ssnote

x

新規登録する

作品にスターを付けるにはユーザー登録が必要です! 今ならすぐに登録可能!

この作品はオリジナルキャラクターを含みます。

この作品は執筆を終了しています。

「この恋、おいくらですか?」

    • Good
    • 12

loupe をクリックすると、その人の書き込みとそれに関連した書き込みだけが表示されます。

▼一番下へ

表示を元に戻す

  1. 1 : : 2016/01/24(日) 15:42:42
    ご無沙汰してます。風邪は不治の病です。

    いつもの見切り発進です。

    ※誤字脱字
    ※短編


    よろしくお願いします。
  2. 2 : : 2016/01/24(日) 15:52:17

    ありきたりな言葉の羅列。一人では星空を見ることも出来ない、いまだハイハイを続ける大人の愛の囁きが耳元を撫でた。

    駅のホームで耳に入る、男子高校生達の「女は顔か性格か」議論の方がまだ意義がありそう。

    プラットホームに今一番意義のあるアナウンスが響き渡ったところで、思考の季節は移ろった。

    あぁ、英語のプリントやってない。

    そんな私は、ありきたりな女子高生。

  3. 3 : : 2016/01/24(日) 15:59:21


    女は顔か性格か、と聞かれれば、ありきたりな男子高校生の俺は正直に顔と答える。

    プラットホームに一人電車を待つのも退屈だから、beatsのヘッドホンから聴こえる流行りの歌以外にも耳を傾けてみた。

    顔派にしつこい主張はない。説明することもないだろう。

    かといって性格派は、テレビの語る平和をそのまま口に出すような、それがそのまま息をしてモンストをしているような、それだけの塊。

    どっちに好感を持てるか、考えるまでもない。

    現にほら、今も俺の目に映るのは、モンスターを倒すために解くパズルじゃなくて、隣に立つ彼女だから。

  4. 4 : : 2016/01/24(日) 16:12:00
    彼女と言っても誤解しないで欲しいのは(誤解されてもそれはそれで悪い気はしないけど)girlfriendではなくて、she,her,herの方。

    清楚系。って言葉がぴったり来る黒髪ロングから覗く鼻は高く、目は大きくパッチリと開いている。

    ピンク色の潤った唇からは男にとって危険なオーラを放出していた。

    制服のブレザーの下に着ている白のカーディガンも清楚系のイメージを強めていて、スカートの長さもいい。

    そして何よりもいいのは彼女の耳元。俺と同じbeatsのヘッドホン。3万円の。カラーだけが違う。

    ただ「同じヘッドホンだね」なんて話しかける奴は今時少女漫画にもいないだろうから、俺はそれを眺めるだけ。

    眺めて、憧れて、間もなく電車が到着して、game overの画面を見て、テンションが下がった。

    味気ない朝に加える調味料、塩と砂糖間違えてない?

  5. 5 : : 2016/01/24(日) 16:32:09

    日は沈んで帰宅中。下校中じゃないのは一度帰ってまた出掛けたから。

    友達の家に集まった。

    Bボタン連打で勝てるゲームを囲んで盛り上がった。

    楽しかった。終わり。背伸びした小学生並みの感想が王道だ。

    そんな俺の帰り道を豊かに彩ってくれる商品がこちら。beatsの……それはもういいか。ヘッドホンだ。

    安物のイヤホンとは違う。3万円で聴く音楽は鼓膜を簡単に通りすぎて、その奥にある心を震わせた。

    ありきたりな男子高校生のちょっとした贅沢だ。

    しかし同時に思春期の男でもある俺には、悩みがあった。

    この世界中で使われているヘッドホンで、世界中の人が幸福に浸ることが出来る。その値段が3万円って、正直、俺にはよくわからなかった。

    そこまでして3万円なんだ。そしたら、俺個人の価値っていくら?量産されたアイデンティティ。スーパーの卵売り場、格安セールに並ぶ内の一個。いやせめて一人って単位を使おう。

    俺、あなたを幸せにしてみます。いくらで買いますか?

  6. 6 : : 2016/01/24(日) 16:40:40



    ちょうどヘッドホンから聴こえてきた歌詞に手伝ってもらう。精一杯の自己表現。

    俺以外、俺じゃない。

    「お前ってなんか不器用だよな」

    そうかもしれない。スマホいじりながら話聞いてると、「それな」と「マジで?」しか言えないくらいには。

    とか考えてたら家に着いた。

    宿題は明日見せてもらうから今は考えなくていい。俺の頭は今朝の女の子でいっぱいで、他に費やす余裕なんてなかった。

    ほら、俺不器用じゃん?

