    「…まだ、戦いが終わったわけじゃないものね。」

    「ええ。
    急ぎましょう、優勢とは言えない状況のようです。」

    2人は走り出した。

    「あなたも人間じゃない速さで走るのね。」
    「加護のおかげですが…あなたほどは速くない。
    …もうマナは回復されましたか?」
    「実は…今は飛べる程は残ってないわ。」
    「そうですか。」

    そのうちに…

    「…もう見えてきたでしょ。」
    「えぇ!」
  57. 57 : : 2017/03/17(金) 23:30:04
    期待です。
    最近コメント出来てなかったので…ほんとごめんなさい!
  58. 58 : : 2017/03/18(土) 13:07:39
    いえいえ、読んで頂けるだけで嬉しいので全然大丈夫ですよ。
  59. 59 : : 2017/03/18(土) 13:10:17
    あれ?すみません、なんか今ログイン出来てない状態です
  60. 60 : : 2017/03/18(土) 13:27:53
    仕方ないのでこうします。
    Twitterと連携してたんですけどTwitter自体が使えない状況です
  61. 61 : : 2017/03/18(土) 13:28:50
    乗っ取られたのかな?
    アプリならまだ入れるんですけどサイトの方ではもう入れません
  62. 62 : : 2017/03/18(土) 23:57:02
    なんとか入れました!
  63. 63 : : 2017/03/19(日) 00:14:32
    「長距離からの援護には向いてないのよね…ラインハルトくん、お願いできるかしら?」
    「了解しました。」

    そして光の帯のようなものを出現させるラインハルトくん。
    その光は分散して…

    「ぐぁっ!!!」

    敵だけを貫く。

    「援軍?誰かいるのかー!」
    「ラインハルトくんとシノミヤです!間もなく到着します!」

    ドンッ!

    鈍い音で石畳を砕いて着地する。
    …しかしその足がふらついて膝がついた。

    「やっぱり一人だけじゃ厳しいか…共喰いなしじゃあの力は…」

    「ミユキさん、ここは僕に任せてしばらく休んでいてください。」
    「そういうわけにもいかないでしょ。
    これでもそれなりには役立つわよ、私。」
    「そうですか…でも無理はなさらないように。」
    「したくてもできないわよ、じゃあ…」
    「ええ、全部終わったら飲み交わしましょう。
    いい店があります。」
    「それ私のせか…地元だと『死亡フラグ』っていうのだけど…ラインハルトくんに限ってはそれもないわね。」

    二人はうなづいてそれぞれに決めた持ち場に、敵を除け、払いながら進んだ。
  64. 64 : : 2017/03/20(月) 00:48:08
    世界言いかけましたよねw
    期待です。*\(^o^)/*
  65. 65 : : 2017/03/21(火) 00:42:08
    「剣聖!?うわあああ!!」

    遠くで声がした。

    「ラインハルトくんか、もう向こうは平気だな。」

    「…問題は…私よね。」

    男と戦った時に消費したRc値、人肉ではそうそう回復する量ではない。
    不味いので好むものはいないものの喰種の食事で最も効率的なのは喰種。
    私も向こうでは共喰いを中心に生活していた。

    「鯱さんみたいにいかないかしらね。」

    Rc値が高い私はいつもなら、皮膚ですら並の赫子やクインケを弾く程の防御力を持っている…が、今の私は普通の喰種のそれだ。

    消耗を避ける戦いをしていては戦闘が長引く、だからといって飛ばして戦って想定外の事があっては…

    「うっ!」

    その時背後から魔術の矢が。

    「考えてる場合じゃないわね。」

    普段は一瞬で治る傷もなかなか回復しない。

    「本調子じゃないみたいだな、勝てせてもらう。」

    「…格闘だけだって、あなた達くらい倒して見せるわ。」
  66. 66 : : 2017/03/21(火) 00:50:13
    「全員捕食するとして…赫子を温存して戦えば…」

    魔女教徒の首を蹴りで飛ばす。

    「…215人食べれば赫者になれるわね!」

    しかし今まで赫子で弾けた攻撃、避ける必要もなかった攻撃を回避しなければいけないのはなかなかに面倒だった。

    そして敵の数は未だ半分にもなってない。
    むしろ増援も考えると、全体数が減っているのかも怪しい。

    「今はラインハルトくん次第かしら…悔しいわね。」

    敵の武器も利用して最低限の力で倒していく。

    その時。

    「近づいてくる足音?増援…?
    でも単独…」

    猛スピードで走ってくる。
    剣を振る音と共に敵が倒されていくのが分かる。

    それはやがて近づいて…

    「ご無事でしたかな、ミユキ殿。」

    「ヴィルヘルムさん!」
  67. 67 : : 2017/03/21(火) 01:05:55
    「あまり調子が良くないようですな?
    顔色も良くない。
    ここは私に任せて一時撤退された方がよろしいかと。」

    「戦えるうちは戦うわ。」

    「そうですか。」

    彼はそれ以上言及しなかった。
    ただ、一つ。

    「増援は私だけではありませんよ。」

    「え?」

    確かにここに近づいてくる足音が二つ。

    「この速度…地竜?」

    戦いながらに耳を澄ませる。

    この足音のリズム、聞き覚えがある。

    …呼吸音も聞こえてきた。

    「戻って来てくれたのね。」

    少し笑みを浮かべて戦いを続ける。

    タイミングを合わせて振り返って、言った。

    「みんな!」

    スバルくんにベアトリスちゃん、エミリアちゃんにレムちゃんがそこにいた。

    「さっきは蚊帳の外だったけど…役に立たせてもらうぜ。」

    「ふふっ、よろしくねスバルくん。」

    ベアトリスちゃんとスバルくんは契約関係にあるらしくスバルくんの戦闘力の主はそれだ。

    世界最高レベルとマナを持つエミリアちゃん、
    『護身用』のハンマーで敵を粉砕するレムちゃん。

    「頼もしいわね!」

    円陣を組んで、押し寄せる敵を次々と潰していく。

    これが団結した力…今はとても力強く感じた。
  68. 68 : : 2017/03/21(火) 01:12:27
    215人も…
    はい!もうなんかミユキちゃんかわいそうなんで魔法使わせて半永久的にRc供給可能魔法やらせましょう。
    期待!
  69. 69 : : 2017/03/21(火) 01:23:14
    ご期待ください!
  70. 70 : : 2017/03/21(火) 01:27:00
    「これで…とりあえずこの場は終わったわね。」

    「そうだな、他のサポートへ行こうか。」

    「えぇ、そう…ね。」

    「顔色良くないぞ?無理するなよ?」

    「ええ、ちょっと…」

    そこで私は全身の力が抜けてしまい、無抵抗に倒れた。

    「おい!大丈夫か!?」

    逆に…増援が来たことで食事が出来なかったのが原因か。

    返事も出来ないまま、私の意識はシャットアウトした。
  71. 71 : : 2017/03/21(火) 01:50:28
    「目覚めた?」

    目を覚ますと、私はベットに寝かされていた。

    …誰かが運んでくれたのだろうか。

    「えっと…あなたは確か…」

    「フェリスだよ。」

    「フェリスちゃんね。」

    「そう呼んで貰えて嬉しいよ!」

    「え?ええ…」

    間を開けて話をした。

    「私気絶してたのね…」

    「そうだよ、ちゃんと栄養取ってた?」

    「実はあんまりね…」

    「やっぱり。
    あなたの身体を回復させる前に少し調べさせて貰ったんだけど…
    知らにゃい栄養があってね。」

    Rc細胞…

    「実はそれが原因じゃにゃいかと思って…」

    「思って?」

    「それを回復させる魔術を作ることに成功しました!」

    「!!」

    Rc細胞を回復する魔法?

    「と言ってもまだ少量にゃんだけどね。
    体の具合はどう?」

    「うん…あっ!」

    確かに食事をしていないのに大分回復していた。

    「すごい、ありがとうフェリスちゃん!」

    「ふふん。」

    「これで戦えるわね!」

    「馬鹿にゃの?」

    「えっ?」

    「目覚めて直ぐ戦いに行って、もしもの事があったら周りにも迷惑をかけるんだよ?
    それにミユキちゃんはもう頑張ったよ。」

    「でも…」

    「でもじゃにゃい。
    今あなたがやるべき事は、休んで、体調を取り戻すことだよ。」

    「…」

    確かに、私が気絶したことによって誰かがここに私を運んだのも、その時点で迷惑をかけていることになる。

    「…分かったわ。」

    「分かればよろしい。」

    「…フェリスちゃんは、ここで負傷した人達の治療をしているのね。」

    「そうだよ。」

    「なにか手伝えることはない?」

    「じゃあ…」

    その後、私は患者さんの身体を抑える係になった。

    なんでも回復魔法と言うのは個人によって向き不向きがあるらしく、拒絶反応で身体が震えたりする人もいるとか。

    「たくさん来るのね…あなたこそ平気なの?」

    「あなたより無理はしてないつもりだよ。」

    「…」

    そこまで周りを不安にさせるような戦い方をしていたのなら、それはチームプレイを乱す行為にあたる。

    「今…スバルくん達はどこへ?」

    「そんなこと聞いて、どうするつもり?」

    「行こうなんて言ってないわ、
    ただ、急別れる形になってしまった訳だから、把握しておきたいの。」

    「そう…
    スバルきゅんは、あなたをここに運んだ後、
    みんなと一緒に他の増援に駆けつけたよ。」

    「スバルくんが私をここへ?」

    「うん。」

    「そうだったの…」

    「…無理はするべきじゃないわね。」

    フェリスちゃんはその後も黙々と回復を続けていた。

    与えられた仕事をこなすのが大事であって、その後の行動は慎重であるべきだと悟った。
  72. 72 : : 2017/03/21(火) 01:58:09
    「戦いは優勢になってきたみたいだよ。」

    「それは良かったわ。
    …このまま押せば勝利ね。」

    「うん。」

    確かに運ばれてくる患者の数も減ってきていた。

    ズキン!

