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このSSは性描写やグロテスクな表現を含みます。

この作品は執筆を終了しています。

セト「マリーは渡さない。」クロハ「女王が可愛すぎる」

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  1. 1 : : 2014/09/19(金) 19:28:07
    ─── マリーです。
    最近セトがおかしい…。


    異常に無口な時もあれば
    その逆にいきなり抱きついてきたり…

    そして同時にクロハまで。


    二人とも、どうしちゃったのかな?






    *★*―――――――――――――*★*

    こんにちは、作者の茅ヶ崎と言います!
    どう書けばいいのか
    よくわからないまま書き始めます(笑)


    初めての作品なので
    温かい目で見てやって下さいm(__)m

    これはセトクロマリです!
    (ちょっとカノ入るかもです)
    頑張って書くので
    よろしくお願いします(´∀`●)ノ
  2. 2 : : 2014/09/19(金) 19:29:46
    マリー目線で書いていきます。
    わかりにくいですが…w

    では>>3からスタートします!
  3. 3 : : 2014/09/19(金) 19:31:01


    お出かけをしてアジトに帰ると、

    クロハがセトに何かを問い詰めていた。


    なんだか険悪な雰囲気で、
    止めに入ろうかとも思ったけれど、
    足がすくんで動けなかった。

    二人は私に気づいてないみたい。
    さほど遠くもないのに、
    会話は一言も聞き取れなかった。


    …ううん、一言だけ聞こえた。




    「マリーは俺のものっす。」




    セト…すごく嬉しかった。


    と、その瞬間、私は目を疑った。
    クロハが拳を振り上げたのだ。



    「だ、だめっ…!!」


    とっさに二人の間に入った。


    クロハ「あ?…なんだ、女王いたのか。」


    クロハはセトを軽く睨んで、
    部屋を出て行った。


    「な、何してたの?」


    セト「いや?話してただけっす。
       それでクロハがちょっと頭に     来ることがあったみたいで。
       そんだけっすよ。」


    そう言って微笑むと、
    セトも部屋からいなくなった。


    ─── この時からだ、
        二人がおかしくなったのは。

  4. 4 : : 2014/09/19(金) 19:32:19




    セトside




    さっきの、
    マリーに聞かれちゃったっすかね…



    お前が女王独り占めとか、
    許せねえんだけど。ムカつく。



    まさかクロハにあんなこと
    言われるなんて驚いたっす。








    マリーは絶対に渡さない。




  5. 5 : : 2014/09/20(土) 07:40:28



    モモ「マリーちゃん、
       造花づくり、手伝おうか?」


    キド「如月、やめとけ。」


    マリーが答える前にキドが止めた。


    モモ「えぇ、なんでですか!?」


    キド「なんでって…この前お前が
       やった時の覚えてないのか?
       二度手間になっただけだろ?」


    モモ「(ギクッ)それは…」


    マリー「モモちゃん、いつも
        忙しいんだから休みの日は
        ちゃんと休んだ方がいいよ。」


    モモ「うぅ…わかった…」


    カノ「如月ちゃんめっちゃ
       下手だもん「カノさーん?」


    カノが言葉を言い終わらないうちに
    モモがひきつった笑顔で言った。


    カノ「な、何かな如月ちゃん?」


    モモ「何かなじゃないですよ!
       マリーちゃんお願い!!」


    カノ「え、マリー
       使うなんて聞いてな」カチーン



    キド「自業自得だな。」



    モモ「そうなって当然です!

       あ、そういえば、
       セトさんにさっきの聞いてたか
       って言われたんですけど、
       何かあったんですか?」



    キド「それなら俺も聞かれたぞ。
       マリー、何か知ってるか?
       セトと一緒だったんだろ?」


    マリー「う、ううん、何にも。」



    なんで嘘ついたんだろう、あの二人の事、
    言った方がいいはずなのに。



    キド「クロハにも後で聞いておくか…。」

  6. 6 : : 2014/09/20(土) 17:53:15





    ガチャ。





    キド「お、クロハ、帰ってすぐの所
       で悪いがいがちょうど
       聞きたいことがあるんだ。
       セト、何かおかしな事してたか?」



    クロハ「特に何も。」



    モモ「皆さん知らないって…
       なんだったんでしょうね〜?」



    まぁほっといてやろう
    などとキド達が話している中、

    私は自分の部屋に入った。




    マリー「クロハも黙ってた…、
        やっぱり言わなくてよかった。」



    クロハ「俺がどうかしました?」




    マリー「!?」



    く、クロハ!?

    なんでここに?




    クロハ「なんですかその幽霊扱いは。
        今女王と入って来たんですが。
        気付きませんでしたか?」


    マリー「知らないよ…!」


    クロハ「(普通にいたんだけどな…)
        それで、俺がどうしました?」


    マリー「べつに何にも…。」



    クロハ「あの。女王、セトと俺が一緒に
        いるの見てましたよね?」



    口を噤んでもなお質問を続けてきた。



    クロハ「何話してるか聞きました?」




    首を横に振ると、


    クロハが顔を近づけてきた。







    クロハ「なら、良かったです。」


















    私の唇にクロハの唇が重なった。


















    え…?





    今のって、今のってまさか…





    き、きす…?!



    えぇぇ!?








    なんで、と問う間もなく、
    クロハは戻っていった。




    部屋には真っ赤になった
    私だけが残された。


  7. 7 : : 2014/09/21(日) 00:54:13
    ぷぁぁ!!期待!!
  8. 8 : : 2014/09/21(日) 09:17:45
    心愛さん
    ありがとうございます( o´艸)♡
    更新頑張ります!
  9. 9 : : 2014/09/21(日) 09:26:30



    ぼっとする頭を横に振り、後を追った。




    マリー「ど、どうしてあんなこと・・・///」


    クロハ「別にそんなの気にしなくても
        いいじゃないですか。
        それと、顔真っ赤ですよ?」



    からかうように言われて、
    頬がもっと熱くなるのがわかった。



    キド「マリー、顔赤いぞ?
       大丈夫か?」



    キドにまで・・・!



    マリー「大丈夫っ・・・!!」



    慌てて外に走り出そうとして、
    バランスを崩した。




    転んじゃう・・・!!






    思わず目をつぶった。


  10. 12 : : 2014/09/22(月) 00:33:29




    マリー「あれ?」



    転んでない?






    背中には暖かく大きな…手?
    目を開けると…






    マリー「セト!」



    セト「大丈夫っすか?」


    マリー「大丈夫!
        セトが支えてくれたから!」


    キド「全く、いきなり走り出したり
       するからだ。気をつけろよ。」



    マリー「はーい…。」





    セト「気をつけるんすよ、マリー。」





    優しい言葉の、いつもの彼のはずなのに、
    その声は少し冷たいような気がした。



  11. 15 : : 2014/09/22(月) 16:37:41




    ─── 翌日。




    今日は一人でお留守番。


    セトが途中で帰って来るって。

    早く来ないかなぁ。




    セト「ただいまっす〜。」


    マリー「おかえりなさい!」



    駆け寄っていって、腕を広げる。
    こうすると、いつも抱きしめてくれるんだ。


    今日もそのもちろんそのつもりでいた。







    だけど、セトは頭をなでただけで、
    ソファーに座ってしまった。



    疲れちゃったのかと思って、
    紅茶を出すことにした。




    マリー「はい!これ、
        セトが好きなプルピィティー!」




    桃と林檎の甘さの中に苦味のある、
    この紅茶がセトの一番のお気に入りなんだ。

  12. 16 : : 2014/09/22(月) 16:45:07


    セトはそれを受け取り飲む。
    …でも、感想はない。



    顔もいつもよりなんだか怖い…。


    いつもの彼に戻って欲しくて、
    彼に寄り添って座った。







    ギュッ。





    気づいたら、セトに包まれている。




    あったかい…













    私はそのまま、
    夢の中に吸い込まれていった。






    セトside





    寝ちゃったっす…


    彼女を見ると、
    クロハに取られてしまわないかと
    考えて、焦ってしまう。
    そしてそれを悟られないように振る舞うと…


    『こうすけは隠し事してると
     冷たくなるからなー。』


    昔、カノに言われたな。


    俺はきっと彼女に冷たかったと思う。






    セト「ごめん…。」





    寝てるのに言っても意味ない、
    なんてことはわかってるけど。





    セト「紅茶、美味しかったっす。


       ありがとう。」





  13. 21 : : 2014/09/23(火) 11:13:13




    クロハside





    くそっ、俺としたことが…。
    女王にあんな事するなんて
    何考えてんだ俺は…!


    思わず溜息が漏れる。



    蛇「どうかしたんですか?」



    クロハ「どうしたもこうしたも、
        お前見てただろ。」


    蛇「あ、昨日女王にキs「言わなくていい」


    クロハ「どうすりゃいいんだよ…」


    蛇「私に聞かれましても。

      まぁ、女王、鈍感ですもんね。」




    そうだ、あの人は鈍過ぎる。




    蛇「あの、一ついいですか?」


    クロハ「なんだ?」



    蛇「女王は、クロハ様がしておられる事、
      ご存知なんでしょうか?」




    俺が黙ると蛇はそのまま続ける。




    蛇「まずそれを言わないとですよ。」



    クロハ「わ、わかってる!!」



    わかってる。
    言わなければいけないことくらい。






    見せられるわけがない。

    今の自分の姿を見て、
    彼女は恐がるだろう。
    その現実をどうしても受け入れられない。



    こんな姿…。








    赤く染まった自分の手に視線を落とす。


    この手で貴方に
    触れたりしては、いけないんです…。





    蛇「クロハ様…。そろそろお帰りに
      ならないと…」






    もうそんな時間か。

    服の袖で目元を擦る。





  14. 22 : : 2014/09/24(水) 17:37:57




    引き続きクロハside



    クロハ「ただいまー。」


    モモ「あ、クロハさん、シーッ!」


    クロハ「…なんだよ?」


    モモ「マリーちゃんが寝てるの!
       起こしちゃったら可哀相でしょ?」



    ヒビヤ「おばさんが黙った方がいいと思います」


    シンタロー「同じく。」


    モモ「ふ、二人ともうるさぁいっ!」




    騒いでいる連中をよそに、
    ソファーに寝かせられている女王に近づく。




    …なんだこれ。
    襲ってくださいとでも言ってるのか…?


    こんな騒ぎなのに、
    すーすーと寝息を立てている。

    襲いたい感情を
    なんとか抑え、そっと頭をなでた。









    セト「何してるんすか?」





  15. 23 : : 2014/09/24(水) 17:54:05


    まだクロハside





    クロハ「何もしちゃいねえよ。

        でも俺、お前に女王独占
        させてやれる程優しくねえからな?」


    セト「そんなことわかってるっすよ。

       昨日、マリーに何したんすか?」


    クロハ「…何も?」


    セト「そんなわけないっすよね。
       昨日のマリー、
       あんなに慌ててたんすよ?
       顔を赤くして。」




    今にも掴みかかってきそうな勢い。
    ここで喧嘩はちょっと。








    クロハ「…キス。」




    セト「え?」





    クロハ「だから、俺。マリー。キス。」




    自分とマリーを指差して説明する。
    …流石にまずかったか?











    セト「…」


      「そう…すか…。」








    向けられた言葉はそれだけだで。




    もっと怒んのかと思った。









    モモ「お兄ちゃんのバカーッ!!」





    大きい声がして、女王が動く。



    マリー「ん…?」


    クロハ「起きました?」



  16. 26 : : 2014/09/25(木) 17:41:02




    (マリーsideに戻ります)




    隣に…クロハ?
    セトに抱きしめられて、

    暖かくってそれで…


    マリー「私、寝ちゃってたの?!」


    クロハ「そうです。」


    マリー「セトは?」


    クロハ「あそこにいますよ。」




    クロハが見た場所に目を向けると、
    彼は楽しそうに笑っている。

    よかった…いつものセトだ。
    安心して見つめていると、
    ふいに振り返って目線があった。
    そのまま駆け寄ってくる。




    セト「マリー!起きたんすか?」


    マリー「うん、私、寝ちゃってたって…」



    セト「気にしなくていいっすよ。

       ちょっと来てくれるっすか?
       話したいことがあるっす。」



    こくりと頷くと手を引かれた。

    話ってなんだろう。



    セト「クロハもくるっす。」



    クロハも?3人でお話でもするの?



    クロハ「面倒くせえな…」



    そう呟きながらも、
    クロハは後からついてくる。




    連れて来られたのはセトの部屋。
    隣にはセト、前にはクロハ。




    セト「クロハ、よく見るっす。」






    その言葉と共に、私の視界には
    緑がいっぱいに映った。





    抱きしめられてる…?





  17. 27 : : 2014/09/25(木) 17:59:56


    カノside



    カノ「たっだっいまー!ってあれ?」



    セトの部屋のドアが少し開いている。
    部屋の中にいたのは、


    クロハ。




    なんでセトの部屋に?!
    セト達、あんまり仲良くないのに。

    何してるのかめっちゃ気になる!



    如月ちゃん達は…
    こっちくる気配ナシ。





    よし。

    ちょっと覗くくらい…いいよね?



    ドアの隙間から目だけ覗かせる。





    …なんでマリーとセト抱き合ってんの。



    クロハに見られていいのかな。


    次は何する気 ───










    !?






  18. 28 : : 2014/09/26(金) 21:05:51


    引き続きカノside




    クロハが唖然としてる。

    僕も同じく。




    それってさ、キスだよね?!


    セト、どうしたの?


    リア充見せつけたくなった?


    見てる方が恥ずかしいんだけど。




    あ、マリーがなんか言ってる。


    そりゃ、人前でされたら…ね。











    「おい。」


    カノ「にゃぁっ!?」



    みみみ、見つかった!?



    キド「…」



    固まった僕を見ているのは、キドだった。




    カノ「なんだ、キドかぁ。」


    キド「"なんだ"ってなんだよ。
       何やってるんだこんな所で。」


    カノ「あ…」



    そうだ、他の人から見れば
    僕はただ玄関前で立ち尽くしてる
    変なやつなんだったっけ。



    キド「?」



    言葉を詰まらせた僕を
    ますます怪訝な顔で見つめてきた。



    カノ「えっと…ここでキドが
       帰ってくるの待ってたんだよ!
       キドの顔すぐ見れるでしょ?」



    キド「なんだそれ。」



    言葉とは裏腹に、満更でもなさそう。



    カノ「あー、キド嬉しそう〜。」


    からかいながら肩に手を回すと、


    キド「う、嬉しくなんかないっ!」


    振り払われた。そうは言っても顔は赤い。


    カノ「顔赤くしてよくいうよ。」



    ゴッ。




    鈍い音がして腹部に痛みが走る。




    カノ「いっだぁ…っ!!」



    キド「嬉しくもないし赤くもない!」



    遠くなる背中。





    …素直じゃないなぁ。



  19. 29 : : 2014/09/27(土) 16:02:03


    通常に戻ります(マリーside)





    心臓の鼓動がまだ大きく脈打っている。



    無理もないよね。


    人前でキスなんて…。




    マリー「恥ずかしいっ!」




    思い出すだけで全身が熱くなる。




    ─── クロハ、よく見てるっす。



    どういう意味なのかな。
    なぜ、見せる必要があったの?












    ギュッ







    首に手が回り、背中に重みがかかる。





    「セトだと思った?」




    後ろを振り返ると、
    その人はニッ、と口角を上げた。




    カノ「残念、僕でした。」




  20. 30 : : 2014/09/27(土) 16:42:25



    カノ「どうしたの?そんな顔してさぁ?」



    マリー「な、何にも。」


    耳元で言われると、なんだか
    くすぐったくて首をすくめたくなる。

    心配している言葉だけど、カノの言い方は
    馬鹿にされてるみたいで嫌だ。



    カノ「なんかあった?」





    ─── あった。




    言葉は声にはならずに私の手に伝わり、

    伝わったそれを握りしめるように
    手に力を込める。







    カノ「…。
       これから皆で出かけるんだ、
       マリーも行くでしょ?」



    カノは腕を離した。


    一向に口を開かない私を見て、
    諦めたらしい。



    マリー「お出かけするの…?」


    カノ「セト達は行かないって。
       あー、ヒビヤ君とコノハ君は行くかも。」



    マリー「じゃあ、行く!」




    あ…
    い、言っちゃった。
    ・・・
    じゃあって。




    カノ「オーケー、準備しといてね〜」




    マリー「あ…うん。」



  21. 33 : : 2014/09/28(日) 15:38:13



    マリー「皆でお出かけなんて
        久しぶりだね!」



    キド「…マリー、俺の腕に
       張り付くのはやめろ。歩きにくい。」



    モモ「あ、マリーちゃんずるい!私もっ!」


    キド「お、おい?!如月までやめろ!」



    キドの腕にぴったり張り付いているのは
    私とモモちゃん。


    こうしてると安心するんだぁ。




    カノ「キド人気だね〜

       それじゃあ僕も…」


    キド「…カノ?」


    キドがカノを睨む。


    カノ「ま、まだ何にもしてないでしょ?!」



    その睨みにカノが肩をすくめた。



    コノハ「…」



    カノ「プッ、コノハ君…それ気に入ったの?」


    コノハ「うん…楽しい。」



    いつもより浮いた声で話すコノハに対して、

    僕は楽しくない、と半泣きで
    叫んでいるのは、コノハに高い高い(?)を
    されているヒビヤ。


    コノハは気に入ったらしく、一向に
    腕を降ろそうとしない。



    カノ「ヒビヤ君、お似合いだよ〜!」


    カノも面白がって見ている。
    ヒビヤが地面に戻れるのは
    随分先になりそうだった。



     *☆*───────────*☆*






    モモ「もうすぐですねー。」


    マリー「疲れた…」



    横を見るとまだヒビヤがコノハの
    腕から逃れようともがいていた。


    マリー「なんか、親子みたいだね!」



    二人は本当のお父さんと子供に見える。
    すると、キドは呆れたような表情をして言った。


    キド「ヒビヤ本人だけには言うなよ。」

  22. 34 : : 2014/09/28(日) 16:07:28


    マリー「はぁ、はぁ…。
        やっと着いた…!」


    ヒビヤ「降ろしてってば!
        中入ってまでこのままなんて
        死んだ方がマシ…」



    キド「そろそろ降ろしてやれコノハ。」



    コノハ「…?わかった。」



    やっと地面に足がついたヒビヤは
    すっかり疲れ切っていた。



    ヒビヤ「死ぬかと思った…」





    カノ「ねぇ、今日って何しに来たの?」



    キド「カップが全部割れたから新しいのを。」



    私に視線が集まる。



    マリー「ひぃぃ…ごめんなさい…」



    毎日のようにカップを割り、
    昨日全部、

    なくなっちゃったんだよね…。




    カノ「まぁまぁ、いくら言ってもカップが
       帰ってくるわけでもないんだし、
       早く探しに行こうよ?」



    ヒビヤ「カップ買うだけなら
        僕ついて来なくても
        よかったんじゃ…
        どうせならセト連れて来た方が
        よくない?マリーいるんだし。」



    その言葉にビクリとする。
    昨日のこともそうだけど、
    最近セトはちょっとおかしい。


    だから私はあんまり来て欲しくない…

    でも、言ったら不思議がられるし、
    クロハとセトのことを
    話さなくちゃいけなくなっちゃう。


    私が何か言わなきゃ…




    何か、言わなければ。。







    必死に言葉を考えている中、




    誰かが口を開いた。



  23. 35 : : 2014/09/29(月) 17:51:05


    カノ「セトが出かけない時
       くらいあるでしょ。
       皆そんなにセトに来てほしいの?」


    キド「そうだ、あいつにだって
       気分が向かない事はあるだろう。」



    キドは、さっさと行くぞと付けたして、
    皆を連れて先に歩いて行った。



    その後を追おうとしたカノに声をかける。



    マリー「あ、ありがとう…!」



    カノ「僕なーんもしてないよ?
       なんかお礼言われるような事した?」




    カノ「ねぇ、何だかよく分かんないけど、

       セトと…なんかあったよね?」


    彼は少し悲しそうな顔をして笑った。









    モモ「マリーちゃーん?
       早くおいでよ〜っ?」


    マリー「…行こ?」



    カノはため息に似た息を漏らして、
    軽く頷いた。

  24. 36 : : 2014/09/29(月) 18:02:06



    ふぅ。
    可愛いカップ買ってもらった…!
    今度は割らないように気をつけないと。




    カノ「あー、コノハ君がいると
       楽だなぁ〜」


    マリー「?どうして?」


    カノ「え?だって、ほら。」


    カノはそう言いながら、
    自分の両腕をフラフラと振った。


    マリー「?」


    カノ「だーかーらーっ、お荷物係に
       ならずに済むってこと。」


    コノハ「お荷物係って、何?」


    カノ「女子組(主にモモ)が買った物を
       無理矢理持たせられる哀れ」


    言葉をいい終わらないうちに彼は
    床にのびていた。



    キド「お前は黙ってろ。

       コノハ、すまないな。こんなに持たせて。
       重くないか?」


    コノハ「大丈夫。」



    カノ「キドだってそれくらい持てるよね、
       力持ちだか」



    カノの腹に本日三回目の拳が決まった。



    キド「黙ってろと言ってるだろ」



    地面に寝ている…正確には、
    倒れこんでいるカノの頬を
    ヒビヤがつついた。


    ヒビヤ「おじさん大丈夫なのかな…
        自業自得だけど。」



    かなり胸に刺さる台詞をサラッと言うと、
    ヒビヤは歩いて行ってしまった。







    気がつくと、そこに残っているのは、











    私とカノだけだった。



    マリー「えぇっ…!?」

  25. 37 : : 2014/09/30(火) 16:34:24


    すぐに追いつくと思ったのかな?
    行ってしまったみたい…

    今すぐいったら間に合うかも。
    で、でもカノが…。


    不安になってカノの顔を
    見つめているとしばらくして、
    お腹をさすりながら起き上がった。



    カノ「…いったたたたぁ…」


    マリー「大丈夫?」


    カノ「あ、マリーか。大丈夫。
       あれ?キド達は?」



    マリー「それが、先に
        行っちゃったみたいで…」




    カノ「へぇー。皆いないんだ〜。」



    しばらく考え込むと、



    カノ「あのさ、二人で買い物しようよ?
       今頃皆を探すの大変だし。
       ねっ?