  7. 7 : : 2016/01/24(日) 16:44:47
    期待です
  8. 8 : : 2016/01/24(日) 16:45:26
    >>7
    田中さんありがとうございます(^o^)
  9. 9 : : 2016/01/24(日) 17:00:21

    風呂から上がってリビングを通るとき、やけに耳に残る声が俺の足が止めた。

    「本人評価価格は買った値段と同じ80万円。果たして鑑定結果は!?」

    声のした方向に目を向けると、テレビがあった。

    外に出てほしくない格好をしたお姉ちゃんが足を組んで食い入るように見ている。

    テレビ画面では身なりのいい老人が80万円と書かれた札を高らかに掲げ、その横でマイクを持った司会が笑みを浮かべていた。

    和室によく飾られていそうな絵をわざわざ虫眼鏡を通して見ていたお婆さんが映り、発表までの空白の時間が緊張を煽る。

    視点が変わって、いつの間にか下ろされていた札を身なりのいい老人が勢いよく振り上げた。

    「ジャガジャン!5000円!!」

    会場に漏れた溜め息と笑い声が交差して、老人が苦笑いをしながら膝を着いたところで止めていた足を動かした。

    老人はあの絵を80万円の価値があると思っていたのに、実際は5000円。

    俺は心の中で老人にドンマイと呟いて、リビングを後にした。

  10. 10 : : 2016/01/24(日) 17:01:04
    期待です!!
  11. 11 : : 2016/01/24(日) 17:02:30

    >>10
    直方正典さんありがとうございます!!
  12. 12 : : 2016/01/24(日) 17:18:04

    朝。

    今流れている歌に出てくる盗んだバイクで走り出すような人種を私はよく知らないけれど、この世のどこかにいるらしい。

    それはきっと人というより猿に近くて、私達とは違う進化をしてきたんだろう。と思うと、クラスにいる顔に泥を塗りたくった金髪の女の子にも興味が湧いた。

    今日話しかけてみようかな。この前窓ガラス壊したのはあなた?って。

    そんな私はありきたりな女子高生。少し言葉を変えただけ。

    陰キャラ、陽キャラ、スクールカーストで上から数えて2~3番目。友達もいる、普通の女子高生。

    そして、隣で電車を待っている名前も知らない男子高校生。

    私を見てると気になっちゃう。

    ワックスでセットしてるのか寝癖なのかわからない髪型から不器用なのがなんとなくわかる。そんな私と同じヘッドホンの男子高校生。

    今何聴いてるの?もしかして、今朝も続いてる「女は顔か性格か議論」だったりする?

    なんとなく顔を向けると、やはり私と目があった。


  13. 13 : : 2016/01/24(日) 17:25:49

    目を見るとそれは透き通っていて、そこに俺が映っているのがやけに現実離れしているように感じた。

    俺を見ている。彼女が。見ている。俺も。

    顔か性格か議論が、同じ言葉の使い回しで白熱している一方で

    新聞を読んでいる大人達が社畜魂をチャージしている一方で

    それらと隔離された空間にいる。

    そんないいときに、「間もなく電車が到着致します」

    =間もなくこの時間は終わりを迎えます。

    広範囲に届く目覚まし時計に気がついて

    俺達は電車に乗るために目を逸らした。

    夢から覚めるときは、いつだってあっけない。

    そしてあとちょっとのところで覚めるのが夢なのである。なんてね。超悔しい。

    反対側のドアと手すりの角に身を預けている彼女の目は、すでにスマホに釘付けだった。

  14. 14 : : 2016/01/24(日) 17:29:30




    魔法石を買ってくるから、コンテニューさせて。だめ?




    (顎を思いきり引いて上を向いた変顔)




  15. 15 : : 2016/01/24(日) 17:41:05

    下校中。今日は気分が乗らないから、遊びの誘いは断った。

    彼女と話せなかった後悔。今日1日に重くのし掛かる。

    朝御飯が1日の元気の源だと言うなら、朝のバッドニュースは1日の不幸の源だというわけだ。

    しかし一方で気になることもあるので、俺はそれについて掘り下げる。

    あの子、どうして俺の方を向いたんだろう。

    同じヘッドホンをしてるから?俺が見てたから?