    鋭い頭痛がして頭を抑えた。

    「大丈夫?もう休んでいて。」

    「…分かったわ、ありがとうフェリスちゃん。
    …おやすみ。」

    「おやすみ。」

    私はベットに入った。

    本来フェリスちゃんの物を借りて。

    「結構いいベットね…」

    戦いが続く中、こうしていることに罪悪感を覚えるものの、先ほどの教訓を生かしてじっとしていた。

    目をつぶって心を空っぽにしていく。



    気がつくとあんていくにいた。
    …これは夢か。
    私は三人称の視点で私やあんていくのみんなを見ていた。

    …あそこが私の帰る場所、いずれは戻らなくていけないと思い出した。
  73. 73 : : 2017/03/21(火) 02:04:06
    差し込んだ朝日で目を覚ました。

    …いや、この間取りでは朝日は刺さないはず。

    「お昼…ね、大分寝ていたみたいだわ。」

    窓の外を見る。

    ここは安全圏で元々騒ぎは少なかったもののあまりに静か。

    「終わっ…たの?」

    髪もとかさずに部屋を飛び出す。

    リビングにあたる部屋には誰もいない。

    「えっ…?」

    外に出る。
    そして耳を澄ませる。

    一箇所に…全員が集まっているようだ。
    ここからでは走るとかなり遠い、が、今ここで飛んでいくのはあまりに愚者。

    「あっ…」

    よく見ると髪をとかしてないどころか寝巻きのまま。

    「着替えて…行こう。」

    私は身支度を整えてその場所に向かった。
  74. 74 : : 2017/03/21(火) 02:23:51
    広場につくと、そこには国民全員が集まっていた。

    一般人に紛れながらに前に進んでいく。

    「ー今回の勝利を次に生かして、更なる防衛力を…」

    団長が城の上の方で話しているのが見える。

    勝利…

    眠っている間に戦いは終わっていたようだ。

    ラインハルトくんもいたことだし当然と言えば当然か…
    しかしあの数が1晩で片付くとは。

    「Rcも使わずに、いいなぁ。」

    愚痴を零す。

    「現在休養中の為ここにはおりませんが
    シノミヤミユキの活躍も大きかったことを…」

    私の名前が上がって驚く。

    ここにいますと言うべきか否か…

    とりあえず私は城裏口から城へ入る。

    「ミユキさん!」

    1部の面識のある兵たちが私に呼びかけた。

    「もう平気なのですか?」

    「ええ、もう平気よ。」

    「連絡をいれましょうか?」

    「ええ、よろしく。」

    しばらくしてスバルくんがこちらに来た。

    「よ!もう平気みたいだな。」

    「ええ、おかげさまでね。
    スバルくんは出なくていいの?」

    「もう出て話した後だよ。
    ホントは俺の前にミッキーだったんだけど。」

    「そうだったのね、ごめんなさい。」

    「いやいや!お疲れ様。あ、それでさ…」

    「なに?」

    「なんか後で表彰受けるみたいだから、正装ある?」

    「着替えておくわ。」

    「おう。」

    私は城の服を借りて身なりを整えた。

    「そう言えば…大分回復したわね。」

    あの後もフェリスちゃんが魔法をかけてくれたのだろう。

    私は赫者になって、フルで戦闘しても丸1日は持つはずだった。
    向こうにいた時Rc値は320万前後、喰種としても異常な数値だったわけだが、度重なる飛行や戦闘でかなり消耗していたらしい。

    今の感じだと…5%というところか。

    つまりは16万程度。
    普通の喰種のように生きる分には1年は困らない。

    少し抑えて暮らすべきか。


    しばらくして、私達は国民の前で表彰を受けた。
    初めての体験に、堂々と出来た自信はなかった。
  75. 75 : : 2017/03/21(火) 02:37:46
    「魔女そのものは影も見せなかったわね。」
    「まぁありがたい話だけどな。」

    その後のパーティーの中、2人で話していた。

    そこへフェリスちゃんがやってきた。

    「やっほー、スバルきゅん、ミユキも。」

    「昨日はありがとう。」

    「いいえー、それでね、食べてみてほしいものがあるの。」

    「私に?」

    「うん。」

    困ったな…慣れてはいるがやはり人肉以外は…

    「コレだよ。」

    出されたのは…

    「何これ…」

    「赫宝石」

    「赫包!?」

    「石!?」

    スバルとミユキはそれぞれ別のところで驚いた。

    「あっ、確かに石なんて…」

    「塩も結晶ができるでしよ、似たようなものだよ。」

    「へぇ…」

    紅く光るそれは、美しいがとても食べ物には見えない。

    「普通はね、それを取り込むと体調を崩すか下手すると死んじゃうんだけど…」

    「えっ」

    「ミユキの身体にでた栄養素がそれと一緒だったの。」

    「!!」

    「食べてみて。」

    「分かったわ。」

    恐る恐るフォークを突き刺す。

    すると刺した場所からヒビが入って、割れてしまった。

    「だめだめー!それは手で食べるんだよ。」

    「そうなの…」

    改めて、それを手で掴み…
    口へ運ぶ…

    「バキッバキッゴキャッ…」

    「とても食いもんの音には聞こえねぇ…」

    「ゴクンッ」

    「…」

    「どう?」

    訪ねるフェリス。

    「…お、美味しい!!」

    「良かったー」

    信じられない、人肉以外にこんなものがあるなんて…
    異世界万歳。

    しかも…

    これは高純度のRcの塊。
    人間や並の喰種が食べては暴走して死に至るだろう。
    しかし私には…

    「最高の食事だったわ。ありがと。」

    「どういたしましてー」

    「信じられねぇ…」
  76. 76 : : 2017/03/21(火) 02:41:51
    「これはどこで手に入るの!?」

    「それはねー…ほんとは秘密にゃんだけど使い道がある訳でもにゃいし教えちゃう。
    王都所有の鉱山の地下にね、広い空洞があるの。
    そこにはこれの結晶がいっぱいあるんだよ。」

    「いっぱい?」

    「うん、もうあたり1面に。」

    「!!」

    それはもう…行くしかない。

    「このパーティー終わったら、ミッキーはどうするんだ?」

    「お風呂に入って…少し身の回りの整理でもするわ。」

    「そうかー。」

    本当の気持ちは勿論…
  77. 77 : : 2017/03/21(火) 02:55:02
    私の身体は他の喰種と違い、取り込んだ分だけRc値が増える。

    この結晶は約1kgでRc細胞8000程を含んでいる。

    素晴らしい食事だ。

    是非向こうに持ち帰ってみんなにも分けたいところだ。

    「じゃ、またなー。」

    スバルくん達と別れて…

    「鉱山は…あっちね。」

    私はこれまでにないほど高揚した気分で夜の王都を飛んだ。

    「…あの山ね!」

    そして静かに降り立つ。

    地下への入口は…

    「どこかしら?」

    全く見当たらない。

    それも当然、鉱山の知識など全く持ち合わせていない。

    「ここら辺掘ればいいかしら?」

    鱗赫を15本出して、掘り進める。

    そのうちに紅く輝く物が見えた。

    「赫宝石!」

    私は確かめるべく早速それを口にする。

    「うんうんこれこれ!」

    確かめるつもりがかなりの量を食べてしまった。

    「もうお腹いっぱい…」

    これだけ罪の意識もなく食事が出来るのは生まれて初めてのことだった。

    「ああ…幸せ。」

    私はすっかり体調を取り戻した。
    今ならあの昨日の戦争を1人ででも終わらせられる気がした。

    「ま、過信は良くないわよね…」

    久しぶりに全力で羽赫を出現させる。

    「さて、袋にありったけつめたところで今日は帰りましょう。」

    星の零れそうな夜空を黒の喰種が飛んでいった。
  78. 78 : : 2017/03/21(火) 03:31:14
    食料問題は解決した。
    むしろ昔より前進した。

    「♪♩♪」

    私は湯船の中でかなり脱力していた。

    「はぁ…」

    昨日まで戦っていたとは思えないほどに、いや、昨日まで戦っていたからこそのこの気の抜けよう。

    初めて20区に来た時、そこで借りたアパートでの感動を思い出す。

    身体が火照るまで浸かった後、風呂を上がる。

    赫子も使って身体を拭き終え、髪を乾かす。

    私の属性は火と風と陰らしく、それらの魔法は一応使える、ので、それで髪を乾かしている。

    全てを終えて寝床に入る…
    が、寝すぎたためか寝付けない。

    「でもやることないのよね…」

    仕方がないので私はスバルくんの部屋へ。

    コンコン

    「スバルくん、いる?」

    「ミッキー?」

    スバルくんが出てくる。

    「どうしたんだ?
    しかも…その格好で。」

    「あっ…」

    私の今の格好は寝巻き。
    またやってしまった。
    今度はとうとう人に見られた。

    しかもこの寝巻きは寝やすさ重視で胸元は大きく空いてるしなんというか…

    「…着替えてきてくれ…俺にはエミリアが…」

    「…」

    シュルルルッバキッビキビキッ!!