       Yes or No?」





    ニコニコ顏で言われた。
    なんでそうしたかはわからない。
    だけどこの時私は、



    ─── Yesを選んだ。


  26. 38 : : 2014/09/30(火) 16:51:50




    どうしてこうなったの?!


    右手は、カノの手としっかり繋がれている。



    こ、これじゃ…まるで…



    カノ「なんか、デートだね〜」



    ニヤけながら言うカノ。


    冗談とわかっていても、
    体が火照るのがわかった。

    手にまで伝わったら恥ずかしいよ…っ



    マリー「カノ、手つなぐのやめにしない?」


    カノ「え〜?なんで?」


    マリー「だってその…」


    カノ「なぁに?」



    私の焦りを楽しむかのように
    顔を覗き込んでくる。



    マリー「だから…っ」



    カノ「んー?」



    焦れば焦るほど、ニヤけ顏は収まらない。


    …もういや…



    マリー「もういい!」


    顔を見られないように目を背ける。


    カノ「はははっ、ごめんごめん!
       嫌だった?」



    カノは笑いながらも、
    申し訳なさそうに自分の手を離した。




    マリー「えっ。」


    カノ「ん?」


    マリー「その…嫌では、ないから…」


    カノ「…つなぎたい?」



    返事をしないうちに、右手は
    私より少し大きな手に包まれていた。


  27. 39 : : 2014/10/01(水) 17:08:09


    二人で手をつなぐなんて、

    今まであったようでなかった。


    だから、なんだかくすぐったい。


    それはカノも同じらしく、
    目を背けたまま一言も話さない。


    顔を少し赤くして。





    そんな中、カノが口を開いた。





    カノ「今度こそ答えてくれる?」



    セトのことだ…
    そう思いながらも、


    何が?というふうに首を傾げると、



    カノ「わかってるよね?」





    カノにしては珍しく鋭い口調で言われた。









    マリー「うっ…」


    カノ「話して。」


    マリー「やだって言ったら…?」






    カノ「…力尽くで。」





    声は低くて、
    真剣か、冗談なのかわからない。




    ただ、伏し目がちに話すカノは
    欺いているようには見えない。






    マリー「どうして、
        そんなに聞きたいの?」


    カノ「だってマリー、
       なんか悲しそうだから。」





    私がセトのことをずっと
    考え込んでいるのを、完全に見抜いてる。


    もう隠すのは無理だなぁ…。


    近くのベンチに座る。






    マリー「セトが…怖いの。」



    驚いた様子のカノを見て付けたす。


    マリー「ちょっとだけね。
        ずっと黙ってたり、
        いきなり…抱きつかれたり。
        嫌じゃないけど。
        どうかしちゃったのかな。

        それと、 クロハもなんだか
        おかしいの。
        この前……」




    言葉が出なくなった私を、
    カノはそっとなでた。



    カノ「何…された?」






    マリー「…チュー。

        セトが好きなのに。


        キス…されちゃった。」





    カノは何も言わずに、

    ただただ優しく頭をなでるだけだった。




    マリー「私はきっと、
        クロハにキスされたのが
        いやなわけじゃないの。
        それで、少し喜んでいる
        自分が嫌で…っ」




    カノ「…そっか…」



  28. 40 : : 2014/10/02(木) 17:56:09

      ーーーーーーーーーーー


    今日のカノはなぜか優しい。


    さっきからずっと
    手を離さないでいてくれるのも、
    安心出来るように
    してくれてるんだろう。




    カノ「さ、もう帰らないと。
       如月ちゃんが心配
       してるんじゃない?」



    マリー「うん。早く帰ろ…きゃっ!」






    すれ違った人にぶつかって床に転ぶ。




    マリー「ごめんなさ……!?」


    「だ、大丈…夫…?!」



    目の前の人も私も、お互いの
    顔を見て言葉が途切れた。




    カノ「セト?」





    カノ「セト、なんでここに?
       来ないんじゃなかったの?」


    セト「いや、バイトだったんで
       その帰りに寄っただけっすよ。
       カノ達こそなんでここに?」



    カノ「ああ、皆でお出かけに
       来たんだけどさ、キド達が
       先に行って見失っちゃって。
       二人で買い物中〜

       ま、ちょうど帰ろうとした
       とこだから一緒に帰ろう?」



    セト「あはは、キドらしいっすね。
       もう暗いしそうするっす。」



    そうして三人でアジトへ向かった。

  29. 41 : : 2014/10/02(木) 19:09:20


      ーーーーーーーーーーーーー


    マリー「セト二号、ごはんだよ〜!」




    水面に餌を落とすと、セト二号は
    ぱくぱくと食べに来る。




    マリー「カノ、見て見て!」



    一昨日、カノにあのこと
    を打ち明けてから、

    私は無意識にカノとばかり
    話すようになっていた。




    セト「…マリー。」



    振り返ると、
    腰に腕を回されて、抱きしめられた。




    マリー「!?」



    セト大胆、とでも言いたげな
    顔をして見つめるカノ。



    セト「散歩行かないっすか?」


    マリー「う、うん?」







    セトに誘われ、外に出る。



    マリー「どこかに行くの?」


    セト「ちょっと。」




    答えはそれだけで、セトは足を早めた。


    追いかけるのに必死で、

    セトが立ち止まり、周りを見渡すと。



    マリー「こんなところで、
        何するの…?」





    そこは、人気のない路地裏だった。
    私の言うことには触れず、
    セトは話し始める。





    セト「最近、俺マリーに
       冷たいっすか…?」




    マリー「…うん…。



        ちょっと、怖かった…」








    セト「…ごめん。」




    絞り出すような声だった。


    傷つけちゃったかな…



    セトの近くに歩みより抱きつく。



    セト「もう俺の事、
       好きじゃないのかと思って…」



    マリー「そんなことないよ。
        私は…セトが好きだよ。」



    セト「良かったっす。」



    そう言うと彼は私を離し、
    嬉しそうに笑顔を見せた。





    セト「…ところで、マリーは俺に
       言うこと、ないっすか?」


    言うこと?なんのことだろう?



    マリー「な、なんのこと…?」



    セト「忘れたんすか?」



    マリー「…??」










    ドンッ







    背中に壁。両隣にはセトの腕。


    目の前にセトの顔…。






    セト「一昨日。カノと、
       何してたんすか?

       手、つないでたっすよね。」




    そう言うセトの声はいつもより
    ずっと低く、恨みが
    こもったようなものだった。




    マリー「そ、それが…
        どうしたの…?」




    セト「マリーは俺のものだって、
       わかってるっすか?


       たとえカノだろうと、
       相手は男。
       カノに悪気はなさそうだけど、
       なんで断らなかったんすか?」




    マリー「えっ…と…」



    セト「それにマリー、
       嬉しそうだったっす。」




    今までの低い声から
    いつもの声に戻り、ポツリと言った。









    セトはため息をつくと、
    先程の硬い表情に戻った。




    セト「マリーは、俺のものって
       自覚出来てないみたいっすね…。





       身体に教え込んであげる。」




  30. 44 : : 2014/10/03(金) 17:08:19












    チュッ













    どういうこと、と聞こうとして
    開きかけた口は
    セトの口によって塞がれた。




    マリー「んっ…」





    息が苦しくなり始めた時、
    ようやく口を離してくれた。


    …それもつかの間。



    また唇が重なる。



    今度は、口の中に何かが入ってきた。




    熱いのは口の中だけなはずなのに、
    体中が熱を帯びる。




    マリー「ん…っふ…」




    口からは声が漏れる。


    こんな声恥ずかしい…

    なのに…



    どうしても出てしまう。




    セト「っ…。
       もう一度聞くっすよ。


       マリー、
       自分は誰のもの?」



    セトは口を離すと言った。



    マリー「…しぇとの…!」



    舌を掻き回されたせいか、
    呂律が回らない。


    私の言葉にセトは軽く吹き出した。




    セト「ぷふっ。しぇとってだれっすか。」




    マリー「ぅ…せ、セトのっ。」




    言えた…!





    セト「よくできました。



       さて、今日は
       これくらいにしとくっす。」


         ・・・
    マリーは「今日は…?」





    思わず口にすると、
    彼はイタズラっぽく怪しい笑顔で言った。



    セト「そうっすよ、"今日は"終わり。」




  31. 45 : : 2014/10/03(金) 19:54:33



    クロハ「あ、女王帰ってきたし、
        もう行くか。」


    アジトに帰ると
    私を見つけたクロハが言う。


    コノハ「ネギマ?」


    その問いに頷くとクロハは続ける。


    クロハ「お前は先行ってろ。
        どうせ馬鹿みてえに
        食い続けてんだろ?」


    わかった、と言うとコノハは
    一人で出て行った。



    マリー「ねぎま…?」




    ねぎま?行く?

    いまいち状況が掴めない。




    クロハ「食べたいのでしょう?
        女王が行きたいのならば
        お連れします。」




    あぁ、思い出した!
    カップを買いに行った時に、
    コノハ君にねぎまを
    食べてみたいって話したんだった。




    マリー「そこに行くくらいなら
        一人で行けるよ、大丈夫!」



    クロハ「徒歩となると
        軽く二時間はかかるかと。」




    に、二時間…




    マリー「じゃあ…って、何で行くの?」


    クロハ「?こうですけど。」




    クロハはひょいっと
    私を持ち上げ、腕に抱えた。



    これって…
    お姫様抱っこ…?!

    まさかとは思うけど。



    マリー「このまま歩くの?!」


    クロハ「違いますよ。
        跳んで行くんです。」



    モモ「うわぁ!そんなこと
       出来るんですか?!
       じゃあ私も…っ!!」



    クロハはモモを
    チラッと見るとすぐに答えた。

    クロハ「重そうだから嫌。」



    モモ「なっ!?」


    クロハ「それに女王以外に
        こんな事するわけねえだろ。」


    そんな事もわからないのか、
    という顔で言い放つ。




    喚くモモを無視してクロハは外に出る。

    私は抱えられたまま…。






    "跳ぶ"って…"飛ぶ"ってこと…?


    それがよくわからないし、
    どちらにしても少し怖い。



    クロハ「恐怖を感じるようなものじゃ
        ないですよ。安心して。」



    私の不安な表情を見てか、
    クロハは少し微笑みながら言った。



    トンッとクロハが
    地面を蹴ると、
    ふわりと体が浮くような感覚になり、
    建物が遠くなって行く。












    マリー「た、高い…っ!」



    クロハ「すぐ着きますが…

        絶対に離さないで下さいね?」




    その台詞に思わずドキッとする。



    マリー「…うん!」


  32. 48 : : 2014/10/04(土) 17:40:14




    頬をなでていく風が
    少し冷たくて、

    空は透き通ったような青色。


    ずっと下に見える建物や人。

    小さくて、
    お人形さんのように見える。



    普段体験することのない
    景色と感覚が心地いい。



    気づけば、最初の心配など
    嘘のようになくなっていた。






    マリー「ねぇ、クロハは外に出た時は
        いつもこうしてるの?」


    クロハ「いえ。急ぎの時くらいです。」



    クロハの急ぎの用って、
    どんなことだろう、
    そう思ったけど、聞くのは
    なんだか失礼かな…?



    マリー「ふーん。…重くない?
        だいじょうぶ?」


    クロハ「問題ありません。
        女王は軽くて
        驚くくらいですし。」


    マリー「そ、そうなの?」


    クロハ「はい。」


    マリー「へぇ〜。これ、楽しいね!」



    クロハ「気に入って頂けて光栄です。」




    にこりと笑うクロハ。


    整った美しい顔の彼が笑うと
    眩しいほどに綺麗だった。


    いつも笑っていたら素敵なんだろうなぁ。



    マリー「クロハ、いつも笑っていたら?」



    クロハ「…?
        いきなりどうしたのですか…?」



    マリー「クロハは
        笑ってた方がかっこいいなぁ
        と思って。」




    クロハ「お褒めいただき
        ありがとうございます。

        ですが自分のような者が
        女王の前でいつも
        ヘラヘラと笑うなど…。」




    一瞬驚いた様子を見せたが、
    冷静な答えが返ってくる。

    クロハはいつも私に対して、
    かしこまった口調で話す。
    女王なんて呼び方しなくてもいいし
    敬語やめてって、あの時も言ったのに。





    ────────────



    マリー「クロハ、敬語やめてよ…。」


    クロハ「無理です。」


    マリー「じゃあせめて…
        マリーって呼んで?」


    クロハ「嫌ですよ、恥ずかしい。
        女王にも無礼です。」



    ────────────





    何回も言った。

    その度に…ばっさりと断られる。


    他の皆には普通に話すのに、
    私だけには敬語。
    仲間はずれみたいでなんだか…。


    まぁ、このやり取りを
    続けるのに私が疲れて、
    最近は言わなくなったのだけれど。




    突然、景色が上に流れていく。






    マリー「ふぇっ…?!」



  33. 49 : : 2014/10/04(土) 17:51:25



    どんどん、体が落ちてく…





    怖い…っ




    目の前の黒いものにしがみつく。









    あ…





    これ、クロハ…だ…





    離れようとすると、


















    ギュッ


















    背中の腕に、
    クロハの体に寄せられた。

    体がくっついていて、胸が高鳴る。






    クロハ「離れないでください。
        もう少しですから。」






    そのままぐんぐんと落ちて行き、
    トスッという着地音がして、
    地面に降ろされた。
    さっきのは
    急降下していただけみたい。


    地面に降りてもなお、
    私はクロハから離れない。





    クロハ「あ…えっと、あの…」




    まだ抱きしめられていることが
    恥ずかしくなったのか、
    クロハの顔が赤くなる。



    でも私を引き剥がすことはしない、
    というかできないようで、
    ただ、あたふたするだけ。


    その様子がかわいくて、
    離したくないのだ。


  34. 52 : : 2014/10/05(日) 11:20:16




    しばらくして、
    恥ずかしさに我慢できなくなった
    クロハが、離してくれと
    言いたげな顔で口を開いた。



    クロハ「じょ、女王…」



    さすがにかわいそうに
    なって腕を離すと、



    クロハは気分を変えるために
    軽く咳払いして言った。


    クロハ「あそこです。」



    一瞬、何が?と思ってしまう。

    空の散歩が楽しくて忘れてた。
    もちろん、ねぎまも心待ちに
    していたけれど、

    先程の興奮は、それを遥かに
    超える楽しさだったのだ。







    そこには、コノハ君がいた。




    マリー「…。コノハ君…何してるの?」


    クロハ「…説明しなくても
        お分かりでしょう。」




    そこに行くにも足が進まない
    二人の視線の先には、




    コノハ「もっと。」


    口いっぱいにネギマを
    頬張りながら追加の
    ネギマが山盛りに乗った
    大皿を受け取るコノハがいる。


    それに手をつけようとした時、
    彼の目はやっと二人の姿を捉えた。


    コノハ「待ってたよ。」



    コノハはネギマを
    口に含みながら言う。

    何を言っているのか
    よくよく考えないと
    わからないくらい聞き取りにくい。





    クロハ「相変わらず永遠に入るような
        食いっぷりだな…」



    呆れた顔でコノハを見つめるクロハ。


    ぼっと立っていると、
    先程コノハに皿を渡していたおばちゃんが
    いかにも良い人そうな笑顔を
    浮かべながら声をかけてきた。


    「お二人さん、
     そんなとこにいないでお座り。」



    私がクロハが座るのを
    待っているとクロハが尋ねてくる。



    クロハ「もしかして俺が座るの、
        待ってます?」


    マリー「うん。先に座っていいよ?」


    クロハ「女王は真ん中にお掛け下さい。
        あいつは普段あんな
        ヘタレ…んんっ。
        役立たずですが、
        いざという時は力があって
        頼りになります。」




    真ん中にと言われ、
    コノハとクロハに挟まれて座る。



    背の高い二人の間に入ると
    周りが全く見えないので少し怖い。


    頼もしい、
    そう感じたのは否定しないけど。

  35. 53 : : 2014/10/05(日) 12:04:39




    マリー「コノハ君の、
        食べてもいい?」




    コノハの前に置いてあるお皿、
    すごく大きい。
    ねぎまがいっぱい…。




    コノハ「いいよ。」


    マリー「やったぁ!」



    コノハのお皿から
    一本取り、一口かじってみる。




    マリー「…」




    何も言わないマリーを
    コノハ達は心配そうに覗き込んだ。




    コノハ「おいしくなかった?」


    クロハ「どうした?」








    マリー「…おいしい…!」



    コノハ「よかった…。」



    その言葉に
    コノハは安心して微笑んだ。



    「おいしいかい。
     そりゃぁ良かったよぉ。
     お兄さんも何か食べんしゃい。」



    笑顔で食べる私を見て
    おばちゃんが言った。
    お兄さん、すなわちクロハのことか。

    そう思ってクロハを見ると
    クロハはコノハを見ている。



    マリー「クロハのことだよ?」


    クロハ「えっ、俺ですか!?
        "お兄さん"…?」



    「そうよ、お兄さんのことよ。
     なんか食べるー?」



    クロハ「いらね…」



    お兄さんなどと
    呼ばれたことが気恥ずかしいのか、
    クロハはそっぽを向きながら言った。




    コノハ「じゃあ、これ食べる?」



    彼が差し出したのは…



    ネギマ。



    クロハ「…
        いらねえよ。」



    クロハは一瞬見たものの、
    また顔をそらした。









    ん…?




    マリー「それ、なぁに?」



    頬杖をつくクロハの袖元から
    見える白い肌。
    そこに赤黒いものがついている。



    クロハ「何のことですか?」



    マリー「クロハのとこに。」



    クロハ「?」



    マリー「その、右の手首に。」




    そう言われてクロハは
    袖を少し捲り、自分の手を見る。


    私の後ろから覗き込んだコノハが
    首を傾けながら言った。

















    コノハ「…血…?」



  36. 54 : : 2014/10/06(月) 16:41:03



    その瞬間、クロハは
    血相を変え、慌てて袖を伸ばす。




    クロハ「これは…っ、
        な、なんでもございません。」




    いつも怪しく光っている黄色い目は、


    怯えているように見えた。




    マリー「…ケガ、してるんじゃ…?」



    血がついてるなんて、何かで
    切っちゃったのかな…。



    クロハ「い、いえ。
        お気になさらず。」



    クロハはやっと冷静を取り戻した。
    それでも、声はわずかに震えている。



    しばしの沈黙後、
    顔を俯かせていたクロハが
    消えそうな程小さな声で訴えた。



    クロハ「…女王に頼み事など…
        無礼なのは承知の上で頼みます。


        …見なかったことに
        して頂きたいのです。

        誰にも、言わないで下さい。
        どうかお願いします…。」




    震え声で頭を深々と下げて
    懇願する彼の要求を、
    受け入れないわけにはいかなかった。



    マリー「…わかった。」





    クロハは礼を言うと、

    コノハにも、絶対言うなよ、
    と念を押した。





    あんなに取り乱した
    クロハを見るのは初めてだった。

    何をそこまで
    隠す必要があるのか、
    全然わからない。



    みんなに相談しようと思ったけど、
    話したらクロハを
    裏切ることになってしまう。
    そんなのは…嫌だ。

    でも話した方がいいんじゃ…


  37. 55 : : 2014/10/06(月) 16:58:25



    ずっと黙って私達を見ていた
    おばちゃんがクロハの前に立つ。



    「悩みがあるなら、
     いつでも、言いんさいよ。
     おばちゃんが聞くからね。」



    そう言うと少し間をおいて、
    また話し始める。



    「私じゃなくても、コノハちゃん
     やそこのお友達…妹さんかしら?
     でもいいから、話なね。

     一人で抱え込んじゃいかんよ。

     抱え込んでも、なぁんも
     良い事なんてないからねぇ。」





    その言葉を聞いてクロハを見る。

    小刻みに震えているように見えた。


    泣いてる…?









    …違う。




    泣いてはいない。

    その目は、


    先程と同じように、
    怯えているようだった。







    マリー「…クロ…ハ…?」




    何をそんなに恐がってるの…?