    なんとなく、本当になんとなく、男子高校生の勘という奴によれば悪いことではない気がする。

    脈あり?いやそれは早とちりだろう……。

    ……やっぱり40%くらいは脈ありってことにしておこう。

    じゃあ後は?他に何かあっただろうか。

    そういえば、ダイソンにもひけをとらない吸引力を持った唇が動いていたような気がする。

    あまりよく思い出せない。それがまた悔しくて、悶々する。

    それらを全て舌打ちで一蹴して、ヘッドホンの音量を最大にした。

  16. 16 : : 2016/01/24(日) 17:53:38


    風呂から上がると、また姉がテレビを見ていた。

    俺が姉の座るソファの後ろを通ったとき、俺はまた足を止めた。

    流れているドラマに興味はなかったので、俺はわざわざ足を止めた目的を遂行することにした。

    「お姉ちゃん。男は顔と性格、どっちだと思う?」

    答えまで1拍も空かなかった。

    「顔」

    「ありがとう」

    俺は急ぎ足で部屋に戻った。

    明日までの宿題、今度は友達に期待しないように。
  17. 17 : : 2016/01/24(日) 17:57:26

    朝。

    彼女はまた俺の隣だった。

    正直、俺は意識してこの車両使うようになったんだけど、キミはどう?返事はない。

    昨日あんなことがあって、それでも俺は見てしまう。

    大抵、好きな子は?の質問に答えると次に

    じゃあ気になる子は?と質問が来るが

    それは気になる気持ちが成長したら好きになるってことなのかな。

    なら、俺はそろそろこの子を好きになる。

    目が離せないのが証拠。でいいかな。

  18. 18 : : 2016/01/24(日) 18:02:52

    あぁ、また隣だ。

    今日は何を聴いてるの?いよいよ決着が着かない気がしてきた「女は顔か性格か議論」?

    私達の後ろに並ぶ男の子二人、そろそろ結論出してほしいんだけどな。

    そう思って首を曲げると……もうわかってたけど、目があった。

    だからと言って話しかけるような女子、今時少女漫画にもいないよね。

    話しかけない代わりに、私はさらに首を曲げて後ろの二人をチラ見して、すぐに正面に向き直った。

  19. 19 : : 2016/01/24(日) 18:05:18




    そのとき

    3万円出しても聴けない声が

    ヘッドホンの奥から聞こえた。




    「俺は性格だと思う」




    その声は後ろの二人にではなく、私に向けられたものだった。
  20. 20 : : 2016/01/24(日) 18:07:50

    「……」

    彼女が俺の方を向いた。

    目と目があう。俺は続けた。

    「顔が80万円でも、中身5000円だったらそれは溜め息を吐かれたり、笑われたりするんだよ」

    「……」





  21. 21 : : 2016/01/24(日) 18:13:51

    彼女は黙ったまま、ヘッドホンを外した。

    それでも俺の目を見ている。ということは、そういうことなのだろう。

    「顔が5000円でも、中身80万円だったら拍手喝采だよ。皆が見返して、口々に凄いって言う」

    「それが俺の結論……かな。ごめん。突然」

    言い終わった途端込み上げた恥ずかしさを誤魔化すようにヘッドホンの音量を最大にした。

    後ろで喋っていた二人の声も聞こえなくなる。いや、聞きたくない。

    聞きたくない、いや、聞こえないからか

    彼女の顔が俺を覗き込んで、危険な唇を動かしていた。

    音量MAXなので音はまったく聞き取れない。それでも聞こえた。

    「ありがとう。それが結論なのね」

    俺は急いでヘッドホンを外した。

    大音量がアナウンスに混じって不協和音を奏でる。そんなコンサートにプラットホームが注目したところで、奏者は慌てて音を消した。

  22. 22 : : 2016/01/24(日) 18:22:33

    「ね、私は何円でしょうか」

    「うーん……80万円、かな。本当はもっと」

    「そっか」

    「注目の鑑定結果は?」

    「ジャガジャン!これも何かのご縁。ってことで!」

    彼女が悪戯っぽく笑い、俺の手に体温が伝わった。

    そうか。

    何か大きな物が割れる音がした。

    俺の価値は円じゃなくて縁だったんだ。

    俺がその手を握り返すと、円は縁に。

    彼女は、girlfriendになっていた。

  23. 23 : : 2016/01/24(日) 18:23:04


    俺、あなたを幸せにしてみます。

    これからもこの縁が続きますように。


  24. 24 : : 2016/01/24(日) 18:25:25



    はい。物語的にEND.を使いたくなかったのでこのようにして終わらさせていただきます。

    久しぶりに書きたいことを勢いで書けた気がして個人的には満足です。

    コメント、お気に入り、閲覧ありがとうございました!お疲れさまでした。
  25. 25 : : 2016/01/24(日) 18:31:50
    お疲れ様でした!

    すって読めました。こういうの好きです
  26. 26 : : 2016/01/24(日) 18:34:38
    >>25
    ありがとうございます!
    好き勝手に書いてしまったので、そう言っていただけると嬉しいです。閲覧ありがとうございました!
  27. 27 : : 2016/01/24(日) 19:54:07
    いいですね、こういう男女
    読んでいただけなのに不思議と世界に吸い込まれていきました、さすがです!
    お疲れ様でした!
  28. 28 : : 2016/01/24(日) 20:00:17
    >>27
    ありがとうございます!田中さんの恋愛ss好きなので、そんな田中さんにそう言っていただけて光栄です。閲覧ありがとうございました!

▲一番上へ

このスレッドは書き込みが制限されています。
スレッド作成者が書き込みを許可していないため、書き込むことができません。

著者情報
naoranaiyo

ふじやま

@naoranaiyo

「恋愛」カテゴリの最新記事
「恋愛」SSの交流広場
恋愛 交流広場