    「うわぁ!」

    そこで赫者になった。

    「これで色気ゼロよね、お話しましょ。」

    「いや、それはそれでちょっと…」

    「ダメ?」

    「うん。」

    「残念…」

    とぼとぼ自室に戻る私、姿はそのままで。

    「何着てこうかしら…」

    ふと、目線の先にある服が。

    「これにしましょ。」

    私は着替えて再びスバルくんの部屋へ。

    「おう戻って…うわぁ!」

    「どう?」

    「どう、も何もその服って…」

    そう、この服は…

    「レムちゃんラムちゃんとお揃いよ!」

    「なんで持ってるんだ…」

    「ロズワール邸にあったの、サイズ合うのこれしかなくて…」

    「へぇ…」

    そこで改めて口を開き直すスバルくん。

    「そうだ、俺が作ってやるよ!」

    「スバルくん裁縫得意なの!?」

    「おう、自信あるぜ。」

    「実は私も好きなのよ裁縫!」

    「同士!」

    その後は2人で服のデザインの話をし始めた。
  79. 79 : : 2017/03/21(火) 03:39:50
    「画期的ね!あとは生地…」
    「そうなんだよな、見た目と耐久性の兼ね合い。
    かぐね?だかを自然に出す穴のスペース、背中から腰にかけては開けるとして…」

    「…そうだ!」
    「なに?」

    「レムが前に言ってた、ミスリル銀を編み込んだ布!
    ミッキーの服ってミッキーの動きに耐えられなくてすぐボロボロなるって言ってたよな、でもあれなら…」
    「…でも高価じゃない?」
    「それがな、今回のことで賞金が出たんだ、
    しかも結構な額。」

    「私も貰ったわ、確かに使い道に困っていたし…」

    「明日、買いに行こう!」
    「ええ!」

    2人は意気投合した。

    ミユキは自室に戻った。

    その後は意外にもすんなり眠ることが出来た。
  80. 80 : : 2017/03/21(火) 03:54:01
    「んん…」

    小鳥のさえずりが聞こえる。
    気持ちいい朝だ。

    「恐ろしい程体調がいいわ…」

    朝の準備を済ませてスバルくんの部屋へ。

    コンコン

    「起きてる?」

    「ああ、もう準備出来るよ。」

    「先に朝食だからね。」

    「そういやそうだった。」


    今は2人で王都の宿にいる。

    朝食はセットなのだが…私は赫宝石を食べることにする。

    「ここの飯最高だよな!」

    「そうね。」

    こういう時は、自分が喰種であることを悲しく思う。

    「ミッキーは…また石?」

    「ええ。こう見えて栄養偏りなく取れるのよ。」

    「へぇ…(そもそも食い物に見えないけどな…)」

    食事を済ませて、外へ。

    「金属を扱ってる店は…」

    「ここを右、次を左に曲がった所の左側にあったはずよ。」

    「記憶力いいな!」

    そして到着する。

    「いらっしゃーい、おぅ!?
    これはこれは、スバルさんにミユキさん。」

    「さん付けはやめてください、あなたの方が年上でしょうに。」

    「いやいや、街を救った英雄ですよあんた方は。
    あんた方から金取るのはちっと気が引けるなぁ」

    「ふふ、しっかり払いますよ。」

    「…それで、今日は何をお探しに?」

    「ミスリル銀を。」

    「結構値張りますよ?」

    「大丈夫よ。」

    「そうですか…どれぐらいにします?」

    「2人分…服や靴が作れるくらいください。」

    「ミッキー?2人って…」

    「もちろんあなたの分よ、スバルくん。
    あなたもジャージとスーツしか持ってないでしょ?それにどっちも脆い…」

    「そうだけど…」

    「2人分ですか…なら…」

    言われた金額を払ってミスリル銀を購入した。
    …後から分かったことだがそうとうまけてくれていたようだ。

    「これで靴なんかも作れちゃうわね!」
    「なんかドラクエで新装備手に入れるみたいな感じで…いいな。」
    「ふふっ、早速宿に戻りましょ。」
    「おう!」

    2人は戻るとすぐに服の制作に取り掛かった。
  81. 81 : : 2017/03/21(火) 04:21:14
    平和に時間が過ぎ、3週間が経った。

    「後はこれを鍛冶屋に持ってて…加護的なのを付けて貰おう。」
    「そんなことが出来るの!?」
    「うん。」

    2人は完成した服を持って腕利きの鍛冶屋の元へ。

    「いらっしゃい。おや、スバルくん、ミユキさんも。」
    「こんにちは、今日はこれを強化して貰いに来ました。」
    「どれどれ…」

    「!!」

    驚きの表情を見せる鍛冶屋。

    「なんだ…これは…」
    「ん?」
    「これをどこで…?」
    「私達が作ったんです。」

    「作ったのか…これを。」
    「ああ。」

    「こんな見事な代物、王でも持ってないぞ。」
    「え!?」

    顔を見合わせる2人。

    「こりゃあいいもんだ。一生お目にかかれないかもな。」
    「そんなに…?」
    「ああ、まずこのミスリル銀。
    この線維化のレベルが高すぎる。
    この加工はどうやって?」

    「私の魔法(赫子)で超高温まで持っていきました。
    それを少しずつ垂らして…」
    「たまげたな、流石は相当な使い手だ。」
    「そんな…」

    「そしてこの編み込み、ここまで密度を高められるのは線維の出来か?」
    「ある程度自信があったので…」

    「もっと自信を持つといい。
    そもそも純ミスリル銀の服なんて相当な者しか作れないし、着れないからな。」
    「へぇ…」

    「…それで、これにどんな力を与えるんだ?」
    「私の方は…この赫宝石を粒子状にして錬金してください。」
    「こりゃまた珍しい、どんな効果があるかワシにも分からん。」
    「俺の方は、魔力を増加…みたいな、出来るのか?」
    「ああ、相当値は張るが…」
    「構わねぇ、よろしく頼む。」

    「…それで、どれ位かかります?」
    「材料に金はかかるが時間はそうでもないぞ、
    どうせなら見ていくかい?」

    「「はい!」」

    2人は錬金工程を眺める。

    まだ銀一色だった服や靴がそれぞれの色に染まっていく。
    元々きらびやかだった服だがそれとはまた違う、蛍のような淡い光を纏い始めた。

    「すげぇ…」

    「ふぅ。」
    「こんなところかな。」

    「お題は…要らない。
    これだけ素晴らしい服を錬金させてもらえたのは、むしろこっちが金払いたいくらいだからな。」

    「いいんですか?」

    「ああ。」

    「ありがとうございます!」

    2人は鍛冶屋を後にした。

    宿に着いて、2人はそれぞれの部屋で作った服に着替える。

    それを見せ合おうと言う話だ。

    「おー!すげぇ似合ってる!」
    「スバルくんもよ、2人でデザインしただけあるね。」

    そこにレムが現れる。

    「スバルくん?そのお洋服はどうされたんですか?」

    「これか?へへっ、作ったんだ。」

    「作ったんですか!?…流石はスバルくんです。
    そんなの前代の王様でも着ていませんでした。」

    「みんなそれ言うな…どういう意味でだ?」
    「それだけデザイン、機能性に優れた服は見たことがありません。
    しかもそのマナ…防御性能は計り知れません。」

    「そんなにすごいの!?」

    「はい。
    並の魔法では傷一つつかないでしょう。」
    「わぉ…」

    2人でもう一度顔を見合わせ、ガッツポーズ。

    食事に続けて洋服まで改善された。
  82. 82 : : 2017/03/21(火) 04:25:48
    登場アイテム紹介

    ミスリルコート
    スバルとミユキが作成したコート。
    ミスリル銀で編み込まれている。
    また、空気中のマナを集める特殊な加工が施されており、マナ量の少ない者でもその容量が飛躍的に上がる。

    ミスリルドレス
    ミユキとスバルが作成したドレス。
    ミスリル銀で編み込まれている。
    また、赫宝石の力が組み込まれており、これを着た者はRc細胞が常に供給される。
  83. 83 : : 2017/03/21(火) 04:26:24
    今日は寝ます、おやすみなさい。
  84. 84 : : 2017/03/21(火) 05:27:35
    寝れないので続き書きます
  85. 85 : : 2017/03/21(火) 05:46:53
    「しかし…王選でエミリアを勝たせること以外に…なにかすることあるのか?」
    「たくさん残っているでしょう、例えば…」
    「例えば?」

    「今も被害を伸ばし続けている…大兎とかね。」
    「大兎?」
    「あら、知らない?文献を読み漁っているうちに分かったのだけど、あの白鯨と共に3大魔獣に数えられているわ。」

    「読み漁ったって…イ文字以外にも色々覚えてるんだっけか。」
    「まぁ、一応ね。」
    「それで、その大兎っつーのはどんな魔獣なんだ?」
    「一匹一匹は手のひらに乗るくらいの兎なのだけどそれが数万匹いて、さらに分裂するんですって。
    でさらに…タチの悪いことにそれらは食欲のみで動く。」

    「つまり?」
    「食べられる。」
    「…」

    「まぁ私は食べられないわね、むしろ食べちゃうわ。」
    「そうか…で、私はってのは?」
    「スバルくんなんかはパクパク食べられちゃいそうねって話よ。」
    「ひでぇ…」