    クロハ「先に帰る。
        コノハ、女王を頼む。」



    それだけ言うと、
    クロハはさっと立って店を出て、
    また跳ぼうとする。




    マリー「待って!」




    後を追いかけようと
    席を立ったが、再び視線を戻すと、


    もう彼の姿はなかった。


  38. 56 : : 2014/10/07(火) 18:21:24





    追う対象を失い、
    立ち尽くす私の頭に重みがかかり、
    ぽんぽんと軽くなでられた。



    コノハ「…僕たちも、帰ろ?」





    クロハ…。

    話せないくらいのことを
    抱え込んでるなんて。


    返事をしない私を見て、
    コノハは背中に私を乗せた。




    コノハ「ありがとう。
        おいしかった。」



    コノハはおばちゃんに言った。



    「また来ていいからね。
     あと、お兄さんに
     謝っといてもらえるかい?
     なんか、余計なこと
     言っちまったみいだから…」



    コノハ「おばさんは悪くないよ。
        また来る。」


    「はいよぉ。
     その子をおぶってくの?
     大丈夫かい?」


    コノハ「うん…。すぐ、着くから。」



    おばちゃんは「そうかい」と返すと、
    店を出る私達に手を振る。







    コノハ「ちゃんとつかまっててね。
        落ちちゃうから。」




    返事はする気にはならなかった。
    だけど、手は離さないようにしないと。
    落ちちゃったら大変だし…ね。





    *☆*─────────────*☆*




    跳んでからしばらくして、
    コノハがぽつりと言った。



    コノハ「クロハ、
        どうしたんだろうね。」



    マリー「…。」



    コノハ「マリーが気にしても、
        何も、変わらないよ?」



    マリー「気づいて…

        気づいて、あげられなかった。


        クロハ、悩んでいたのに。
        全く、気にかけなかった。」



    コノハ「…。」





    コノハは黙ってゆっくりと
    高度を落とすと、
    私をストンと降ろし、振り返る。
















    ギュッ













    コノハ「…クロハにも、話せない
        ことあるはずだよ。
        マリーが自分を責めなくても
        いいんだよ。元気出して。」



  39. 57 : : 2014/10/07(火) 20:17:27





    コノハは私を離すと、
    アジトに帰って行った。





    ──── クロハにも、話せないことがあるはずだよ。 ────





    そう、だよね。
    コノハの言葉で少し元気になった。
    後でお礼言わなきゃ。


    そう、思っていたけど…。

















    ソファに座っている彼は寝ていた。



    シンタロー「それ、何しても
          起きないぞ。」



    隣に座っているシンタローが
    邪魔くさそうにしている。
    起こそうと色々試みたらしい。



    マリー「困ったなぁ…」



    それを見てシンタローは
    コノハを揺らし始める。




    シンタロー「起きねえと思うけど…


          コノハー。起きろー。」



    しばらく揺するが、
    コノハが起きる気配はない。



    シンタロー「ほらな?
          起きないだろ?」


    マリー「本当だ…」



    シンタロー「大声で叫ぶとか…?

          おーきーろー。」



    シンタローはコノハの耳元で
    大声で呼びかける。





    シンタロー「ダメだ。」



    コノハは寝息を立てて
    全く起きる気配を見せない。









    ガチャッ



    ドアが開き、カノが入ってくる。



    カノ「やっほ〜!」



    マリー「あ、カノ。」


    シンタロー「起きねえよ、こいつ。
          どうなってんだ。」



    カノ「ちょっと、僕の扱い
       ひどくない?
       ていうか、二人とも
       何やってるの?」



    シンタロー「コノハを起こしてる。」


    マリー「全然起きないの…。」


    カノ「あぁー。」



    カノ「コノハ君を
       起こす方法なら、一つだけあるよ。」



    マリー「何?」


    カノ「なんだと思う〜?」



    わざとらしく聞いてくるカノ。



    シンタロー「前振りはいいから
          早くしてくれ」


    カノ「少しくらい付き合ってくれても…。

       ま、いいけどさ」



    そう言うと
    カノはコノハに向けて
    少し大きな声で言った。



    カノ「夜ごはんできたよー!」




    その瞬間、コノハは
    ガバッと起き上がる。



    コノハ「カノ、おはよう。」


    カノ「…うん。おはよー。」




    シンタロー「あんなに揺すって
          起きねえのに、
          〝ごはん〟で
          起きんのか?!」


    マリー「すごい…」



    コノハ「ごはんは?」


    カノ「ごめん、ない。

       しかもまだ食事する程の
       時間じゃ…」



    コノハはその言葉を聞いて
    あからさまにガッカリした
    表情を見せる。

    時計を見ると、まだ三時だった。



    コノハ「じゃあ、寝る。おやすみ…」



    シンタロー「待て待て待て!」



    また寝ようとするコノハは
    シンタローによって止められる。



    コノハ「?」


    シンタロー「マリー、用事あるんじゃ
          ないのか。
          早く言わないとコノハ、
          また寝るぞ。」


    コノハ「用事?」



    シンタロー「つか、マリーの部屋で
          話したらどうだ?いつ
          寝るかわかんねえし。」



  40. 60 : : 2014/10/08(水) 19:50:26



    *☆*───────────*☆*




    マリー「さっきは、ありがとう!
        元気出たよ…!」


    コノハ「どういたしまして…?」



    マリー「クロハ、帰って来てない
        みたいだけど…大丈夫かな。」



    コノハ「わかんない…。
        クロハなら、大丈夫
        なんじゃないかな。」


    マリー「そうだね。ゆっくり待とう。」




    コノハは私に寄りかかり、
    肩に頭を乗せた。
    その様子が
    子供みたいでかわいい。


    コノハのこういうところが好き。
    も、もちろん、
    そういう好きじゃなくてね…っ?!




    コノハ「クロハ、毎日外に行くんだ。
        どこに行ってるんだろうね?」






    毎日、外へ…?



    私も皆も、
    クロハについてよく知らない。

    何を考えているのかわからないし、
    どこへ行くのかさえわからないなんて。




    マリー「実はネギマを
        食べに行ってるとか…?」



    口数も少ないし考えを
    あまり露にしない。

    メカクシ団の中で一番
    謎がある人なのかもしれない…。




    コノハ「ネギマ…。いいなぁ。」


    マリー「コノハも、食べに行ったら?」


    コノハ「僕は疲れちゃうから。」



    彼は「眠い…」と言ってあくびをする。
    そういえば、寝ているところを
    わざわざ起こしたんだった。




    マリー「ごめんね、起こしちゃって。」



    コノハ「大丈夫。」




    コノハ「でも、眠いなぁ…」



    マリー「寝ていいよ?」



    私たちはベッドに腰かけているから、
    体を倒せば寝られる。



    コノハ「でも、ここ、
        マリーの部屋…。」



    いいの?という顔で私を見つめてくる。



    マリー「どうぞ。」



    にこりと微笑むと、
    コノハはベッドに寝転んだ。


  41. 61 : : 2014/10/08(水) 20:11:59




    マリー「じゃあ私は行くね。」



    立とうとしたその時、
    足がよろけた。



    マリー「わゎっ!?」



    ベッドに落ちるのかと思ったら、
    大きな体に支えられる。



    マリー「わぁっ?!」



    横にされて、
    後ろから抱きつかれる。



    コノハ「一緒に、寝る?」




    耳元で声がして、心臓が跳ねる。




    口を開きかけると、
    後ろから聞こえる音。これって…



    マリー「あ、あれ…?」



    後ろから寝息が聞こえる。
    返事をしないうちに、

    寝ちゃった…。





    出ようかなぁ…
    セト二号にごはんあげてないし、
    コノハを一人で寝かせてあげた方が…。


    お腹に回されている
    コノハの腕を少し持ち上げる。














    …訂正。

    〝持ち上げようとした〟 だ。





    う、動かない…。
    キツく抱きしめられていて、
    全く動かなかった。
    コノハの力に、
    私がどうこうできるとは思えない。



    コノハが起きるまで待ってよう。
    キツいと言っても、苦しくはない。

    むしろ、暖かくて
    とても気持ちが良かった。




    マリー「…ふぅぅ…私も
        寝ちゃいそうだよ…」



    下がってくるまぶたを必死に
    あげようとするも、
    私は襲ってくる睡魔に勝てなかった。




  42. 66 : : 2014/10/09(木) 19:01:11



    夢の中でも、
    私はクロハの事を考えていた。



    ねぎまを食べに行く前。
    クロハと交わした会話が、
    どうも引っかかるのだ。



    なんで、あんなことを…?





    ──────────────




    クロハが言いながら指差したのは
    ニュース番組の流れるテレビ。



    クロハ「女王って…

        ああいうの、
        どう思いますか?」




    ─── 「昨日○県○市の住宅街で、
         殺人事件が起きました。

         殺害されたのは、
         小学三年生の児童一名です。」




    現場にいるアナウンサーが
    そう告げ、被害にあった児童の
    保護者が映し出された。



    ────
    「尊い小学生の…娘の命を、奪った
     犯人を早く捕まえて欲しいです。

     どうして死ななくては
     いけなかったんでしょうか…

     たとえ犯人が捕まっても、
     娘はもう…もう…
     帰って来ません…っ!」 ───



    泣きながら嘆きに近い
    コメントをする父親。





    マリー「どうって…許せない。
        女の子もお父さんも、
        かわいそう…」



    クロハ「可哀相…ですか…。」



    モモ「そうですよ!だってまだ、
       楽しいことたーくさんあった
       はずなのに…
       それを奪うなんて、許せません!」



    話を聞いていたモモが割って入る。





    クロハ「殺さなければいけない
        理由があるとしたら?」



    変な質問するなぁ…

    と思っていると、
    モモちゃんがすかさず答えた。



    モモ「どんな理由にせよ、
       人を死なせるなんて
       絶対にダメです!

       犯人は最低ですっ!」



    私もその通り、と頷く。


    クロハ「そうか…」





    ──────────────






    あの時、
    クロハが悲しそうな、淋しそうな顔を
    したように見えたのは、
    気のせいだったのかな…。


  43. 67 : : 2014/10/10(金) 18:01:03




    クロハside




    「先に帰る。
     コノハ、女王を頼む。」



    そう言って店を出てきた。

    女王の声が一瞬聞こえたが、
    その時にはもう地上にいなかった。





    女王に、
    バレてしまったかもしれない。


    そのことで頭がいっぱいだった。



    俺の手首についているもの、
    これは確実に血。


    俺のじゃない。











    他人のだ。






    ついたのは昨日で、
    乾いて赤いというより
    黒に近い色に変色している。

    ちゃんと落とした
    つもりだったんだが…。





    蛇「クロハ様、早く行きますよ。」


    クロハ「っせーな、わかってるよ。」










    *☆*────────────*☆*






    毎日見る血塗れの手。
           ・・
    いつになったらこれを
    やめるんだろう。



    入念に赤色を落とす俺に、
    またもや蛇が口を挟む。


    蛇「ちゃんと落として下さい。
      女王に見られるなどという失態、
      もう二度としないで下さいよ。」



    …蛇がこの台詞を
    言ったのはもう三度目だ。



    クロハ「あぁもう、お前って奴は
        本当に煩い奴だな。
        わかってるって言ってんだろ!」





    俺がイラっとした口調になると
    蛇は肩をすくめた。

    とは言っても蛇が肩をすくめる
    なんて見てもわからない。
    そもそも肩なんてないだろうし…
    この表現は間違ってんのか?



    蛇「一つだけいいですか?」



    「なんだよ」と言うと蛇は
    若干ビビりながらも口を動かす。



    蛇「女王に、いつ言う
      おつもりですか。
      いつまでもひた隠しにしていても、
      いつかはバレてしまうものです。
      早めにした方が…」





    クロハ「…今日、言うか…?」



    どうせ見られてしまったのなら、
    今日全て打ち明ける方が
    気が楽だ…。





    今日が女王との
    別れになるかもしれない。




    そんな考えを消すように頭を
    横に振って、女王の元へ向かった。


  44. 68 : : 2014/10/10(金) 18:25:17



    アジトのドアに手を掛ける。



    開いたら、
    女王に言わなければ、絶対に。



    少し震えている手を無視して、
    ドアを開く。






    クロハ「あれ…女王は…?」



    部屋に女王はいなかった。



    シンタロー「マリーか?マリーなら
          部屋にいるはずだぞ。」




    コノハと一緒に、と付けたしたが
    もう彼の耳には届いていなかった。





    今度こそこの部屋の向こうに…。



    嫌われたら終わりだ。


    俺はもう、もう…。




    半分諦めながら部屋に入る。






















    女王は、コノハに
    抱きつかれながら眠っていた。




    クロハ「こ、コノハ…?!
        なな、なんでお前が…」



    女王と寝てるんだよ…!?



    隣の女王を起こさないように、
    コノハの耳を引っ張る。


    コノハ「…zzz…」


    堂々とマリーの隣で寝てる上に
    全く起きないコノハに
    クロハは心底イラついた。



    クロハ「…チッ、早く起きろよ…」




    早く起きる方法…


    こいつ、ネギマ好きだよな。
    単純だし。








    クロハ「ネギマ。」



    コノハ「…ネギマ…?!」



    コノハはネギマのフレーズに
    釣られ、目を開ける。



    クロハ「やっぱ起きた…。
        お前、なんで寝てんの?
        女王と。」



    コノハ「なんで…?眠かった、から?」



    クロハ「…」




    こいつに何言っても無駄か。



    コノハの場所と
    自分の場所を取り替えたい。
    コノハは抱きしめるのを
    やめたとはいえ、
    まだ女王の隣で寝ている。


    女王は、無防備に
    綺麗な寝顔を晒している。


    それを他の男に取られて
    俺が耐えられるわけがない。




    隣に行きたい…。





    クロハ「なぁ。
        女王、綺麗だな。
        もし…その、隣にいたら…」



    コノハ「マリー、かわいいよね。」




    まるで自分が褒められたように
    嬉しそうに言うコノハ。


    そうじゃなくて…。
    単に女王を褒めたいだけ
    じゃねえよ、どんだけ馬鹿なんだか…



    もうこうなったら単刀直入に。















    クロハ「コノハ。
        そこ、代われよ。」








  45. 69 : : 2014/10/11(土) 09:24:43



    クロハside



    え…?という顔で
    こちらを見てくるコノハ。




    クロハ「いいから。女王から
        離れろ。」



    コノハ「?」



    コノハは何が何だか
    わからないといった顔で
    ベッドから立ち、クロハの隣に並ぶ。



    クロハ「部屋から出てけ。」



    コノハ「??」



    その言葉に足を
    止めてしまった背中を押す。




    コノハ「クロハ、どうしたの。」


    クロハ「別にどうも。」



    コノハ「クロハおかしい。」



    クロハ「そう。」


    コノハ「うん。変だよ?」


    クロハ「変だのおかしいだの、
        それがなんだよ。」





    クロハ「んじゃバイ。」



    ドアを開けコノハを外に追いやる。
    よし。これでオーケーと。








    コノハ「…開かない。」



    ドアを開けようとした
    ものの内側から
    鍵をかけられたために開かない。



    コノハ「クロハ…何するんだろう。
        なんかいつものクロハじゃ
        なかった…」



    心配しても部屋の中に
    入れはしない。




    シンタロー「何してんだ?」


    コノハ「あ…シンタロー。
        マリーと寝てたら
        クロハが…。」



    シンタロー「〝マリーと
           寝てたら〟…!?」



    コノハ「…?うん。
        なんでびっくりしてるの?」


    シンタロー「いやいや、
          何したのお前?!」



    コノハ「だから…マリーと
        寝て「おわああぁぁぁ!!」



    コノハの台詞はシンタローの
    悲鳴とも呼べる叫びに遮られた。



    シンタロー「マリーはクォーター
          とはいえメドゥーサ
          だぞ!?いいのか!?」



    コノハ「だ、だから何が…」



    シンタロー「っつーかクロハもやる
          つもりなのか…?!
          おい、クロハ!」



    シンタローは一刻も早く
    クロハの〝行為〟を止めるために
    マリーの部屋のドアを
    バンバンと叩き始める。




    クロハ「さっきからうるせーよ。

        …あ、すまん。」



    勢いよく開いたドアが
    シンタローの顔面を直撃する。


    彼はそんなのは
    もろともせずに話し始めた。



    シンタロー「おおお前、何、何
          するんだ!?」



    クロハ「…何って何だよ?」



    シンタロー「え、だからそのあれ
          だよ、あれ!
          クォーターなのに
          いいのか?!」



    クロハ「はぁ…?意味わかんねえん
        だけど。何言ってんの?」



    クロハはそう言って部屋に戻った。





    あいつは何を騒いでんだ…?




    クロハ「女王…」



    小さな声で呟く。










    マリー「クロ…ハ」




    クロハ「は、はいっ!?」





    慌てて返事をするも
    何も返ってこない。



    クロハ「?」



    女王の顔を見ると、
    その瞼は完全に閉じていた。



    クロハ「…寝言かよ。
        びっくりした…」




    クロハ「…」



    息を呑み、
    女王の寝ているベッドに手をつくと、

    ギシ、とベッドが少しだけ軋んだ。



    クロハ「起きねえよな…。」







    頼むから起きないで
    くださいよ、女王…




  46. 70 : : 2014/10/11(土) 16:42:49



    クロハside




     ドクン…ドクン ─── 




    心臓が脈打つ音が
    聞こえるんじゃないかと
    思うくらいに高鳴っている。




    こんなにも近くに
    女王の体温を感じたことはない。





    いや、女王だけじゃなく、

    誰かと寄り添って寝るなんて
    したことが無い。










    白く整った顔に
    少しかかった白い髪。




    クソッ…。可愛すぎる。
    見つめていると抱きしめたくなる。


    目の前にいるのだから、
    腕を回せばすぐに届く。


    女王にそんなことして
    いいんだろうか、そう思って
    しなかったけど…









    起こさなきゃ大丈夫だよな?

    自分自身に聞く。



    答えは、
    俺が決めなきゃいけない。




    どうする…。




  47. 71 : : 2014/10/12(日) 17:38:20


    通常に戻ります(マリーside)







    マリー「ん…?」



    外から、声が聞こえる。


    シンタローと、コノハと…
    あと一人違う人…誰の声だろう。











    バタンと音がして、ドアが閉まった。


    部屋の中に誰かいる。


    コノハかな…?






    「女王…」





    女王?…この声は間違いない。





    マリー「クロ…ハ」





    ! や、やっちゃった、声に…。





    クロハ「は、はいっ!?」






    もしかしてクロハ、
    返事してるの…?



    ふふふっ。真面目だなぁ。







    …足音?


    クロハが、来る…?!




    クロハ「…寝言かよ。
        びっくりした…」




    クロハの敬語じゃない、
    この口調の方が好き…。





    クロハ「起きねえよな…。」





    も、もう起きてるんだけど。




    でも、そろそろ今
    起きたふりして起きた方がいいかな。

    いつまでも寝たふりしてられな…




    ギシ…




    軽く軋み音が聞こえる。


    ちょっ、ちょっと待って、
    どうなってるの…!?



    目を開きたい。


    クロハ、どこにいるのっ?







    …?





    な、なんでこんなにあったかいの…?




    なぜかは、頭の何処かでわかっていた
    それを必死に否定し続ける。





    ち、違うもん。


    クロハが目の前にいて…
    私と一緒に寝てるなんて。





    絶対違う…!!





























    ギュッ

































    え…?  え!?




  48. 72 : : 2014/10/12(日) 19:44:07




    まって、待って…。






    今私、どうなってるの…?!








    前から…抱きつかれてるのかな…。







    だ、だめだめ、そんなこと考えると
    余計に意識しちゃう。





    なんにも考えない…



    考えない考えない…






    って、さっきから耳に
    息がかかってる…。








    マリー「ぁっ。」






    !!

    声が…っ








    クロハ「ん…?起きてんのか…?」







    お、起きてないよ…起きてない…


    お願いだから気づかないで…!



    クロハ「女王?」



    クロハの低い声と共に
    生暖かい風が耳にかかる。





    そのなんとも言えない感覚に、
    溢れ出す声を抑えきれない。





    クロハ「…??」






    しばらく何も起こらない。







    クロハ「ビビった、
        起きてねえのか。」




    不安になって目を
    開けようとした瞬間に声がした。




  49. 73 : : 2014/10/13(月) 10:43:18





    マリー「ん…っ!」




    体がビクンと反応する。
    ま、また…っ。








    クロハ「あ、やっぱり…。
        寝ながら感じるなんて
        女王って結構変態
        なんですね。」




    クロハの顔がニヤついているのが、
    目を閉じていてもわかった。


    まだ寝ていると思われていて、
    さっきから耳をなぞられたり
    息をかけられたり好き勝手されて、
    反応を見られている。




    恥ずかしくて堪らない。




    今すぐここから抜け出したい…




    そう思っている最中にも、
    耳の形をなぞるように
    クロハの指がツーッと動く。








    漏れ出す声も相変わらず。




    クロハ「しっかし、
        よく起きねえなぁ…」






    クロハは指を動かすのをやめない。

    くすぐったい上に、
    見られていると思うと
    頭がおかしくなりそう。






    マリー「ぁ…くろ…はぁ…っ。」



    気づいたら、そう言っていた。





    クロハ「?夢見てんのか……?
        俺の名前…
        どんな夢なんだか。」




    クロハは耳をいじるのをやめ、
    マリーの頭に
    手を乗せると優しくなでる。






    クロハ「はぁ…貴女は
        嫌いになるでしょうね…
        最低な俺なんて。」




  50. 74 : : 2014/10/13(月) 20:08:56







    マリー「?」





    あの言葉を最後に、
    クロハの動く音、声が
    全くしなくなった。




    起きていいのかなぁ…








    恐る恐る、目を開く。






    マリー「クロハ?」





    クロハは確かに前にいた。
    顔がくっつきそうなくらいな距離に。


    でも、静かに寝ていた。





    マリー「寝ちゃったの…?」




    コノハの時のように
    抜け出そうとした私は、
    クロハの腕を下ろそうとして
    また気づく。






    動かないんだった。



    抜け出せないのなら、無力の私には
    このまま寝ている他できない。



    こんな近いと眠れないよ…。










    あ、そうだ。
    さっき散々いじられたから。



    お返ししようかな…?