    「…もう、冗談に決まってるでしょ。」
    「ははは…」

    「…あ、それで、なんでそいつらはほっとかれてるのかってまぁ…さっきので大体分かったな。それで?
    今の疲弊したルグニカにゃそれは討伐できそうにないよな。
    ラインハルトいればまだしもあの戦い終わってまたどっか行っちまったみたいだし。」

    私はスバルくんに微笑みかけて、言った。

    「分かるでしょ?それだけのものを倒せれば『エミリア陣営』一強になるわ。」
    「つまり?」
    「潰しましょう、全部。」
    「マジかよ。」
  86. 86 : : 2017/03/21(火) 06:01:17
    「私は冗談を言わないのよ。」
    「さっき言ってたよな。」

    「…大丈夫、攻撃は私で事足りる。
    スバルくんにはいてもらわないと正式なエミリア陣営の手柄にならないわ。」

    「火力不足は有り得ないのか?」
    「大丈夫、世界の半分を呑み込んだだか知らないけど、私が全ての人間を喰らえば地球を滅ぼせるわ。」
    「化物だな…」
    「あら、気にしてるのよ私。
    あの見た目は確かに化物だもの。」
    「そうか…」

    「…本当に上手くいくのか?死ぬ危険は。」
    「このドレスがあればパワー切れにはならないから…最悪あなたを連れて飛んで逃げればいいわ。」
    「お、おう。」

    「私は反対かしら。」

    そこにスバルくんの契約精霊、ベアトリスちゃんが現れる。

    「あの大兎相手に2人で挑もうなんて頭がおかしいとしか思えないのよ。」

    「なら、私1人で行くわ。
    誰にも迷惑はかけない。」

    「話を聞けなのよ!」

    「確かに、これで大兎討伐に成功すれば大きくエミリアの力になれる。
    元から、戦ってる理由はそれだからな。
    最悪俺には…し、あ、いや、別に何も無いけど」

    「勝手に話を進めるななのよ!」

    「大丈夫だベア子、俺が今までどんな窮地になったって、1度でも死んだか?」
    「1度でも死んだって何かしらその変な言葉は。ふん!もう好きにしろなのよ。
    私は手伝わないわよ。」

    「えぇ…頼むよベアトリス。」

    「嫌なものは嫌かしらー!!」

    「準備出来ることは何も無い…この服を着ることぐらいよ。
    もう行きましょう。」
  87. 87 : : 2017/03/21(火) 06:19:50
    「ベアトリスちゃん、あなたの魔法で私とあなた達を繋げられる?」
    「『ちゃん』はやめるかしら、私はお前よりも374歳年上なのよ。」
    「ベアトリスさん、あなたの魔法で私とあなた達を繋げる…連結できる?」
    「朝飯前なのよ。」

    魔法で私達の手が固く結ばれる。
    同時に少しの浮遊感がした。

    「じゃあ、行くわよ!」

    羽赫を全力で噴射。

    地上から浮き上がった体はやがて向きを前向きに変えスピードに乗る。
    それはだんだん加速していき、最後は化学では到底出せないような速度まで上昇する。

    そして目的地でフワリと、着地。

    トンッ

    「飛んでる時の風景…空しか見えなかったぜ。」
    「人間の動体視力じゃ仕方ないわ。」
    「ミッキー人間じゃないの?」
    「あ、いや、比喩よ、比喩。」

    「さて…もう見えてるわね。」

    その数に驚愕するスバルくん。

    「…この程度なのね。」
    「え?」

    「あああああああ!!!」

    バキバキビキィッ!!

    「あの…ミユキさん?」

    「はああああああああ!!」

    「おーい。」

    羽赫に全神経を集中。

    「アハハハハハハハハハハ!!!」

    「ミユキさん!?」

    「スバルくううううん!け・い・ご、はきんしいいいいいいいいい!!」

    「…!!」

    集中させたRcをその群れに向ける。

    「…ちょっと……ゆれるかもねえええええええ!!」

    ゴアッ!!

    一気に解き放った。

    ドドドドドド…

    「これちょっと揺れるとかいうレベルじゃねえ!震度7あるって!!」
    「震度?訳のわかないことを言ってないで私のバリアの後ろにくるかしら!?」
    「あれ?」
    「はやくするかしら!」
    「この爆風と揺れで…俺なんともない。」
    「そのみょうちくりんな服のせいかしら!いいからくるのよ!」
    「わ、わかった!」

    ゴウゥ…

    やがてそれは落ち着いた。

    パラパラパラ…

    「驚かせてごめんなさいね、本気を出すと自我を保てなくなるの。」
    「そうか…」

    そして煙が晴れる。

    「なんじゃこりゃ…!!」
    「あら、ちょっとやりすぎたかしらね。」
    「風景が…何もねえ。」

    そこに大兎の姿は一匹もない。

    「終わった…のか?こんなに簡単に?」
    「それを願うわ。」
    「本当に無茶をするのよ…」

    「はは!張り合いねぇなぁ、白鯨のほうがよっぽど強かったぜ…」

    その時、背後から静かに歩み寄っていた大兎がスバルに噛み付いた。
  88. 88 : : 2017/03/21(火) 06:23:40
    「スバルくん!」

    「ん?」

    スバルくんは自分の足を見下ろした。

    「おわ!生きてやがったのか!」

    そしてそれは分裂していく。

    「動かないで!」

    言うと、
    私は尾赫でそれらを全て薙ぎ払った。

    「今度こそ終わりね。」
    「あー…びっくりした。」

    「足…なんともないの?」
    「それが、チクリとも。」
    「なかなか凄いものを作ったのね、私達。」

    「さて…
    これで片付けたよな。
    報告しに行くか。」
  89. 89 : : 2017/03/21(火) 09:30:13
    その後帰ったミユキ達、エミリア陣営が最強の勢力となったのは言うまでもなく。

    私達は更に増えた賞金を使って装備の強化を行った。

    具体的には…要所々々を『オリハルコン』という金属で強化した。

    何でもこの世界最強の金属らしく、とても希少価値が高い。
    もはや入手不可能と言われたのものだがそこは鉱山で赫宝石を自力で見つけ出した私が、
    何とかした。

    鍛冶屋のおじさんには装備を作るのを本業にした方がいいとまで言われた。

    最有力候補となったエミリアちゃんはすっかり仕事が増えたが、スバルくんの協力もあり、今まで通りにやれていた。

    しかし未だ、黒蛇や、…嫉妬の魔女は倒されていない。
    それを潰すのがあくまで最終目標であることに変わりはない。

    ーが、

    実は今の私は、鍛冶屋の言った通り装備を作って売っている。
    これは今のエミリア陣営の資金の8割を占めていて成功していると言えていた。

    彼の言うような本業にはしていないのだが今は治安もすっかり落ち着いているので悪くはないだろう。




    「日記と言うのは…私には向かないわね。」

    私は書いていた手を止めた。

    「実際に出来た出来事を書いてもあまり面白くないわ…」

    日記帳を閉じた。

    「さて…少し疲れたわね。」

    実はエミリア陣営の主力は、全員、ミスリルコートを着ている。

    もちろん2人で作ったわけだか、その資金は自分で稼いだものだ。
    商いの楽しさも感じることが出来る平和さだった。

    実は人間の4~7倍程度の筋力を持つ喰種は、肩が凝ったりはまったくない。

    一般よりも筋肉のあるスバルくんでさえ、連続のホームワークで肩が凝って動かねぇ…
    なんて言って、肩揉みまでした。

    エミリアちゃんにいったってはそれの比ではなく、もう全身おばあちゃんのようにバキバキになっていたので、日頃の運動と、エステ通いを勧めた。

    勢力を上げても、他の王候補の陣営とも良好な関係を保てている。

    「そうだ、今日は6時から会合があったんだっけ…」

    そして魔刻結晶を見る…
    その色が青から黄色へ変化しようとしていた。

    「………まずいわ!」

    私は身支度を比喩抜きに3秒で整え屋敷の自室を飛び出した。
  90. 90 : : 2017/03/21(火) 09:50:51
    「遅刻してしまい申し訳ありません…」

    「12秒遅刻したくらいで、誰もあなたを責めたりしませんよ。
    あなたの活躍は12秒の遅刻で掻き消されるような小さな物ではない。
    胸を張ってください。」

    「あ、ええ…」

    日本人の恥の文化と言うか、外人に比べて謝り過ぎると聞いたことがあるがそれは本当のようだ。

    ちなみに私はこの国で、ラインハルトくんと並ぶ存在にまで持ち上げられた。
    剣聖ではなく、黒。

    流石にCCGと同じ名前を付けられ耳を疑ったが安直につければそうなるのも頷ける。

    「今回皆に集まって貰った理由は他でもない、
    各自配られた資料を見て欲しい。」

    机の上に裏返しになっていたそれを見る。

    「これは…」

    「黒蛇についてだ。」

    「…君達も聞いたことはあるだろう。
    この魔獣は…」

    触れるだけで100の病を与える黒い大蛇。
    これが棲む近くは他のものの生息出来ない死の土地になるという話だ。

    …迂闊に動いて活動範囲を伸ばしては多大な影響が出るので私も動いていなかった。

    「それが見ての通り、大移動を始めた。
    このままでは死の土地が広がってしまう。」

    「今回集まって貰った理由はもう分かっただろう。
    近いうちにこれを討伐する。」

    「…以上だ。なにか質疑応答はないか。」

    「…では解散する。」

    円卓の座席から腰を上げ、隣のラインハルトくんに話しかける。

    「正直、私には毒が効かないから勝率は高いと思う。
    でもラインハルトくんも、単騎で撃破出来そうなものよね。」
    「念には念を、ということでしょう。
    想定外はいつでも起こり得ます。
    例えば…魔女そのものの到来、ですとか。」