    私はクロハのヘッドフォンに
    手を伸ばした。



  51. 75 : : 2014/10/15(水) 00:01:00





    私は押しても引いて何をしても
    外れないヘッドフォンと格闘していた。



    これ、なんで外れないんだろ。。




    ふと、クロハの顔に目をやる。







    閉ざされているはずの
    クロハの目と目が合った。





    マリー「ふぁっ!?」






    クロハ「…女王……っ!?」




    その瞬間クロハは顔を
    真っ赤にさせる。



    クロハ「…申し訳ありませんっ!
        今すぐ離れ…」



    慌てて離れようとしたクロハが止まる。
    マリーがヘッドフォンを
    押さえているために動けないからだ。



    クロハ「女王、手を…。」




























    マリー「どかなくて大丈夫だよ。
        だってクロハ、こうした
        かったんでしょ?
        私…ずっと起きてたよ?」






    クロハはかなり衝撃だったらしく、
    しばらく目を見開いたまま
    声も出さなかった。




    ─── 私、何を言ってるの…?



    頭の中で思いながらも、
    口からはスラスラと言葉が出る。





    クロハ「起きていたって…
        いつから…」



    マリー「クロハが隣に来た時から。」



    クロハ「じゃあ…俺が女王に
        触れていたのも…」



    マリー「知ってるよ。」





    クロハ「マジかよ…」




    まさか起きているとは。
    そんな様子でクロハは頭を抱えた。





    マリー「好きに…していいよ。」









    クロハ「それって、襲って良い
        という事ですよね?」






  52. 77 : : 2014/10/16(木) 19:19:49






    クロハ「それって、襲って良い
        ということですよね?」





    怪しく光る黄色い瞳に、ハッとなる。



    マリー「ち、ちがっ…。」




    クロハ「襲われたいなんて、
        淫乱ですね。」



    マリー「だからちがう…ひぁんっ?!」



    必死に否定すると、
    突如、首筋を暖かく濡れた物がつたった。




    背筋がぞくりとする。







    首を舐められた、そう理解するのに
    時間はかからなかった。


    ぬるっとしたものが首筋をなで、
    耐えられない。



    マリー「や、やぁっ。」




    思わずクロハの顔を手で押しのける。





    クロハ「女王が襲ってほしいと
        おっしゃったのに、
        それはないんじゃ。」



    相変わらずの冷たい声には、
    少しだけ怒りが混じっていた。



    でも。





    マリー「襲ってほしいとは
        言ってないっ。」



    これだけは否定させてもらう。




    クロハ「同じようなものでしょう。」




    クロハは早く再開したいイラつきで
    少しだけ口元を震わせた。



    マリー「ち、ちがうよっ!」





    クロハ「じゃどうしろと?」




    マリー「え、えっと、えぇ…」








    クロハ「…」



    言葉を選ぶ私をじっと見つめたかと
    思えば、唇を重ねてきた。


  53. 79 : : 2014/10/18(土) 10:12:22



    マリー「んんっ。」




    クロハは私の顔を手で包み、
    舌を入れこんでくる。
    それに加えて自らの唾液を移してきた。

    自分のものかもわからない
    唾液が口から漏れ出し、首につたう。





    クロハ「女王、煩いです。
        自分で言ったんですから
        諦めて襲われてくださいよ。」




    マリー「だから違うって、
        ちょっとなんか私
        おかしかっただけなの…!
        それにクロハも…おかしい。」




    クロハ「はいはい、そうですか。」



    マリー「…適当にあしらうのやめようよ」





    私の言葉に、クロハは少し考え込んで
    複雑な表情をした。



    クロハ「…俺、そんなに変ですか?
        あいつ…じゃなくて、
        コノハにも言われました。」




    マリー「うん。なんか、
        いうものクロハじゃない。」





    クロハ「いつもの…?」










    クロハ「いつもの俺って、
        なんですか?」



    マリー「?」



    クロハ「あ、すいません、
        質問の仕方が変ですね。
        いつもの俺って、どんな
        感じなんですか?」



    マリー「…?
        んーと…敬語やめてって
        言っても聞いてくれなくて、
        堅苦しい感じ…?
        あと、優しいよ、すごく。」





    クロハ「優しい?俺が?


        そんなの…あり得ません。」




    マリー「えっ…?どうして…?」




    クロハ「女王、聞いてください。」




    マリー「改まって、どうしたの…??」



    クロハの頬に、汗がつたった。


    クロハ「俺は…俺は……」






  54. 80 : : 2014/10/19(日) 21:50:36
    期待です!
  55. 81 : : 2014/10/20(月) 16:57:16







    クロハ「俺は………」






    震えていたせいか、小さかったせいか、
    最後の言葉は聞き取れなかった。






    重い沈黙に声をかけられずに
    いると、クロハがベッドを降り、
    立ち上がった。



    クロハ「さっきからすいません…
        女王に無礼ばかり。
        俺、確かに変ですね。
        頭冷やして来ます。」





    私が口を開くのを待たずに、
    ドアを開けて去って行った。








    *☆*───────────*☆*




    コンコン、とノックの音が響くと、
    ドアが少し開いた。



    カノ「マリー?
       ごはんだってさー」



    ドアからカノの顔が覗く。


    もう、そんな時間かぁ…




    そう思いながら
    カノの後ろについていった。







    皿を並べていたキドが
    マリーを見て怪訝な顔をする。



    キド「コノハ達はどうした?
       一緒にいるのかと…。」



  56. 82 : : 2014/10/20(月) 17:00:59
    >>80ありがとうございます!

    これからもよろしく
    お願いします(艸'∀`●)
  57. 84 : : 2014/10/21(火) 19:20:35


    コノハside




    コノハ「…あ。」




    アジトの裏の路地に
    壁に一人うずくまっている
    人を見つける。そして同時に、
    コノハが探していた人物であった。



    肩が小刻みに揺れていて、泣いていることが見て取れた。



    なにか言ってあげた方が
    いいのかな…

    声はかけない方が…?





    散々迷った末に、コノハは
    近づいていき、ただ黙って
    横にぴたりとくっついて腰を下ろした。


    その人は最初こそ驚いた様子だったが、
    しばらくすると落ち着き、
    涙を流すのもやめた。






    どうしたの?と目線で話しかけるも、
    そっぽを向き、目を合わせようとしない。



    コノハ「どうして泣いてたの?」



    そう問いただしても、なんでもない、と白を切る。
    何度か質問をして何も反応しないと
    わかると、気になっていた事を
    率直に伝える。



    コノハ「この前の血…何?」



    体が一瞬ビクつく。
    それに気づいて、コノハは続ける。



    コノハ「怪我、してたんじゃないの?」



    それでもまだ口を開かない。






    コノハ「…それ以外の理由でもあるの?」





    「…ない!!」




    その人はいきなり、大声をあげた。
    そのあまりの剣幕に、コノハは押し黙る。













    「…そんなの…ない。違う…」



    まるで自分自身に言い聞かせる
    かのように言うその人に、
    もうこれ以上事情を聞き出すのは酷だ。


    今日は帰ろう…コノハはそう思った。



  58. 88 : : 2014/10/26(日) 17:57:32

    通常(マリーside)に戻ります




    セト「ただいまっす〜!」


    カノ「おかえりー!」


    キド「おかえり。」


    マリー「おかえり…!」



    最近バイトが忙しかったせいか、
    セトと会うのは久しぶりな気がする。



    セト「マリー、ただいま。」



    セトは私をギュッと抱きしめると、
    少し怪訝な顔をした。



    セト「何か話したいことでもあるっすか?」



    ぎくっ。


    マリー「…っ…」


    セト「その反応は図星っすね。
       聞くから、話して?」



    セトは優しく笑う。


    クロハのことを話したいけれど、
    キドやカノ達がいるここで
    話すのは少し気が引ける。



    マリー「セトの部屋でもいい?」


    セト「もちろんっす!」



  59. 91 : : 2014/10/29(水) 19:58:53



    マリー「あのね、クロハのこと…
        なんだけど…」



    私が口ごもってもセトはずっと
    待ってくれている。



    キスされて耳を触られたとは、
    自分の口からは言えない。
    そもそも、本当はクロハと寝たことも
    話したくないんだけど、
    言われたからな…






    *☆*───────────*☆*



    セトに外に連れ出されて
    話をされた時のこと。


    セト「"今日は"終わり。
       またマリーが男の誰かに
       何かされたら、
       俺に報告するっす。


       黙ってたら、わかるっすよね?」




    *☆*───────────*☆*





    言っても何かされそうな
    気がするものの、少なくとも
    言わないよりはいい…ことを
    願うしかない。



    マリー「その…

        いっぱい、された…」



    セト「いっぱいってなんすか?」



    大体わかっているはずなのに
    わざとらしく聞いてくる。



    セト「言わないと
       わかんないじゃないすか。」



    セトはイタズラっぽく笑った。


    いじわる…




    マリー「耳…触られた…。」



    セト「それで?」



    てっきり怒るかと構えていたのに、
    セトはまだ微笑んでいる。


    でも、これだけじゃないって
    ばれちゃってる。



    マリー「あと…キスも。」


    セト「そうっすか。」



    またも素っ気ない答えが返ってくる。
    セトは考え込んだ。



    セト「抵抗はしたんすか?」



    マリー「え?」





    抵抗…



    抵抗…






    しまった。



    私、一回も嫌がってない…!!


  60. 97 : : 2014/10/30(木) 18:50:55



    マリー「した。」



    とっさに出たのは嘘。


    抵抗しなかったと知られたら、
    何をされるかわからない。




    セト「ふーん…」



    セトは私の顔色を伺うように
    首を傾ける。



    マリー「な…なに?」




    顔を近づけられて、
    胸がざわつき始める。



    近さからの緊張と、



    バレることからの緊張で。





    セト「目が泳いでたと
       思ってただけっすよ。」



    マリー「!」


    セトはニコッと笑うと、
    私の顔を片手で包んだ。


    私の顔をなぞるように手を動かす。


    くすぐったくて身をよじる。




    セト「抵抗しなかったんすよね?」



    その言葉は、
    先ほどまでのにこやかな顔からは
    想像できないほどに低かった。


  61. 99 : : 2014/11/03(月) 15:25:19



    セトはベッドに座ると、
    私を手招きした。


    話をすると言ってきてしまったから、
    誰かが助けてくれそうにない。


    行くほかの選択肢は私に
    ないようだ。




    近づくと、
    安定した足の上に座らせられる。





    セト「なんで抵抗しなかったんすか?」



    耳元で囁かれる。


    言葉が見つからない。

    どう言えばいいんだろう。




    ─── どうして
       抵抗しなかったか ───



    言われてみれば、本当になんで…?



    私はクロハがベッドに来た時に
    起きることができたのに。

    そのあとだって、
    耳を触られている時だって。




    チャンスは何回もあったし、
    その気になればいつだって逃げられる。

    じゃあ逃げなかったのは、私が…





    セト「クロハに触られて、
       感じてたんすか?」



    顔が赤くなるのを感じた。

    必死に頭を振る。




    けれど、
    そういう結論になる。

    なってしまう。


  62. 100 : : 2014/11/11(火) 17:54:17




    マリー「いたた…」



    腰を手でさする。
    もう痛くて痛くて…



       ・・
    絶対にあれのせいだ。
    そうにちがいない。



    セトと二人きりになったあの日。







    ──────────────




    私が言い返せずに俯いたと
    同時に、ベッドに置かれていた
    スマートフォンから、


    耳をつんざくような
    音量でエネの声が流れ出る。



    エネ「はいはーいエネちゃんです!
       長いので様子見に…ってあれ?
       お二人ともどこへ?」




    ───────────────




    あまりに驚いた私とセトは、
    ベットから転げ落ちたのだ。

    腰を強打し、
    しばらく治りそうにない。


    セト『ごめん、本当にごめん!
       バイトで連絡
       気づきやすいように音量最大に
       したままだったっす!』



    そう弁解するセトを
    責めるわけにもいかず。


    ぶつけようのない痛みに、
    一人ため息を漏らす。

    実際は一人ではなく、コノハがいる。
    だがほとんど寝ているために
    空気のようなものになっている。


    私は、どうしてもその耳に
    つけられたヘッドフォンを見ると
    考えさせられてしまう。
  63. 101 : : 2014/11/13(木) 18:18:41

    彼 ─ クロハのヘッドフォンと同じだからだ。




    ここ一週間、
    クロハと接する機会は0と
    言っていいくらいになかった。
    すれ違ってもお互い顔を俯かせるか
    逸らしてしまっていた。


    〝襲ってほしい〟などと
    言ってしまったのだ、
    顔を合わせにくいのは当然。


    だけど、彼と話がしたい。
    クロハと仲が良かったから、
    とかそういうわけじゃなくて…




    気になる。
    あの手首についていた血は何なのか。

    いや、それよりも心に引っかかっているのは、あの言葉かな。



    『俺は……俺は………』



    彼の顔は前髪のせいで
    影になっていて、表情が伺えなかった。



    あの時何を言おうとしたのか、
    はっきり聞かないと。





    マリー「…よしっ。」
  64. 102 : : 2014/11/17(月) 17:38:34

    クロハside



    マリー「クロハクロハ!」



    妙に上機嫌な声。
    この声を聞くのも久しぶりな気がする。



    クロハ「なんですか?」



    マリー「これ、着てみてほしいの!」


    クロハ「どれですか。
        見せてもらわないと
        わかりません」


    マリー「これ!」



    女王が差し出したのは、
    黒い服。



    クロハ「…スーツ…ですか?」


    尋ねるとこくこくと頷く女王。



    クロハ「あの、何故いきなり
        このようなものを…」



    マリー「この服、かっこいいでしょ?」



    マリー「それと、ボディガード
        みたいじゃない?」



    クロハ「ボディ、ガード…?」


    マリー「うん、えっと…」


    マリー「…カノが…言ってた。」



    なるほど。
    欺くが余計な事を言ったために
    女王がボディガードに憧れたのか。

    んで、被害に合うのは俺かよ…



    マリー「ほら、早くっ。」



    わくわく顏で服を押し付けられる。




    クロハ「…承知しました。」


    窮屈そうであまり好きじゃない。

    しかしにこにこ顏ではしゃぐ
    女王を見ては断れるものも
    断れなくなってしまうのだ。






    着替えやすいようにと、
    ヘッドフォンを外そうとする。
    だが、途中でその手を止めた。





    クロハ「いつまで
        見ておられるのですか。」




    俺の部屋のドアから
    女王の目が覗いている。

    余程早く見たいらしい。
    でも女王とはいえ流石に
    黙って見させる事は出来ない。


    マリー「だ、だめ?」


    クロハ「当たり前です」


    即答すると、
    しゅん…として去って行った。

  65. 103 : : 2014/11/19(水) 17:33:33




    クロハ「な、なんだこれ。
        恥ずかしいにも程があるだろ」


    鏡を見て思わず呟く。
    黒いスーツに黒いネクタイ。
    サイズはピッタリだった。

    女王が希望しているとはいえ、
    いつものに戻りたい、
    というのが本心だ。

    普段、こんなの着ねえからなぁ…






    マリー「終わった?」


    げっ、もう女王来ちゃったか。
    さっさと着替えてサイズが
    合わないだなんだ言おうとしたのに。



    クロハ「女王、
        まだ入って来ちゃ駄…目…」



    返事をしないうちに
    部屋の中に入ってきた。



    マリー「わぁ…!」



    クロハ「…変ですよね…?」




    恥ずかしい…早くなんか言ってくれ…



    マリー「ううん、
        すっごい似合ってるよ!」


    クロハ「そ、そうなのですか?
        俺はいつものが…」



    マリー「そっち着ててほしいなぁ…」



    上目遣いで頼んでくる女王。



    クロハ「そんなの…反則だろ。」


    ボソッと呟くと、

    え?という顔で見つめられた。


    クロハ「い、いえなんでもっ。
        女王は、この姿が
        いいのですよね。
        ならばこれでいいです。」


    マリー「本当!?わーい!
        ありがとう、クロハ…!
        あと、」


    マリー「敬語やめて。」



    クロハ「その要求は受諾出来ません。」




    きっぱり断ると女王は俺に抱きついてくる。




    クロハ「…離してください。」





    マリー「敬語やめてくれるまで
        離さないもん。」




    クロハ「それは無理です。」




    マリー「じゃこのまま…。」




    クロハ「そ、それは困りますっ!」



    マリー「敬語、いや。」

  66. 104 : : 2014/11/19(水) 17:43:41


    …一回だけ言えば良いか。



    クロハ「離せ。」



    その瞬間、パアァァッと
    明るい笑顔になる女王。


    マリー「うん!」



    クロハ「はぁ…大変ですね。
        女王の我儘に付き合うのは。」




    また敬語に戻すと、
    あからさまに不機嫌な顔を見せる。



    マリー「敬語!」



    クロハ「嫌です。」



    マリー「むぅ…じゃあせめて、
        マリーって呼んでよ!」





    クロハ「…茉莉?」



    マリー「ち、ちがっ…」



    わざとらしく名前で呼ぶと、
    女王は顔を紅潮させた。



    クロハ「茉莉様どうしました?」



    マリー「そ、その呼び方やぁっ!」



    ついには顔を隠してしまった。


    照れているのを必死になって
    隠そうとするその姿が
    俺の悪戯心をくすぐるも、
    必死に抑えた。




    あ、そういや、
    これもう着替えてもいいのか?



    クロハ「あのー…この服、
        もう着替えても
        よろしいでしょうか?」



    俺の言葉に女王はハッとしたようで、
    首をブンブンと振った。
    横、つまりノー。




    クロハ「それって…


        ずっと
        このままでいろということ
        ですか?」



    マリー「うん。」





    …マジかよ。
    そう口に出しそうになり
    思わず手で抑える。



    クロハ「す、少しくらい
     
        戻ったりしても…?」


    マリー「ダメ。」



    女王は全く聞く気がないようで、
    まともに顔を合わせてもくれない。

    諦めるしかないようだ、仕方が無い…

  67. 105 : : 2014/11/21(金) 18:20:25
    通常(マリーside)に戻ります


    キド「そろそろ帰るか。」


    カノ「そーだねー。って、マリーは
       どこ行ったの?」


    セト「さっきまでいたんすけど、
       いない…っすね。」



    キド「さっきの人混みか。やれやれ…」


    カノ「あはは…探しに行こっか。」




    *☆*─────────────*☆*




    マリー「皆、どこにいるの?」



    久しぶりに外に出たと思えば、
    一人迷子…ついてないなぁ、私。

    ずっとセトと手を繋いでいたのに、
    人にぶつかって離しちゃった。
    無理やりにでも、離さないように
    していれば、こんなことには。。


    人をなんとか押しのけ、
    空いている場所に来た。
    あの混みようは、なんだったんだろう。
    ここ、そんなに盛り上がるような
    イベントやってたっけ?



    「キャーッ!カッコイイ!」



    かっこいい…?

    違和感を感じ、よくよく聞いてみると、
    カメラのシャッター音が
    引っ切り無しに鳴っていた。
    そういえば群がっているのは
    女の人だけ。

    そしてもう一つ聞こえた声は、


    「やめっ、離せって!」


    男の人の声。
    どっかで聞いたような…?

    と思いながらも、私は
    帰ろうとして背を向けた。
    それと共に、群がりから悲鳴に
    近い声が次々と上がる。


    人混みで必死に腕を振りながら、
    中から人が出てくる。
    先ほど叫んでいた人らしい。



    ちょ、ちょっと待って、
    こっち来る!?



    走り出そうとした刹那。
    手首に肌の触れる感触がする。



    「待って、待ってください!」


    その人が、私の手を掴んでいた。
  68. 108 : : 2014/11/25(火) 20:21:24


    クロハ「待ってください女王!」


    マリー「クロハ!?なんでここにっ!?」


    クロハ「それは後で説明しますから!」



    後ろから迫って来ていた集団からのびた手がクロハの手を掴んだ。
    クロハはすぐにそれを振り払う。



    クロハ「とりあえず今は...」



    「逃げてください!!」




    クロハが叫ぶと同時に、私の足が滑った。


    そしてそのまま転ぶ。
    集団は私を器用に避け、
    標的を追い続ける。
    黄色い声が遠ざかって行く中、
    私はそれを見つめることしかできなかった。



    と、目の前が真っ暗になった。

  69. 111 : : 2014/11/29(土) 19:08:17


    マリー「ん、ん〜!」



    口を塞がれ、私はジタバタともがく。
    力いっぱい抵抗するも虚しく、
    壁の隙間に連れ込まれる。
    すると、口を塞いでいた手が離れる。



    マリー「んん…離してっ!」



    クロハ「シッ。静かに。」



    見知った顔に声を上げそうになると、
    すかさず口に指を当てられる。
    その手を降ろして、小声で言った。



    マリー「なんでここに…」


    クロハ「単に逃げて来ただけですよ?」


    マリー「そうじゃなくて。
        クロハはアジトに
        残ってるはずじゃ?」



    クロハ「あぁ、それはまぁ…
        ボディガードですから。
        当たり前ですよ。」



    クロハはにこっと笑い、
    いとも簡単に私を背中に乗せる。
    そして、走り出した。



    マリー「ど、どこへ行くの?」



    クロハ「帰るだけですよ。
        途中でまたああなったら、      お一人で帰ってもらうこと      になってしまいますが。」




    そう言った矢先。
    一人の女の人がこちらを指差して
    目を見開いた。



    「あ!さっきの…」


    クロハ「…女王。無理みたいです。」
  70. 115 : : 2015/04/25(土) 10:00:01


    女の人が、キャーッと嬉しい
    悲鳴をあげると同時に、
    クロハの顔がみるみるうちに
    蒼ざめていく。



    クロハ「申し訳ありません、女王。
        女王を安全に連れていられる
        状況でない故、
        お一人でお帰りください」



    クロハは早口言葉のように
    スラスラと告げ、
    「どうか気をつけて」と、
    これもまた早く言うと、
    彼は全速力で駆けていってしまった。


    その後をさっきの人を含む、
    何十人という群がりが追いかけていく。
    黄色い歓声に追われる中、
    蒼ざめた顔で走り続けるクロハ…

    クロハには悪いけど、
    想像しただけで笑っちゃう。





    それはそうと、私はどうしよう?