    少し間を開けて言った。

    「その場合、勝てる自信ある?ラインハルトくん。」
    「負けはしません、いえ、あなたとなら確実に討ち滅ぼせます。」
    「おぉ…」

    彼の姿勢に感動して、それで向き直して、今度はスバルくんたちの元へ。

    「よおミッキー。遅刻なんて珍しいよな。
    何してたんだ?」
    「実は…ボーッとしてました。」
    「お、そうなのか…」

    鳩が豆鉄砲をくらったような顔でこちらを見るスバルくん。

    無理もない、大事な会議を遅刻するなんて…

    「まぁ気にすんなよ、多分誰も気にしてないぜ。」
    「ありがと、それを祈るわ。」

    「…いよいよ、三大魔獣最後が相手だな。」
    「えぇ、勝つわよ。」
    「ああ。
    俺たちなら勝てるさ。」
  91. 91 : : 2017/03/21(火) 10:22:34
    スバルくんの死因の1部は、防御力が足らない事だった。

    エルザに2回、不良共にも殺され、…レムちゃんにも殺された。

    この装備が精神干渉を受けないことを考えるとペテルギウス戦ももっとスムーズに行ったはずだ。

    そう考えるとやはり大きな進展だろう。
    それに、魔鉱石の力でマナ量をカバーしているスバルくんは、前よりベアトリスちゃんを呼べる時間が増えている。

    「決行は…1週間後の正午から…。」

    敵が人間でないからその時間なのだろう。

    「…今すぐに動きたいところよね。」
    「いや、ここは慎重に出て正解だ。
    もし魔女が動いたら…」
    「そうね。」

    この服、実は予想以上の性能で、私は今喰種の食事をまったくしていないのにも関わらず常にベストコンディションを保てている。

    「まだしばらく期間あるよな、どうだ?
    一緒に出掛けないか?」

    「あら、私は歓迎だけど、エミリアちゃんやレムちゃんは?」

    「実は1週間に一回ずつそれぞれにデートしてるんだ。」

    「この果報者ー」

    私も向こうの世界に想いを寄せている人がいる。
    カネキくんじゃないよ?
    彼は両手に花状態。

    私の想い人は…
    何故こんなことになったんだっけ、ああそうか。
    スバルくんのあまりのリア充っぷりに…
    濁して言うなら、かつて死神と呼ばれた彼だ。

    「…あ、あー…いいわよ、行きましょう。」
    「おー、じゃあまずはカドモンが新しく始めた飲食店にでも…」
    「えぇ、あのおじさんが?前の仕事は?」
    「続けてんだってさー。
    いつも客が集まらない時間に飲食店始めたってそういう訳らしいよ。」
    「熱心なことね…」
    「奥さんに子供もいたからなぁ。」
    「えっ!?私てっきり…独身かと…」
    「ははは!まぁ行ってみようぜ。」
  92. 92 : : 2017/03/21(火) 10:33:59
    「いらっしゃーい、おぉ、お前らか。
    すげぇ活躍してんだってな、リンガも変えなかった頃が懐かしいよ、なぁ?」
    「おいおい客に皮肉とかマジ勘弁。
    ってか結構綺麗な店じゃねーか。」
    「ははは、まぁくつろいでくれや。」

    座席に座ってメニューを見る…
    何度も言うようだが、こういう時は喰種であることを恨む。

    「じゃあ、リンガパイとコーヒーくれ。」
    「了解、お嬢さんは?」
    「私はコーヒーだけでいいわ。」
    「ところでスバル、お前はいつも違う女を連れてるな。」
    「そんな!?浮気してたのね!」
    「ちょ、悪ノリやめてくれる!?」

    場にどっと笑いが出た。
  93. 93 : : 2017/03/21(火) 15:22:20
    「美味しい珈琲だったわ、挽き方もいい…
    この豆はどこで仕入れているのかしら?」
    「ある農家からな、産地直送ってやつだ。」

    「その言葉このせk…この地域にもあったのね。」
    「(ミッキー結構危ないよな…)」

    「あとで紹介してくれる?」
    「ああ、いいぜ。」

    そして店を後にする。

    「2人とも頑張れよ!」
    「ああ。」
    「また来ますね。」


    「…次はどこへ連れていってくれるの?」
    「次は…適当に買い物して回ろうぜ。」
    「いいわ。」

    歩きながら会話をする2人。

    「そういやさ、俺この服作ってからラムに服装で馬鹿にされなくなったんだぜ。」
    「今まで馬鹿にされてたのね。」
    「あはは、この服着てると王選のヤツらや騎士達にももうなんか色々ね。」
    「私もよ、この前なんか街の女子高生くらいの子達にその服どこに売ってたんですか?なんて聞かれちゃって。」
    「ミッキースタイルもいいからそういうヤツらの憧れかもな。」
    「やめてよそんな。」

    「おっ。」

    しばらくして商店街へ着いた。

    「着いたわね。」
    「ああ。」

    「ねぇ、あそこ見て。」
    「ん?」

    私が指さした先、そして2人の目線の先には…

    「アルデバランくん、よね。」
    「アル…だな。」

    駆け寄っていく。

    「おお?兄弟。
    それに…ミユキ…だっけか。」
    「ええ。」
    「兄弟…お前見る度別の女連れてるな。」
    「そんな!?浮気してたのね!」
    「その下り2回やる!?」

    「…アル、お前も黒蛇討伐隊に入ってたよな。」
    「ああ、兄弟とミユキは主力だったな。」
    「そうだよ、っても俺はベアトリス便りになっちまうが…」
    「精霊使いってことで別にいいんじゃないか?
    …ところでお前らは何だかやたらにきらびやかな服を着てるな。」
    「きらびやか…ね、それは褒めてんのか?」
    「ああ、そんな見事な代物は見たことがないからな。」
    「ありがとう、これ私達が作ったのよ。」
    「すげぇ…」

    「…あなたの服も作りましょうか?」
    「確かに綺麗とは言い難いよな。」
    「…いや、別にいいよ。」
    「そうか。」


    「じゃあ俺らは店回ってっから、じゃあな。」

    アルデバランくんと別れた私達は商店街をまわり始めた。
  94. 94 : : 2017/03/22(水) 13:43:53
    「この服変わった裁縫よね。」
    「そうだな、生地と生地の間で…」

    2人は服を見ながらだべっていた。

    「そういえばスバルくん、最近あのジャージ着てないわね。」
    「この服最高すぎてなぁ…可哀想だからまた着てやるか、今クローゼットに入ってる」
    「ふふっ、一時期はジャージだけだったと聞いているわ。」
    「ははは、それにしてもミッキーは凄いよな、こっち来て初日でとりあえず服買う精神は…」
    「単純に新鮮味を求めたのもあるのだけど…
    結構浮くでしょ向こうの服装って。」
    「そうだな、ってなんで今から着ようって言ってるやつに。」
    「ごめんごめん。」

    そこで話の流れが変えられた。

    「…俺は両手埋めてるつもりだけど、これ、周りから見たらカップルだろうな。」

    突然の発言に驚くが…

    「私とスバルくんって10歳以上年離れてるのよ?
    この力のせいで若く見えるって言われるけど私もアラサー…
    姉か、母の気分に近いわ。」

    少し笑いながらスバルくんは言った。

    「…、それ最初エミリアにも言われたんだ。
    まぁ、実際年の差はひ孫とひいばあちゃんくらい離れてっけどな。」
    「ひ孫とひいばあちゃんのカップルねぇ…」

    私は笑ってしまう。

    「ちょ、笑うんじゃねぇよ!」
    「ごめんなさい、別に馬鹿にしてる訳じゃないのよ。」
    「…」

    そこで思い出されるもう片手。

    「レムちゃんは?確かスバルくんと同い年よね。」
    「ああ、レムも俺も早生まれだからまさにな。」
    「3月31日と4月1日じゃ大分違うものね、私達の感覚じゃ…」

    実は学校には行けていない私にはあまりそうも感じないのだが…

    「スバルくんが4月1日、レムちゃんがラムちゃんと一緒で2月2日。
    なんとも覚えやすいわね。」
    「そうでなくてもミッキーはなんでも忘れないだろ、この前の地図とか…」
    「暗記が得意なだけよ。
    それにしても…4月1日って早生まれここに極まれり、って感じね。」
    「小学校の時の圧倒的ハンディキャップだったな。」
    「あらそう?」

    …学校に行っていない私には、実感がわかない。

    「ん?」
    「どうしたミッキー。」

    大分前から気づいてはいたが後方からの竜車…
    もしかしてこっちに来てる?