    マリー「…。一人で帰れる、かなぁ…?」




    行き慣れた場所とはいえ、一人で来た
    のは一度だけだ。その一度でさえ
    道に迷い、大変だったんだ。


    ガラスの外を見ると、
    もう日が赤くなり始めている。
    選択している時間はないらしい。



    マリー「…よしっ!」



    私は歩き出した。
    ショッピングモールの
    出口目指して、みんなが
    待つアジト目指して。





      ─────────────





    このときの私は何も考えていなかった。



    クロハがなぜあの場にいたのか。

    なぜクロハは私を置いて行ったのか。



    何も知らなかった。
    そしてこの後、何が起こるのかも。





      ─────────────




  71. 116 : : 2015/04/27(月) 17:43:18



    帰り道は、何度か左右に
    曲がるだけで、入り組んだ
    住宅地を通る必要もない。
    その上車の通りもそこまで多くない。
    第一迷子になるほどの距離でも
    ない……




    はず、だった。





    「あれ……あれれ?」




    ここ、通ったことないよね…。
    さっきの場所、
    右に曲がるんだったけかなぁ。


    戻ったところで信号にぶつかる。
    もう少しで渡れそうだったけど、
    歩き回ったせいで
    足が疲れちゃってるし…ゆっくり
    行ったほうがいいよね。



    ―― ピー、ピー

    青に変わる合図。

    周りの人たちが一斉に動き出す。
    ちょっと怖い。
    びくびくしながら歩き出すと、
    前からおじさんに肩を
    ぶつけられてしまった。


    体がぐらりとバランスを崩す。



    「ぉ…ととっ」



    声を出して体制を整えると、






    「チッ」


    機嫌を損ねたことを
    一気にわからせる、
    舌打ちが聞こえた。




    肩が一気に飛び跳ねた。
    顔から熱が消えていくのを感じる。

    羽織ってた上着を
    抱きしめるように握って、
    ダッと走り出した。










    怖い。










    怖い。









    いつも、こんなことに、
    胸がどくどく言っていたっけ。
    いつも、こんなに寒気を
    感じたっけ。




    セトがそばにいてくれたら、
    寄り添ってくれたかな。
    大丈夫、って、笑ってくれたかな。


    クロハが、いてくれたら、
    迷うことも、こんな思いを
    することもなかったかな。






    ―― 私って、
    こんなことですぐに怖がる、
    泣き虫だったんだっけ。


  72. 117 : : 2015/04/29(水) 13:31:05


    何分走ったんだろ。



    走りっぱなしで、心臓がとび出てきそう。
    足も、息も、すごく苦しい。


    それでも、止まらない。


    訳が分からないまま、
    頬が濡れていくのを感じながら。





    …なさけないな。





    ふと、立ち止った。



    「私は…私は……」




    なんでこんなに不安なんだろう。
    何をこんなに、
    怖がっているんだろう。


    多分、アジトはそう遠くない。
    私にはわからないけど、
    絶対に、遠くない。


    一人じゃ、帰れない。



    「う……ひっ…ぅ…うぅ…」



    手首を何度も目に当てる。

    何回拭っても、頬は濡れたまま。




    走ったからか、
    頭がずきずきと叫んでいる。






    誰か、助けて…




    気が飛びそうなほどの疲れの中、
    そう思った途端記憶に
    浮かんだ人の名を、私は呟いた。


    ゆっくり口元を動かして、一言ずつ。




    「………」









    はっとして思い直す。


    ちがうよ、その人じゃない。


    私が、
    助けて欲しいのは、
    好きなのは、
    あの大きな手は、
    いつもそばにいたのは、


    「セト、でしょ…?」


    同じ違和感をこの前も感じた。



    ちがう。
    セトじゃ、ないんだ。





    私の目に浮かぶのは、
    セトの完璧な笑顔とは正反対の、

    ぎこちなさそうな笑顔。
    すなわち、彼の顔だった。




    「……クロ……ハ?」




    辺りは夜に包まれ、
    冷たい風が吹いていた。

  73. 128 : : 2015/05/01(金) 13:48:54



    そう…か……


    クロハが、好き?



    「クロハのことが…好き」


    口に出して、改めてわかった。
    クロハにドキドキしているんだと。
    守ってもらいらいたくて、
    そばにいてほしくて、
    ギュってして欲しい。



    この思いに気づくのに、
    どのくらいかかったのかな。

    でも、気づいたよ、クロハ。


    二人で同じ場所で寝たことがあったよね。
    あの時、クロハがおかしかったのも、
    何か言いかけたのも、そういうこと…
    なのかな。


    好きな人ができると、
    おかしくなっちゃうね。

    今ならわかる。
    クロハが何を言いかけたかも、
    様子がおかしかったことが
    意味する気持ちも。



    これは、単なる私の考えだけどね。
    そうであって、欲しいな。

    いきなり、「好き」って言ったら、
    クロハ、驚いちゃうかもしれない。


    でもいいの。
    そのあと、「好き」って
    言ってくれるって、信じてるから。


  74. 129 : : 2015/05/01(金) 14:06:03



    「なっ、何だ!?何をするんだ、
     離せ、離してくれ…っ!!」


    男の人の、ただならぬ叫び声に
    気を引かれ、そっちに目を向ける。


    「え…?」


    狭い一直線の通路の先に、
    男の人が、足をぶらぶらさせて、
    宙に浮いていた。



    正しく言うと、
    首をつかまれもがいていた。





    …えっ、え…、助けて、あげなきゃ。



    どうしようと、パニックに
    なりながらも、足がすくんで
    一歩も動けない。

    体が石になったように
    その場面に釘付けになったまま。



    「はな………し…」



    男の人が苦しそうに
    喉をひゅうひゅう言わせているのが
    聞こえる。額に汗がにじんで、
    じたばたと忙しなかった手も
    つかまれた手を剥がそうとする
    動きに変わっていてる。

    かなり危ない状態なのが
    私にもわかった。




    犯人の顔は、わからない。
    建物の影になってシルエットにも
    ならず、暗闇に紛れている。



    と、犯人が何かを
    取り出している音がする。










    数秒後。






    乾いた銃声が聞こえた。
  75. 137 : : 2015/05/03(日) 16:28:28



    とてもひどい、光景だった。

    でも、私を追い詰める悲劇は、
    男の人の死だけに、とどまらなかった。



    私は、その後に
    目に映ったものが信じられず、
    そのまま意識を失った。



  76. 144 : : 2015/05/06(水) 12:16:12

    カノside



    カノ「ん~、
       どこ行っちゃったかなー」


    コノハ「マリー、いない…」



    デパート内であちこちを探しても
    見つからず、荷物を持ち帰るために
    ひとまずアジトに帰ったんだ。


    カノ「だね。まぁ、見つかるよ!
       大丈夫大丈夫!」


    コノハ君は頷いたものの、
    不安げな顔をしたまま。


    そりゃあ、不安だよ。

    五時からずっと、セトとコノハ君と僕で
    散々ってくらい歩き回ってるのに…


    もう七時、か。
    さすがに僕も
    かなり心配になってきてる。



    カノ「セトから何も連絡ないし、
       見つかってないんだろうな…」


    携帯をいじりながら呟くと
    コノハ君が閃いたように瞬きした。



    コノハ「あ…あの車、見たことある」


    コノハ君が見つめる先は、
    数台のパトカーが止まっている。


    カノ「パトカーじゃん。何かあった…」


    コノハ「マリーは?」


    カノ「え?」





    コノハ「マリーに、危ないことが
        あったんじゃ、ないの?」


    カノ「…否定できないね。
       様子見てこよっか。
       コノハ君、あっちの道から、
       遠回りでお願い。」



    一番近い道は
    野次馬だらけな上に、
    通行できないよう、
    テープで封鎖されている。


    猫に欺けば、
    誰にも気づかれずに入れるはず。
    警察官も、猫が入ったって、
    許してくれるでしょ。



    猫に欺いて人混みに近づいてみる。


    カノ「これ、通るの大変だなぁ」


    苦笑して息を整えてから、
    僕は人の間を
    何とか縫って進み始めた。
  77. 146 : : 2015/05/08(金) 18:31:36


    人混みから離れた道の奥に、
    警察官や捜査員が大勢で
    囲っているものがあった。

    警官たちの間から覗いてみると
    そこには、人を象ったロープ。

    月あかりに照らされている
    薄暗い辺りに、光を当てられている
    その場所だけがぼんやりと明るかった。



    遺体こそなかったものの、
    その周りには生々しい
    血痕が飛び散っていた。



    「首を絞められた痕があります。
     ですが出血の具合を見るに、
     銃殺されたのだと…」



    カノ「ひどいな…」



    捜査員が警官に話しているのを
    聞いて、思わず顔をゆがめる。



    人を殺した、それだけでも
    最低といえるのに。


    首を絞めて窒息死、
    じゃなく、苦しめるだけ苦しめて、
    最後は銃であっさり。
    要は、苦しむ顔が見たかった、
    そういうことなんじゃ…



    心の芯から最低な奴だな。






    人がいなくなってきた所で
    きょろきょろしていると、
    声がした。



    コノハ「カノ。マリーいたよ。

        見つかった、けど」



    いつの間に走ってきたのか、
    マリーをおぶった
    コノハ君が立っていた。
    最後に言葉を詰まらせ、
    視線を下げた。



    カノ「けど…?どうしたの」


    コノハ「マリー、目を開けない」




    カノ「気を失ってるだけだ…。
       心配ない、時間が経てば
       起きるだろうから」



    呼吸と脈を確かめて笑いかける。


    マリーが直接何を
    された訳じゃないけど、
    気を失うほどの何かが
    あったってこと。


    やっぱり、
    さっきの事件と関係ありそう。




    カノ「帰ろう。
       事件と関連あるとしても、
       マリーがこの状態じゃ
       話、聞けないでしょ」



    帰る気になれないとみえる
    コノハ君を覗き込む。



    カノ「誰かがマリーに
       何かしたんだと思ってる?」


    こくん、と頷くのを見て続ける。



    カノ「だったらなおさら。
       手がかりやらを探すにしても、
       明日、昼間のがいいよ」




    コノハ君は納得いかなかったらしい。

    それでも、僕が歩き出すと、
    その後をとぼとぼついてきた。
  78. 148 : : 2015/05/09(土) 13:23:49


    ガチャッ



    カノ「ただい…」


    モモ「マリーちゃんっ!」


    ドアを開けると同時に
    そう叫んだ如月ちゃんは
    コノハ君のもとに駆け寄るなり
    あたふたしている。



    モモ「コ、コノハさん、
    カノさん!、マリーちゃん、
    どうしちゃったんですか!?」


    カノ「えぇとまだよくわか…」


    モモ「息してる!?マリーちゃん!」


    泣きそうな如月ちゃんの
    肩に手を置く。


    カノ「如月ちゃん、マリーは大丈夫。
       だけど、気を失ってる。
       今は少し休ませないと」


    モモ「は、はい…」



    安心したのかふらりと崩れた
    彼女を、コノハ君が支える。



    カノ「二人とも、寝かせてあげて」





     *☆*───────────*☆*





    コノハ「よい、しょ」



    モモとマリーをベッドに
    寝かせ終えたコノハは、
    ふぅ、と息をついて、
    ベッドのふちに腰かけた。


    コノハ(疲れた…眠い。でも)



    彼の方に顔と体を向けた
    マリーが、ぴくっと動き、

    コノハの手を弱弱しく握る。



    それを見て、
    彼はくすっと笑った。
    しかし、彼は彼女の手を
    布団の上に戻した。


    コノハ「…ごめんね。今は、
        あの人の所へ行かなくちゃ」


    そう呟いて、
    彼は部屋をあとにした。

  79. 149 : : 2015/05/09(土) 13:32:59
    期待!
  80. 150 : : 2015/05/09(土) 16:20:24
    期待です。
  81. 151 : : 2015/05/12(火) 21:27:39
    >>149>>150ありがとうございます(o´∀`)ヾ
  82. 152 : : 2015/05/13(水) 18:22:46


    カノ「…というわけ。
       目を覚ましたら
       マリーに話を聞こうと思う」



    事件やらマリーの体調やらを
    説明すると、キドがうなった。


    キド「目が覚めても、話は
       聞けないんじゃないのか」


    モモ「私もそう思います」


    カノ「…なんで?」


    僕は首をひねる。


    シンタロー「気を失うほどの出来事が
          あったってことは、
          ショックも残ってるだろ?
          そのことを口にさせるなんて
          また思い出させて
          苦しい思いをさせちまうだろ。

          普通の奴でもキツイこと
          だろうに、マリーに
          そんなことを強いるか?」



    半ば飽きれたような
    そぶりを見せたものの
    シンタロー君が口にした。


    カノ「確かにそうだけど…」



    辛い思いをした。
    だからこそ、マリーから
    事情を聞いて、苦しみの元を
    解いてあげたいのに。


    キド「そう焦るな。
       聞くとしても、何も、
       今日じゃなくていいだろう」



    そう言われて、
    頭では納得したものの、
    僕はずっと考え込んでいた。
  83. 153 : : 2015/05/13(水) 18:45:05
    通常(マリーside)



    目を開けると、
    そこは私の部屋だった。

    ほっぺが冷たい。

    触ってみると、濡れていた。



    泣いてたのかな?


    目をこすりながら
    起きあがると、
    外はもう真っ暗だった。




    私は夢うつつのまま
    部屋を出、アジトを出た。



    マリー「コノハ、
        どこにいったんだろう」



    コノハなら、
    彼の場所を知ってる。

    私がふらふらしながら
    夜道を歩いていると、


    マリー「きゃっ!?」


    人とぶつかり、
    尻もちをついた。



    コノハ「…マリー?」



    探していた、この声は…







    ギュッ







    考えるより先にそうしていた。


    抱きつくと、優しい香りに
    包まれているような、
    心地よい感覚に襲われた。



    マリー「いきなりごめんなさい…。
        でも、こうしていないと、私…」


    コノハは黙って
    私の体を手で包む。


    マリー「…壊れちゃいそう」


    コノハ「僕はそばにいるから。

        マリー。クロハに、
        会いたいんでしょ?」


    静かな口調のコノハは、
    まるで心を覗いたよう。


    マリー「そう、そうな…」

    コノハ「だめ」



    思いもよらないコノハの
    遮りに、聞き返す。


    コノハ「駄目だよ、
        あの人には会わせられない」



    マリー「どうして…!?
        私、会いたいの、会わせて!」




    何回も頼み込んでも、
    コノハは首を振るだけだった。

  84. 157 : : 2015/05/14(木) 16:02:15



    マリー「おねが…い」



    声が枯れそうなほど懇願した。




    そしてついに、コノハが折れた。




    コノハ「わかった。


        ただ、
        行かなきゃ良かったって、
        絶対に思わない?」




    そんなことを言われる意味が
    わからないまま頷くと、

    コノハはいつかの
    ときのように、私に背中を向ける。



    コノハ「乗って。歩いてたら
        明日になっちゃう」






    コノハは高く高くジャンプした。



    風を切る音が聞こえる。


    久しぶりの体験は
    楽しくなかった。




    ―― クロハとだったから、
       楽しかったのかもしれない




    そんなことを考えた。










    その場所へつくのには、
    そんなに時間はかからなかった。




    暗闇に目を凝らす。
    クロハの居場所が見つけられない。




    コノハ「クロハ。
        お客さん、連れてきた」



    ドアがあるらしい
    部分にコノハが話しかける。





    コノハ「入っていいよ」


    小声でささやく
    コノハの顔がやけに硬い。



    マリー「う…ん」



    怖い。


    クロハが、どうして
    あんなことをしたのか
    わからない。


    怖い、けど、確かめたい。



    いや。
    確かめなきゃ。







    マリー「ぅ…なに、このにおい」




    入ったとたん、
    鼻をつくような
    とてつもない刺激。

    でも、
    それに嫌気が差す前に気づいた。




    部屋の窓から差し込む
    わずかな光が、その下で
    うずくまっている人を照らしている。


    紛れもない、あの人がいるのを。




    マリー「…っ!クロハ……!!」




    隣に座り込む。


    横に私がいるの、
    わかってる…?





    彼はピクリとも動かない。








    風が、サァァァッと木々の葉を
    揺らす音だけが響く。





    ――「寝ながら感じるなんて、
       女王って結構変態
       なんですね。」――




    あの無邪気にいたずらを
    していた時と変わらない
    ヘッドフォン。




    懐かしさに手が伸びた。

























    ドスッ










    衝撃と、鈍い音。







    出口のほうで
    コノハが叫んだのが、
    遠く聞こえた。




    コノハ「マリー!?」


  85. 158 : : 2015/05/18(月) 19:00:32


    なに…!?




    なにが、どうなっているんだろう。


    全然わからない。



    目の前に光がない。



    誰か…クロハが、
    前にいるの?



    闇に目が慣れてきた。



    それほどの時間が
    経っても何も起こらない。


    暗闇の中に目を凝らす。
    すぐ隣に、クロハの横顔。


    左には、彼の手と、
    握られた短刀が
    マリーの間近の壁に、
    深々と突き刺さっていた。



    さっきの鈍い音は、これ……!?




    何がなんだか、
    わけがわからない。


    そう思っていると、
    彼が繰り返し何かを
    呟いているのが
    耳元で聞こえた。



    クロハ「…たく……い…」




    しばしの沈黙。



    コノハが何かを
    いいかけようとした時。




    クロハ「…あああぁぁぁ!!!」



    クロハが私めがけて
    短刀を振り下ろしてきた。


    私は反射的に走って
    部屋の隅に逃げる。




    ザクッ



    また壁に刺さったらしい。
    クロハは荒い息…


    苦しいの、かな。



    考え事をしていられたのも
    つかの間。
    彼は叫びながら何度も
    私に短刀を向けてくる。


    マリー「クロ…ハ…っ。
        どう、し…たの…っ!!?」


    興奮しているクロハの
    攻撃をよけるのは
    そう難しくなかった。



    後ろ向きで逃げ続けていると、
    靴の後ろ側に物が当たる。




    マリー「これ、は」




    口から血をたらし、
    頭の半分が腐りかけた
    子供の死体が、
    そこにはあった。



    クロハ「わあああぁぁあ…ッ」



    耳をつんざくその声に
    はっとするも、
    よけるにはもう遅すぎた。











    もう、だめ…










    目をつぶった。


  86. 159 : : 2015/05/19(火) 18:32:29


    頭の中で声が響いた。


    …リー、…マ…



    コノハ「マリー!」



    マリー「!」



    コノハ「…どうしたの…?」


    コノハが心配そうに
    覗き込んできた。


    マリー「私、何を…」


    コノハ「ずっとうーんうーんって
        苦しそうだったよ?」



    だんだんと、視界がよくなってくる。



    ここ…私の部屋。
    夢を見てた…?


    マリー「コノハ。クロハは?」



    コノハは言いにくそうに
    したあと言った。



    コノハ「今、あの人には
        会わないほうがいいよ。

        きっと、マリーが悲しむ」



    さっきと同じ台詞…
    さっきの出来事は、

    本当はなかったの?



    コノハ「わ、だめだよ
        まだ立っちゃ…」


    立つと、コノハが
    引き止めてようとする。


    マリー「ちょっと、外に行くだけ」



    そういって外に出た。


    夢の中のあの道を、
    はっきりと覚えている。


    それを頼りに進んで行くと、
    夢と同じ家。



    呼びかけもせずに
    中に入った。
  87. 160 : : 2015/05/22(金) 18:31:26




    クロハ「女王…」




    名前を呼んでくれるその声を、
    久しぶりに聞いた気がする。



    マリー「…!
        どこ、どこにいるの?」



    手探りでその人を探していると、
    後ろから体を包まれる。








    ギュッ







    クロハは私を自分に
    きつく抱き寄せると囁く。



    クロハ「会いたかったです。」




    マリー「私も……ん…」




    後ろを振り向くと
    キスをしてくる。



    チュッ、という
    リップ音が部屋に響く。


    最初は軽く何度も。


    それはだんだん激しく
    なっていき、
    クロハは理性を失ったかのように
    私の口内を犯していく。




    ガサ…


    彼が左手を動かしたので
    身をよじると、
    動くなといわんばかりに
    ディープキスをされた。


    薄暗く照らされている
    クロハの顔はとても色っぽく見えた。



    マリー「ん、んん…っ」



    左手は下半身に移動していく。
    胸の脇からお腹…


    止まらずに下げていくので
    思わず右手で制す。




    クロハはキスをしている
    ままにも関わらず、
    私の両手を片手でまとめ、
    押さえつけてしまった。




    口を離され、
    ひとまず息をつこうとすると、





    マリー「ゃ…!?」



    大きな手がスカートを
    まくりあげ太ももをなでる。





    背筋がぞくぞくする。



    くすぐったいっ。






    力が抜け…ちゃ……



    私がへなへな崩れると、
    彼は背中を支えて、
    壁際に自分があぐらをかく。

    その上に私は乗せられた。





    クスクス笑う声が耳元で聞こえる。


    クロハ「もうお疲れに
        なったんですか?」


    いいながらまた太ももをなでる。



    マリー「くすぐったいだけ…」



    しどろもどろに言い返すと、
    彼がニヤりと笑う気配。



    クロハ「夜はまだまだ、
        これからですよ、女王。
        たっぷり遊んで
        あげますから、ご覚悟を。」


  88. 161 : : 2015/05/25(月) 18:28:53


    クロハ「足、開いて。」



    いやいやと首を振る。



    クロハ「…そうですか。」



    ぐい、と、無理矢理足を開かされる。



    マリー「や、いや…!」



    私が止めるのも聞かずに、
    クロハはスカートをあげる。



    マリー「恥ずかしいよ…」



    手で足の付け根を隠しても、
    構わず手が伸ばされどかされてしまう。





    クロハ、こんなに強引だった……?





    マリー「ひぁっ!?///」



    白い指がなでた場所に
    体がはねる。



    クロハ「もうこんなに濡らして…
        本当に嫌なんですか?」



    う…



    確かに、下着越しでも
    わかるほどに濡れている。



    否定が出来ない。


    でも、いつものクロハじゃないことが堪らなく嫌だった。




    マリー「クロハ…ほんとに、クロハ?」



    クロハ「…そうですけど?」



    不満げな声がやけに冷たく聞こえる。


    彼の指が早く動いて、
    甘い声が漏れた。



    マリー「あっ…ん…
        私は話を…ぁっ、
        聞きに来た…、だけ、なの。
        だからやめ…て…んんっ!!」



    中に指が入ってきて
    大きい喘ぎ声が響く。


    こんな声出したくない。



    クロハは好き。



    でも、でも。




    ここにいるのは、クロハじゃない…!!


    マリー「クロ…ハ…んぁ…//」



    クロハは質問には答えない。
    指で私を狂わせるだけ。




    びしょびしょになった中は
    動かされるたび、
    クチュクチュという音を出す。



    クロハ「厭らしい音…体は
        こんなに喜んでますよ?」




    こんなことをしてほしくて
    来たわけじゃない。


    私はただ、クロハに会いたかった
    だけなのに…



    マリー「ん…ふ……っあぁんっ//」




    快感を与えられ続けて、
    考え事をしている余裕も
    なくなってきた。
  89. 162 : : 2015/05/26(火) 18:24:20
    カノside


    カノ「起きたかなぁ…」



    話を聞きたい。


    その思いを抑え切れず、
    僕はついにマリーの部屋を覗く。







    カノ「なんで…
       マリー、どこ行ったの…!?」



    ベッドは空っぽ。


    僕らはずっとアジトにいた。



    マリーがリビングに
    来たなら必ず気づく。




    モモ「マリーちゃん
       まだ起きません…」


    如月ちゃんが起きてきたときは
    マリーがいたって…。



    カノ「まさか…外に?」



    …そんなはずないか。
    こんなに暗い中どっかに
    行くなんて考える方がおかしい。




    でもなんだろう?
    この嫌な感じは。


    マリーに何か起きている気がする。







    ガチャ。



    誰か帰ってきた!?






    セトside


    セト「気絶、か」



    何かあったんだろうか。




    何かって…



    セト「クロハっすかね?」



    呟いてからぶんぶん首を振る。





    クロハのことは
    あまり好かないっすけど…

    それだけで勝手にクロハを
    関連づけるなんて最低だ。




    自分に嫌気がさす。

    髪を両手で掻き毟った。



    セト「はぁ…何があったんだか…」



    アジトにつき、ドアを開けた。







    ドンッ




    セト「う!?」



    カノが突進してきて、
    俺もカノも尻餅をつく。



    セト「いてて…」


    カノ「セト!マリーは!?どこ?」



    聞いてきた
    カノの額に浮かぶ汗。



    セト「?
       寝てるんすよね?どこも
       何もないじゃないっすか。」



    そう苦笑するとカノは更に慌てる。




    カノ「まずい…探さなきゃ。
       どこかで泣いてるかも…」



    事情を察した俺はうろたえる。




    セト「やっぱり…クロハなんすか?」

  90. 163 : : 2015/05/30(土) 19:00:33
    カノside


    カノ「え…?クロハが、どうかしたの?」



    セト「あ、あぁ、いや…
       クロハ見てないなぁ、
       と思ったんすよ」


    カノ「そういえば…そうだね…」





    ますます、
    嫌な予感しかしない。


    マリーは前、
    「クロハにキスをされた」
    って悩んでた…。



    カノ「セト。
       マリーを探しに行こう。」



    セトに向き直って言う。


    セト「俺もそうしたいっすけど、
       こんな暗くて、どうやって
       見つけ出すつもりっすか…?」



    なんとなく乗り気じゃない。

    なんで?
    セトはマリーが好きじゃないの?



    カノ「マリーのこと、
       嫌いになった?」



    …僕はつい、そう口にした。



    「そんなことないっすよ!」
    と期待していた答えは
    返ってこなかった。



    セト「嫌いになんて…
       なってないっすよ。
       好きで堪らないっす。
       でも…」





    カノ「あ…っ!?」



    言葉をさえぎって
    声を上げてしまった。



    セトも目を丸くしている。
    だって僕らの視線の先には、



































    クロハを背負った
    マリーの姿があったからだ。
  91. 164 : : 2015/05/31(日) 18:42:10

    クロハside



    クロハ「んん…う……ぅ」


    蛇「クロハ様、クロハ様」



    クロハ「…!? はぁ、はぁ…」


    蛇「うなされてましたよ。
      最近多いじゃないですか…
      大丈夫なんですか?」



    声に跳ね起きた俺に
    蛇がそう問う。


    今まで、寝てたのか?
    じゃあ今のは…夢なのか?



    クロハ「いつも見るのとは
        違った…」


    蛇「いつも同じ夢を?
      今日はどんな夢で?」


    クロハ「女王が
        コノハの奴につれられて
        ここに来て…」



    "女王"と聞いて蛇は顔を
    曇らせた(ように見えた)。




    クロハ「俺が殺そうとしてた。
        女王を、女王を…」



    これ以上言葉が出ない。


    そんな俺を見て蛇は
    ぽつりと言った。






    蛇「あの方のことは
      忘れるべきです。」



    小さいが、その声は
    強く耳についた。




    クロハ「なんでだよ?」


    蛇「あの方に何を
      求めているんです?
      あなたはあの方に
      苦しめられているんですよ?」



    肩が震えるのを感じた。



    蛇「あの方さえ忘れてし…」




    クロハ「うるせえよ!」



    自分で気づかぬうち、
    大声を上げていた。



    クロハ「女王を悪く言うな」



    見開かれた丸い瞳が
    俺の目を見つめる。



    蛇「ですが…」



    クロハ「悪いのは俺だけだ。
        俺が消えればいい話。

        いつまでも在り続ける
        俺が間違ってんだよ」



    蛇「そんなことは……」










    そのとき、ドアが開いた。


    ガチャッ。



    蛇「!?」


    クロハ「んな…!?」

  92. 167 : : 2015/06/03(水) 18:25:42

    蛇side(?)



    蛇(誰だろう?
      コノハ様かな?)




    反応を見ようと、
    クロハに顔を向けると、

    一筋の汗が横顔にある。



    蛇(あぁ、コノハ様ではないな)



    普通じゃないその顔に蛇は悟る。







    クロハ「女王?」



    蛇(!?)




    クロハは自分に
    言い聞かせるよう、小さく小さく呟いた。



    蛇(え…
      女王はこの場所を
      知らないはず…)



    クロハ「女王…」




    確信を持った声の
    すぐあとに別の声が続いた。


    マリー「…!
        どこ、どこにいるの?」




    クロハはマリーを後ろから
    抱き寄せた。




    蛇(!
      本当に女王なのか…!)



    クロハ「会いたかったです。」







    いきなり抱きつくなんて、
    と蛇は思った。




    蛇(クロハ様、
      今日は様子が違う。


      声にも感情が
      ないように聞こえる。)



    マリー「私も…ん…」


    クロハキスをし始めた
    と同時に、蛇は思いつく。





    蛇(はっ。

      もしかして、今日、
      やめるつもりなのだろうか。


      止めるべき……?
      いや、でも。






      折角、やっと、
      決断してくれたんだ。
      止めなくていいか。)









    何かを決した蛇は、
    一言も発さなかった。





    そう、何一つ止めなかった。



    マリーが乱れて行く様も、
    その後予想していた、
    クロハの告白も。





    そして、彼の決断も。






    蛇は止めずに、
    ただ、黙って見ていた。




    蛇(…私の思考も
      途切れるのだろう)



    そんなことを考えながら。

  93. 168 : : 2015/06/06(土) 17:47:48

    セトside




    カノ「マリー、どうし…」


    セト「…マリー!」




    気づいたら、カノを
    押しのけて駆け寄っていた。



    マリー「助けて…
        クロハが…死んじゃ…う」




    マリーは息絶え絶え。
    今にも倒れそうだった。






    そして背中に、
    べったりと血がついていた。





    セト「…っ!
       何があったかは
       後でいいっすから!
       早く中に!」



    カノ「クロハがけ、怪我…?
       どどどうしよう…っ?」



    カノはおろおろしている。
    欺くのも忘れたらしい。




    セト「カノ!マリーを
       連れて行ってくださいっす!
       クロハは俺が!」



    カノの目がいくらかしゃんとした。



    カノ「う、うん。
       マリー、中に行こう
       クロハはセトに任せて」



    マリー「…なんで、なん…で…」



    マリーはクロハのそばから離れない。



    セト「マリー。」



    そう呼びかけても、
    顔もあげないで呟き続ける。




    大粒の涙が地面へ途切れることなく落ちていく。











    セト「マリー…は、
       クロハが好きなんすよね。」



    彼女は濡れた顔をあげた。






    セト「クロハも、マリーのこと、
       大好きなんすよね。
       俺知ってたっすよ!」





    『泣かないで、セト?』



    俺が泣いてるとき、
    そう涙をぬぐってくれた君は
    もういないんすよね。


    君は、マリーは、
    クロハが好きなんだよね。




    だから泣かない。

    泣いてはいけない。



    精一杯の笑顔をつくってそう言った。






    マリー「セ…」




    まん丸に開かれた瞳に見向きもせず、
    俺はクロハを担ぎ上げ、

    病院を目指し駆け出した。




    マリーが俺のことを
    好きじゃなくても、
    俺はマリーを守り続ける。


    彼女を泣かせるものは
    一つでも残さない。




    だからクロハにも、
    元気でいてもらわないと困るっす。
  94. 171 : : 2015/06/07(日) 17:31:37


    生暖かい液が
    背中に染み込んでくる。





    やばい。


    さすがに素人でもわかる。





    この血の量は単なる
    "怪我"じゃ終わらない。





    セト「クロハ、頑張るっす…!」



    弱い息が耳元で聞こえる。




    セト「マリーを泣かせたり
       したら許さないっすからね!」




    何分走ったか、
    やっと病院にたどり着いた。




    ------------

    診療時間
    午前8:00~午後10:30まで

    ------------



    看護師が中から
    歩いてきて自動ドアが開く。



    「すみません、
     今日の診療はもう終わ…」


    セト「緊急なんす!早くしないと
       間に合わないっす…!!」




    看護師はクロハを見、目の色を変えた。



    看護師「野田さん、境谷さん!
        この方を緊急処置室へ!」






    バタバタッ



    看護師二人が機械と
    ベッドを運んできた。


    クロハは素早く寝かせられ、
    ベッドは処置室に向かっていく。





    足が動かずに、
    俺は呆然とその光景を見ていた。




    看護師「聞こえますか!?
        病院ですからね…!」


    クロハ「がはっ…」





    何か言おうとしたのか、
    クロハが多量の血を
    吐くのが、遠くに見える。







    あんな状態で…助かるんすか……?



    今から対応しても無駄なんじゃ…?



    もう、クロハは ――








    作業着の背に染み込んだ
    血が数滴、廊下に垂れた。



  95. 172 : : 2015/06/12(金) 18:56:15



     *☆*───────────*☆*






    医者「心臓の血管が一部
       切れていて、自力での
       呼吸が難しくなっています。」




    ここは、クロハがいる部屋の隣。



    まだ到着しないキドたちに
    代わって、担当医に
    説明を受けていた。





    医者「手術をすればなんとか。
       なくなってしまった血管を、
       人工の血管で補うんです」



    そこまで言って、
    医者は言葉を止めてしまった。



    セト「成功率が低いんですか?」






    医者は、意外にも首を振った。





    医者「手術の失敗はほとんどない。
       問題は、その後なんですよ」



    セト「手術後…?
       どういう事ですか」





    医者「新しい血管を体が受け入れない、
       という場合がありまして…。
       そういう場合は ―― 」





    *☆*───────────*☆*






    キド「セト。」



    キドの声が聞こえても、
    返事をする気になれない。




    「クロハ君、どうしたの?」



    言いにくそうに問いを
    投げた声の主を見る。



    セト「…カノ。キド。」



    説明する前に、
    クロハのところへ連れて行こう。









    ― ピッ ― ピッ ― ピッ ―



    機械音が響き渡っているだけの部屋。
    酸素マスクをつけた
    クロハが横たわっている。




    キド「…手はあるのか?」


    セト「成功率は高いし、
       後遺症も残らない手術が、
       あるにはあるっす。」




    カノ「じゃあそれを…」



    セト「一生植物状態もあり得るんす。」




      ―――――――――



    医者「人工血管を体が
       受け付けなかった場合に、
       私たちにできることは…
       呼吸を酸素マスクで
       つなぐだけです」


      ―――――――――





    キド「そんな…」


    二人は、
    そう告げられたときの
    俺と同じ顔をした。



    セト「最悪な状態を覚悟しても
       今と変わらないっす…

       手術、受けてもらおうっす」







    多分、マリーもそれを望んでる。


  96. 173 : : 2015/06/12(金) 19:00:35


    セト「?」



    …肩を叩かれた気が…?

    見上げてもカノとキドしかいない。




    シンタロー「こっちだこっち。」



    セト「シンタローさん…!
       って、なんでそんなに
       汗かいてるんすか?」


    シンタロー「ん、ん?これは
          そのだな…」


    なんだろう、と思っていると、
    カノが吹き出した。



    カノ「ぶふっww
       セトー、シンタロー君は
       ここまでくるの大変なんだよw」


       受付の人と話すのに
       体力が…ねww」



    シンタロー「ばッ…カノお前っ!?
          そんなんじゃねえし…」




    けらけら笑うカノの
    横顔には暗いものがあった。


    やっぱりみんな、
    クロハが心配なんすよね…




    シンタロー「で。手術するなら
          早く言って来い。」



    カノ「僕が言ってくるよ…」



    シンタロー「セトはとりあえず着替えろ。
          そのままはまずい」





    渡された服に着替え終え、
    作業着を持った手を見ると、
    赤くなっている。




    セト「すごい量っす…。
       シンタローさん。」



    すがるように
    シンタローさんを見つめる。



    シンタロー「マリーん所はモモがいる。
          手術のことを伝えるかは、
          お前次第だな…。


          クロハの所に連れてってくれるか?
          容態が見たい。」


  97. 176 : : 2015/06/19(金) 21:13:50

    シンタローside



    病室の椅子に
    座るとセトは隣に
    もたれかかるように座った。


    セト「ん…」


    クロハはマリーと仲良かったし、
    色々複雑に思ってんだろう。


    疲れてんだよな…。





    シンタロー「怪我、自分でやったらしいぞ。
          マリーが呟いてる」



    セト「あ…あんなのを自分で!?
       まさか、あり得ないっす…」



    セトの作業着の血。
    出血場所は左胸で、あの量。



    シンタロー「切る場所方法に
          よれば充分あり得る話だ。
          それを見るに
          切れたのは心臓の血管だな?」


    セト「そうっす、けど…」



    静かな沈黙。
    喉にコーラをやけくそに流し込んだ。




    ―― 自殺を図った



    なんて言わなくても、
    こいつだって気づいてるはず。


    シンタロー「なぁ、セト」




    横を見ると、
    セトが静かに寝息を立てている。



    シンタロー「ふ、
          どうりで重いわけだ。」



    体にも相当来てたんだな。
    起こすのはかわいそうか…





    セトを椅子に寝かせ、
    部屋を出ようとしたときだった。






    ササ…



    シンタロー「!」



    むくりと起き上がった影。
    クロハじゃないな。



    蛇「…あなたは
      『焼き付ける』、か?」


    蛇の赤い目が俺を見据えてくる。



    シンタロー「ひ…!?
          しゃ、しゃべ…った」


    蛇「…。
      時間がないのでこんなことで
      驚かれていると困るのですが…」




    ガララッ。



    モモ「ほら、マリーちゃん…。」


    蛇「女王!!
      よかった、お話が。」



    マリー「へび、さん…?」



    意識がないような状態のまま、
    マリーは病室内に足を踏み入れる。


    シンタロー「大丈夫か…」



    手を差し出しても見向きもしない。


    マリーはベッドの蛇に
    すがりつくように話しかける。




    マリー「クロハ、死んでないよね、
        またお話できるよね?」




    シンタロー「…」





    そんな光景を
    見続けることなどできず、
    いたたまれなくなった
    俺は病室を後にした。






  98. 182 : : 2015/06/20(土) 18:00:55


    蛇side



    蛇「クロハ様があなたを
      導いたの、覚えてますよね?
      この人、
      そういうの一番苦手なのに。
      でも無意識に女王を
      呼んでいたんでしょう」




    マリー「みちびく?
        なんの、こと…?」



    蛇「夢ですよ。
      あなたがクロハ様の所に
      やってくる夢を見ましたよね?」



    あれは、クロハが見せた夢…なの?



    蛇「だから隠れ家まで
      来れたのでしょう?」



    シュルシュル…


    そういわれ頷くと、蛇さんは
    私の頭の周りに巻きついた。










    何をしたいんだろう?




    思っているうち、
    愛しい声が頭の中に響いた。





    同時に、意識を遠いどこかに
    飛ばされる感覚におちいった。


  99. 185 : : 2015/06/24(水) 18:25:42




      ――――――――――







    ガチャ、バタン。






    アジトのドアの開閉音とともに、
    意識がだんだんとはっきりしてくる。



    今私の意識がいるのは過去だ。

    直感っていうのかな?
    体がそう感じてる。










    部屋のドアの開く音がして、
    目を開けようとする。







    あ、開かない…?





    そう思っているうち、誰かの足音が
    部屋の中に入ってくる。


    ギシ、とベッドの軋む音。







    クロハ「起きてませんよね?」




    顔を覗きこまれる気配と、
    クロハの声がする。



    元気なクロハの姿を見たい。

    なんで、とか、今、ここはどこ、とか、
    聞きたいこともたくさんある。




    なのに声も出ない。




    クロハ「…熟睡か。
        この時間じゃ当たり前か」


    ふぅ、と息をついた音がした。



    今は夜で、
    …私は寝てるの?