    「こっちにね、誰か来てるかも。」
    「?なにも聞こえねえけど…」

    「探してる…みたいね、こちらから出向いてあげましょう。」
    「距離は?」
    「8212m、8207…まぁ私だけで行くわ。」
    「そうか。」
    「内容は戻ってきて連絡するわ。」
    「ああ、気をつけろよ。」

    羽赫を広げ音の方向へ。

    「あら、体の調子良すぎて通り過ぎちゃったわ。」

    大して力も入れてないつもりだったが…
    …私は着地出来るスペースもないので空中で話しかける。

    「ミユキ様!」
    「様付けなしで…やっぱり私達を探してたのね、どうしたの?」
    「実は…いえ、ここで話すのもなんなので。」

    その男は路地裏を指した。

    「分かったわ、えーっと…」

    着地スペース…

    「屋根、失礼します…」

    トンッ

    軽い音で降り立って、そのまま屋根も降りる。

    「行きましょう。」

    男について行った。
  95. 95 : : 2017/03/22(水) 13:52:42
    「スバル様は?」
    「向こうで待たせてあるわ、私から伝えるから安心して。」
    「はっ、では伝えさせて頂きます。
    1週間後の黒蛇討伐、早まるかも知れません。」
    「…何があったの?」
    「良くないことが…予想よりも黒蛇の動きが早いのです。」
    「そんな…」
    「そのことで、今日の20時よりいつもの場所で会議が開かれます。」
    「5時間後…ね。」
    「はい。」

    男はそれだけ伝えて、停めてあった竜車に戻り、去っていった。

    「とりあえず戻ろうかしら。」

    路地裏の壁を蹴って屋根まで登る、
    そして飛び立った。

    「今度はゆっくり…ね。」

    スバルくんのいた場所へ真っ直ぐに。

    「あら、降りられるような屋根が無いわね、
    ここらへん屋台ばかりで。」

    仕方なくまた空中から。

    「スバルくん。そこのバーに入っていて。
    私もすぐ行くわ。」
    「…分かった。」

    私の話し方のトーンと要求で、話の方向を理解したらしく少しその表情が陰った。
  96. 96 : : 2017/03/22(水) 14:03:27
    「今回の作戦、変更されるかもしれないわ。
    黒蛇の動きが予想よりも早いんですって…
    それで今日の20時から会議が開かれるらしいの。」
    「そうか…」

    その表情にはまだ陰りが見える。

    「大丈夫よ、私がぱぱっと片付けちゃうわ。」
    「そりゃ頼もしいな、でも…折角の機会だったのに。」
    「あらあら、そんなに悲しんでくれるなんて嬉しいわね。
    …まだ4時間20分はあるわ。」
    「移動も含めると3時間くらいじゃないか?ミッキーは別としてもさ。」

    「ふふん、スバルくん抱き抱えたってスピード落ちないわよ?」
    「えっ…それ恥ずかしいやつ…」
    「空飛んでみたいって言ってたじゃない?」
    「まぁ。」
    「この機会を逃したらもうないかもよ?」
    「…」

    しばらくしてスバルくんは口を開いた。

    「じゃあ、その、よろしく。」
    「了解!」

    その後は商店巡りを再開した。
  97. 97 : : 2017/03/22(水) 14:19:40
    「…今日は楽しかったわね。」
    「ああ、これから楽しくないとこに行くけどな。
    それで…」
    「覚えるわよ、ほら。」

    スバルくんは私に背を向ける。
    その身体を両腕で包んで…

    「行くわよ?」

    最初はゆっくりと飛び上がった。

    「うおお…」

    そして身体を傾ける。

    「わわっ、ははは」

    私はやったこともないような低速で飛んでいた。

    「もう少しスピード出していい?」
    「大歓迎!」

    私は、それでも…リニアモーターカーくらいの速度で飛んだ。

    「うわっ!はええええ!!」

    スバルくんは楽しそうだ。

    「ミッキー。」
    「どうしたの?」
    「まだ時間あるよな、ここら上空しばらく飛んでて…って出来る?」
    「お安い御用よ。もっとスピード上げる?」
    「おう!」

    スバルくんはたまに無邪気な、子供のような笑顔を見せる。
    今もそれだ。

    「すげぇ、すげぇ」

    それを繰り返していた。

    「こりゃあ、何千年も人間が憧れるわけだよな。」

    こう言った。

    「あとでエミリア達にもやってやってくれよ。
    きっと喜ぶ。」
    「ロズワールさんは1人で空飛んでたけどね。」
    「そうだったなー、あとはベアトリス辺りも飛べそうだ。」
    「そうね、まぁ速度なら負ける気はないわよ?」
    「それもそうだな。」

    会議前でも関係なく、いつものような笑顔の2人だった。

    「俺ら会議前なのになんでこんなに落ち着いてんだろ。」
    「自信があるからよ。
    絶対勝てる、ってね。」
    「そうか。」

    「…もうそろそろね。」
    「あぁ、今度またやってくれよ。」
    「気に入ったのね、いいわよ。」

    私達は場へ向かった。
  98. 98 : : 2017/03/22(水) 20:02:34
    「今度は遅刻しないで来れたわね。」
    「そうだな…っと、揃ったみたいだぜ。」
    「ええ。」

    「…全員揃ったようだな。では緊急会議を始める。」

    「遠くまで出向いていた者もいたのでこの時間に設定させて貰った。
    夜分にすまないな。」

    「それで今回集まって貰った理由、事前にある程度伝えたがそのままだ。」

    「作戦の決行を4日早めたいと思う。
    本日から2日後の同時刻、異議のある者はいるか?」

    「異議とは違うのだけど…いいかしら?」
    「聞こう。」

    「今作戦、敵は単独ではあるけれど早速予想していなかった事態が起きたわ。」
    「そうだな。」
    「動きの読めない敵を相手に大隊を動かすのはいかがなものかと思うの。」

    「それはつまり…もっと少数精鋭にするべきと?」
    「新人が調子に乗っている…と思うなら私を抜いてもらっても構わない、でも前回のこともあるわ、事情は違っても今の半分以下にするべきかと。」

    「…みなはどう考える?ここはあくまで会議の場だからな。」

    そこでラインハルトくんが発言する。

    「確かに…大隊で動くのはメリットも多いですがデメリットも増えます。
    今までの三大魔獣の戦闘力から考えて仮に3体の中で最たる力を持っていたとしても、
    私と…ミユキさんでも事足りると考えます。
    しかしそれでは…納得できない方々は当然出てくるでしょう。」

    「そうね。
    …確かに結果成功したとは言え、
    私達エミリア陣営が無断、単独で前回の報酬を獲得したことに変わりはないでしょうね。」

    「…そこでどうでしょう、各陣営から代表一名、合計五名で今作戦を実行すると言うのは。」

    場がざわめく。

    しかし、反対するものは現れない。

    「皆、それでいいのか?」

    声は挙がらない。

    いや、挙げられないのかもしれない。
    現状、私達…ラインハルトくんと私はこの国で最強の力を持つ2人とされている。

    「ではそれで決定とする。
    なにか質問はあるかな?」

    そこで…口を開いたのはアナスタシア。

    「つまりは報酬は五分配ということなんか?
    それともその中で戦果で決めるんか?」

    ラインハルトくんが返す。

    「五分配でいいでしょう、その為の先程の発言です。」
    「ええ、そうね。」

    私達は今、戦果で最有力候補となっているが…
    ラインハルトくんは余裕があるな。

    「ならうちは構わんよ。」

    その後発言はなく、作戦は少数精鋭、各代表1名ずつで行われることとなった。

    「では各代表は…この場で決めるか?」

    「そのほうが効率的ね。」

    私はエミリア陣営、ロズワール邸のみんなと向き合った。
    他陣営も話が進んでいるようだ。

    「どうする?私が行ってもいいけれど…
    ロズワールさんやエミリアちゃんの騎士であるスバルくんが適任かしら。」

    「…普通に考えたらそうなるか。」
    「私よりスバルくんの方が適任じゃないのかーぁな。」

    「おうおうマジか。
    確かにベアトリスも混ぜれば今の俺も…この装備もある、戦力になれないことはないが…
    ミッキーの戦力が外れるってのはデカいんじゃないか?」

    「私がここに残って防衛を担当するのもありじゃないかしら?
    スバルくんも頼れるし、そもそもラインハルトくんがいれば…」

    「…まぁそうだよな。ベアトリス、毒の対策はあるか?」

    「お前の装備の加護なら恐らく効かないかしら。」
    「マジで?」

    「…決定ね、この流れは正直予想外だったけど…頑張って、スバルくん。」
    「私からも、気を付けて、スバル。」
    「レムからも、信じてます、スバルくん。」

    「おう、任された。」

    しばらくして各代表が決まったようだ。
    …と言っても結果的に、各騎士達が担当することとなった。

    「ではこのメンバーで決定だな。」
  99. 99 : : 2017/03/22(水) 20:12:16
    私がいないこと、予想外だったようだが異論は出なかった。

    「それでも…決行までは時間があるわね。
    私達陣営は揃えるものも特にないでしょう。
    何をするのかしら?」

    「俺は…戦い方の練習かな。
    他の奴らと比べると経験が足りねえ。」
    「そうかもね。でも無茶はしないように。」
    「ああ。」

    「大声では言えないけど…
    もしものことがあれば行くわ。
    距離的に感知は出来る。
    移動速度なら、瞬間移動とかいなければ恐らく最速だから。」

    しかしスバルくんは言う。

    「もしもなんて起こさせねぇよ。
    安心しとけ。」

    そうね、と一言だけ言って終えた。
    しばらくしてロズワールさんが言う。

    「じゃあ、我が屋敷に戻るとするかーぁい?」

    みんなは頷いて、私も賛成した。

    「ええ。」
  100. 100 : : 2017/03/22(水) 20:27:44
    屋敷に着く。

    レムちゃんとラムちゃんは遅めに、夕飯の支度を始めていた。
    私もそこにいた。

    …スバルくんは、決行を2日後に、早速ロズワールさんやベアトリスちゃんと訓練だ。

    「ミユキさん。」
    「どうしたの?レムちゃん。」

    少し間を開けて、彼女は言った。

    「今作戦、スバルくんのことは信じています。
    でも…ミユキさんの方が向いていたのではないでしょうか。」

    「レム…」

    私は私で間を開けて、答える。

    「気持ちは分かるわ。
    相手は猛毒を使う、信じているとは言えど心配でしょう。

    …でも、こんなことを言うのは、上から目線になってしまうかもしれないけど…
    ここでスバルくんは更なる力と信頼を獲得するべきだと思うの。
    私ね、実は…ずっとはいられないかもしれないの。」