    クロハ「しっかし、
        相変わらず無防備な奴」


        俺が…人殺してるって言ったら、
        近づきもしねえんだろうな」












    そう言われたことに驚きはしたけど、
    そのことは知ってた。


    おじさんを銃で撃ったのは、

    人を殺したのは、



    クロハなんだという事実を
    私はこの目で見ている。




    クロハ「貴方は繰り返す運命の中で
        俺が改心したと、
        ずっと思っているのだから。」





    そこでまた、意識をとばされる
    感覚に包まれた。








    次、私が見たのは、クロハの視線の世界だった。

  100. 191 : : 2015/07/05(日) 20:22:09


    クロハside(をマリーが体感している状態)







      ――――――――――




    自分は、



    アザミ「願いが叶えられると消える」


    クロハ「…んな馬鹿な…」



    そう告げられて、正直絶望し、
    女王に何度も悲劇を繰り返させた。









    クロハ(そろそろ、この悲劇にも嫌気がさしてきたな
        でも俺は……消えるなんて御免だ)



    日々に退屈を感じ始たある日、
    俺自身とその他の人間に、
    俺の存在を欲する者がいれば消えないのだと知った。




    クロハ(なら、俺が「在ってほしい」と
        願う奴を、つくらねえと)




    いつも俺が惨殺しているメカクシ団とやらなら、
    下らない愛を芽生えさせるだろうか。










    クロハ「ここか…」



    思い立ってアジトに行くと、女王が花に水をやっていた。



    クロハ「女王」



    振り返った女王が、


    マリー「黒ずくめの怖い人がいる!」



    と叫んで顔を合わせたのが、
    殺意を持たずに会った、初めての時だった。

  101. 195 : : 2015/07/12(日) 20:51:07

    キド「お前も今日から
       メカクシ団の一員だ。よろしくな。



    そう歓迎されてからも、人間に関心が持てず、
    これから先への不安と
    憂鬱感に迫られる日々が続いた。




    クロハ「…チッ」


    通りすがり、テーブルの足を蹴る。


    何に対してもイライラする。




    クロハ(このままじゃいずれ……
        どうしたらいいんだよ…)






    クロハ「はぁ…」





    ソファにもたれかかって目をつぶる。

    そっとしているつもりなのか、
    忍び足で近づいてくる
    女王の気配は無視して。





    マリー「…あ……っ!!」



    ドゴッ



    何かがぶつかる音。
    後ろからソファに激突したらしく、
    背中にも衝撃が伝わる。










    ―― バシャッ




    クロハ「 ―― っ!!?!?」




    とてつもなく熱い液体が、
    頭から降り注いできた。





    マリー「きゃぁ…!?へ、蛇さん、
        じゃなくって、えっと、
        く、クロハ…だ、大丈夫…!?
        紅茶、熱いのかかっちゃった…!!」




    クロハ(この状況で、大丈夫?かよ…)



    芯から飽きれたが、口には出さない。




    クロハ「…特に怪我もしてないし大した事は…」


    マリー「あ、ここ、やけどしてるよ!
        ほっといたら…!」



    俺の手をとってまじまじ見つめる女王。


    クロハ「単に熱持ってるだけですので」


    マリー「ダメ!痕になっちゃうもん」


    クロハ「いや…」


    マリー「ね、少しでいいから水で冷やそう?」



    クロハ(なんなんだこの人は)




    自分の中で何かがふつふつと沸き始める。



    こんな小さなことでさえも、
    相手が悪くないとわかっていても、
    無性に腹が立つ。





    マリー「ほら、こっち」





    洗面所に連れて行こうと引かれた手を
    振り払って女王を睨む。



    クロハ「放せよ。
        怪我なんかしてねえっつってんだろ」




    女王が、びくっと震えた。




    クロハ(…怖がってる)



    そうわかっても口は止まらない。




    クロハ「なぜ俺に構う」




    クロハ「俺は価値すらない屑だ。
        だから ―――― 」





    消えるんだろ。 使い終わったら、不要になったら。


    どうせそんな存在なんだろう。





    そう思うと、憎くて堪らない。



    何をしなくともずっと
    生き続けられるこいつらが憎くて、憎くて、














    羨ましくて。


  102. 200 : : 2015/07/22(水) 09:55:59






    何故だろう。


    視界がぼやける。






    クロハ「…放っておいてくれ」





    外に出よう。
    こいつに、こいつらに、
    こんな姿を見られてたまるか。


    そう、足を踏み出したときだった。





    マリー「そんなこと」







    思いもしない大声に、体が止まる。




    マリー「あるわけないよ」




    立ち去りたい。

    なのに、体がいう事を聞かない。




    早く、早く動け。

    女王の考えを聞いたって意味なんかない。



    人間と干渉も出来ない俺は、
    消えるしかないんだ。





    早く立ち去れ、動いてくれ…





    マリー「クロハは確かに、ちょっと怖いし、
        あんまり喋らないよね。
        
        でも私にだって、
        クロハのいいところ、たくさん見つけられるよ」



    クロハ「でたらめばっかり言ってんじゃ…」




    マリー「でたらめなんかじゃない!」




    思わず、振り返る。



    今にもこぼれそうな程に
    涙をためている女王と目が合う。



    マリー「だから、一人で泣かないで」



    ただでさえぼやけた視界が、
    水にもぐったように揺らめく。







    歩み寄ってきた女王が、
    冷たいものが伝った俺の頬をぬぐった。





    マリー「ねっ?」





    そういって微笑む女王に、
    俺は不覚にも、どきりとしてしまった。

  103. 201 : : 2015/07/23(木) 11:15:28
    マリーside


    ――――――――――――――――



    ――――――――――――


    ―――――― ――



    そこで、流れきていた
    クロハの思考は途切れた。




    どことも知れぬ真っ白な空間に、
    私は一人、呆然と取り残されていた。



    マリー「クロハが、私をすき」


    私気づいたたよ。
    最近だけど、わかってたよ。
    気づくの遅すぎたかな?



    だけど、
    クロハは、この気持ちだけを伝えたかったの?

    だったらどうして、
    自分から死のうとなんてしたの?



    マリー「ねぇ、どうして…?」



    教えてよ。


    今すぐ出てきて答えてよ。






    マリー「クロハ……クロハぁ…!」



    涙が溢れる。



    いつもそばにいたはずなのに。


    いつも近くにいたはずなのに。

    いつの間にか、会えなくなるほど遠くに行ってしまったの?




    涙が止まらない。
























    コツン ――…




    マリー「っ!?」





    目の前から、誰か来る。

    霧が晴れていくみたいに姿を現したのは



    やっぱり


    あの人だ。






    「お会いできてよかった」

  104. 202 : : 2015/07/25(土) 11:16:44

    悲しそうに微笑んだクロハは私を見つめた。
    今にもどこかに消えてしまいそうで、
    怖くなって彼の手を握る。


    その予感は、多分現実になる。
    ここは単なる空想世界だから、元気だけど、
    現実のクロハは……




    マリー「行っちゃうんだよね…?
        …行かないで」



    クロハは顔を歪ませて口をつぐむ。



    クロハ「俺は誰にも願われていませんから。
        自殺していなくても
        いずれ消えてました。」


    マリー「うそ…
        私はクロハのこと好きだったのに…」



    クロハ「女王は、「消えないで」なんて
        思わなかったでしょう?
        それじゃ意味がない。
     
        言いだせなかった俺の自業自得ですよ」




    自嘲ぎみに笑ったクロハは、
    私の頬を指でなでた。



    クロハ「泣かせてしまいましたか?」


    マリー「ひっ、ぐす……ぅ…
        ごめん…ひっく…」



    クロハ「…?何がです…か」


    きょとん、とした顔を見せた彼。
    たまらなくなって、抱き寄せた。






    ギュッ







    クロハ「ん……女王?」




    一人で苦しんでるのに気づけなかった。
    なにもしてあげられなかった。


    私がもっと早く気づいていれば、
    クロハは消えなくてすんだのに。


    ばか、ばか、
    私のばか…






    マリー「ごめん、私なにも…」


    クロハ「気にしないでください」



    体を離してうつむくと、
    クロハが小さく笑って、私の頭に手を乗せる。



    クロハ「俺は女王が生きていてくだされば
        それで良いのです」



    そういってくしゃくしゃっと、私をなでた。


    マリー「クロハ……」




    しばらく顔を見合わせていると、


    クロハからどんどん、笑みが消えていって、
    苦しそうにうめき出す。




    マリー「く、クロハ…っ!?」



    クロハ「ぐ…っ、あ゛…」







    何分ほどかもがきうめいたあと、
    ようやく落ち着いたクロハは呟く。




    クロハ「もう時間…が」



    マリー「じかん…?」



    彼は熱い息を吐き、
    呼吸を整えながら言う。



    クロハ「貴方もわかっているでしょう。
        俺の体はもうすぐ死ぬと。
        限界なんです」


    本人の口からは聞きたくなかった言葉。
    私は口をあけたまま、声が出てこない。



    クロハ「もう、貴方とはお別れですね」


    マリー「……!」



    何もできない私、
    背を向け、遠ざかっていく背中。



    コツン、コツン。



    聞きなれたブーツの音が響き渡る。







    …このまま行ってしまうの?


    消えたくないと思ったまま、
    消えちゃうの?



    そんなのおかしいよ。


    ねぇ、私が願うよ。


    「消えないで」って願うから。




    それじゃ遅いって、あなたはいうけど、
    絶対に、願う。






    マリー「消えないで!!クロハ!!」

  105. 203 : : 2015/07/25(土) 11:23:51


    耳元で声が聞こえた。
    白い光に体が包まれる。




    「女王」





    暖かい、彼の感触にはっとする。




    「俺は、近くにいますよ。
     ずっとずっと、あなたの中に。」



    何かいわなきゃ。

    彼が行ってしまう。


    遠い何処かへ消えてしまう。




    その前に、何か ――― ……





    「さようなら…」



    泣きたくなるのを抑えて、
    やっとのことで、搾り出した言葉。







    「さようなら、愛しい女王」





    そんなことをいわれたら…


    私の目から大粒の涙が零れ落ちる。









    くす、と笑い声が聞こえた。



    「もう、泣かないでください」





    涙を流しながら笑ったクロハが
    一瞬、浮かんだ気がした。
  106. 208 : : 2015/07/28(火) 13:58:38














  107. 209 : : 2015/07/28(火) 13:58:45













  108. 210 : : 2015/07/28(火) 14:06:38




    ―― ピ ――――――――――――……










    セト「!」


    シンタロー「…!」




    病室の前にいるシンタロー、
    クロハの前にいたセト、
    二人は同時に顔を上げた。








    シンタローの掛ける椅子をめがけて、
    カノとキドがスリッパの音を
    鳴らしながら駆け寄ってくる。




    カノ「手術受けられる…って…」



    カノは音に気づき、足を止める。
    様子は、と口を開きかけたキドも、動きを止めた。


    シンタローは二人を見、
    ぼそりと言った。



    シンタロー「クロハと…セトと、
          二人にしてやってくれ」



    キド「…わかった」




    小さく声を出したキドは、
    壁際でうずくまる。



    その隣で、カノは長いため息をついて
    壁によりかかった。




    カノ(クロハ君は、何を思って
       生きてたんだろう?
       僕は、僕たちは、
       クロハ君の何を知ってるんだろう…)





    長い沈黙。



    冷たい電子音は、彼の死を告げていた。

  109. 214 : : 2015/08/03(月) 22:34:51

    カノside




    キド「なぁカノ」


    カノ「ん、なに?」


    キド「皆…クロハのこと
       全然知らないよな。
       知ろうとしないまま…」



    最後になるにつれ震えていく声。
    僕も隣に座った。




    キド「…自殺なんて。
       死んじゃったら、
       何に苦しんでたかも
       わからないじゃないか…」



    すすり泣き始めたキドの肩を軽く抱く。



    カノ「キド…」




    なんて言ったらいいんだろ?


    確かに、
    クロハ君のことを知っていたら、
    こんなことにならなかった。




    でももう、
    いないんだよ…?



    どうしようもないじゃん…。

    どうしたって、
    クロハ君は帰ってこない。






    「死んでないよ」





    聞き慣れた声を見上げると、
    その人は微笑んだ。






    コノハ「クロハはまだ、生きてる」






    *☆*───────────*☆*






    マリーside




    マリー「うぅ……!」




    目の前に蛇さん。


    びっくりして思わずのけぞるけど、
    蛇さんは動かない。




    マリー「あ…」


    そうだ。
    蛇さんが動くはずない。


    だって…



    マリー「クロハ、死んじゃったもんね……」



    セト「マリー?」



    優しい気配に振り返る。



    マリー「セ…」






    ギュッ






    マリー「! セ、ト、?」








    顔をあげたくても、
    セトの大きな腕が背中に回されている。


    身動きがとれない。




    …どうして…?



    セト「泣かないでっす」



    マリー「え?泣いてないよ…?」




    大きな手が頭を後ろからなでる。




    マリー「セト。
        私、泣いてなんかない…。」



    セトは返事をせず、
    私をきつく抱きしめる。




    セト「マリー。
       全部話して」




    セトに体を離されて、
    顔に手をやると、涙で濡れている。
    泣いてたんだ…。



    それより…


    マリー「ぜ、全部…って…?」



    セト「何か知ってるっすよね?
       クロハがどうして
       メカクシ団に来て、
       どうして死んだり
       なんてしたのかも。」



    マリー「それは…」




    セト「俺、クロハに
       言えなかったっすけど、
       クロハにマリーを
       守って欲しかったんす。」



    セトは小さく震えた。




    セト「俺、クロハに、
       生きててほしかったっす」




















    ―― その瞬間、クロハの
       ある一言がよみがえった。






    一人クロハに会いに行ったとき、
    クロハは私に、色々なことを話してた。



    あまりにも非現実で、

    信じられなくて、
    信じたくなくて、
    私はその日の夜のことを
    記憶からなくしていた。




    あの日クロハが話してくれたのは、
    これから死のうとすること、
    その理由。
    そして、




    自分が死んだ後のこと ―――






    マリー「セト……!



        クロハはまだ、
        生きてる…!!」 
  110. 217 : : 2015/08/11(火) 21:21:51


    セト「…え……っ?」



    セトの目が大きく開かれる。





    そうだ…



      ――――――――


    クロハ「自殺して、体が死んでも、
        体が限界になって、
        消える手前になっているだけ。
        しばらくは消えません。

        意識が主の元に向かって、
        一定時間が過ぎると…」



    マリー「と…?」



    クロハ「完全に消滅です。
        こう、パッと」



    閉じた片手をぱっと開いて、
    クロハは言う。



    クロハ「俺は女王の元にいたい。
        消えたく…ないです」



    顔を背けたクロハ。



    マリー「一緒に…いられないの?」



    クロハ「方法があるにはありますが…」



    マリー「な、なにっ!?」





    身を乗り出した私を
    見て、クロハは首を振った。




    クロハ「いや…やめましょう。
        俺のわがままなので…」



      ――――――――




    言うのを躊躇したクロハを
    必死に説得して私は聞いたんだ。




    まだ消えてないのなら、
    「消えないで欲しい」
    そう願えば、間に合うんだと。





    でも、
    最後にクロハは
    苦々しげに言っていた。


    言ってた、けど…







      ――――――――



    クロハ「でも、
        それを実行すると……」



      ――――――――





    思い出せない。



    その大切な文章を、
    どうしても
    思い浮かべることができない。




    何が起きるのか……




    マリー「…どうしよう……!」



    手足が小刻みに震え始める。
    手が私の肩を軽くつかむ。



    セト「マリー!落ち着いて…!!
       何があったんすか……?」



    マリー「クロハはまだ生きてて…
        でもしばらくしたら本当に
        いなくなっちゃうんだって…」



    セトは大きく頷きながら
    私の目をみる。



    セト「い、生き返る…方法が、
       わかんないんすか」




    マリー「ちがうの、
        クロハを生き返らせると
        何かがあるみたいで…
        全然思い出せないの…
        それに時間が…」



    突然の話にうろたえる
    セトに、ちゃんと説明しなきゃ、
    そう思うのに、
    言葉が出てこない。




    マリー「そう…時間に限界が…
        どのくらいの時間だったか…」



    だって、
    急がなくちゃいけない。




    クロハがいなくなってから、
    どれくらい時間がたつ?

    どれくらいの時間でそれを
    思い出さないといけない?




    どれくらいで
    クロハは消えちゃうの?




    わからない、
    どうしたら、どうしたらいいんだろう…



  111. 218 : : 2015/08/11(火) 21:38:24

    アザミside





    アザミ「限界、か」




    アザミは上を向いてため息を吐いた。


    その前にいるクロハは
    ずっと咳き込んでいる。
    落ち着くと、ぐったりと
    しながら答える。




    クロハ「そうだ。もう時間がない…」



    アザミ「その時間が過ぎれば、
        お前は今度こそ完全に
        消滅するのだぞ。
        いいのか?」


    クロハ「いい。
        俺は消えるべき存在だ。
        いつまでも女王に迷惑を
        かけられないし、
        居座っているわけにいかない。」



    そこまでいってまた
    激しい咳をし始めた
    クロハを見て、
    アザミは眉をひそめた。



    アザミ「大切な"もの"を失う、
        などと言われれば
        誰だろうと恐怖を
        感じるだろう」



    クロハ「そう…だ…な…
        それが目的…だし」



    ぜえぜえと乱れた息の
    呼吸音があたりに響く。





    アザミ(全く余裕がない…
        孫はどうするんだろうか。
        此奴を見捨て、
        安全な暮らしを
        優先するだろうか…)



    アザミ「お前が判断したことだ…
        私は何もしないし、
        できないからな」


    クロハは必死の思いで
    小さく頷いた。


    クロハ「主に助けなんて求めて
        ねえ…っての」





    アザミ(……

        理不尽な体で、人間を
        見るだけで苛々するだろうに…
        他人を傷つけないこいつが、
        哀れに思えて仕方がない)




    私だったら耐えられない、
    とアザミは首をふった。


    こいつは優しい。
    優しすぎて、
    自分が消えるなどと
    言えなかったのだ…。




    むせ続けるクロハの
    そばにより、背中をさする。





    クロハ「主…
        柄にもないことすんなよ、 
        気持ち悪ぃな…」



    アザミ「こんなことをしたって
        意味はない…私は何も…
        今言ったろう」





    アザミ(だが私はどうしても、
        願ってしまう。
        消えるなクロハ。


        そして孫よ、こいつを
        助けてやってくれ……)





    その後も言葉を交わしたが、
    奴の口数は
    減っていくばかりだった。


  112. 219 : : 2015/08/13(木) 10:44:57


    マリーside





     *☆*───────────*☆*







    ガラララッ、

    とドアを開くと同時に、



    「マリー!」



    キドとカノが叫んだ。




    カノ「コノハ君から、全部聞いた。
       まだ、クロハ君は
       生き返れるって…」




    カノがすがるようにマリーに
    言うと、キドも口を開く。



    キド「あいつ…クロハがいなくなって
       初めてわかった。

       あいつは優しいんだ。
       気づけなかった。


       今思えば、俺たちは
       あいつに助けられた
       ことが何度もあった…」



    苦々しげな顔をしたキドは、
    でも、と顔を上げる。



    キド「こんな俺たちでも、
       まだ間に合うなら、」



    カノ「僕、願うから」



    キド「いてもらわないと、困る。
       クロハはメカクシ団に
       欠かせないやつなんだ」




    後ろからひょこっと顔を出し
    うなずくコノハ。
    の後ろから出てきた
    シンタローも、深く頷いた。


    その手に握られた
    スマートフォンの中で、
    エネもこくりと首を動かした。



    マリー「キド、カノ、コノハ、
        シンタロー、エネ……!」





    「私も!」



    びくっとしてドアのほうを見ると、
    荒い息のモモちゃんと、
    抱えられたヒビヤがいた。



    ヒビヤ「僕も…
        あの人がいたほうが、
        おばさんが静かになる」




    セトを振り返ると、
    ふわりと、優しく抱き留められる。




    セト「こんなことして、
       クロハにも、マリーにも、
       ごめんっす。
       もうこれで、最後にするから。
     
       今まで俺のそばに
       いてくれてありがとう。
       近くで笑ってくれて
       ありがとう…」



    体を離した一瞬、セトの
    潤んだ目を見た。



    セトは腕でこすって、
    顔を上げる。



    セト「クロハには、
       マリーのそばにいて
       ほしいっすから。
       マリーを一人になんか
       させないっすから。
       だから、俺も。

       もう一度……」





    私を見つめるみんなの顔には、
    固い決意があった。







    マリー「……わたしも…」





    私も、もう一度。






































    マリー「クロハに会うんだ…!」


  113. 220 : : 2015/08/13(木) 10:48:01




    今からでも、間に合うかな。


    間に合う、よね、





    どうか、間に合って ―――










    私は、クロハの口に、
    自分の口を重ねた。


  114. 221 : : 2015/08/14(金) 20:35:57


    クロハside


    背中に当てられた
    主の手をとり、床に降ろす。



    クロハ「もういい…
        さようなら、主」



    アザミ「行って…しまうのか」



    声をかけられ、
    首だけ振り向いたときの、
    悲しそうな顔が忘れられなかった。

    どこか、
    俺のことを
    哀れんでいるように見えた。




    <そんなに俺は哀れか?>




    クロハ「…っ」



    こみ上げてきた
    そんな言葉を押し殺し、
    にやっと笑った。



    クロハ「こんな姿なんて
        見せらんねえからな」








     *☆*―――――――――――*☆*







    主と別れ一人になってから、
    どれくらい経っただろう。



    咳が収まらずに、
    ろくな呼吸ができない。
    悔しくて、左手で首を絞める。




    クロハ「…がは…ッ、
        ……っ…つ…ぅ…」






    苦しい。
    この痛みから逃げたい。



    なんで俺がこんな目に。


    なんで俺だけ。



    …なんでなんだよ?







    ああ、どうせ消えるなら、
    最後に女王に会いたい。



    別れを言いたい。
    会いたい。


  115. 222 : : 2015/08/14(金) 20:49:04


     ―――――――――――――




    「クロハ!」



    自分の名前を呼ぶときの、
    嬉しそうな笑顔。



    「ど、どうしてあんなこと…///]



    思わずキスしてしまったときの、
    驚き、照れた表情。




    「あっ、また敬語!!だめ!」

    「敬語やだって
     いってるのに…っ!」



    貴方を何度も怒らせましたね。
    女王の好き好む形に
    変わろうと
    しなかったのは謝ります。



    でも正直、
    女王が怒っても可愛いだけだし、
    それが悪いと思います…






     ―――――――――――――




    いくつも頭に浮かぶ記憶は、
    女王ばっかりで。







    …あれ、
    俺の目は、女王だけしか
    追っていなかったんだろうか。





    クロハ「…じょ…ゲホッ…
        ゴホゴホッ…女…王…」



    動かない右手を、
    少しずつ宙へ伸ばす。



    名前を呼んだら、
    この手が女王に届く気がする。




    マリー「なぁに?」



    なんでもない顔で、
    振り返ってくれる気がする。





    また、笑顔を
    咲かせてくれるんじゃないか…

    この手で、
    抱きとめられるんじゃないか、って…





    クロハ「―――――ッ…!!」




    頭に激痛が走り思わずうずくまる。



    手に力が入らない。
    壁についていた手が、
    ずるずると下がっていく。



    ついには床に寝転ぶしか
    なくなってしまった。



    クロハ「くそ…」



    ひゅうひゅう鳴る喉。
    心臓がキリキリと痛い。



    でももう、いっそのこと、
    それでもいから、



    クロハ「おれ…は」







    貴方と一緒に生きていたかった。





    脳裏に見えた女王の
    背中に手を伸ばす。




    クロハ「あ…、あ」




    駄目だ。
    とても遠くて届かない。







    女王 ―――





    俺が女王を守んねえと。



    あの人は
    危なっかしくて鈍いから、
    何か危険なことに
    巻き込まれるかもしれねえから。




    そうだ、
    こんな所で消えてられない。




    あの方のそばにいないと、
    そばにいたいのに。



    俺は、俺はまだ…





    クロハ「死に…たく…な……」


























    女王が振り返ったのが見えたのと、
    思考が途切れたのが、同時だった。






    右手は空を切り、
    床に投げ出された。
  116. 225 : : 2015/08/23(日) 10:51:14





















    ピー―――――――――――





    耳に通る、うるさい機会音。



    どこかもわからない、
    ただただ黒い空間に自分はいた。





    「…?」




    ん…?確か俺は、
    メカクシ団を抹殺して、それから…



    あれ?




    何をしていたっけ。




    あの哀れな女王によって
    運命が繰り返されてから、
    そう時間は経っていないはずなんだが…




    まるで何日も、
    何ヶ月も眠っていたように、
    記憶が欠け落ちていた。




    クロハ「おっかしいな…」



    それに、この身体の痛みはなんだ。

    一度だって、
    こんな傷を負ったことはない。




    本当に、おかしい。

    一体何をしていたのだろう。







     *☆*―――――――――――*☆*






    途方に暮れていると、
    とてつもない眠気に誘われてきた。



    何か、とても深く暗い所に
    引き込まれそうな感覚に、
    背筋がぞくりとする。



    クロハ「っ!?」



    違う。
    ”感覚”なんかじゃない。

    どこか深い場所に、
    吸い込まれてる。



    このまま落ちたら、
    もう一生、存在できなくなる。
    そんな気がして堪らない、


    目を閉じるな。




    そんな思いとは裏腹に、
    重い瞼は閉じていった。



    やめろ…
    開けろ、閉じるんじゃない…!

    やめろ……ッ!!




    心で叫んでも、
    闇へ引きずり込まれていく。





    その時だった。





    必死に自分を呼ぶ声が聞こえた。






    「クロハ!目を開けて!!」












    ピー――――――――――――







    ―――――――――



    ―――――― ピピピピ――ッ…






     ――― ピッ ピッ ピッ ――― 








    クロハ「!!」





    目を開けると、病室だった。




    視界にいたのは、白い髪の奴…



    あ…こいつは、女王…か?
    なんで、こんな所に?




    というか、
    なぜ俺は女王と一緒にいる……!?




    どういうことだよ……





    頭が混乱して、
    何もかもわからなかった。


  117. 226 : : 2015/09/01(火) 22:26:47



    マリーside











    マリー「クロハ……目を……
        死な…ないで…」







    ピー―――――――――



    ―――――― ピピピピ――ッ…











    あれ、今…




    音…が、変わ…




    マリー「クロハ…っ!?」








    がばっと顔をあげる。





    寝ちゃってた…!?





    ――― ピッ ピッ ピッ ―――




    やっぱり、音が…!!




    信じられない。


    そう思って機械を見つめて、
    クロハを見た。




















    ベッドに寝かされ、
    閉じているはずの、
    もう開かないはずだった黄色い瞳が、
    まっすぐに私を見据えていた。





    マリー「!
        クロ……」



    思わず身を乗り出し、
    彼の顔を手で包む。



    マリー「…ハ……」




    なの?


    いつもそばにいたクロハ?






    だって、目の前の、彼の瞳に ――――




    私は映ってない。



    冷たく鋭い目つき。
    なのに、どこか怯えているようで。





    それはまるで、
    出会った当初の彼だった。

  118. 227 : : 2015/09/08(火) 19:53:05

    マリーside





    開いた口を閉じるのも忘れて、
    私は呆然とその目を見続けた。



    クロハ「ん…?」




    不意に、少し首を傾げるクロハ。





    クロハ「 ――――― メカクシ団、
        全員殺したはずなんだがなぁ…
        なんで、女王が成長してんだ…?
        まさか、まだだったか…?」



    マリー「…あ……」




    期待していたものが、
    音を立てて崩れ落ちた。






    そして私は悟った。





      ――――――――――――――


    クロハ「でも、
        それを実行すると……」


      ――――――――――――――



    彼は生前いってた。



    自分を生き返らせれば、
    "大切なもの"が消えてしまうって。




      ――――――――――――――


    クロハ「いわば、
        命の代償ってところでしょうね…
        蛇といっても、死んだ奴を
        生き返らせる訳ですから。
        それくらいは…」



    クロハ「で、でも、
        それがなんなのかは、
        主も知らないんです。
        貴方が消えない、
        なんて保障はないし…」



      ――――――――――――――





    彼は"私"が消えるんじゃないかと心配してた。




    だけど、実際に消えてしまったのは…





    光の消えた
    彼の目をもう一度覗く。




    マリー「"記憶"…?」





    私と過ごした時間が、
    全て消えてしまっているのなら、
    彼のこの目も、
    さっき彼が言った言葉も、
    つじつまが合う…








    私は、信じたくない事実に、
    ぎゅっと目をつぶった。







    受け入れなきゃいけない。





    わかってる。





    クロハが、どう代わろうと、

    私は彼が好き。

    そう思っていたのに。




    これ…は……






    クロハ「殺りわすれた…か……?」



    ぶつぶつ言っている彼のほうを、
    見向きもできない。






    マリー「……っ」







    私はクロハに背を向け
    部屋を出た…






    出…ようとした。

















    グイッ













    !?




  119. 228 : : 2015/09/17(木) 21:29:52







    !?







    腕を引っ張られ、
    立ち止まる。




    クロハ「…で…」





    微かな声に、
    クロハの方を向く。


    脱力したように、
    首をがくんと落としたクロハ。




    だ、大丈夫かな?



    俯いちゃって、
    顔が見えない……。




    クロハ「い、か…ないで、
        くだ…さい……」



    マリー「クロハ…?…何を…」




    目が離せずに見ていると、
    彼がベッドで上体を起こした。




    彼がすぅ、と息を吸った途端、
    部屋の中が
    しんと静まった。




    クロハ「…女王」





    そういって、クロハは、






    私に頭を下げた。





    マリー「!?………」



    クロハは俯いたまま
    ばつが悪そうに謝った。



    クロハ「……申し訳ありません。
        私は…クロハ様ではないのです」




    「私のこと、覚えておられますか?」






    そういって、
    彼は顔をあげた。





    赤い瞳。




    賢く、冷徹そうなその目は、
    確かに、クロハではなかった。





    でも…
    見覚えもあった。





    蛇「私はクロハ様の体を
      お借りしているにすぎない蛇です」



    マリー「蛇さん…?」



    蛇「はい。
      これは非常に危険ですが、
      女王に伝えるべきことを、
      放棄したり
      できませんから。」



    クロハの姿をした…蛇さんは、
    ゆっくり私の手を離した。



    マリー「そう、なんだ」



    私はうなずいた。




    蛇「それと、クロハ様にも、
      話をしないと。
      今のクロハ様は、
      記憶を失っていると
      理解していないので……」




    蛇さんは、
    言葉を切って、
    クロハの手を見た。




    蛇「あの方も、
      大分混乱してます。
      女王はコノハ様に
      話を聞かせて
      もらってください」



    マリー「コノハ…?
        どうして、コノハ?」



    そう聞くと、
    蛇さんはちらっと笑った。



    蛇「あの方はクロハ様を
      支えてくださった人です。
      あの方なしでは、
      今頃、クロハ様は
      完全に消えていたはずです」



    マリー「で、でも…
        私、わからないことが
        いっぱい…」



    どうしたらいいの?



    そう聞こうとすると、
    蛇さんは私の手を取って
    優しく言った。



    蛇「ご心配なさらず。
      私は今日以降、
      貴方に会うことは
      出来ません。
      ですが、
      信じてください。」




    「貴方とクロハ様は、
     多くの人に支えられ、
     愛されているんです。
     私たちをどうか、
     信じて……
     貴方なら大丈夫。」






    そこまで言うと、
    クロハの体から力が抜け、
    目を閉じてしまった。



  120. 229 : : 2015/09/22(火) 20:43:29


    クロハside




    グイッ





    !?





    なぜか女王の腕を掴んだ手。



    …?




    目を向けようとした途端、
    意識が遠のいていった。





    クロハ(何が起こった…?)


    すると、どこからともなく
    声が響いた。




    『クロハ様』




    ん……?



    聞いたことがある気が…?
    誰だ…






    あ、もしかして、



    クロハ(蛇?)



    『ええ。クロハ様の体を
     少し借りました。
     許してくださいよ?、
     それくらい。
     私たちは同じ、蛇。
     いわば兄弟なんですから』



    クロハ(そんなのことは
       どうでもいいが…
       今の状況を説明しろ、
       何か知ってんだろ)


    『もちろん…ですが
     この状態は危険なので、
     時間をかけて少しずつ
     伝えます。
     あの方と一緒に、ね』



    クロハ(あの方…?)



    『コノハ様ですよ。
     クロハ様が
     お世話になっている人。
     覚えてないんですか?』



    クロハ(はぁ?
       そんな奴知るか)


    あざ笑うかのような
    蛇の声にムッとして
    言い返す。



    『……やっぱり、
     そうですよね。
     あなたが生きていく
     代償として失ったのは、
     私と、"記憶"で間違いない
     ようですね…』







    クロハ(…なんの話だ?)



    『まぁ、その内わかりますよ。
     あなたの魂は忘れて
     しまっていても、
     身体がきっと憶えています。




     …私は
     そろそろ限界が来ているので、
     消えます』




    クロハ(お、おい、
       まっ……)



    『私はもう、
     こうして話す
     ことが出来ません。
     ただ、貴方に宿り、
     あなたの記憶を
     呼び覚ます手伝いをします。』


    蛇は俺のことを無視して
    話し続ける。



    『だから、
     意思に反して体が
     動いても驚かなくて
     大丈夫ですから。』



    クロハ(全然大丈夫
       じゃねえよ)



    『大丈夫ですよ。
     あなたは優しい人です。
     だからもう、
     人を殺めたりしないで。


     怯えずに生きてください』








    それが、
    蛇の声が聞こえた最後だった。

  121. 230 : : 2015/09/22(火) 21:02:49


    ガララララッ、
    というドアの音に
    瞼をあける。



    コノハ「あ…!?
        クロハ!!」



    白い髪の男がベッドに
    駆け寄ってきて、







    ギュッ







    クロハ「っ!?」



    思わずビクッと跳ねる。



    コノハ「起きたんだね…!
        良かった、良かった…!!」



    クロハ「やめっ、離せ、
        気持ち悪ぃ…っ」



    必死に暴れているのに
    全く動かない。


    それどころか、
    「良かった」と
    連呼し続けている。



    うずめられた幸せそうな顔。




    なんか俺が馬鹿みてえだな。
    そう思い手をどける。




    コノハ「…クロハ、
        ずっと眠った
        ままだったから、
        心配しちゃった」



    白いのは俺から
    離れるとそういった。



    コノハ「じゃあ…僕はマリーと
        話があるから。
        ちょっと待ってて?」



    ポン。




    無邪気に笑いながら頭に
    手を乗せられ、



    クロハ「…!?」



    …嫌ではないけど、
    恥ずい。



    頭に熱が
    こもっていくのがわかった。




    コノハ「あ、顔真っ赤。
        クロハは、
        相変わらず照れ屋だね」



    マリー「クロハだ…」



    奴らは意味不明なことをいい、
    連れ立って行ってしまった。





    違和感が胸に残り、
    一人、首を傾げる。





    その違和感には、
    何故か懐かしさが漂っていた。


  122. 232 : : 2015/09/25(金) 20:14:27

     *☆*───────────*☆*







     ――― 退院してから二週間。



    未だに、
    訳がわからないまま。
    わかることといったら、
    自分は記憶喪失、
    それだけだった。



    「クロハ」



    目だけ振り向くと、
    緑パーカーが笑っている。


    セト「今から、
       買出し行くんすけど、
       クロハも来るっすか?」


    そんなことに行くか、面倒くさい。
    何も言わずに目線を戻す。

    なんでこいつや、
    ここにいる奴らが、
    俺のことを知ってる?


    何があって、
    仲間のように俺に構うんだ?


    それも、"前"は、
    知っていたんだろうか。



    セト「じゃあ、マリー、
       クロハと留守番
       よろしくっす!」


    忘れてしまっただけだろうか。


    マリー「うん、いってらっしゃい!」



    クロハ「……っ」ビク



    その声に体が反応する。


    クロハ「…チッ」



    病院で目を覚ましてから、
    女王の声を聞く度、
    胸が締め付けられるように
    苦しくなる。



    ドクン、
    と鼓動が大きくなる。




    連中を見送り終えた女王は、
    窓を開け、ふちにひじをついて
    外を見つめはじめた。



    風をふくんで
    微かに揺れる白い髪。

    日差しに照らされる白い肌。



    ドクン…ドクン…




    鼓動が響いて止まない。




    どうして目が離せない…?
    どうして…

    どうして、こんなに、胸が痛い?





    椅子の引かれる
    音がしたと思ったら、
    俺は椅子から立ち上がっていt。




    俺は無意識のうちに
    吸い込まれるように
    女王に近づいていた。
  123. 235 : : 2015/10/06(火) 20:47:08

    マリーside



    カタ、と、
    椅子と机の当たる音。



    クロハもどこかへ
    お出かけするのかな。



    でも、ブーツの音は
    私に近づいてきてる。




    コツン、コツン。




    ??


    用があるなら声を
    かけたらいいのに、

    おかしいな…





    トン。
    肩に重み。



    ぐるりと胸前で腕が組まれる。








    気づいたときには遅かった。




    クロハ「…あ…」



    クロハが何かに
    気づいたような
    小さい声を漏らした。


    と同時に、



    マリー「ふぁ…っ!?///」


    耳にふわりと暖かい風がかかる。




    クロハ「…この匂い…」



    肩に顔をうずめられて、
    私は肩をすくめる。



    なにが、どうなってるの?


    どうしてクロハが、
    こんなこと…?


  124. 236 : : 2015/10/07(水) 20:52:50

    クロハside


    すぅ、と小さく息を吸って
    その香りをかぐ。






    ――― キィーンッ




    頭の中に耳障りな音が
    響いたと思ったら、


    壊れかけのテレビのように
    ザザ、と視界が崩れると、



    にっこり笑った誰かの顔。
    長い白髪に、涙の伝う頬。


    その表情だけが、
    塗りつぶされていて見えない。


    何か言ったが、
    聞こえなかった。





     ―――――――



    マリー「クロハ、?」




    怪訝そうな声に引き戻された。



    白髪の女と、
    女王が重なる。




    ……?
    あれ、確か…



    クロハ「前にも、
        このようなことが
        ありましたか?」


    女王はふるふると首を振る。



    女王の腰に手を回し
    向かい合う形にした。





    クロハ「ありませんでした?」



    女王の目が揺れた…
    ように見えた。



    だが、


    マリー「…なかった、よ」




    硬いもので
    軽く胸を突かれた気がした。


  125. 240 : : 2015/10/16(金) 13:10:23


    マリーside






     *☆*―――――――――――*☆*





    しんとした、クロハの部屋。


    コノハと共同で使っている
    彼の部屋は、
    実にシンプル。


    机に、ベッドに、棚。



    それだけ。


    前のクロハが残して
    いったものは、
    この部屋だけ。


    たった、それだけ……。






    なんだろ?目の前がぼやける。


    ふらふらしながら、
    ベッドに座った。




    視界に映るのは、
    何も乗ってない
    テーブル……?



    マリー「ん……?」



    テーブル…の上にある、
    壁についた小さな棚。


    よく目を凝らすと…紙がのってる?



    マリー「なんの、だろう?」



    背伸びして手に取ろうとする。

    もうちょっとというところで、


    マリー「あっ…!」


    床にひらりと落ちてしまった。



    マリー「高すぎるよ…!」


    言いながらかがんで、
    飛び込んできたのは…








    『女王・茉莉様へ』







    ぎこちない、
    クロハの文字だった。
  126. 241 : : 2015/10/22(木) 21:21:43


    『あなたに伝えたいことは
     溢れるほどあります。
     しかし時間がない…。』


    すると、不思議なことに、
    耳元で彼の声が
    聞こえてくるような
    気がした。



    『情けない話
     俺は怖かった。
     消えるのが怖くて怖くて
     人を殺めた。


     そんな手であなたに
     触れてしまって
     すみませんでした。

     だけど俺はそうしないと
     生きていけなかった。』






    『だって



     貴方のことを』



    ――― 手紙はそこで終わりだった。


    でも、声は聞こえた。







    「心から、――…」




    彼がいるような気がして、
    振り返る。











    「愛しているから」



















    俯いたクロハが立っていた。





    クロハ「あなたのことを、
        蛇じゃなくて、
        人間として、
        愛おしいとしか
        思えないから。」



    声が震えていた。



    クロハ「笑った顔。
        怒った顔。
        照れた顔。
        全部憶えてる。

        だってあなたはいつも
        俺のそばにいたから」




    手を伸ばして抱きついた。



    私の腕の中で震える肩。




    クロハ「もう俺は蛇じゃない。
        確かに、あなたについて
        まだ少ししか思い出せない。


        全部思いだせるかだって
        わからない。




        それでも、





        あなたを護っていても
        いいですか?





        ……そばにいることを
        許していただけますか?」



  127. 242 : : 2015/10/22(木) 21:22:29





































  128. 243 : : 2015/10/22(木) 21:34:59


    真夜中の月明かり照らされる場所。



    一人の人影と蛇が向かい合っていた。




    コノハ「大丈夫。

        上手く、
        思い出せたみたいだから。


        もう、心配いらない…。
        クロハはマリーを憶えてるから。」





    「…今までありがと、な
     じゃあ。」



    蛇は一言言うと、
    少しづつ透け始め、

    ついには―――…




    ――――― 消えた。





    コノハ「さようなら。
        "蛇のクロハ"。」







    一人残されたコノハは、
    誰かに語るように言った。




    コノハ「クロハ。
        僕はね、これが、
        一番良いおしまいだとは
        思ってないよ…。

        だって、蛇の君は
        消えちゃって、結局、
        君の願いは
        叶わなかったんだから。」





    (だけど、きっとこれは、
     クロハに対する
     罰なんじゃないかな。


     人を殺して幸せを
     得られるなんて、
     あまりにも、
     自分勝手すぎたんじゃ、
     ないかな?







     ねえクロハ。




     君は今、しあわせ?)









    黒い蛇は、くすっと笑った。

  129. 244 : : 2015/10/22(木) 21:36:32







    +――――――――― end ―――――――――+






  130. 246 : : 2016/01/10(日) 16:06:34
    とってもいいお話でした★
    こんなお話が書けるってすごいと思います✿ ・*大変お疲れ様でした☀︎
  131. 247 : : 2016/01/25(月) 23:16:06
    >>246ありがとうございます(●>∀<艸)
       そういう言葉をもらえると本当に嬉しいです!

       こちらこそ、読んでくださって
       ありがとうございましたm(__)m
  132. 248 : : 2016/02/02(火) 00:03:21
    読者さんいらっしゃいましたら、
    気軽に感想やコメントを頂けたりしたら、
    とても嬉しいので遠慮せずどんどんどうぞ(*´ω`)♪
  133. 249 : : 2016/03/08(火) 20:34:18
    本当凄いですね(๑•̀ᴗ- )✩
    お疲れ様でした( ๑´•ω•)۶”
  134. 250 : : 2016/03/19(土) 14:25:10
    >>249クロハ好きが高じて長編書き上げました…(o´∀`)笑
    ありがとうございます!!
  135. 252 : : 2016/06/27(月) 14:20:08
    今日、閲覧数10000を突破しました(o´∀`)
    読者の皆さん本当に、本当にありがとうございます<(__)>
  136. 253 : : 2016/06/27(月) 14:20:44
    トリップ間違えました…、茅ヶ崎です(;・・)
  137. 254 : : 2016/08/07(日) 15:15:47
    読んでる内に泣いちゃいました・・・!
    こんな感動的な小説を書けるなんてすごいです!
    またなにかこういう感動的な小説書いてください!
    カゲプロで!!
  138. 255 : : 2016/08/14(日) 16:02:57
    >>254感激していただけて光栄です(。ノω<。)ノ

    新作を書きたいと私も思ってるんですが、なかなか良いストーリーが浮かんでこなくて…。
    お気持ち嬉しいです、ありがとうございます!!
  139. 256 : : 2016/08/16(火) 22:32:20
    か、か、か、神作キタ―!!いやーお疲れ様でした         いい話でしたね。
  140. 257 : : 2016/08/16(火) 22:34:19
    それな!
  141. 258 : : 2016/08/17(水) 14:10:19
    マジそれな!神作だわー感激!!
  142. 259 : : 2016/08/23(火) 18:31:45
    >>256>>257>>258神作だなんて嬉しいです、ありがとうございます!!
  143. 260 : : 2016/08/23(火) 18:33:34
    またもやトリップミスです…( ;´Д`)
  144. 261 : : 2016/08/27(土) 14:04:24
    わー!!マジで神ってますよこの作品!!あの!!よければセトマリのr18小説お願いできますか?初めてカゲプロでこんな感動するなんて!!ホント神ですよ!!                            
  145. 262 : : 2016/08/28(日) 00:57:50
    本出して欲しいです~~!
  146. 263 : : 2016/08/31(水) 18:03:22
    >>261>>262ありがとうございます!

    r18小説に関しては、時間があるときに考えておきますね(*^^*)
  147. 265 : : 2016/08/31(水) 18:05:29
    新しく作品を作りましたので、どうぞよろしくお願いしますm(__)m

    セト「マリーを守りたい」クロハ「ずっと貴女と」
    http://www.ssnote.net/archives/48509
  148. 270 : : 2016/09/03(土) 13:49:27
    本日、閲覧数が11111を達成しました!

    読んでくださっている皆さま、
    本当にありがとうございます(*´∇`)ノ

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