    ここで言うべきかは悩んだ。
    しかし事実、私には帰る場所が、帰るべき場所がある。
    いつまでもここにいれるかは分からない。
    明日突然帰されるかもしれないのだ。
    スバルくんはもう、この世界の住人だ。
    私は…まだそこで言葉が詰まる。

    「そうだったんですか…すみません。」
    「いいのよ。」

    しばらくして…沈黙を崩してくれたのはラムちゃんだった。

    「料理、早く作っちゃいましょ。」

    「そうですね、姉様。」

    「そうね。
    ロズワールさんの為にも…スバルくんの為にも。」

    私は彼女達と美味しく、これらを食べることは出来ない。
    でも彼女達と共に想いを込めて作ることは出来る。

    しばらくして料理は完成した。
    食卓に並べて、みんなでそれらを食べる。

    残酷にも、それらはとても美味しいとは言えなくて、

    …けれど想いは共にあると思えた。
  101. 101 : : 2017/03/22(水) 21:08:13
    作戦決行前日。

    庭で私は、スバルくんに攻撃の回避について教えていた。

    「じゃあ、私が適当に攻撃入れてくから、スバルくんは避けてね。
    勿論全力ではないけれど…」

    「おう。」

    実は赫子のことに付いては細かく教えていた。
    太く赫子を構成すれば蛇の動きを模すことが出来ると考えたのだ。

    スバルくんの装備と今かけられている魔法があれば当たっても怪我はしない。
    それで私は、全力ではないがそれなりの速度で攻撃を当てにいった。

    まずは正面から。
    スバルくんは大きく左斜めに後退しそれをかわす。

    それを追尾して赫子を左へ。
    今度は身を反らし、姿勢を低くしてかわした。

    そのまま下に叩きつけるように攻撃。
    受身を取って更に左へ。

    下で追うように薙ぎ払うと今度は1度手をついてバク転、見事にこれを回避した。

    右に行ったスバルくんを赫子で追うが、
    それを潜りまたもかわす…

    「…やるわね、スバルくん。」
    「そうか?まぁ意外と自信あるかな。」
    「あとは最低限の動きでかわせるようになれば完璧よ。
    避けられるだけでも十分だけど、大きい動きは体力を消耗するでしょう。」

    まだ息はあがってないスバルくんだったが答えた。

    「確かにな…」

    「まぁでも、なにも格闘だけで戦う訳じゃないものね。」

    「そうだな。
    じゃあ、あと3セットくらい頼むよ。」

    「了解。
    そしたらもう体を休める方向にした方がいいわね。」

    2、3セット目を順調にクリアするスバルくん。
    しかし…

    「4セット目、大分息上がってるんじゃない?」
    「…否めねぇ。」

    そして攻撃が初めて当たる。
    魔術と服によってそれらは彼になんのダメージも与えなかったのだが…

    「スタミナはそうすぐつくものじゃないからね…
    あとは短期戦で決めればいいわ。」

    「…そうか、ありがとうな。」

    「いいえ、じゃあ食事を取って、体を休めなさい?」

    「ああ。」

    疲れた様子で屋敷の中へ入っていくスバルくん。
    扉が閉まるまで見守る。

    「次は…私ね。」

    私は今回、防衛の主力だ。
    これだって重要な役割。
    …傲慢は何も生まない。

    私は森へ移動し、巻き上げた石やらを羽赫で撃ち落とす練習をしていた。

    そこへロズワールさんが飛んでくる。

    「手伝うかい?」
    「あら、ロズワールさん。
    じゃあよろしく頼むわ。」

    魔術と赫子がぶつかり合う。
    彼の狙いは正確で、その読みにくい挙動、追尾からしても、遠距離での正確性は彼が上だった。

    私の遠距離攻撃は何種類かある。

    一つは赫子の結晶を飛ばすというものだ。
    これは大量に撃つことが出来、狙いもなかなか細かく定められるがリーチが200m程しかない。
    しかし、結晶を一つに纏め、全力を出せば40kmは届く。
    しかしその影響範囲は計り知れず、迂闊に使えたものでは無い。
    遠距離攻撃の中で最もよく使うのはこれだ。

    次に単純なRcのエネルギーを放出した広範囲攻撃。
    距離も範囲も、その調整もなかなかだが、モロにRcを消費するので多用は危ない。
    ちなみに飛行と同様の仕組み。

    三つ目にRcを雷状にして放つというものだ。
    ナルカミを想像してみてほしい。
    これは敵の追尾が可能でリーチも1番長い。
    遮るものがなければ基本、どこまでも届く。
    使いこなすには至ってないものの1番強いと言えるだろう。

    最後に、炎だ。
    約30000℃の炎は大体の敵を赫子やクインケごと焼き尽くすことが出来たが、これに至っては制御も何も無いためその使用はかなり限定的だ。

    現在、最初に挙げた結晶を使ってロズワールさんと訓練している。
    数を増やす程正確性にかけるためそれを克服していた。

    そうしてそれぞれの1日を過ごしていた私達。

    日は暮れかけていた。
  102. 102 : : 2017/03/22(水) 21:16:44
    部屋に戻った私。

    …体調を崩している場合では無かったので赫宝石を食べ、その日の食事には参加しなかった。

    今、スバルくんはエミリアちゃんとレムちゃんと一緒に自室にいるらしい。

    しばらく彼らの時間が奪われていただろうから理解は出来た。

    「私いつまで独身なんだろなぁ…」

    聞き耳を立たている訳ではないが屋敷の会話なんて全て丸聞こえだ。

    気持ちは分かるが3人でラブラブなのは…複雑。

    レムちゃんはスバルくんの隣にいられれば、
    エミリアちゃんが正妻ポジションにいることは受け入れているらしく、エミリアちゃんも同様。
    2人は元から仲がいいため3人で集まってもなんのわだかまりもなく会話をしていた。

    「はぁ…」

    いつも以上に声が気になった私は、9時前に寝てしまった。
  103. 103 : : 2017/03/22(水) 21:41:38
    目が覚めたのは3時頃。
    用意は住んでいたため早く起きることもなかったのだが昨日寝たのが早かったため寝られなかった。

    「誰も…起きてないわよね。」

    洗顔して、歯磨きして、私は外に出る。

    「ん、んん…」

    伸びをしたあとストレッチを始めた。

    「体の調子はいいわね。」

    そして辺りを走る。

    人間のランニングとは違い時速80km程出すため東京じゃ出来なかったが、この世界に着てからは大体毎日している。

    決めたコースを何周かして、
    今度はあらかじめ設置していた金棒に軽く突きや蹴りを入れていく。

    あまり音を立てないために巻いた布はすぐにボロボロになったが、ミスリル製のを巻くわけにも行かないのでただ補強をした。

    そうして2時間程の時間を過ごした。

    屋敷でレムちゃんが起きた音が聞こえたタイミングと同時に、屋敷に戻った。

    「起きていらしたんですね。」
    「早く寝ちゃったからね。
    で、もう平気?
    …昨日はスバルくんの部屋で、1番遅くまで起きてたようだけど。」

    驚いた表情でこちらを見るレムちゃん。

    「知ってたんですか…」

    昨日はあの後、同じベッドに3人で寝ていた彼ら。
    実は彼らもあの後すぐに寝たので知っているのだが…
    緊張した様子で、レムちゃんだけは寝ていなかったの覚えていた。
    その、目の前のレムちゃんはなんだか気恥しそうだった。

    「…えっと、レムはミユキさんと違って防衛の主力ではないので心配には及びません。」
    「そう、ならいいのだけど。」

    少し不敵に笑みを浮かべるとレムちゃんは恥ずかしそうに俯いてしまった。
    やはり可愛いな、女目線でも可愛い。

    「…ミユキさんもまだ出発には時間があるでしょう。
    どうしますか?朝ごはんは。」
    「ごめんね、もう済ませたの。
    今から作るなら私も手伝うわ、他のみんなはまだ起きていないようだし。」
    「ありがとうございます。」

    私達は場に向かい、料理の準備を始める。

    「あ、彼起きたみたいよ。」
    「耳がいいんですね…少し恐ろしいです。」

    そう言いながら彼女は笑っていた。
    洗顔などを済ませて彼がやって来た。

    「おはよう、スバルくん。
    心の準備はいい?」

    「バッチリだぜ。」

    レムちゃんも話しかける。

    「おはようございますスバルくん。
    エミリア様はまだお目覚めじゃないようですね。」
    「ああ、ぐっすり眠ってる。
    今回の作戦には参加しないから自然に起きるまで寝かせておくよ。」

    しばらくして、朝食の準備が整った頃、全員が揃った。

    私は食べはしなかったものの場にはいた。

    「いよいよですね。
    頑張ってください、スバルくんなら大丈夫です。」
    「スバル、全力でね。」
    「ああ。」

    3人を見ていた私とロズワールさんは、向かい合って笑った。

    やがて9時頃になった。

    「じゃあ、行ってきます。」
  104. 104 : : 2017/03/23(木) 01:08:02
    100到達おめでとです!
  105. 105 : : 2017/03/23(木) 02:11:52
    ホントだ!
    最長記録ですね。
    コメントありがとうございます。
  106. 106 : : 2017/03/23(木) 02:54:41
    スバルくんはその場へ向かった。
    私は王都の防衛…と言っても実際はただの見張りに近い。

    「ん…?」

    私のあげた声に反応する防衛隊。

    「どうしました?」

    「向こうの戦いが始まったのだけど…
    その動きで一緒に行動し始めた魔獣がこっちに来てるわ。」

    …何故だ?
    こんなことを言うのはなんだが、普通攻略隊を襲う。

    「準備に越したことは無かったわね。」

    頷き、構える一同。

    「安心して、まだかなり離れてる。」

    しかし不思議な動きをする。
    あろうことか、真っ直ぐこちらに来ている。

    …目的は…なんだろうか。

    「言ってられないわねそんなこと。
    少しここを外して先にあらかた倒しておくわ。」

    見張り塔から飛んで…群れのもとへ。

    「やっぱり…こっちに…」

    !?
    その群れは確かに真っ直ぐ王都の方向に向かっていた…が正確には違った。
    王都にいた私の元へ…だ。
    その証拠、出向いた私の前で止まっている。

    「狙いは…私!?どういうことなの…」

    滅多に使わない赫子、炎の赫子でそれらを大部分が汚染の影響を受けた一帯ごと焼き払った。

    …が。

    「この音!?まだ来てる…」

    辺りの影響も考えて更に遠くへ飛ぶ。
    場所替えだ。

    「むしろ好都合ね…全部焼き払って…」

    その時踏み出した足が霞んだように見えた。
    同時に一瞬、体が動かなかった。

    目眩とも違う感覚。
    体調が悪いわけでもなかった。

    しかしそれはすぐに収まる。

    「何…かしら?」

    陸から、空から魔獣が集まっていた。
    私の元に。

    「そんな!?」

    そのあまりの量に、恐怖はしないも驚愕する。

    「これでも喰らいなさい…?」

    雷の赫子を出す。

    空一面に広がる魔獣にそれを上回る雷で。
    やがてそれらは撃ち落とされるが…

    今度は空へ伸ばした右手が…ブレた。
    体の硬直も長くなっている。

    「何よ…これ。魔術?呪い?でも…気配がないわ。」

    魔獣を倒すことに大した困難はない。
    が、それ以上の根本的な問題がそこにはあった。
    こんなの…経験したこともない。

    やがて更に私を…いや、『討伐隊』の彼らも驚かせる事態が起きる。

    「黒蛇が…こっちに来てる。」

    そして体の硬直は、やがてその時間の方が長くなった。

    黒蛇に合わせてみんながこっちに来るのが分かる。

    しかしその到着よりも先に私の意識は闇に呑まれた。

    そうか…この感覚は!
  107. 107 : : 2017/03/23(木) 03:03:35
    以前スバルくんと話していた時頻繁に起きた。

    「嫉妬の…魔女。」

    無限の闇の中で意識だけははっきりとあった。

    体は…戻ろうとしても、黒い手に縛られて動かない。

    「魔女の臭いで魔獣が引き寄せられると聞いたことがあったわね…まさかそれが原因?」

    それほどまでに強い『求愛』を受けていたのか?

    「早く…取り戻さないと…現実の様子が分からない!」

    しかし体は動かない。

    そして…意識が段々薄れていく、というよりどこか別の遠いところへ少しずつ移って行くような感覚がした。

    「もしかして… 」

    どうにもならないほど強制的な力、
    これは以前の…『ここに来た時の感覚』に似ている。

    「そんな…!」

    まだだ。
    まだ会いたい人がいる。
    まだ伝えたいことがある。
    まだやるべき事がある。

    「まだ…よ!」
    「まだ終わらないで!」

    闇の中の意識は更に薄れ、どこか遠くの光が感じられた。

    その最後、スバルくんの顔が…見えた気がした。

    …?
    スバルくんって…誰だっけ。
  108. 108 : : 2017/03/23(木) 03:15:24
    目が覚めると…あんていくの2階、そのソファにいた。

    「寝てた…のね。」

    なにか、長い夢を見ていた気がする。
    しかしもうそれは思い出せない。

    「…ん?」

    自分の頬になにかが伝った。

    「私…泣いてるの?」

    何故だろう、悲しい夢だったのだろうか。

    「なに…これ、止まらない…」

    私はわけも分からずただ泣いていた。

    涙を手で拭って、体を捩った時、なにかが私の足に触れた。

    「…?」

    涙を携えたまま、それを見る。
    歪んで見えたが、それは袋だった。

    「なんだろ…これ。」

    少し泣き止んで、それを開ける。

    「宝…石?」

    それは赫子のように真紅に光っていた。

    落ち着いて見ると、着ている服も見覚えがない。

    「…」

    誰か、名前も知らない誰かとこれを作った気がする。

    それは確か男の人で…

    その人の無邪気な笑顔が浮かばれた。

    「ス…」

    「ス…」

    やがて、それらは鮮明になった。

    「スバルくん!」

    四宮御幸は思い出した。
    知りもしないはずのそれらを鮮明に思い出した。

    「もう一度…少しだけでいい。」

    伝えたいことが…残っている。

    「戻って!」

    そう叫んだ。

    その声は部屋に反響する。

    空間が…捻じ曲がった。
  109. 109 : : 2017/03/23(木) 03:36:55
    「ミッキー…ミユキ!ミユキ!!
    大丈夫か!?返事してくれ!!!」

    脳裏に声が反響する。

    焼けた草と…獣の匂いがする。

    …戻って…来た!

    「スバルくん!!」

    「ミユキ!!」

    目の前にいる。
    スバルくんがいる。

    「何があったんだ!?魔獣がミユキの所へ…」

    「この様子だと…討伐成功したのね。」

    周りにはもう、あれだけいた魔獣は一匹もいなかった。

    「ああ、成功だよ、大成功だ。」

    体は金縛りのように、まさに縛られているように動かなかった。

    「聞いて。
    もうあまり時間がないみたいだわ。」

    「どういう意味だよ!?」

    …勘違いをさせてしまったようだ。
    しかしこれが別れであることに、きっと変わりはないだろう。

    「もう…あっちに帰される。
    私あなたがいたから、あなたに出会えたから、この世界で恐怖もせずに過ごせたわ。」

    スバルくんの顔は、様々な感情で歪んでいた。

    「…そんな顔しないで。
    最後に見るのは笑顔がいいわ。」

    スバルくんは顔を擦って、少し引きつって、笑って見せた。

    「スバルくん、あなたなら…
    世界の恐怖に…嫉妬の魔女にだって打ち勝って、…エミリアちゃんを救えるって、信じてる。
    どんなにつらいことがあっても…負けないで。
    あなたの力で、乗り越えて。」

    スバルくんの表情は…やがて本当の笑みに変わった。

    「…ああ。
    絶対、勝ってやる。」

    そして続けた。

    「っ…ミユキには、本当、世話になりっぱなしだったな。
    …何か、恩返しがしたい。
    俺に出来ることならなんでも言ってくれ。」

    私の願いは…記憶が戻った時から決まっていた。

    「だったら…覚えいて。
    私のことを、いつまでも。
    忘れないで、忘れないで、絶対に忘れないで。
    私もあなたを、この世界で起きたことを、絶対に忘れないわ。」

    スバルくんは、迷いのない様子で答えた。

    「そんなの…当たり前だろ?
    忘れないよ、ミユキ。
    他の誰が君を忘れても、世界が君を忘れても、例え君が忘れてしまっても、
    俺は君を忘れない。」

    「ありがとう…これでもう未練はないわ。
    他のみんなも、ありがとうね。
    …さようなら。」

    私の意識は再びシャットアウトした。




    …次に目覚めたのはさっきの場所だった。




    四宮御幸は、その時あの世界から、忘れられた。
    誰もが忘れた彼女を、2人だけは忘れなかった。
    そう。
    菜月昴と、嫉妬の魔女だけは…
  110. 110 : : 2017/03/23(木) 03:41:03
    「…んっ…」

    今度はしっかりと、意識があった。

    ふと、自身の体を見ると、そこには向こうの世界のままの、服があった。

    「え…?」

    赫宝石も残っていた。

    それらがあれが、夢じゃなかったということを強く認識させた。
    加えて。

    「またいつか…会える気がする。」

    諦めかけていたその想いを掘り起こしてくれた。
  111. 111 : : 2017/03/23(木) 03:45:12
    これで今作はおしまいです。

    思ったよりも長くなりましたね…
    本編より長くなりました。

    読んでくれた皆様、コメントくれた皆様、本当にありがとうございました。

    続編も書くつもりなので、良かったら、これからもよろしくお願いします。
  112. 112 : : 2017/03/23(木) 03:49:46
    >>104
    殺戮の喰種さん、何度もコメントありがとうございました。

    折角スレッド数100到達したところで、なんだかタイミングが悪かったんですけど、ここまで楽しく書き進めたのはあなたの影響が大きいと思ってます。

    これからも仲良く、よろしくです!
  113. 113 : : 2017/03/29(水) 01:48:45
    いえいえ、俺は何もしてないですよ?
    ただこちらが勝手に見て勝手にコメントしてただけなので、次作も勝手に見て行こうと思ってます╰(*´︶`*)╯
  114. 114 : : 2017/03/29(水) 15:22:01
    ありがとうございます!
    よろしくお願いしますね。
  115. 115 : : 2017/03/30(木) 00:09:44
    はいっ!٩( 'ω' )

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